日本海戦隊  >  二次作品
こんなベリー・メリー・クリスマス -[1] -[2] -[3] -[完]


こんなベリー・メリー・クリスマス(完)


『エンジェルの名を呼んでいるようですが、日本語のため事情がわかりません』

 テッサに向けられたその報告に、別な声が割り込んだ。

『こちらウルズ7だ。その生徒と話がしたい』

〈アラストル〉との交戦中に気絶した宗介も、無事に目を覚ましたようだ。

 テッサがほっと安堵のため息が漏らす。

『了解。ちょっと待ってくれ』

 応えたカノ17に替わり、

『なん……だ?』

 力の無い少年の声。

『聞こえるか? 椿』

『相良か? すまねぇ。千鳥を連れて行かれちまった』

『相手はどんな奴だ?』

『黒いコートを着て、赤いサングラスをつけていた。いきなり撃たれて、その後のことはわからねぇ』

〈アラストル〉に違いない。

 かなめを発見したため別行動を取った機体がいたのだ。

『貴様は無事なのか?』

『ああ、お前の防弾ベストのおかげでな。骨は折れたみたいだが、死にはしねぇ。それより、千鳥が……』

『その事は心配するな。俺が救出してみせる』




 一成と宗介の会話を聞いていたテッサがすぐにかなめとの共振を試みる。

 同じウィスパードである、テッサとかなめは、テレパシーのように意志を伝達することが可能だった。かなめは受けることしかできないが、テッサは送受とも自在に行うことができる。

「カナメさん。どこにいるんですか? ……海? もう、ボートの上なんですか?」

 かなめから入手できた情報は、すでに彼女が連れ去られた事実だけだった。

 向かう方向も、その速度もほとんどわからない。

「ゲーボ9。エンジェルの位置を探索してください」

『了解』

 上空を旋回する汎用ヘリ〈ペイブ・メア〉が周囲の探査を始めた。




 宗介が甲板上に姿を見せる。

「サガラさん……」

 テッサが駆け寄ってきた。

 自分が倒れた後の事情はあらかた聞いている。

 この大佐殿が陣頭に立って、〈アラストル〉の撃破に成功したらしい。自らを囮にして敵を誘導するなど、彼女の身体能力を考慮すると、無謀とも言える。これまでの彼女では考えられないことだ。むしろ、千鳥なんかがやりそうな作戦だった。

 だが、窮地を脱したのは、確かに彼女の功績だった。

 自分は、これまで、大佐殿や千鳥を守ってきたつもりだった。しかし、それは思い上がりだったのではないだろうか?

 彼女達を守り通せていたのは、決して自分だけの力ではない。これまでも、彼女達の後押しを受けたり、彼女達の手助けを得て、これまでの危機を乗り越えてきたのだ。

 日本に来て初めての作戦――順安空港での一件も、眼前にいる少女の決断がなければ、自分に生き延びるチャンスはなかったのだ。

『こちらゲーボ9。エンジェルを発見』

 ヘリの操縦士から連絡が入った。

「なんとか、ボートを止められませんか?」

 テッサが懇願する。

『ダメだわ。何度か試したけど、威嚇では、まったく効果なしよ』

「ボートを操縦しているのは、おそらく、等身大のASなんです。威嚇は通用しないでしょう。物理的に足止めするしかありません。ボートのエンジンだけを狙ってください。お願いします」

 どれだけ無茶な注文かは、テッサ自身にも分かっている。

『……やってみるわ』

 ヘリで、ボートを押さえるのは難しいだろう。

 では、どうする?

