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二年四組の- [ターミネーター]- [ダイハード]


二年四組のダイハード






 パン! パン! パーン!

 クラッカーが派手に鳴らされた。

『ハッピー・バースデー!』

「ありがとう」

 皆の声に、千鳥かなめが笑顔で応えた。

 学校の教室に集まった有志が、かなめの誕生日を祝ってくれたのだ。

「嬉しそうだね。カナちゃん」

「そりゃあね。あたしの誕生日は時期が悪くて、こうやって祝ってもらえるなんて、めったに無いから」

 かなめの誕生日は一二月二四日なので、その日に予定が空いている人間は少ないはずだ。

「ふーん」

 恭子が含みのある笑みを浮かべてみせる。

「なによ?」

「サガラくんに会えるから、嬉しいんじゃないの?」

「あのねー、キョーコ。あいつはただの幼なじみだって、何度も言ってるでしょ……」

 突然。激しい足音がして、何者かが近付いてきた。

 だだだだだっ!

 がらっ!

 扉を開けて入ってきた少年が、拳銃を振り回す。

「みんな、伏せろ! 動くな!」

 乱入した少年の姿を見て、皆が驚いた。

『きゃーっ!』

 数人の少女が悲鳴をあげる。

 しかし、かなめひとりだけが平然としたまま、その少年につかつかと歩み寄ると、ハリセンでひっぱたいた。

 すぱん!

「なにをする?」

「こっちの台詞よ! 遅れてきたと思ったら、どういうつもりよ?」

「たったいま、この部屋から銃声が聞こえたのだ」

「…………」

 かなめはその円錐状の品を手に取ると、宗介の頭上に向けて糸を引っ張った。

 パン!

 音がしても、宗介は目をつぶりもせずに平然としていた。

 紙テープや、紙吹雪が宗介の頭に舞い落ちる。

 頭を飾り立てられた状態のまま、宗介が尋ねた。

「スタン・グレネードの一種か? その音量では威嚇程度にしか使えないぞ」

「ただの、クラッカーよ!」

 すぱん!

 二度目のハリセンが飛んだ。

 

 今回、二年四組有志により撮影された題材は『ダイハード』であった。

 宗介の登場シーンの撮影時に、まるまる同じ事が起きたのは、その場のスタッフしか知らないことだ。

 またも、映画話に花を咲かせて、前回同様に撮影へとなだれ込むことになった。

 このまえ撮影した『二年四組のターミネーター』と、スタッフはほとんど同じだった。

 主演男優は相良宗介。

 主演女優は千鳥かなめ。

 脚本は風間信二。

 監督は常盤恭子。

 テロリスト役は、ラグビー部の面々に協力をお願いしている。

 そうして撮影されたビデオが、紆余曲折を経て、前回も鑑賞した人間の前で上映されている。




 画面上では、夕日の差し込む教室で、改めてかなめが宗介のことを紹介している。

 かなめは幼い頃に海外で暮らしており、父に連れられて政状不安な国へ行ったらしい。その時に護衛をしてくれたのが、現地で生活していた彼だったという。当時の宗介のことだから幼い子供にすぎなかったが、銃器の扱いは誰よりも熟練していたとのことだった。

