テッサを欠いた〈トゥアーハー・デ・ダナン〉が高速水中艦三隻との戦闘中。 その緊迫した状況だというのに……、 「そうですか。では、戦闘終了の連絡を待ちましょう」 テッサの対応は落ち着いたものだ。 『なにをのんきな……』 クルーゾーの言葉を、テッサが遮った。 「待ってください。中尉は、マデューカスさんの事を知っていますか?」 『どういう意味です?』 「陸戦隊員には知られていないでしょうけど、マデューカスさんは、潜水艦乗りの間では有名な人なんですよ。まあ、英国海軍のデューク(公爵)といった方が通りはいいでしょうけど」 『公爵ですか?』 「はい。彼の冷静沈着にして、大胆不敵な操艦からつけられた異名です」 そう言われても、クルーゾーには、単なる技術屋然とした姿しか思い浮かばない。 「仮にも潜水艦の副長が、事務能力や、管理能力だけで選ばれると思いますか?」 言われてみれば、確かにその通りだった。陸戦隊に置き換えたならば、カリーニンの副官に事務官がつくようなものだ。実戦経験もない人間に務まる仕事ではない。 自分たち〈ミスリル〉は、敵も存在せず定期演習を繰り返すだけのお飾りの軍隊ではない。 むしろ、絶えず戦場を渡り歩き、なお、人手が足りないという組織なのだ。正規軍ではないからこそ、能力こそが重要視される。あのサガラ軍曹をあの若さで重用する軍隊など、他にあるはずがない。 『申し訳ありません。浅はかでした』 「あら、私に謝罪されても困りますよ。……それに、そう考えているのは、クルーゾーさんだけではないと思いますし。これで、クルーのみんなもマデューカスさんの実力を理解してくれるかもしれませんね」 楽しそうにテッサがつぶやいた。
一成はかなめと共に、ショッピングセンターへ向かって通路を進んでいる。 かなめを振り返ると、さすがに不安を隠しきれないように見えた。 宗介が一緒にいた時は、こんな顔をしていなかったはずだ。認めたくはないが、自分もまた、宗介がいたことで恐怖を感じずに済んでいた気がする。 同じような素人とはいえ、自信満々に振る舞った方が、同行者を安心させる事ができるのかも知れない。 「千鳥。心配するな。お前は俺が守ってみせる」 「う、うん。頼りにしてるからね」 一成が自分に気を使ったことぐらい、かなめにもわかった。 宗介がいないことで、心細い顔をしていたのだろう。 自分は、こんな経験が何度もあった。逆に、巻き込んでしまった一成に申し訳ないぐらいだ。 その一成が足を止めた。 「出てこい! 隠れていても分かるぜ」 一成が、通路の曲がり角にサブマシンガンを向ける。 かなめ自身は、その相手を目にしていない。 「勘違いじゃないの?」 「いや。確かに気配を感じた。出てこねぇのなら……」 「ま、待ってくれ。私は敵じゃない」 その人物が曲がり角から、慌てて飛び出してきた。船員の格好をしている。 「誰だ貴様は?」 一成が銃口を向ける。 「船長さんだわ」 答えたのはかなめだった。 「本当か?」 「うん」 乗船してすぐに、かなめは船長の挨拶を受けた。 間違い無いはずだ。 かなめの言葉に、一成が銃口を下ろした。 たしかに食堂でスピーチしていた人間のようだ。 船長ならば、自分たちと同じく、シージャックによる被害者だ。警戒する必要はないだろう。 「君は……君たちは、どうしてここに?」 こちらの様子をうかがいながら船長が尋ねてきた。 「隙を見て逃げ出してきたんです」 かなめが答えた。 「……そうですか。私はこの船の中を知り尽くしています。私が、あなた達を安全な場所までお送りしますよ」 客を安心させるためだろうか? 船長が笑ってみせる。 かなめにはその笑みが、なぜか、獲物を前した肉食獣のように思えた。
