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見慣れた天井が見える。 がばっと跳ね起きて、慌てて室内を見渡す。 自分の部屋だ。間違いない。 それでも、かなめは安心できなかった。 自分の腕をつねって、その痛みを確認する。 夢じゃない。 我知らず止めていた息を吐き出していた。 よかった。 思わず目に涙がにじんだ。
「……て、夢を見たのよ」 「……そうか」 登校途中で、かなめに夢の内容を聞かされた宗介も、さすがに次の言葉がでなかった。 彼自身、十分あり得ると思ったからだ。 考えを巡らせていたかなめが、ぽつりと話しかける。 「……ねえ。ソースケ」 しかし、隣に彼の姿はなかった。 振り返ると、そこに……。 「貴様、なぜつけ回すのか、説明してもらおう」 「あの娘に興味があって……」 そう弁解する男に、宗介が拳銃を向けている。 かなめは拳銃を握った右腕にしがみついた。 「やめてっ!」 そう叫ぶ。 「や、やめろ。暴発したらどうする」 むしろ、かなめの行動に宗介が慌てた。 宗介の顔を見上げたかなめが、ぽろぽろと涙をこぼしている。 「お願いだから。簡単にピストル撃つのはやめてよ。宗介にいなくなって欲しくない」 かなめは心の底からそう思った。 男が宗介の手から抜け出して逃げ去っていくが、宗介はすでに興味を失っていた。 かなめは、宗介の腕にしがみついて、泣き続けている。
しばらくして──。 「なぜ彼女をつけ狙うのか、正直に答えろ」 例によって、宗介が拳銃を向ける。 何度言っても、宗介の行動は直らない。 「いい加減にしろーっ!」 すぱーん! 勢い、宗介をハタくハリセンにも力がこもろうというものだ。 「あんた、何回言えばわかるのよ。拳銃出すなっていってるのが、まだわかんないの?」 「心配するな。発砲はしていない」 「そうじゃなくて、持ち歩くなって言ってるの!」 「断る」 「なんですって?」 「俺の個人的な事情だ。口出しはやめてもらおう」 「勝手なこと言わないでよ」 「それは君の方だ」 「いーい? 拳銃持ってあたしの周りをうろちょろしたら、許さないわよ」 「許してくれなくてもかまわない。好きにさせてもらおう」 「この、バカ!」 すぱーん! 再びハリセンが鳴った。 かなめがこうして怒るのは、結局は宗介のためだ。それは、宗介自身にもわかっている。 ……しかし、宗介としても、事情は同じなのだ。自分の行動を甘くすることで、かなめが危険にさらされるかもしれない。それは、許容できなかった。 以前にも、正式な護衛がいることを知りつつ、敵の注意を引くための囮の任務を引き受たことがあった。 すでに、彼女を守る為の捨て駒になる覚悟はできていた。 望みはしないが、護衛の必要上、彼女に嫌われるかもしれない。しかし、それでも、彼女を守る。 これはすでに、任務ではないのだ。 義務ではなく、権利だった。 他でもない、俺自身が守りたいのだから。
果たして、正しいのはどちらだろうか? かなめか? 宗介か? 神ならぬふたりには、わからないことだった。 答えをふたりが知るのは、もうしばらく後の事になる──。
──『宗介とかなめと罪と罰(おまけ)』おわり。
(おまけの)あとがき。 夢ならば何でも許されるとは思ってません。しかし、現実の話として、この展開だとあまりに、キツいですから。 そういえば、かなめが〈ミスリル〉上層部について知ってるはずがなかったですね。……まあ、いいや。 |
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