日本海戦隊  >  二次作品


続編企画会議

 注意:これは、CD『NEON GENESIS EVANGELION ADDITION』内のドラマ『終局の続き』(仮題)のパロディです。




「えーっ! シリーズ好評につき、続編決定ーっ!?」

 かなめが驚きの声をあげた。

 集められた皆も、どよめいている。

「まったく、放映開始のGOサインはあれだけ手間取ったくせに、今度は続編かよ。世の中、現金なもんだな」

 クルツが呆れてつぶやいた。

「まあ、仕方ないんじゃない? 人間望まれているうちが花よ」

 マオが言うと、テッサもうなずいた。

「そうです。昔の人も言っています。『いつまでもあると思うな人気と仕事』」

「これも、人気作の宿命ね」




「人気の回復、維持、増幅を願うなら、あの人物の登場を願うべきでしょう」

 カリーニンが分析する。

「呼んだかい?」

「出たわね。ナルシスト」

 かなめが一目見て嫌そうな表情を浮かべた。

「根拠のない言いがかりはやめてくれないか?」

 そう答えたのは、レナード・テスタロッサその人であった。




「やはり、致命的欠損と言えば、アレっすよー!」

 クルツが力説する。

「うむ。お色気だな」

 マデューカスが答えた。

「最優先事項でしょう」

 カリーニンが同意する。

   ●

「というわけで、新しいASスーツを用意したわ」

「用意するのはいいけど、何であたし達が着るわけ? あたしはASになんて乗らないわよ」

「そうです。納得が出来ません」

 かなめとテッサが不満を漏らす。

「いいんじゃないの? 若いんだから♪」

「……なんの説明にもなってません」

 テッサが憮然として答えた。

「諦めなさい。番組のためよ」

 マオの一言で、かなめもテッサも折れた。

 そのASスーツは過剰なまでに、薄い素材で作られており、身体の凹凸だけでなく、肌の色までかすかに見て取れる代物だった。

『おお〜っ!』

 二人の美少女が装着した姿を見て、男連中がどよめいた。

 プシューッ!

「どうしたんだい、サガラくん? 鼻から血が……」

 レナードが、宗介の首の後ろを叩いた。

 プシューッ!!

「どうしたのかね、少佐? 鼻から血が……」

 マデューカスが、カリーニンの首の後ろを叩いた。




「はーい。問題提起っ!」

 かなめが手を挙げて発言を求める。

「なによ。カナメ?」

「問題は主役よ。主役」

「ソースケ?」

「やっぱり、こんな無口、朴念仁、辛気くささの権化、『戦争ボケ』を主人公にするから、殺伐とした話になるのよ。第一、このバカ。まだ一言も話してないのよ。これで主人公って言える?」

「うっ、……すまない」

「あんた、バカァ? 開口一番がそれ? 反省の色なし。もはや、処置なしね」

「なるほど〜」

「確かに」

「……一理ありますね」

「まずは、配属の変更だな」

「ふむ。問題ないでしょう」

「…………」




「テッサの出番が増えれば、もっと人気が出るかもしれないわ」

 マオの発案に、マデューカスが賛同する。

「試してみる価値はありそうだな」

「外しの少ない学園ラブコメ路線でいきましょう」

   ●

 キンコンカンコーン。

「おまはんが、転校生のテレサ・マンティッサかのう?」

「あ、あなたは、誰ですか?」

「影の番長、このかなめ様の前を黙って通るとは、ええ心がけじゃのう」

「で、ですが……」

「もっと、なんか、しゃべったらどうなんや。ムカつくのう」

「しゃべって、いいの?」

「しゃべれるもんやったら、しゃべってみぃ!」

「……さっきから、黙って聞いてれば、なによ、あのカナメっての。なにも知らないくせに。こんな場所で毒を吐くだけのくだらない女が。身の程も知らない、卑しい低能の分際で、このわたしになにかを意見する気か? 思い上がるのもいい加減にしろ! そこの軍曹に命じて、指を全てへし折らせてもいいのだぞ。