テッサは〈アラストル〉の行動原理を看破した。 おそらく、かなめを探しているのだ。 〈アラストル〉の行動を直に見ようとしてその場に出向いたテッサは、いつものようにずっこけた。 そのテッサに〈アラストル〉が迫った時は、さすがに、皆の心臓が飛び跳ねた。 だが、〈アラストル〉はテッサに襲いかかろうとはせず、情報を得るべくその容姿をスキャンしたのだ。 敵組織〈アマルガム〉が欲する少女――考えられるのは、ウィスパードであるかなめの存在であった。
テッサは自分を囮として、 〈アラストル〉を誘導し殲滅する作戦を提案した。 しかし、それは皆の猛反発を受けた。 それも当然だろう。 頭脳労働ならまだしも、テッサの運動神経は並以下なのだ。ヘタにテッサが捕まりでもしたら、西太平洋戦隊は打つ手がなくなる。 それに、かなめを目的としているならば、テッサはその対象からは除外される事になるのだ。 危険すぎる――。 だが、テッサは強引にその作戦を皆に受諾させた。 陣代高校の生徒達は、テッサにとっても大切な友人達だった。自分には、巻き込んでしまった皆を守る責任がある。 そして、彼女の作戦に変わる代案をだれも提示できなかったのだ。
がんっ! 不意の衝撃に一成が倒れた。 一成を責めるのは酷というものだろう。 いかに強いとはいえ、彼は一介の格闘家に過ぎないのだ。宗介の言葉ではないが、彼は素人なのだ。 仲間とみなした船長に襲われるなど、予想外の事だった。 傍らに立つ船長が、自動拳銃の銃底を、一成の後頭部に叩きつけたのだ。 「椿くんっ!」 かなめが叫ぶ。 船長がイヤな目つきでかなめを見つめる。 「〈ミスリル〉のせいで、私はこの船を失ってしまった。こうなった以上、君だけはなんとしても、つれて帰らねばならないのだよ」 その言葉にかなめが驚いた。 「〈ミスリル〉?」 なぜ、〈ミスリル〉がこの事件に関係するのか? まさか、あのテロリストが〈ミスリル〉なのだろうか? 戸惑ったものの、かなめは身を翻して逃げ出そうとする。 一発の銃声。 その弾が命中して、かなめがその場に転倒する。 そのまま、まったく身体が動かない。 撃たれた? その想像に、背筋が冷たくなった。 しかし、その恐怖を払拭したのは当の船長だった。 「動けないだろう? 今のは筋弛緩剤を仕込んだ特殊な弾丸だからね」 その薬を打ち込まれた人間は、その名の通り筋肉が弛緩してしまい、行動することができなくなってしまう。 「さあ、長居は無用だ」 船長は、声も出せず、身動きもできない、かなめの身体を担ぎ上げた。
いま、テッサは〈アラストル〉の前に自らの身体をさらしている。 〈アラストル〉の目的がかなめなのは間違い無いはずだった。 それでは、自分はその標的として登録されていないのだろうか? いや――。 彼女には確信があった。 この〈アラストル〉には、兄であるレナードが関わっているらしい。 自分はレナードにとって、重要な存在のはずだ。利己的な計算によるものか、独善的な愛情によるものか、そこまでは理解できないが……。 そして、レナードならば、どのように〈アラストル〉に行動プログラムを組むだろう? 今回の作戦の目標は、あくまでかなめだった。その船に、テッサがのりこんでいるなど、普通は考えもしないはずだ。 だが、レナードは別だった。 彼の予測を覆す事態など、めったにないはずだ。 彼の優秀さは、残念なことに、よく知っている。 おそらく……。 「大佐殿。危険です」 焦燥も露わに宗介が通信機に話しかける。 『大丈夫です』 「しかし……」 不安そうな宗介の表情をみて、テッサが笑顔を浮かべてみせる。 『わたしはいつも同じような思いだったんですよ。もう少しだけ、耐えてください』 その言葉は宗介を驚かせた。 宗介は最前線で身体を張るのが仕事だった。 しかし、部隊の責任者が実際の戦場へ出ることは、ほとんどない。だが、実際は、一番辛いのではないだろうか? 部下を危険な場所へ送り出し、現場の人間を信じて、祈り続ける。それは、銃を持って戦うことと同じくらい、苦しい戦いなのだろう。 何十、何百といった命に責任を負うのは、すさまじい重圧になるはずだ。 宗介は改めて、彼女の存在を尊いものとして感じ取っていた。 彼女をこんなところで失うわけにはいかない。 サブマシンガンを握る手が、じっとりと汗ばんでいた。
