個性的だし。
テキサス及びカウボーイマニアな理由を聞いてみたい。
強引だし。
バンビーナ呼びは、いくら言っても止めてくれない。
型破りだし。
明らかに違法な大型拳銃を振り回す位でないと、ゴドーの友人は務まらないのだろうか。
それでいて。
意外に常識人でお人好しで―――『お兄ちゃん』。
「二人とも、強制猥褻で引っ括るぞ」
「職権乱用だよ、兄貴」
「珍しくおまわりさんモードかィ? 明日は雨だな」
三人の、軽妙な癖に肌がピリピリと刺激される会話を、成歩堂は恭介の背中越しに聞いていた。成歩堂よりだいぶ身長が高く、インドア弁護士と違って鍛えられた肢体は視界をすっぽり覆い、破裂しそうだった鼓動が少しずつ落ち着いていく。
恭介が来てくれたお陰で、間一髪危機から逃れられた。安堵と感謝をもって、頼りがいのある広い背を見上げる。
切っ掛けは何で、どうしてそんな流れになったのか、思い当たる節はなかったが。とにかくゴドーと直斗に捕まった成歩堂は検事局の資料室へ連れ込まれた挙げ句、ダブルセクハラを受けていた。
「ベイビー、×××の☆☆☆☆はどう?」
「・・・僕の身には余るので、お断りします」
直斗には両手で顔を包まれて、指が耳やら顎やらを頻りと擽る合間に、耳元で赤面ものの淫猥な言葉をトーンだけはいつもの調子で囁かれ。
「クッ・・まるほどう、堪らない腰つきだな」
「いやいや、極々一般的な体格ですから」
ゴドーには腰を抱かれ、双丘やら太腿やら脚の付け根やらを何を探しているんですかとツッコミたい位に、撫で回され。
思い切り顔を引き攣らせ、これ以上妖しい雰囲気にならないよう出来るだけ冷静に話す成歩堂だったけれど。内心は、パニック寸前。いつもなら、ちょっと強めに抵抗すれば逃れられるのに、今日は全く拘束が緩まないのだ。
それどころか。
「あ、あの・・寒いんですが(汗)」
「んー、すぐ熱くなるから、大丈夫」
いつしかネクタイとボタンが外されて、鎖骨に指が這い。直斗の唇と成歩堂の耳朶の距離は、0に等しく。
「ま、待った! 洒落になりませんっ」
「伊達や酔狂じゃねぇ。本気だ」
カチャカチャという金属音の後に妙な開放感を覚え、下を見遣ればベルトが抜き取られているではないか。ゾッとして精一杯暴れるも、何故か藻掻く度着衣が緩んでいく。
これは所謂、貞操の危機・・?
鈍い成歩堂が冷や汗を垂らして悟ったが、遅すぎた。
今の状態は、まさに鱗まで一枚残らず剥がされた、俎板の鯉。どちらか片方でも成歩堂は翻弄されるのに、二人がかりでは美味しく食べられるだけ。
もうダメか、と諦めの悪い弁護士がビリジアンかつ涙目になって諦めかけたその時―――扉を蹴破って、恭介が登場したのである。
「局長が、捕獲隊の準備をしてたぞ」
「ゲッ・・腹黒モードになる前に、帰るかー」
アレが発動しちゃうと面倒なんだよね〜と爽やかな表情のまま毒突いた直斗は、成歩堂に華麗な投げキッスを決めて立ち去った。
「オマエがふらついてる所為で、星影所長の持病が悪化して病院に担ぎ込まれたと連絡があった」
「ジジイの尻痛は萌えねぇなぁ・・」
コネコちゃんの腰はオレが滅茶苦茶に壊すけどな・・と恐ろしい予告をして、ゴドーものんびりではあるが退出する。