 彼自身は、今も傭兵をしているらしい。

 たまに、連絡を取るぐらいだったが、今日の誕生日に来られるというので、呼ぶことになったのだ。

 顔を合わせたのこそ初めてだったが、恭子だけは、かなめの口から『ソースケ』の話を聞いていた。

「今みたいに、ホント、『戦争ボケ』なの。悪気はないから、許してやってよ」

 紹介された人物に、かなめの友人達が話しかける。とにかく、このクラスの人間はものおじしないのだ。

 宗介は言葉少なに対応している。同年齢の人間とのつきあいが少ないため、どうも慣れていないように見えた。

 野戦服姿の宗介が、学校に集まるため制服姿だった皆に囲まれている。

 はたで見ていたかなめは思いついて、他の男子と服を着替えさせた。

 学生服姿の宗介は年齢からいっても、高校生として通じるだろう。

 同じ学校に通っているような気がして、なんとなくかなめは嬉しくなった。

「ねえ、ソースケ。せっかく、あたしの誕生日に来たんだから、何か言う言葉はないの?」

 宗介は窓の外を見たまま、答えない。

「ちょっと、聞いてる?」

「……妙だな」

「なによ?」

「あそこに、不審車がいるのだ。なにかよからぬ事を企んでいるのかも知れない」

 そう言われても、かなめの目にはよくある光景にしか見えなかった。

 全ての窓にスモークを貼ったワンボックスカーが一台停車しているだけだ。運転手がエアコンを回して一休みしているようにしか見えない。

「あんたね。日本にはそんな危険は無いんだって、何度も説明してるじゃないの」

 呆れてかなめが応じるが、宗介は意に介そうとしない。

「調べてこよう」

「ちょっと、ソースケ!」

 出て行く宗介に、かなめがむっとなった。

 久しぶりに会えたのに、のんびり話もできない。

「まったく、もう」

 不満そうにふくれっ面をしたかなめだったが、結果として、宗介は正しかったのである。




 宗介と入れ違いになるように、教室へ男が六名入ってきた。

 手にマシンガンを構えているが、先程の宗介の件があったために、皆は平然としていた。

 しかし、数人が天井に向けてマシンガンをぶっ放した。

 がががががががん! 

「いまから、この学校は我々が占拠する。君たちには、我々の人質になってもらおう。断るというなら、一人づつ死んでもらうことになる」

 …………。

 度肝を抜かれて、教室内の皆が男達を呆然と見つめていた。

 額に縦一文字の傷を持つ男が、進み出ると人形のような目でかなめを見下ろす。

「マスコミに送る映像を作りたいんだが、出演してもらえるかね?」

 男は間違えようがないほど、かなめだけを見て、話しかけた。

「あの、ちょっと……」

 その時、外からマシンガンの音が響いてきた。

 男達の乗ってきた車の方だ。

 窓から、外を見下ろした傷の男が、二人の男を向かわせた。




 車に乗っていた男は、宗介の学生服姿に油断したようだ。逆に宗介は一目で相手がプロだと見抜いていたため、油断はない。

 平然と近付いた宗介は男に飛びついた。

 もみ合ってマシンガンが発射された。銃弾を浴びたのは男の方だ。

 一息ついたところで、校舎の方から足音が近付いてきた。

 宗介が盾にした車に、銃弾が炸裂する。

 銃撃戦の最大の被害者となった車が爆発炎上する。

 宗介は銃弾をかいくぐり、遮蔽物の多い校内へと戦場を移した。




「あたしをどうするつもりなの?」

 かなめは保健室に連れ込まれ、椅子に手足を縛り付けられていた。

「なに、君の頭の中に用があってね」

 傷の男は、自分のこめかみを、人差し指で指しながら答えた。

「頭の中って……?」

 かなめは戸惑っているが、

「隠す必要はないさ。ちゃんと情報は仕入れてある」

 男は平然としたものだった。

「君の父親がASの研究者だということも、新兵器の設計図を君の頭の中に隠したこともな。助手にする人間はよく選んだ方がいい。指の二・三本で口を割るようじゃ、秘密でもなんでもないだろう?」