人を一人担いで動き回るのは、鍛えていない人間には重労働だ。船長は時々、かなめの身体を下ろしながら、救難ボートへ向かっていた。 彼女が太っているとは言わないが、軽すぎなかったのは、幸運だったろう。 「ま、……待ちやがれ」 背後からハリスを呼び止める声がかけられた。 振り向いた船長の前に、ふらつきながら一成が姿を見せる。 「さっきのガキか」 「千鳥を置いていきな。そうしたら見逃してやるぜ」 ふらつきながら一成がそう告げる。 「断ったらどうするんだね?」 相手の様子を見ると、ハリスはあざけりを含めて尋ねた。 「この場でぶちのめす」 一成がにらみつけた。 しかし、ハリスは笑みを浮かべた。 一成にダメージが残っているのが見て取れたのだ。ただの虚勢としか思えない。 「生意気なガキが。追ってきた自分の愚かさを悔やむがいい」 ハリスが自動拳銃を取り出した。 しかし、一成は怯まない。 正面からハリスに向かって走った。 ハリスが発砲するが、初弾ははずれた。 一成も映画ぐらいは見ている。銃で狙うなら頭ではなく、動かない胴を狙う。 ハリスが外したのもこれが原因だ。 そして、胴体ならば防弾ベストが守ってくれるはずだ。 一成がハリスに迫る。 だが、さすがにここまで近づけば、外しはしない。 二度目の銃声。 「……なっ!」 ハリスが自分の目を疑った。 一成の姿が視界から消えたのだ。 当然、銃弾もはずれた。 弾丸が発射される瞬間、一成は右へ向かって床を蹴っていた。 正面の敵ではなく、その側面へ飛ぶ。そして、再度壁を蹴って、敵へ襲いかかった。 三角蹴りだ。 一成の体重を乗せた蹴りが、ハリスの顔面に叩きつけられる。 「がはっ!」 ハリスがもんどり打って倒れた。 立ち上がった一成は、ハリスの手からこぼれ落ちた拳銃を、床から拾い上げる。 「だから、言ったじゃねーか……」 千鳥を奪われるわけにはいかない。 千鳥のため、自分のため、そして、宗介のためにも守り抜いてみせる。 「あいつに見下されるわけには、いかねぇからな」 宗介は自分のことを嫌っている。だが、その宗介が自分に千鳥を預けたのだ。好悪の念を別にして、自分を信頼したからこそだ。 がちゃりと音を立てて、別な相手が姿を見せる。 黒いコート姿で、顔には横長の赤いサングラスをしているようだ。 「お前もテロリストの仲間か?」 一成の問いに、相手は応えない。 思いがけない方向から声があがった。 「やれ! やってしまえ! あのガキを殺せぇ!」 ハリスが身を起こして叫んでいた。一成の蹴りを受けたために、前歯を失い、内出血で膨れあがり、鼻や口から血を垂れ流している。 紳士然とした物腰を捨て去り、無様な姿だった。 その船長の前に、彼の強力な味方が出現したのだ。いや、味方だったはずの存在である。 船内で起動した、1ダースの〈アラストル〉のうちの、最後の一体だった。 興奮して命じた船長だったが、自分の指示もなく起動した状況に気がついてしまった。 何者かの命令で起動したのだ。そして、こいつらが実行できる命令は単純な命令だけだ。 「待て、この娘は私が手に入れたんだ。いまから、脱出するところだ。……お、おまえは、私の護衛をして……」 機械相手に無意味だと思いながらも訴える。 