日  程 2001年8月15日〜17日
地  域 北アルプス 黒部源流 赤木沢遡行
メンバー 梁瀬・河野(記録)

昨年の夏、沢の魅力に取り憑かれた小生は、お盆にどこか沢へ行きたかった。前半の屏風、後半の奥又が決まったので、せっかくなら合間にどこか行きたい。当初は丹沢の中では明るくて美しく、ゴルジュ突破が楽しそうな小川谷廊下を考えたが、数時間で終わってしまうようだ。どっか他にいいとこないかな…と日程と地図とルート集を睨んだ結果、2級で4星最上級である赤木沢が最有力候補にあがった。色んな記録を見て、更に行きたい気持ちが高まる。但し、どう考えても3日かかってしまう。はて。
恐れつつ自分のプランをヤナッチとはたねーに相談したところ、2人とも快諾してくれた。かくして、北アルプス岩沢岩9日間デラックスプランが完成したのである。
今回はそのうちの沢の報告です。

8月15日 
6時起床。本当なら折立キャンプ場でぐっすり眠っているはずなのに、まだ上宝の道の駅。・・・昨日、お盆と事故の大渋滞のため、西村師匠は特急に乗れず、夜中のちくまに乗る羽目になってしまった。
夜半前、師匠を松本駅で見送った後の運転は上宝が限度・・・。起きてすぐ移動。懐かしい亀谷温泉を過ぎ、有峰有料道路へ。ここは夜間通行止めなのだが、それもそのはず、山の斜面に辛うじて道路がはりついている感じでガードレールもなく、恐ろしいったりゃありゃしない。 折立につくかなり前からひどい駐車の列。が、ちょうど登山口であきらめてUターンし戻ろうとしたその時、車が一台出ていった。なんてラッキー!って、これで運を使い果たしてしまったか?

のろのろと11時前に出発・・・雲が追いかけてくる。まもなく、雨が迎えてくれる・・・。ああ、やはり運を使い果たしたか。結局、雨は降ったりやんだりで、我々から美しいアルプス山並みを愛でる機会をことごとく奪ったのであった。折立までの道は、GWに登った神岡新道に比べて穏やかで、所々木道や石畳が作られている。雨で登山道が崩れ、周りの高山植物の床までえぐっていくのを、 防ぐためだそうだ。 

次第に雨足が強くなる。15時、GWお世話になった太郎平小屋についたころは土砂降り状態。快適そうな小屋を恨めしげにみつつ、テント場へ向かう。 狭い薬師峠のテン場はひどい雨のため、テン場全体で水が流れ、川のようになっている。何とか床上浸水をまぬがれそうな所を見つけ、テントに入る。靴の中もザックもびしょぬれ、不快。不愉快。

17時頃、ようやく雨が上がる。果たしてこの雨の増水が心配。貧しい夕食をさっさと済ませ、寝不足の体を早めに休ませてやる。明日は好天でありますように。

8月16日
3時起床。寒くて寝ていられない。やはり横尾とは標高が全然違う。朝食をとり、5時過ぎにテント発。素晴らしい青空、澄み切った空気、遠くに槍の穂先が見えている。 今のところはこの上ない絶好調の天気なんだが、小生のお腹が絶不調、うーん、うんうん。つらいよう。 薬師沢小屋で大休止。前に架かる吊り橋の右側から黒部川に降り立つ。昨日の夕立の影響はない。河原を右左に渡りながら歩く。ヤナッチは竿をふりつつ、フライに興じる。いけども振れども、ぼんずのまんま、時折キャッチがあるものの釣りあがるまでいかないようだ。
この調子では、釣れるまで黒部川でねばられうんじゃないかと心配であったが、その内やっとこゲット。ヤナッチ、大はしゃぎ。しばらくして2匹目をゲット、やっとこまともに歩き始める。
豪快な大滝を左岸巻き道から越えると、川幅いっぱいのナメが出現、もうすぐ出合だ。出合は深い渕となっており、左岸を巻くと赤木沢に降り立つ。目の前にはたおやかなナメが続く。赤木沢遡行開始。

赤木沢は優雅なナメ滝が連続し、辺りはゆるやかな草付きと針葉樹に囲まれ、明るく美しい沢だ。空は青く、沢と緑と青のコントラストが心を打つ。
小滝はすべて直登でき、30mの大滝は、左岸にしっかりした踏み跡あり。
実は2人とも、今回ヘルメット&ウエットスーツ完備であった。嬉しいかな悲しいかな、赤木沢はあくまでもたおやかな沢。泳げそうな所は、大滝の釜くらい。ウエットスーツは全く不要。が、そんなことも忘れる位、この沢は人の心をのんびりと幸せにするのだ。
上部の支沢は適当に入っていく。徐々に水流がなくなり、最後は草原に行き着いた。ヤブ一切なし。この草原は、時期がもう少し早ければ、チングルマの咲き乱れる素晴らしいお花畑だ。
草原を抜け、稜線に立つ。間もなく、赤木岳の頂上へ。嗚呼、絶景かな。シアワセな気分で薬師峠へ戻る。

8月17日
今朝も青空が広がるよい天気。山の空気は爽快だ。
テントを撤収し、折立へ下山開始。太郎平でアルプスの山並みが見えなくなるのを惜しんだが、剣岳の堂々たる姿が現れた。足下には雲表が広がり、幻想的な眺めを満喫しながらの下山道となった。

<所感>
赤木沢は四つ星2級の沢であるが、これはアプローチを含めてであり、実際沢のグレードとしては1級であろう。
大滝の登攀や深淵のゴルジュ突破などとはほど遠い沢であるが、何とも美しい沢だ。
アプローチに1日取られるのが難点であるが、それを苦労を補うほどのものがろう。遡行が終了した後は北アルプスの夏山縦走気分が充分味わえる。
今回、薬師峠をベースに2泊3日としたが、薬師沢小屋泊まりとすれば、2日目遡行後の下山も可能。1日の歩行距離は長くなるが、小屋にすれば荷物も少なくなるのでアプローチもさほど苦労しないだろう。週末山行も可能だ。
チングルマが咲き乱れる季節での遡行をお薦めします。更にシアワセ度アップ間違いなし!


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