 その言葉に、かなめが凍り付いた。

「助手の高橋さんをどうしたの?」

 語尾がかすかに震えていた。

「なに、いずれわかるさ」

 彼は笑顔で答えた。

「さて、本題だ。博士の発明だが、なんでもAS搭載用のバリアで、通常兵器を無力化することができるらしいな。それほどの品なら、高値で売れるだろう」

 ──注1。この設定を聞かされた宗介は、思わず唸った。「恐るべし、風間信二」と。

 男はヘッドセットを取り出して、かなめの頭にかぶせる。

「ディスプレイの表示を見ていてくれればいい。早くその記憶を思い出さないと、君の友達に迷惑がかかるからな」

 そう言って笑った男の声が、なによりかなめには恐ろしかった。




 宗介は、校舎内を転戦していた。

 化学室では、薬品やアルコールランプで逆襲をねらう。

 体育館ではバレーボール用のネットでトラップを仕掛ける。

 このあたりは、前回の『二年四組のターミネーター』での撮影シーンを流用している

 宗介はなんとか、敵の殲滅に成功し、新しいマシンガンを手に入れることができた。

 しかし、宗介の表情は晴れなかった。

 教室を離れたのは失敗だったかも知れない。かなめのそばにいるべきだったと悔やんでいた。

 とりあえず、彼は室内の様子を探るために、別な教室から天井裏へ潜り込んだ。

 狭い空間をほふく前進しながら、宗介がつぶやいた。

「これがクリスマスか……」

 感慨深そうな声だった。

「七面鳥やケーキを食べたりして、楽しく騒ぐことだと聞いていたが……。まあ、俺にはこの方が似合っているのかもしれん」

 なぜか一人で納得している。

 天井から様子をうかがうと、教室にはまだ敵の三名が残っていた。人質を握られたままでは、さすがに宗介の手に余る。

 宗介にとって、一番守るべきなのはかなめだったが、彼女はクラスメートよりも自分を優先されることを望まないだろう。宗介の知っているかなめはそういう人物だった。

 宗介は、教室の天井裏で数時間チャンスを待ち続けた。




 そして、そのチャンスが訪れた。

 二人が教室を離れ、一名だけが残った。

 狙い澄ました宗介が、真下へ銃弾をたたきつける。

 テロリストの頭頂部や肩に何発も命中し、噴水の様に血が吹き上がる。

 眼前の光景に、生徒達の悲鳴が上がる。

 ばりん!