 宗介が自問する。

 彼の傍らには、〈アーバレスト〉が佇立していた。

 ASならば、既存の兵器とは全く違う運用が可能だ。それこそ、使用者の発案次第で、どのような運用も……。

「大佐殿、〈デ・ダナン〉はどこにいますか?」

「現在は、この船の左舷に……」

「わかりました」

 頷くと、宗介は〈アーバレスト〉を見あげた。

「アル。俺を乗せろ。いまから、千鳥の救出に向かう」

「サガラさん……」

 テッサの声が沈んだ。

 そんな場合でないのは理解しているが、やはり、宗介にとってはかなめが大事な存在だと思い知らされたからだ。

〈アーバレスト〉が下ろした右掌に宗介が飛び乗った。

「大佐殿、戻ったらお話があります」

「え?」

「すべては、千鳥を取り戻してからのことですが……」

 テッサの視線の先で、宗介が頼もしげな笑みを浮かべて見せた。

「少しだけ、お待ちください」




 宗介は〈アーバレスト〉の背中からコクピットに乗り込んだ。

 通信機の回線を〈トゥアハー・デ・ダナン〉へつなぐ。

「中佐。いまから、エンジェルを奪還します」

 宗介の言葉に、現在、〈デ・ダナン〉の指揮を執っているマデューカスが尋ね返す。

『しかし、ヘリでは難しいのだろう』

「ですから、ヘリではなく、我々の手で救出するんです」

 宗介がその救出手段を説明する。




 不意に〈アーバレスト〉は客船の左舷に歩み寄ると、海へと身を投じた。

「サガラさん!」

 テッサが驚きの声を上げる。

 激しい水柱を立てて、〈アーバレスト〉が海中に没した。

 立った波が静まる。

 ワイヤーガンを打ち込んだ形跡もない。

 彼は一体、どういうつもりで……。

 …………。

 その海面に小さな筋が走った。

 水面下で何かが動いているのだ。

 客船からはなれて海面を盛り上げていた何かが、水上に姿を見せる。

 海面を割って、ASの頭部が出現した。

 海中を進みながら、徐々にその姿を現していく。

〈アーバレスト〉が海面を疾駆する。

 いや、その機体は〈トゥアハー・デ・ダナン〉の船体の上に立っているのだ。

 船首に〈アーバレスト〉を乗せまま、〈トゥアハー・デ・ダナン〉が海面に浮上し、救難ボートを猛然と追撃する。




 速力でいえば救難ボートを遙かに上回る〈トゥアハー・デ・ダナン〉だが、先行されたアドバンテージが大きく、視界に納めるまで数分を要した。

「いた」

 宗介が喜びの声を上げる。

 レーダーに捉えていた救難ボートを、〈アーバレスト〉のカメラが捉えたのだ。

 その時、さらに前方の海面上で何かが光った。

 こちらに向けて、小さな物体が飛来する。

 ミサイルだ!

