日  程 2001年5月3日〜5日
地  域 北アルプス 不帰T峰尾根主稜登攀
メンバー 岡村(京都雪稜クラブ)・梁瀬(記録)

「不帰から帰らず!?」 不帰T峰尾根主稜登攀記

 今年の連休はみんなにフラれまくり、グレてやろうかと思ってたところ,ギリギリのところでパートナーを確保することができ、シーズン最後のアルパインへ。
 パートナーは雪稜クラブのオカムラ。趣味登(京都趣味登山会)時代の同志だ。彼とならハードルートも不可能ではないが、今シーズンは、正月の甲斐駒継続断念、2月の唐沢幕岩1P敗退、3月の大同心5m敗退と連敗続き、唯一の完登がヒラパー隊長に連れてってもらった三国岳アルパインハイキング、さらにパートナー不足で3月以降全く登ってない、ってことで我輩、完全に凹んでしまっていたので、ハードなやつは避け、そこそこの雪稜ってことで、後立山不帰T峰尾根主稜に行くことになった。

5月3日
 ガスの中、八方尾根の支稜を唐松沢へ下降。視界が利かない上、トレースが消えていて、地図とコンパスをそれっぽく見ながら適当に下っていくと、見事にT峰尾根の末端付近に出て本人もビックリ。しかし、オカムラがしきりに感心しているので、さも当然という顔をしておいた。
 準備を整え唐松沢側から尾根に取り付く。この頃から雨が降り出す。先行は2パーティいたが、尾根に上がる前に1パーティ追い抜き、尾根に上がったところでもう1パーティを追い抜きトップに踊り出てしまった(彼らはここでビバークと言っていた)。が、幸い?トレースが残っているので問題なし。我々はもう一ガンバリし、P2でテントを張った。
 雨は夜中中降り続き、「このままじゃホントに、不帰から帰らず、になるかもしれんな」と言ったら、シャレの通用しないオカムラは泣きそうな顔をしていた。ここまでも結構不安定な雪稜を登ってきていたので、撤退も容易ではなかったのだ。

5月4日
 ところが、不安とは裏腹に超ド快晴。素晴らしい!、GWはこうでなけりゃ。誰かが先行してから出発しよう、とかいってのんびり準備していたが、誰も来ない。仕方ないので「趣味登OB隊、出撃!」と喝を入れ出発する。
 P3を簡単に越えると、いよいよ核心部“断壁”。尾根の形状が壁によって寸断されているためにこう呼ばれるらしい。なかなかカッチョイー呼び名だ。ワンポイントの人工で軽く出だしの岩場をクリアし(←ウソ。結構ジタバタしてました。しかも素手なのに)、あとはブッシュ混じりの急雪壁を4Pほど登ると傾斜は落ち、断壁終了。
 断壁登攀中、やっと後続パーティが現れた。昨日、尾根に出たところでビバークした神奈川めっこ山岳会の連中だ。遅ーい!。なにやら、寝坊したとのこと。彼らの後からもウジャウジャ登ってきた。本ルート、今年は大人気だ。岳人に載ったからかな?。こやつらを従え、我ら趣味登OB隊が先陣を突き進む。んー、気分爽快!。ばっちりトレース残ってて、自分等でラッセルしてるわけじゃないんだけどね。
 T峰ピークに続く最後の雪稜をコンテで前進するが、いい加減くたびれたので、頂上直下のブッシュ壁が目前に迫ってきたところで休憩。後続に追いつかれる可能性もあったが、この際追い抜いてもらって、最後のブッシュ壁の登攀ラインを確認させてもらおうと目論んだのだが、こんな時に限って追いついてこない。
 しょうがないので、オンサイトでいくことにする。1Pまるまるのツリークライミング(Tree Climbing)、グレードB2(“B”はBushの意)!?、でT峰ピークに飛び出し登攀終了。本日一番乗り、正午前であった。
 予想外に早く抜けれたので、大休止の後、今日中に唐松岳まで行くことにする。せいぜいルートを抜けるのが精一杯、T・U峰間のコルで幕営できれば上出来と思っていたので、全くもってトレース様様である。
 不帰から帰らず、にならないよう(しつこい!)気合を入れ直し、最後の一仕事、“不帰の嶮”の突破にとりかかる。が、これまた縦走者のトレースはありーの、チェーン、ハシゴ、ペンキ印ありーのであっさり通過できてしまった。V峰では、A、B、Cの各リッジをクライマーが登ってきていた。難易の程はよく分からんが、短いが各リッジとも急峻で結構恐ろしそうだ。特にA尾根なんか岩場も多く手強そう。そのうちチャレンジしてみよう。
 15時前に唐松岳に到着し、今日は唐松山荘前にテントを張ることにする。山荘では、誕生日プレゼントだといってオカムラがジュースをおごってくれた。そう、今日は我輩の?才の誕生日だったのだ。この歳になると誕生日なんてちっとも嬉しくない上、プレゼントが缶ジュースかよ、ってなもんだが、ここの缶ジュース400円もすんだよね。感謝、感謝。当のオカムラも、ビールを2本も!飲んで、マールボロを吹かして気分よさげであった。

5月5日
 この日も天気は上々。不帰の各ルートを眺めながら、のんびり八方尾根を下山した。

ルート概要
 まあ、中級程度の雪稜ルートかな?。中級ってどれくらいか分からんが。特に困難な部分もないが、全体を通して油断できない場面が続く。今回は、見事なラインでトレースが残っていたため、かなりの部分をノーロープあるいはコンテでぶっ飛ばせたが、不安定な雪庇、先の見えない部分も多いので、トレースなければ時間食ったろう。
 ビバークは、ツエルトであれば、その気になれば何処でも可能であるが、テント適地はP2しかないと思ったほうがいい。他でも張れないことないが、気色悪そう。尾根末端にBCをおき、軽装アタック、T・U峰間ルンゼ下降でBC帰着、ってパーティも多いみたいだ。
 内容の割には、それほど目を引く尾根でもなく、見た目主義の我輩としては少々残念なのだが(終始緊張させられる割には、見た目はメチャ簡単そうなのだ)、不帰の各リッジの中では一番長いので、不帰を登った、という気分にはさせてくれるルート。白馬主稜、鹿島槍東尾根、剣八ツ峰、同源次郎等、GWポピュラー雪稜は全部登っちゃった、という人におススメの渋い1本。

使用ギア
・9mmロープ1本
・アルパインヌンチャク5本くらい
・アブミ(パーティに一組あればよい)
・デッドマン2個(今回はたまたま使用しなかったが、必携でしょ)

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