日本海戦隊  >  二次作品
フルメタ・モテモテ王国  -[1] -[2] -[3]


(3)乙女達の想い


「人類滅亡の危機なんじゃよー!」

 ファーザーの突然の叫びが室内を満たす。

「今回はずいぶんと、大きい話題を持ってきたな」

 さすがに宗介も動じなくなっていた。

 ファーザーの全ての奇行に付き合っていては身がもたない事を悟ったからだ。

「おぬしはこの危機的状況をなんとこころえておるかー! このままの状態が続けば、人口の激減は必定。遠からず、人類は絶滅するに1万点! さらに倍!」

「とりあえず、落ち着いて説明しろ」

「ものわかりの悪い相棒を持つと苦労するのー。では聞くがよい、モノワカリワルイスキー。われらだけを仲間はずれにしたナオンだけの蜜あふるる約束の地、リリアン女学園。ナオン達は、世界の半数――男という人種を無視して、姉妹契約とか世迷事をほざいておる。この、時給自足の二重螺旋を覆さねば、人口はデフレスパイラルするらしい。ナオンどもの結束を断ち切るのがワシらの急務と知れ!」

「貴様の思いこみが激しいのは今に始まったことではないが……」

「女の園では、ギガンテス・ザ・栗太郎やら、スーン・スールズカリッターやら、耳慣れぬ単語が飛び交っておる。おそらく、男に知られてはまずい話ばかりしているもよう」

「何処で仕入れてきた知識か知らんが、話が理解できないからといって、妄想で内容を補完するのよせ」

「同調者の増殖率は我らの予想を遙かに越える。なにしろ、『神聖モテモテライトノベル』スレでは、”マリみて”と”板違いの話題”が7、”他のライトノベル”が3で構成されておる。このままでは、いつまた、第3、第4の『マリみて』が放映されるとも限らん。我らはこれより情報戦に突入せんとす」

 

 

 

 どこから資材を調達したのか、ファーザーは駅前にステージを組み、壇上でマイクを握った。

「ナオンたちは、柔らかくて、暖かくて、いい匂いがするとか聞いておる。ナオンたちはまさに人類における至宝なんじゃよー!」

「……ちょっと待て。誉めているようにしか聞こえんぞ」

 ステージの裏側から宗介が指摘する。

「はっ!? するってーと、わしが行っていたのは姉妹の量産化?」

 やっと気づいたようだ。

「今の主張は撤回する。わしの脳波が混線して、間違った知識を披露してしまったんじゃよー」

 物珍しさに、周りに人がよってきた。ファーザーの行動目的としては好都合なのだが、宗介自身は嬉しくも何ともない。

「ナオンと書いて、強欲と呼ぶ。奴らこそは欲望の権化。どこへ行くにも費用は男持ち、たまの記念日には物ばかりねだる。そのうえ、欲しがる品は無用の長物ばかりなり! もう少し実用的な物を欲しがったらどうかね、君ぃー! 男どもをはべらして、女王様気分のうえ、気に入らなければ、捨てて屍拾う者なし!」

 ファーザーの過激な演説は続き、周囲からは殺気が立ちこめる。――主に女。

「結婚すれば男への補給物資を着服し、自分だけは贅沢三昧の上、寂しいとかのたまって、浮気しておるんじゃよー!」

「なによ、アイツ」

「ムカつく」

 そんなつぶやきが、宗介の耳にも届く。

「……女の悪評を流すのはかまわんが、女の評判が落ちるよりも先に、貴様が嫌われるだけではないのか?」

「…………」

 ファーザーの言葉が詰まったタイミングで、周囲から、罵声が浴びせられる。

 さらには、石まで投げつけられて、二人はその場から戦略的撤退を開始した。

 

 

 

「また、ナンパ? っていうか、女を敵に回す気なの? アンタたち」

 傍らにやってきた少女が、呆れたようにつぶやいた。

 どうやら、街に遊びに来て一連の状況を目撃したらしい。

「千鳥か……」

 視線を向けた宗介が表情を強ばらせる。

「……どうしたのよ?」

 歩み寄った宗介が、かなめと、その隣に並ぶ恭子を見た。

「千鳥……、君は、常盤のことが好きなのか?」

「へ? あたりまえじゃない」

「そうか……」

 がっくりとうなだれた宗介が、力無く立ち去っていく。まるで、風に飛ばされる枯れ葉のようだった。

「ちょ、ちょっと……、どうしたっていうのよ?」

「ねぇ、カナちゃん。ひょっとして、相良くん、勘違いしたんじゃ……」

「勘違いって、なによ?」

「相良くんが聞いたじゃない。あたしのコトが好きかって……」

「それがどうかした?」

「だから、カナちゃんが、相良くんよりも、あたしを好きだって思ったんじゃない?」

「え、……あっ!?」

 いまさらながら気づいたかなめが、顔を真っ赤にする。

「違うわよ! あたしは友達として……」

「あたしに弁解しなくてもいいってば。わかってるもん。それより、相良くんを追いかけないと」

「う、うん。ちょっとゴメンね」

 慌ててかなめが追いかけていった。

 それを見送って、恭子がくすりと笑う。

 その傍らにつつーっとファーザーが近寄った。どこから取り出したのか、白いバラまで持っている。

「眼鏡の嬢ちゃん。計算通りふたりっきりになれたんじゃよー。このうえは満足するまで、イチャイチャせねばなるまい」

 ファーザーの変な主張。

「…………」

 恭子がしげしげと、ファーザーを見る。

「ごめんなさい」

 頭を下げて、恭子は走り去ってしまった。

 

 

 

「うっ、うっ、うっ……。一人で取り残されては、寂しすぎるんじゃよー!」

 その場に、両手をついて、ファーザーが泣き崩れる。

 嘆くファーザーの肩に、誰かの手が優しくのせられた。

「お嬢ちゃん!?」

 嬉しそうに振り向いくが、そこにいたのは……。

「大丈夫か? おー?」

 えらくごつい顔をしたパンチパーマのおっさんだった。

「ぎゃわーっ!」

「ワシがおるから、元気だせやコラ!」

「よりにもよって、ヤクザさんですかー!? ヤクザさんには、好かれても、嫌われても、迷惑なことこのうえねー! わしの不幸は止まるところをしらんのかーっ!?」

「ワシと義兄弟の杯をかわせやコラ!」

「ゲェー!? まさか、兄弟契約ー!? 姉妹契約よりも、タチが悪いんじゃよー!」

 

 

 

 いろいろあったらしく、ボコボコにされたファーザーが部屋に戻ってきた。

 宗介は一瞥するが、何も言葉を発しようとしない。

「何か言うことはないのか、貴様ーっ!?」

「ふむ……。千鳥の件は誤解だったらしいぞ。安心しろ」

 言葉通り、本人は嬉しそうに見える。

「そんな真相に、安心も、不安もないんじゃよー。わしはそのころ、ヤクザさんに殴られておったというのにっ!」

「どうせ、すぐに治る。気にするな」

「渡る世間には極道さんばかりなんじゃよー。敵も味方も、G、G、G。種の運命なんて意味がわからんわー! だいたい、男同士で好きとか最初に言い出した奴が許せん! 謝罪と賠償を要求するーっ!」

「ふむ……」

 ファーザーの言葉を吟味した宗介が、優しく告げる。

「安心しろ、俺は貴様を嫌っているぞ」

「全然慰めになっておらんのじゃよー!」

 

 

 

 ――つづく。

 

 

 

 あとがき。

 もうすこし、ナンパネタをしてから掲載したかったのですが、タイミング的に掲載に踏み切りました。








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