いけない団地妻

狼強襲編:2





「ハッ、剥いてみりゃぁどっちが正しいか分かるぜ!」
「待った! 異議あり!」
 カチャカチャ鳴る金属音は、成歩堂の妨害を物ともせず狼がバックルを外そうとしていて。本当に冗談じゃない!と成歩堂がビリジアンになる。
 これ以上、悪戯が遂行されなくても。はっきり言って、相当危険なレベルだ。事態が悪化する前に、強制終了させるしか術はない。
 @全力を振り絞って、仰向けになり。
 A脚を狼の腰に当て。
 B最後の力で押し退ける。
 二段階までは、何とか出来たのだが。
「おっと、じゃじゃ馬だな」
「ふぐ・・っ!」
 @脚を掴まれ。
 Aガバッと斜め上へ持ち上げられ。
 B開いた脚の間に、狼の身体がずっしり割り入ってくる。
「い、今すぐ退いて下さい・・っ」
 眼前数センチに迫っても、狼の荒削りな顔立ちは鑑賞に堪えうる程、格好よい。だが、感心している場合ではない。
 @とAまでは、ともかく。Bはマズい。というか、ヤバい。
 こんな、際疾い箇所がべったりくっついている場面を見られようものなら―――。
 バターンッ!!
「コネコちゃんっ!」
 修羅場、だ。
 deja vu 付きの。
 もう、このシーンは見たくなかった。先の、恐ろしい展開が読めるので。
「よう、荘龍大哥。奥さん、一囓りさせてくれ」
「殺されてぇのか、ワンコロ」
 ガツン!
 拳固が狼の頭に落ちた、いかにも痛そうな音がリビングに響き渡る。それから首根っこを引っ掴まれた狼は、勢いよく成歩堂から剥がされた。悪びれもせず、ソファへ胡座をかく狼。犬歯を見せて不貞不貞しく笑う辺りが、ゴドーと気が合うのかもしれない。
「結婚して、ケチになっちまったなぁ。・・・それだけ、大事なのか」
 波風を立てるような事を匂わせつつ、一応フォローもする。
「9分10秒。1分以上もタイムが伸びてるぜ? 愛の力ってヤツだな」
「・・・・・・」
 ソースは、馬堂か。―――いや、馬堂に違いない。成歩堂だけでなく、ゴドーも毒気を抜かれたらしい。
 はぁ、と苦々しい溜息を吐き。物騒で剣呑なオーラを収め。成歩堂をしっかり抱いて、シッシッと犬を追い払う仕草をしてみせた。
「二度はないと、刻んでおけよ」
「うぃッス。約束はしねぇけど」
「オイ・・」
「ソレ、お祝いだから。―――じゃ、奥さん。また遊ぼうな!」
「・・・遠慮します・・」
 犬扱いにも上機嫌な様子を崩さず、もう一度引っ掻き回し、ゴドーの鉄拳が下る前に狼はシュパッと去っていった。
 残された二人は、訳もなく気まずい雰囲気の中で目を見合わせる。
「あの・・・ゴドーさん」
「何だィ?まるほどう」
 今回も、どうして成歩堂のピンチを察知したのかは不問にして。成歩堂は、どうしても聞いておきたい事があった。
 すぅっと深呼吸し。真剣な眼差しで質問する。
「あと何人くらい、お祝いしてくれそうですか?」
「クッ・・ツッコミの鋭いコネコちゃん、嫌いじゃないぜ!」
 奥さまに問い詰められ。
 珍しく視線を逸らす旦那さまが、いた。




【おまけ】
 そして、お祝いの内容は。
「新作もあるな・・オイオイ、コイツはまだコネコちゃんには早いだろう」
「いやいやいや、折角の贈り物ですけど返品しましょう! して下さいぃっっ!!」
 遠隔操作できる☆☆☆とか。☆☆☆なローションとか。ロマン溢れる衣装とか。その他諸々、エロエロな小道具の詰め合わせだった。
 羞恥と恐怖のパラメーターが振り切れた成歩堂は、ゴドーがいない時にこっそり処分しようと心に誓ったものの。
 どういう分別でゴミ出ししたらよいか、迷い。
 分別する為とはいえ、☆☆☆なモノと接触できるかどうか思い悩んだ。