 コクピット内では、やかましい警報音鳴り響く。

〈アーバレスト〉に正対する形でミサイルが接近する。

 爆発。

〈アーバレスト〉を爆炎が包み込む。

 だが、その煙の中から、無傷のまま、〈アーバレスト〉の機体が姿を現した。

 宗介の生存本能が、この機体に内蔵されたラムダ・ドライバを起動させ、無形の障壁を展開させることで、自らを守ったのだ。

 爆発を叩きつけられた海面が、〈トゥアハー・デ・ダナン〉を翻弄したが、〈アーバレスト〉は揺れる船体上で、うまくバランスを取った。

「くっ!」

 宗介が顔をしかめる。

 さらに発射されたミサイルが、上空の〈ペイブ・メア〉を襲った。辛うじて直撃はかわしたものの、損傷を受けて追跡を断念したようだ。

 ミサイルの発射点には、巨大な飛行艇が出現していた。

 使用していたECSを解除したのだろう。今はその姿が視認できた。

 このままでは、追いつくより先に、救難ボートは飛行艇に接触する。

 間に合わない。

 宗介が逡巡したのは一瞬のことだ。

「中佐、お願いがあります」

 宗介はマデューカスに呼びかけていた。




〈トゥアハー・デ・ダナン〉は、完全に浮上すると、船殻を開き始めた。

 そんなのことをすれば、当然速度が落ちる。だが、宗介の要請を受けて、マデューカスは実行に移したのだ。

 宗介は甲板上に下りると、カタパルトの準備を始める。

『しかし、本気なのか?』

「無論です。離陸されては手が出ません。着水している間に、ケリをつけます」

 マデューカスの問いに、もどかしげに宗介が答える。

 いま、宗介は緊急展開用ブースターも無しに、カタパルトから射出されようとしているのだ。

 冷静に考えれば、他の手段もあるのだろうが、今の宗介は思いつかなかった。

 通常なら不可能な運用だろうが、ラムダ・ドライバを搭載した〈アーバレスト〉ならば、望みはある。

 以前、出現した巨大AS〈ベヘモス〉は、ラムダ・ドライバによって重力を軽減していたと聞いている。

 同じように〈アーバレスト〉の自重を軽くできれば、あの飛行艇まで到達できるはずだ。

 アルの計算によると、成功確率は20%を切っている。

 しかし、実行に写さなければ確率は0だ。

〈アーバレスト〉がカタパルトに両足を乗せる。

 救難ボートはすでに、速度を緩めて飛行艇に接舷しようとしていた。

「準備はいいぞ」

 宗介が甲板士官に告げる。




〈アーバレスト〉が、圧倒的な推進力で前方に押し出された。

 射出される寸前まで、前面に叩きつける風の音がうるさかったが、今はその音も小さくなった。

 宗介本人は気づいていなかったが、虚弦斥力場が流線型に形成されたため、上手く気流を処理しているのだ。これにより、到達距離をいくらか伸ばすことが可能になった。

 視線の先では、飛空挺のプロペラがゆっくりと動き出していた。

 もう少しだ。

 画面上に表示している相対距離の数値が小さくなっていく。

 ある数値を切ると、瞬時に宗介が反応した。

 左腕を前に突き出し、ワイヤーガンを発射したのだ。

 射出されたアンカーは、狙い違わず飛行艇の左翼を貫いた。

 展開した爪がその翼に食い込む。

 これで、ワイヤーガンを巻き取れば、あの飛行艇に取りつくことができる。

 飛行艇が徐々に速度を増していき、〈アーバレスト〉が振り回された。

 しかし、翼の破損のためか、〈アーバレスト〉を引きずっているためか、飛行艇は必要な揚力を得られない。虚しく海面を走り続けている。

 ワイヤーを巻き取った〈アーバレスト〉がついに、飛行艇の翼にたどり着いた。

〈アーバレスト〉が飛び乗ったことにより、飛行艇の機体が傾き、その左翼の先端が海面を切り裂く。

 宗介が狙いをつけて、トリガーを引いた。

 飛行艇のコクピットに、頭部のバルカン砲を叩き込む。その攻撃により、飛行艇は操縦が不可能となり、徐々にプロペラの回転が弱まっていく。

〈アーバレスト〉が翼の上を、胴体へ向けて歩み寄った。




〈アーバレスト〉が引き裂いた開口部から、宗介が機内に乗り込んだ。

「千鳥。伏せていろ」

 まだ視界に捉えていない彼女に指示しつつ、姿を見せる敵に宗介が銃弾を浴びせる。

 宗介と互角に戦える人間が、この飛行艇に乗り込んでいるとは考えにくい。

 しばらくすると、宗介の前に立つ人間はいなくなった。

「千鳥、どこにいる?」

「こっちよ」

 機首方向から声が聞こえた。

「他にも敵はいたか?」

「……えっと、いなかったと思う」

「わかった」

 宗介が頷きながら、かなめを縛っていたロープを切断する。

 立ち上がろうとしたかなめが、力無く崩れ落ちた。

「どうした? 怪我をしたのか?」

 心配そうに宗介が尋ねる。

「捕まった時に、薬を打たれたのよ。筋弛緩剤だって」

「そうか」

 宗介が安堵する。その程度ならば、じきに効果も薄れるだろう。




 そのとき、機内の最後方で、何かがごそりと動いた。

 かけられたカバーの下から姿を見せたのは、先ほどかなめを拉致した相手――〈アラストル〉だ。

 この狭い機内では、小さく華奢なシートしか、身を隠せる物がない。

 宗介は肩を貸して、かなめを立ち上がらせる。

 二人は〈アラストル〉とは反対方向の、機首へと向かった。

 接近する〈アラストル〉は、サブマシンガンの銃撃をうけながらも、じりじりと、こちらに足を進める。

 このままでは、〈アラストル〉の足止めもできない。

 あまりに近すぎるが、手榴弾を使うしかないか……。、

 その時、機体がひしゃげた。

 べきべきと鋼板を割って、何かが出現した。

 巨大な手だ。

 飛行艇の側面を突き破って出現したその手が、〈アラストル〉を握って姿を消した。

「アルか!?」

 宗介が小さな窓から、翼上に視線を向ける。

『肯定です。軍曹』

「そいつを遠くへ放り投げろ」

 宗介が通信機へ命じる。

『ま゙っ!!』

 宗介の指示に従い、〈アーバレスト〉は右手を振り上げた。

 活動が停止したからだろう、宙を舞っている間に、〈アラストル〉は内蔵している爆弾により、四散した。




 かなめがため息をついた。

「まったく……。せっかくの誕生日だっていうのに、とんだ一日だったわ」

「だが、君は無事だった。そのことを喜ぶべきだ」

「それは、わかってるわよ」

 そう。自分がいたために、まったくの無関係でありながら、迷惑を被った人間は山ほどいる。その上、自分を助けるために苦労した人間もたくさんいる。張本人(正確には被害者に過ぎない)が、嘆くなどむしろ図太いのかもしれない。

