挫く、刻む、造り替える




!注!:団地妻設定ですが、旦那はゴドさんではありません。というか、完全寝取られ話なので旦那の存在を敢えて曖昧にしております(汗) 横恋慕陵辱モノですので、貞操に一言家ある方は、閲覧をお控え下さいませ。






 3ヶ月、待った。
 己にしては、悠長な事をしたと思う。
 らしくない真似をする程、執着しているのは自覚している。
 落魄れたものだ。しかし、ただ堕したりはしない。
 同じ奈落の底に、引き摺り込んでやる。




 今や主流になった、安全性が売り物のオートロック・管理人駐在のマンションだとて、ゼニトラにしてみれば障害ではなかった。
 見張りからの連絡を受け、作業服を着て住人と一緒に総合玄関を通れば、不審がって声をかけてくる輩などいない。後は廊下の死角に隠れて、成歩堂が買い物から帰ってくるのをただ待つだけだ。
 スーパーの袋を手に廊下を歩いてきた成歩堂は、数ヶ月前見た時と、あまり変わらない。
 いや、それは嘘だ。見失ったあの日と、明らかに違っている点がある。
 艶、だ。
 成歩堂は、男の肌を知った。男に抱かれて、悦楽を得るようになった者でなければ醸し出せない色香を纏っている。
 目の裏が、憤怒で真っ赤になる。無垢な身体を拓いてよがる事を教え込むのは、ゼニトラの筈だったのに。その愉しみを兵六野郎野郎に与えてしまった成歩堂に、改めて奥歯がギリギリ鳴る。けれど、成歩堂が別の男に組み敷かれる幻影に憎しみで血を沸き立たせるのも、終わりだ。
 今から、ゼニトラは成歩堂を奪いに行く。今度こそ、己のモノにする。
 それに―――。
 ゼニトラは、鋭い牙を覗かせて嗤った。寿ぐ事を覚えた身体は、それに応じた愉しみがある。きっと、成歩堂の痴態はゼニトラの憤懣を補うに足るだろう。
 ガチャリ
 成歩堂が鍵を回し、扉を開く。背後から忍び寄る気配を知らぬまま、無防備に。
 成歩堂の身体が玄関に入った刹那、ゼニトラは閉じかけた扉目掛けて突進した。
「ぅわっ!?」
 驚愕の面持ちをした成歩堂を突き飛ばして転ばせ、返す手でロックとデッドボルトをセットする。
「よぅ、成歩堂。元気そうやな」
「ぜ、ゼニトラさんっ!?」
 撒き散らされた食材の中に倒れ伏していた成歩堂は、振り向いて襲撃者を確認するなり、ふらつきながらも立ち上がって部屋の中へ駆け出した。
「つれないやんか。ワイのツラ見て、逃げ出すとはよぉ」
 どこかのんびり嘲るように嘆いたゼニトラは、動きだけは体躯に似合わず敏捷に後を追い、電話の子機を持った成歩堂がトイレに辿り着いた所で、捕らえた。
 比較的頑丈に出来ている場所に籠もり、電話で助けを呼ぼうとしたのだろう。咄嗟の判断としては、上等な方だ。相手がゼニトラでなかったら、ゼニトラが成歩堂を熟知していなかったら、危機を脱せたかもしれない。
「残念やな。・・誰にも、邪魔はさせへん」
「放せっ!」
 捕獲してしまえば、ゼニトラと成歩堂の力量差は歴然としていて。暴れるのをものともせず後ろ手に捩り上げ、子機を床へ叩き付けて破壊した。
「だ、れ―――っ!!」
 威圧的な破壊音に挫ける事なく、成歩堂が次は喚こうとした為、厳つい手ですっぽりと覆ってしまう。成歩堂の両腕は、片手で簡単に押さえられた。
「おっと、声は後でたっぷり聞かせてもらうさかい」
 耳元で嘲笑い、ついでにきつく歯を食い込ませる。ビクリと竦み、不自由ながらも抗う肢体を殆ど持ち上げる形で寝室へ連れて行く。
「・・ん、ぅ〜〜っ・・っ」
 必死で足を突っ張り、または身体全部を捩らせる動きは抱え込むゼニトラへダイレクトに伝わり、やっと成歩堂を手中にした昂揚と相俟って、下肢が痛い程張り詰めてきた。
「く・・っ・・!」
 太腿の裏側がその塊に触れたのか、ゼニトラの手の平に押し潰される呻きが悲痛さを帯びる。
「ほな、始めよか?」
 きっちりメイキングされたベッドへ俯せに押さえ付けてまず両手を業務用のダクトテープで拘束し、裏返して口にも1枚貼る。粘着力が強く切れにくいダクトテープは、こういう用途にも非常に適していた。
「大人しゅうなったら、外したる。なぁに、ちぃとの間や」
 上から覗き込めば、潤んではいるものの輝きを失っていないオニキスが真っ直ぐに見返してくる。絶望も悔しさも、恐慌だってその揺らぐ双眸には映っているが、それでも成歩堂は気丈に睨んでくるのだ。ゾクゾクと、背筋に悪寒ではない震えが奔る。
 ゼニトラの、成歩堂に対する執着はここにある。
 セックスの相手は凹凸のはっきりした女ばかりのゼニトラが、飛び切りの美形という訳ではない成歩堂を欲するのは、この真っ直ぐな精神を己が手で叩き折りたいから。
 限界も、絶望も、立場も理解しているのに、それでも諦めないで顔を上げる純粋な強さが、完膚無きまでに壊してしまいたいゼニトラの嗜虐を扇情する。
 藻掻き、抵抗し、逃亡を試み、だが最後にゼニトラに屈する瞬間の黒瞳の虹彩を想像するだけで、股間のモノはガチガチに硬くなる。
 きっと一度位の陵辱では、完全な満足は得られない筈。飼って、悦楽漬けにして、ゼニトラの支配を心身共に教え込んだ後に、やっと望んだ瞬間はやってくるだろう。堕ちた後は、具合によっては肉奴隷として側においてもいいし、わざと放逐して苦しむ様を眺めるのもいい。
 というか、先の話は別段興味はない。
 3ヶ月前、もう少しで手に入れられそうだった所を小賢しくも逃げ出し、ゼニトラの前から消えた事をまず罰し、手に入れるのが先決だ。
 略奪が効果的になる事だけをストッパーにして、3ヶ月も待った。我慢する事が何よりも性に合わず、裏の世界へ早々に入ったゼニトラが、だ。
 ようやくの結願に、昂ぶらずにいられようか。
「さぁて、パーティの下準備や」
 ベロリと下唇を舐め、ゼニトラは大した力も込めずに成歩堂のシャツを開いた。