 天井板を踏み抜いて、宗介が降ってきた。

 先ほど外に出た敵が、足音を響かせて戻ってくる。

 宗介は入り口に向けて手榴弾を放った。

「伏せろっ!」

 とっさの指示だったが、過敏になっていた生徒達ははじかれた様に、言葉に従う。

 爆発音の後に、すかさず宗介が廊下へ飛び出して、左右に銃弾を浴びせる。

 手榴弾が爆発したわりには、廊下はすすけている程度だが、カメラアングルで微妙に映さないように工夫している。

「あ、ありがと……」

 突然の展開に驚きながらも、信二が宗介に礼を言った。

 皆も助かったことを知って、安堵の声を漏らす。

 しかし、宗介だけは深刻な表情のままだ。

「千鳥は……、千鳥はどこにいる?」

 手近な一人に尋ねるが、かわりに傍らにいた恭子が答えた。

「カナちゃん、連れて行かれたの」

「どこへ?」

「保健室だって」

「場所は?」

「体育館への廊下のそば……」

 それだけ聞いて、宗介が駆けだした。




 宗介が駆けつけたとき、すでに保健室はもぬけの空だった。

「くっ……」

 焦燥に駆られる宗介の耳に、ヘリのローター音が届いてきた。

 窓の外で光が動いていた。

 上空から浴びせるサーチライトが、校庭を浮かび上がらせる。その広い校庭には人影は見えなかった。

「屋上かっ!」

 宗介は、その鍛えられた脚力で、屋上への階段を駆け上る。

 開け放たれたままの扉が見えた。

 だが、宗介は飛び出るのを一拍遅らせた。そのタイミングにあわせたように、出口をくぐった銃弾が壁面で弾けた。

「やるじゃないか」

 外から賞賛の声があがる。

 ゆっくりと、宗介が屋上に足を踏み出した。

 マシンガンを持ったまま、両手をあげて見せる。

「ずいぶん元気がいいな。小僧」

 男はかなめを盾にする形で、宗介の様子をうかがっている。

 頭上に浮かぶヘリからハシゴがぶら下がっていた。

 この場面では、ヘリと人物が当時にアングルに入ることはなかった。

 宗介の顔をしげしげと見つめた男が、やがて、驚きの表情を浮かべると、ついで笑い出した。

「は……くはは……。これはたまげた……! おまえ、宗介か!」

 男はひとしきり笑って、再び宗介に話しかける。

「こんなところで、会うとはな……!」

「ひさしぶりだな」

「まったくだ。お前にこの傷のつけられたとき以来になるか?」

 男が額の傷を指して見せた。

 ──注2。この設定を聞かされた宗介は、再び唸った。「恐るべし、風間信二」と。

 男は、宗介の行動を牽制するために、かなめを引きずりながら彼との距離を取る。

「さて、まずはそいつを捨ててもらおう」

 男が命令する。

 男のもつサブマシンガンは、これ見よがしにかなめのこめかみに当てられる。

 宗介は躊躇する様子を見せるが、男のサブマシンガンの銃口はごりごりとかなめに押し当てられる。

「……わかった」

 宗介がサブマシンガンを放り捨てた。

「宗介。お前は幸せだよ」

 男が笑みを浮かべて、そう告げた。

 サブマシンガンの銃口を宗介に向ける。

「この女がどうなるか知らずに死ねるんだからな」

 その言葉を聞いて、かなめが思わず動いていた。男のみぞおちに肘を打ち込んだのだ。

 瞬時に宗介の学生服の裾が翻った。

 腰のホルスターから引き抜いた、宗介の愛銃・グロック19が火を噴く。

 立て続けに6発の銃弾が、男の胸を貫いた。

 男が口から、バッと血を吐き出した。

 後ろによろめいた男の身体が、柵の向こうへと倒れ込んだ。

 さまよった男の左手が、手近に触れた物をかろうじて握りしめた。

 それは、かなめの長髪だった。

「きゃあーっ!」

 かなめはなんとか柵にしがみついて、痛みに耐えている。

「千鳥っ!」

 慌てて宗介が駆け寄った。

 男はかなめの髪を握って宙吊りのまま、緩慢な動作で右手に拳銃を取り出す。

 宗介は引き抜いたグルカナイフを一閃させる。

 ざんっ!

 宗介のナイフで、かなめの髪がごっそりと切断された。

 男はかなめの髪を握りしめたまま、驚愕の表情を浮かべながら下へと落ちていった。

 宗介はすかさずへりから身を乗り出して、拾い上げた男のサブマシンガンで発砲する。弾倉が空になるまで、飽きずに撃ち続けた。

「もう、いいんじゃない?」

「いや、これでも足りないぐらいだ。君も知っているだろう?」

 言いながら、宗介は手榴弾の安全ピンを抜いた。

「……まあね」

 かなめがうなずいた。

 数カウントしてから、宗介は手を離した。

 手榴弾は地面に落ちるタイミングで爆発する。

 どーん!