 そうは言っても彼女自身の偽らざる本音であった。

「そうだ……。今のうちに渡しておこう」

 宗介がポケットから一本のペンを取り出した。

「なによ? これ」

「強力なスタンガンだ」

「これを、どうしろっていうのよ?」

「クリスマスプレゼントだ」

「あ、そう。クリスマスの……ね」

 かなめが無感動に応える。

「迷惑だったか?」

「ううん。いいわ。もらっとく」

 面倒くさそうにかなめがポケットにしまう。

「それと、もう一つ……」

「え?」

「これは誕生日プレゼントだ」

「え?」

 かなめは本当に驚いた。

 もともと、宗介がクリスマスプレゼントを準備するだけでも驚きなのに、誕生日を覚えており、プレゼントまでくれるとは。

 そんな想像をしたこともあるが、現実になるとは思ってなかった。

 それも、これは……。

「ラピスラズリだ。以前入手して、君にあげようと思っていた」

 それはペンダントや指輪のような加工を全くしていない、裸の石だった。

 だからこそ、宗介らしいとも言えるだろう。

「ありがとう。ソースケ」

「うむ」




 実は宗介自身は、TDD−1に合流して、メリダ島へ向かう事も考えていたのだが、さすがに断念せざるを得なかった。

 シージャック事件の人質のうちの一名が消息不明ともなれば、すさまじい騒ぎになるだろう。

 宗介はかなめとともに、陣高の生徒に紛れ込んだ。

 騒動の割には、陣高の生徒にほとんど被害は無かった。

 負傷したのは、わずか一名だけである。




 救急車が呼ばれ、そこへ一成が担ぎ込まれようとしていた。

 宗介から渡された防弾ベストが、一成を狙った銃弾を全て防いでくれた。肋骨を数本折られたものの、全く流血はしていない。

 意識を取り戻していた一成は、近づいてきた宗介を見て視線をふせた。

「ヘマしちまったぜ」

「そのようだな。おまえは任務に失敗した」

「ちょっと、ソースケっ!」

 さすがにかなめも黙っていられない。途中で倒れることになったものの、一成は最後まで身体を張って、自分を守ってくれたのだ。

「かまわねぇよ。確かにオレはおまえを守れなかったんだからな」

 一成が自嘲気味の笑みを口元に浮かべる。

「椿君……」

「……だが、おまえが全力を尽くしたのは俺にも分かる」

 その言葉で、二人の視線が宗介に向けられた。

「アマチュアでありながら、銃口を前にして行動できるとはたいしたものだ。お前が恥じる必要はない。早く傷を治せ」

 宗介の視線を避けるように顔を背けて、一成がぽつりと呟いた。

「相良……、またな」

「うむ」

 宗介とかなめは並んで、一成を乗せた救急車を見送った。




 メリダ島では一日遅れのクリスマスパーティが行われた。

 宗介が見せた鼻眼鏡姿は、テッサだけでなく、同僚達が大ウケした。

 クリスマスだけではなく、イブに誕生日を迎えたテッサは、隊員達から渡された大量のプレゼントに、満面笑みを浮かべていた。

 私用でオーストラリアに出向いていたカリーニンからも、知人から預かったとの説明で、赤いブローチを受け取った。




 公的な宴を終えて、テッサは、宗介を自室に招いた。

 この先は、彼女が楽しみにしていた私的なパーティだ。

 しかし、テッサの自室に入ると、宗介が開口一番で謝った。

「申し訳ありません」

「どうしたんです?」

「その、プレゼントの準備をまったくしていなかったものですから」

「いえ。いいんですよ」

 テッサが笑顔で応じる。

 実際、あまり期待していなかったので、それほどショックでもない。