〈アラストル〉の目にあたる赤いスロットが船長に向けられる。 〈アラストル〉は船長を味方とは認識しなかった。 機体に内蔵された火器が、船長に向けて銃弾を撃ち込んだ。 ボロ雑巾のようになって、船長は絶命する。 「ちっ!」 一成が慌てて、かなめを担ぎあげようと駆け寄るが、その動きに〈アラストル〉が反応した。 再び銃撃音。 「ぐわっ!」 一成の悲鳴。 (椿くんっ!) かなめは初めから意識が残っているものの、身体が思うように動かなかい。 床に横たわっている状態では視界が狭く、一成の様子を知ることはできなかった。 倒れたままのかなめに、〈アラストル〉が歩み寄る。 青ざめたかなめの顔を、赤いスロットが覗き込んだ。
すでに作戦は開始されており、SRTメンバー達も二人の援護に回っている。 しかし、宗介に腕を引っ張られ、引きづられるように走っていたテッサが、足をもつれさせて、派手に転倒した。 「大佐殿!」 宗介が、テッサを助け起こそうと手をさしのべる。 そこへ、新手の〈アラストル〉が出現した。 〈アラストル〉の突き出した拳を、辛うじて宗介はマシンガンで受けた。だが、その衝撃で壁に叩きつけられる。 宗介は倒れたまま動かなかった。 頭でも打ったらしい。 ぎょっとなったテッサが、それでも〈アラストル〉の手をすり抜けたのは幸運だった。彼女は床を転がって、〈アラストル〉の魔手から逃げ出すことに成功した。 宗介との間に〈アラストル〉が割り込んでいるため、駆け寄ることもできない。 テッサはそのまま踵を返した。 連中が自分を追ってくる事に賭けたのだ。 そして、〈アラストル〉達は、倒れたままの宗介には興味を示さず、テッサを追いかけてきた。
あとは、「彼」の元へとたどり着ければ……。 仲間達が〈アラストル〉に応戦する銃声が、背後に聞こえた。 テッサはマオと行った、ASでの模擬戦を思い出していた。 マオからの銃撃に追われながらも、テッサは無事に逃げ通して見せたのだ。 ASを動かすよりは、この二本の脚の方がまだ信用できる。 『大丈夫。あなたならできるはずだ』 あのとき、励ましてもらった宗介の言葉が、脳裏に思い浮かぶ。 サガラさん……。無事でいてください。 いや、宗介だけではない。皆、自分の大切な部下達だ。 そして、巻き込んでしまった友人達。 わずかな恐怖に耐えて、全員を守ることができれば……。 本来は、指揮官がすべき行動ではない。 むしろ、不要な行動だと言い出す人間だっているだろう。 しかし、それでも、自らの力で窮地を脱してみたい。自分が彼らの支持を得られる人間だと証明して見せたい。なにより、守られてばかりだった自分から、少しは成長したいと願った。 自分にだって、誰かを「守る権利」は許されるはずだ。
二面のテニスコートがある、屋上の広大な甲板。 そこへ、テッサは、文字通り転がり出た。 手にしていたサブマシンガンで〈アラストル〉を牽制しつつ、テニスコートを走り抜ける。 そのテッサが、途中で脚を止めた。 向こう側からも〈アラストル〉が三機姿を見せたのだ。 挟まれた。 脱出路を失ったこの場所で、テッサは手近な排水溝に潜り込んだ。 身を低くすることで、かろうじてお尻も飛び出さずに済んだ。 しかし、その様子を全て見られていては、隠れてやり過ごすことなどできるはずもない。 狭い排水溝の中で、テッサが通信機に話しかける。 「こちら、アンスズです。準備はいいですか?」 『肯定(アフアーマティブ)。連絡をお待ちしていました』 「彼」が答えた。 「では、発砲を許可します。敵を殲滅してください」 『ラジャー。Fire at will!』 その声に合わせて、轟音がとどろいた。 砲弾が、雨あられと降り注いだのだ。 