「ゴドーさん、お願いですから……」
みっともなくても。
可能な限り上半身を捩り、両足を縮こまらせて体を隠そうとする。
女性のように柔らかくなだらかな曲線がない体を見せるより、マシだと思って。
「今夜は、アンタの全てを見たいんだ」
だがゴドーは成歩堂の懇願を聞き届けず、両手をびったり成歩堂の両足首につけ、脹ら脛から膝、太腿を撫で上げ、それから膝へと戻した。
両膝にそれぞれの手を置き、ほんの少し圧力をかける。
左右のベクトルに。
「俺とアンタの仲で、隠すようなコトなんてないだろう……?」
ゴドーは事もなげに言うが、成歩堂にとってはそう簡単な問題ではない。
男としてのプライドとか、高くもない声で喘ぐ姿にゴドーの興が削がれるのではないかとの心配もあるけれど。
ゴドーと抱き合う時に暗闇を望んだり、身体を隠したがるのは、単純に羞恥からだったりする。ゴドーの、淡い緋の双眸に晒されているかと思うと、居たたまれなくなるのだ。
成歩堂は特段神経質ではないから、この反応はゴドーが相手の時のみで。
好きすぎるのが原因かも、と考えたりしたのだが。
何が起因にせよ、今の状態が成歩堂にキツイのだけははっきりしている。
しかもゴドーが要求するように、自ら脚を広げる、など。
「さぁ、コネコちゃん。呪文なんざ、必要ねぇ筈だぜ」
実際に『開けゴマ』なんて唱えられたら、後でどんなに責められても、『約束』を反故にしただろう。
だがゴドーは促した後、膝へ置いた指を円を描くように優しく動かすだけで、辛抱強く待ち続けたので。
成歩堂はゴドーと関係をもってから凡そ初めて、煌々と照明のついた中で、素肌をさらけ出したのである。
「………ゴドー、さん…?」
蝸牛に匹敵する速度で、何分もかけてようやく膝を30p程緩めた成歩堂は。
更に何分間もゴドーからのリアクションがなかったので、流石に不審を感じて瞑っていた目をほんの少しだけ開ける。
ゴドーの表情に、失望が浮かんでいたらどうしようかと不安に駆られながら。
呼びかけに、ゴドーの視線がゆるりと上がり、成歩堂のそれとかち合った。
「っっ!」
その瞬間、成歩堂の身体が傍目にも大きくぶれた。
成歩堂を射貫いた、ゴドーの緋眼。
そこに宿っていたのは幻滅などではなかったけれど、成歩堂を安心させるものでもなかった。
仄暗く翳った焔は、情欲を極限までに圧縮したもので。
「…今俺は、悩んでいるんだ」
艶冶に嗄れた声を、ゴドーは真上から降らせた。
「どこから、アンタを喰おうかってな」
うっすら開いた唇から尖らせた舌を出し、上歯をやけにスローペースで辿っていく。
その濡れた肉の隙間から鋭い牙が覗いていない事の方が不思議な程、ゴドーの雰囲気は、後は貪るだけの獲物を組み敷いた肉食獣に酷似していた。
「一番そそられるのは、きつく俺を絞めあげるココなんだが」
「ひぁ……っ」
ひくつく秘扉に指のツプ、と先端だけを潜り込ませ、成歩堂が反応する一瞬前に引き抜いてしまう。
「それとも、先に2・3度絞り上げて、邪魔な理性をはぎ取っちまうか」
「っく、ふ…」
勃ちあがった欲望の先端から根本まで、スパイラルに撫でおろされる。
「美味そうな色をした蕾を、かじってみるのはどうだい?」
「あ、ン……だめ、で…」
歯の代わりに爪が食い込み、疑似の感覚が与えられる。