「しかし、千鳥には渡しました」

 その言葉は少なからず、テッサを動揺させる。

 かなめに対する嫉妬だった。

「そうですか……」

 テッサの表情が曇る。

「その、もしよろしければ、これを……」

 そう言って、宗介はポケットから細長い袋を取り出した。

 中には携帯電話用のストラップが入っている。先端には黄色いキャラクターがぶら下がっていた。

「これは……」

「ボン太くんというキャラクターで、自分のお気に入りです」

 宗介には不似合いな小道具だったが、宗介本人はいたって真剣な表情で説明する。

 テッサが笑みをこぼした。

「普段、真面目な人ほど、こういう愛らしいものに魅力を感じるのかもしれませんね」

 テッサは自分の部下の一人が、ほのぼのアニメ鑑賞を趣味していることを思い起こした。

 しかし、そう告げられた宗介は困惑する。

 誰のことだ? まさかカリーニン少佐の事だろうか?

 あの少佐がボン太くんのぬいぐるみを抱きしめる図などは、到底想像できないのだが……。

「いいんですか?」

「はっ。自分の分は再度購入致しますので、お気になさらず」

「え? また買うんですか?」

「はい。特に気に入ったものですから」

「じゃあ、喜んで頂きます。ただし、絶対にサガラさんも、同じ品を使ってくださいね」

「それは、構いませんが……」

 戸惑いながら応える宗介に、テッサは笑顔を見せた。

「それと、誕生日プレゼントが……」

「わたしの誕生日をご存じだったんですか?」

「はい。先ほどマオに聞きまして」

「……そうですか」

 テッサががっかりと肩を落とす。

「ですから、ぜひ、そちらのプレゼントも渡したいのですが」

「そんなに気をつかわなくてもいいですよ」

「違います。気遣いというものではなく、大佐殿に喜んでもらいたいだけです」

 その言葉を耳にして、テッサの顔に笑みが浮かんだ。

「その言葉だけで十分です」

「ですが……」

「いいんです。私はこうしてサガラさんとふたりきりでパーティーがしたかったんです。それをかなえてくれたのが、サガラさんからのプレゼントですよ」

「大佐殿……」

「あの、できれば、ふたりきりのときは、テッサと呼んでもらえますか?」

「では……、その、テッサ。実は言おうと思っていたことがあったのですが……」

「どうぞ、何でもおっしゃってください」

 テッサが促す。

 ……しかし、時間をおくと言えなくなってしまうものだな……。

 どうも、先日思ったことを告げることはできそうもなかった。

 変わりに口にしたのは、無難な言葉だ。

「その……、メリー・クリスマス」

 告げられたテッサはきょとんと宗介を見返す。

 それから笑顔でこう返した。

「ベリー・メリー・クリスマス(おもいっきり、聖夜、おめでとう)」




 ――『こんなベリー・メリー・クリスマス』おわり。




 あとがき。

 私はどうもIF系を書くと話が転がり過ぎるようです。

 今回も「セイラーに替わって、宗介が」というだけのつもりが、「一成も出そう」となり、さらには、「テッサとくっつけよう」となりました。

 原作との違いを出そうとして、わざと変えようとする意図が働いているのも確かなんですが……。

 

 今回の話では、二個所に遊びを入れてみました。

1:アルに助けられたシーン。

2:カリーニンの密会について。

(…………わかります?)








二次作品
(目次へ)
作品投票
(面白かったら)
<<
(前に戻る)

(もう一度)
>>
(次の話へ)