「そろそろコネコちゃんは、ミルクの時間かい?」
あとどれ位で頂点に行き着いてしまうのかは、成歩堂よりゴドーの方が理解していて。
ゴドーから揶揄され、力なく湿った髪を打ち振ったけれど。
「我慢なんてする事ねぇ。イっちまいな。アンタの淫らな姿を、俺に晒してくれよ…」
真横に顔を背けた成歩堂の鎖骨から首筋、耳殻を執拗に舐めあげ、柔らかい耳朶を噛み込んだゴドーは、言葉でも成歩堂を堕としにかかった。
「だ、め……で…」
ホロリと目尻から雫を伝わらせ、成歩堂は啜り泣いた。
逝ってしまう。
逝きたくないのに。
女性のように美しく隆起している訳でもない胸の、単なる皮膚の集まりを弄ばれただけで達してしまうなんて、情けなさ過ぎる。
ともすれば法悦の波に掬われてしまいそうな身体を叱咤し、下唇を鉄錆の味がするまで噛み締め、耐えようとする。
全身全霊で、抗ったのだ。
しかし。
それまでの優渥さとは一転して、両方の蕾を同時に、かつ残忍な強さで捻り上げられ。
刹那、ダメだと思うより早く稲妻じみた快楽に攫われて、成歩堂は吐精してしまった。
破裂しそうに脈動する心臓が、少しだけ落ち着き。
獣じみた荒い呼吸が、浅く長いものに変わっていき。
陶然と絶頂の余韻に浸りきった意識が、真白き空白を経てゆるりと浮かび上がった時。
「〜〜〜っ!!」
水の膜を被った双眸を数度瞬かせて、虚ろにゴドーを見上げた成歩堂は。
ゴドーの引き締まった腹部から胸にかけて広範囲に飛び散った白いモノが、自分の放った情欲の残滓だと悟り。
風呂場での逆上せなど問題にならない位、羞恥で血を沸き立たせ、声にならない異議をゴドーと――己に突き付けずにはいられなかった。
成歩堂の異議はあっさり却下され。
濃厚極まりない情事は、何時間続いただろう。
何度、意識が灼けつくような絶頂を味わされただろう。
途中から自我が崩壊し、ゴドーの求めるまま、促されるまま官能に溺れた成歩堂が、ようやく眠りに落ちる事を許されてから目覚めたのは、陽が蒼天高く昇った頃だった。
記憶に残る醜態と、純粋な肉体の疲労とで5分ばかり起き上がれなかったものの、チェックアウトの時間を気せずにはいられない成歩堂へ。
24時間ステイプランだからのんびりしろと、朝食を抜いたかわりに昼食を多目に手配してあると笑ったゴドーに、何もかもが計算済みだった事をようやく悟り。
成歩堂の、年上の恋人は。
確かに格好良くて。
優しくて。
大人の余裕を醸し出していて。
経済力もあって。
何より、成歩堂を大切にしてくれるが。
『エロ親父だよな……』
一向に解放してくれそうもない腕の中で、深い溜息をついたのである。