 ビンタ。ビンタ。ビンタ。ビンタ。ビンタ。ビンタ。ビンタ……」

 パシッ!ピシッ!パシッ!ピシッ!パシッ!ピシッ!パシッ……。

「あんっ。あんっ。あんっ。あんっ。あんっ。あんっ。あんっ……」

「……あー、すっきりした」

   ●

「これでは、学園ラブコメではなく、番長モノだわ」

「……いかんな」

 マデューカスの言葉に、カリーニンが苦々しく頷いた。

「確かに。これは我々のマムではありません」




「ズバリ、戦隊物よ! 戦隊物!」

 かなめが主張する。

『戦隊物〜?』

 皆の怪訝そうな声。

「日本が世界に誇れる独自の文化じゃない。かつてはハリウッド映画にもなったぐらいよ。ちょうど、主役も5人いるし」

   ●

「西太平洋戦隊デダナン・レンジャー」

 かなめのタイトルコールに合わせて、意味もなく爆発音。

「行動力だけは抜群。デダナン・レッドこと、相良宗介」

「……問題ない」

「サブリーダー。デダナン・ブルーこと、千鳥かなめ。よろしくねっ♪」

 かなめ自身が挨拶をする。

「お調子者で納豆大好き。デダナン・イエローこと、クルツ・ウェーバー」

「……納得できねぇ」

「クールなお姉様。デダナン・グリーンこと、メリッサ・マオ」

「……なんで、緑?」

「ボケ担当。デダナン・ピンクこと、テレサ・テスタロッサ」

「……ま、待ってください! 役柄にも不満がありますし、わたしには戦闘なんてできません」

「いいのよ。あんたはお色気担当なんだから。スクール水着になったり、メイド服着たりして、七変化でも見せれば、人気を稼げるんだし」

 身も蓋もない説明に、テッサが頬をふくらませる。

「そんな能力を無視した人選は納得できません」

「じゃあ、どうすんのよ?」

「確か、戦隊物には三人構成のものもあったはずです。サガラさんたちは、3人組で、私は司令長官の役がいいです」

「あたしは?」

「毎回、事件に巻き込まれる少女Aです」

「却下よ。却下っ!」

 二人の口論を眺めていたクルツと宗介が、気の抜けた言葉を交わす。

「これまでと、変わんねーじゃん」

「肯定だ」




「敵はどうすんのよ。敵は? 最終回でガウルンも殺しちゃったわよ」

 かなめの言葉に、宗介が表情を曇らせる。

「呼んだかい?」

 かなめの背後に、額に傷を持った男が立っていた。

「あっ、あんた、ガウルンっ?」

「愛する者のために仲間を裏切り、正義に目覚めて味方につくのも王道だぜ」

 その言葉を聞いて、宗介がさらに嫌そうな顔をする。

「敵の正体がわかりづらいのも問題点だな」

 カリーニンがじろっと、ガウルンをにらみつける。

「教えてやるよ。連中への意趣返しもあるしな。組織の名は〈アマルガム〉。目的は最新兵器の研究開発とその実践テスト。あとは、”バダム”……」

 そこまで言ったガウルンを、濃緑色のコートを着た大男が取り押さえた。

 レナードが何かをつぶやくと、ごきんといやな音が響いた。

 ………………。

 皆は何事もなかったかのように会議に戻った。




「やっぱ、動物よ。動物。マスコットキャラにもっと活躍してもらわないと……」

 とは、マオの言葉。

「それならば、ボン太くんを登場させてはどうだ?」

「それ、いいですね」

 登場したボン太くんが、ここぞとばかりに話し始める。

「ふもふもふもっふ。ふも、ふもるふもふもふも〜ふもる。ふもふもっふ。ふもふもふぅも(さっきから黙って聞いてれば、まったく、俺を無視して話を進めやがってよ。時代はボン太くんなんだよ。俺さえ出しとけば、「きゃー、可愛いー!」「ぷりちー!」「チョベリグー!」てなもんで、女子高生がわらわら寄って来んだよ……)」

 暴走し始めたボン太くんを、ただ一人、言葉のわかった宗介が連れ出してしまった。




「もう、時間がないぞ」

「あと、補足するとするなら……」

「アクションすよ、アクション。毎回胸のすくような」

「やっぱ、女だったら、トレンディドラマよ。トレンディドラマ。大人の洒落たドラマね」

「副長交代」

「旧キャラクターの整理。新キャラクターの登場」

「夏冬おなじみの怪談モノ」

「揺らぎのない緻密な世界観」

「耽美がまだ、足りないな」

「薄幸の旅館の女主人っていうのもいいわね」

「副長交代」

「大学病院で野望を持った男の栄光と挫折」

「熱血スポ根が足りん」

「歌よ。歌。ミュージカル。魂の叫びね」

「…………」

「……」

(以下略)




 ──『続編企画会議』唐突におわり。特にオチは思いつきませんでした。




 あとがき──今回は、いいわけ。

 CDを知らない人には、つまらないかもしれません。

 ひさしぶりに聞いてみると、やはり笑ってしまいました。

 本当は、「凄い……。ASで攻撃へリを受け止めたわ……」まで行きたかったのですが、 文字では面白さが出そうもないので、割愛としました。








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