対人兵器として凄まじい殺傷能力を誇る〈アラストル〉であっても、その砲弾の雨の中では無事にいられるわけがなかった。 『ターゲットの破壊を完了しました』 連続した爆発音が途絶えて、テッサが排水溝から、ひょっこりと顔をだした。 「シーズ・ファイア(撃ち方やめ)」 テッサが命じる。続けて指示を行うと、それに従いASがモード変更を行った。 何もなかった空間に、ECS(電磁迷彩)を解除した〈アーバレスト〉の姿が出現する。 宗介の分身ともいえる、彼──自分と同じ力を持ったバニが作り上げ、宗介が育て上げたASだ。 あたりに漂っていた煙が、風で流れていった。 雲海を貫いて立つ神の如く、そのASが佇立している。テッサの目には、まさに守護神として映った。 その〈アーバレスト〉が、クビをかしげた。やたらと人間くさい仕草だった。 『大佐殿、おひとりですか? 軍曹は休憩中なのでしょうか?』 無機質な音声で尋ねてくる。 「そ、そうです。サガラさんっ……」 船内に駆け込もうとしたテッサに通信が入った。
潜水艦による戦闘は、海上の人間が何もわからないうちに決着していた。 途中、〈デ・ダナン〉が発射したマグロック(対潜水艦ミサイル)が空中へ飛び出したりしたのだが、それぞれが忙しかったため気づいた者は皆無だった。 通信は敵艦を屠ったマデューカスからのものであった。 「マデューカスさん。ご苦労様です」 テッサが労をねぎらったが、マデューカスはそれどころではなかった。 『艦長、申し訳ありません。敵艦は全て撃沈しましたが、敵の発射した魚雷を一発阻止できませんでした。至急待避願います』 今の通信は、作戦指揮官のクルーソーも受信していたはずだ。 「中尉。すぐに全員を右舷側に誘導してください!」 『了解しました』 クルーゾーの声にも緊張が走る。 『その前に、こちらでも可能性を試してみましょう』 その音声が通話に割り込んだ。 「アル?」 テッサが〈アーバレスト〉の頭部を見あげた。 その〈アーバレスト〉は、魚雷が迫り来る左舷に歩み寄り、海面下を探査する。 水中を進む魚雷に向けて、〈アーバレスト〉は、頭部に搭載しているチェーンガンと、手にしたマシンガンで砲弾を叩き込んだ。 テッサも海面を見下ろすが、海面は静かなものだ。 魚雷が爆発した形跡はない。 海水の抵抗により、弾道が狂うため、直撃させるのは非常に難しいのだ。 『軍曹がいれば、ラムダ・ドライバでの回避も考えられたのですが』 「いまから、呼んできます」 『もう、間に合いません。危険なので、船内に入っていてください』 「どうするつもりなんですか?」 『一つだけ試してみたいことがあります』 〈アーバレスト〉がセンサーで検出している魚雷に正対し、何も持っていない右手を突き出した。 そして、距離を算出しながら、タイミングを計る。 ワイヤーガンが射出する。 ワイヤーの尾を引いて、先端のアンカーが水中に没した。 砲弾とは逆のアプローチである。 魚雷に当てるのではなく、魚雷を当てさせるのだ。 進路上に出現したそのアンカーに、魚雷が激突する。 至近距離だ。 その爆発により、海面が盛り上がり、波がうねる。 巨大なこの船が揺れた。 このときに、数人が軽傷を負ったものの、直撃していれば海に投げ出されていたかもしれない。それを考えると、軽微なものだ。
かろうじてこの客船は危機を脱した。 皆が安堵のため息を漏らしたとき、ひとりの隊員から、次のような報告が入った。 『こちらカノ17。学生の負傷者を発見しました』
──つづく。
あとがき。 話の流れはほとんど原作と同じですが、重要な役割が真逆となっております。 話を変えた方が、書き手としては楽しめるものですから。 |
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