 落ち着いてくると、かなめが宗介をひっぱたいた。

「何をする?」

「髪を切るなんて、ひどいじゃないの!」

「髪はまた伸びる。死ぬよりはましだろう?」

「そうかもしれないけど……。今度やったら、絶対に許さないからね!」

 当然、切ったのはカツラなのだが、宗介だったら本当にやりかねない。いい機会だから、強く言っておいた方がいいだろう。

「……了解した」

 しぶしぶといった様子だが、一応宗介はそう答えた。

「…………」

 肩を震わせたかなめが無言のまま宗介を見つめる。

「どうした?」

 かなめが宗介に抱きついた。

 宗介もかなめの背中に腕をまわして、力をこめる。

「ねえ、なんで、あたしたちって、いつもこんな目にあうわけ?」

 かなめの言葉には妙な実感がこもっていた。

「俺にもわからん」

 宗介は途方に暮れたように、頭上を振り仰ぐ。

 すでに頭上にいたはずのヘリは姿を消していた。男の最後を見てあきらめたのだろう。

 星空を覆い隠した厚い雲のために、月すら姿を見せていない。

 そんな空に、ちらほらと白い物が浮かんで見える。

 徐々に増え始めた欠片は、舞い散る花びらのようにも見えた。

「雪か……」

 宗介が、見たままにつぶやいた。

「え?」

 宗介の胸に顔を伏せていたかなめが、空を見上げる。

 羽のように軽やかに舞い落ちる雪。

 次第にその量を増し、はらはらと降り続ける。

「初雪だわ。……キレイね」

 白い息を吐きながら、かなめが嘆息する。

 そのかなめの顔を、宗介が無言のまま至近距離で見つめていた。

「……ソースケ?」

 返答しない宗介に、かなめが視線を移した。

 宗介は困ったように、横を向く。

 鼻の頭をぽりぽりとかきながら、

「そうだな……」

 とだけつぶやいた。

 かなめは宗介の顔が思いのほか近くにあったことで、抱きついている自分達の体勢に気がついた。

 あわてて身体を離して、距離を取る。

 ふと、宗介が思い出したように、口を開く。

「千鳥。博士に感謝するんだな」

「父さんに?」

「俺がここへ来たのは、博士に君の護衛を依頼されたからだ」

「えっ? じゃあ、あんたがあたしの誕生日に来たのは……」

「単なる、ついでだ」

 かなめはものも言わずに、アッパーを食らわす。宗介の身体は、宙に浮かぶと二転三転した。

 しばらく動かなかった宗介が、むっくりと起きあがる。

「何をする?」

「いいわよ! どうせ、わたしと会うのはついでなんでしょ!」

 かなめが怒りの表情を見せる。

「……それのどこに問題が?」

 平然と問われて、かなめの形相がさらに険しくなった。

 宗介は怪訝そうな顔をしながら、言葉を続ける。

「俺にとって、一番優先すべきなのは、君と会うことではなく、君を守ることだ。たとえ、一生君と会えなくなるとしても、君には生き続けて欲しいと思っている。……それは、そんなにまずいことなのか?」

「え……、その、そういうわけじゃ……」

「それに、ついでとはいえ、君に会えて、俺は嬉しかった。君は、違うのか?」

「いや、あっ……と、イヤじゃないけど」

 かなめが口ごもって、頬を赤くしながら、視線をそらせた。

 かなめの方から口を開こうとしないので、宗介がかけるべき言葉を探している。

「そういえば、君に伝え損なった言葉があったな」

「なに?」

 かなめが、その瞳を宗介に向ける。

「千鳥。ハッピー……」

 その時、宗介の言葉にかぶせるように──。

 カラァン……! カラァン……!

 どこか遠くの方から、西洋風の鐘の音が聞こえてきた。どこかのイベントで、『その日』のために祝いの鐘を鳴らしているのだろう。

 つまり……。

 宗介の表情に困惑が浮かび、かなめにこう告げた。

「千鳥……。メリー・クリスマス」

 かなめはハリセンで、相手の頭を引っぱたいた。

 そして、『ダイハード』のエンディングの曲が流れ始める。




 メリダ島内、特別対応班オフィス。

 宗介の机の前に一人の少女がいた。

 鍵をかけた引き出しで、何かをしているようだ。

「……大佐殿?」

「ひゃっ!」

 後ろから声をかけられて、テッサが飛び上がった。

「な、なんでしょう?」

「自分の机に何か御用ですか?」

「いえ、なんでもありません。う、うふふふふ」

 テッサの笑みに微妙なニュアンスがあるのを、宗介は感じ取った。

 なぜか、かなめのひきつった笑い顔を連想してしまう。

「この引き出しには、先程鑑賞したビデオテープしか入っていませんが?」

「え、そうなんですか? 全然知りませんでした」

「…………」

 テッサと話をしていて、宗介は背中に冷や汗が流れるのを感じた。

 前回の撮影ビデオを紛失した経緯があるため、鍵のかかる引き出しにしまっておいたのだが、どうも、危険を感じる。

 今回のビデオテープも、紛失するのは時間の問題なのかもしれない。

 宗介の直感は当たっていた。




 ──『二年四組のダイハード』おわり。




あとがき

 ずいぶんと話が荒かった気もしますが、とりあえず完成です。

 作中の『かなめの事情』ですが──、私は小説を知らずにアニメを見たので、かなめに隠された秘密とは、こんな設定だと予想してました。(ベタですけど……)

 ひとつ、嘘が発覚しました。陣代高校の屋上には手すりとフェンスがあるそうなので、傷の男の最後には問題があります。でも、あのくだりは残したいので訂正はしないでおきます。

 今回のアイテム:ビデオ『二年四組のダイハード』(……つかいみちなし)








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