The Circle(93)

このアルバムは一番好きなアルバムです。本当によく聴いた。今でもよく聴く。
内省的な曲が多いですし、悲観的な歌詞が並びますが・・だからこそ響く、すごいリアル。
「欲望」の「届かない」の呟きに何度「ウタレタ」ことか。この唄に出てくる酔い潰れた
「ボク」と「コスモスの花束を抱えた天使」を何度絵にしようとして失敗したことか。

「君を連れて行く」・・こんなラブソングがあるのか!こんな表現があるんだ!ってビックリした。
「彼女の隣人」の「ありったけの・・」のリフレインの無言の部分に・・本当に感動した
 これは、「コトバにならない」感情を表現した唄・・なんだって
「The Circle」・・・繰り返し、吐き捨てるように叫ばれる「否定」
でもこれは「絶望」の唄じゃない。「未来」に向けてこれ以上ないくらい攻撃的な、激しい「肯定」の唄。
「今までは」しくじっても「これからは」上手くヤル!という決意の唄と思う。
そしてラスト「君がいなければーを知らずにいただろう」の一節には色んな想いが重なる・・

当時ボクはもうすぐ30歳を迎えようとして・・苛立っていた。
仕事は上手く行っていたけど恋も上手くいかず家族や友人とも折り合いがつかなくて・・
でも、このアルバムには本当に勇気づけられた。
このアルバムがあって・・初めて元春のライブに行こうと思った。
ライブで「欲望」を聴きたい!と思った。
でも・・まもなくラジオで元春の口から「ハートランド」の解散が告げられたのでした。

「GOLDEN RING」(94)

ハートランドのライブセレクション。これも何度も聴いたな。特に3枚目を。
このアルバムで「ロックンロールナイト」が如何に特別な曲か、わかった。元春のシャウト、キーボードの静かな音
「約束の橋」のダディのサックスと元春のハーモニカの重なるシーン、「彼女の隣人」の元春の声とメロディさんのコーラス
「ハートビート」のソウルフルなバージョン、そしてサムデイ。・・・ハートランドの演奏の素晴らしさにひたすら感動します。
ライブアーティスト佐野元春の素晴らしさを伝えるアルバム。
ホーボーキングでもこういうアルバム作って欲しいな

「フルーツ」(96)

新しいバンド「ホーボーキングバンド」と作ったアルバム。
ただ、このアルバム制作時点ではまだメンバーは固定していなかったみたいだけど。
そういう意味でこのアルバムは元春のソロアルバムといっても善いでしょう。
そして、その事が良い方向に作用しています。1曲ごとにスタイル、元春のボーカルも変化し
元春の色んな要素がこれでもかと言うようにぶちこまれています。

一聴して感じたのは「ビートルズ」。音色が何処かサイケ。歌詞は平仮名が多くまるで俳句。
元春はインタビューで「サークルのようなダークな曲は入れない。なるべく明るい曲を入れた」みたいな
ことを言ってましたが・・前半の明るくポップな調子から後半段々に影というか闇を帯びてきます。
「ティーンエイジサブマリン」から「そこにいてくれてありがとう」までの怒涛のメドレー。
ここはスゴイ。溢れる音、元春の叫び、唸るギター。解き放たれた、破壊力、暴力的な音の渦。

こういう言い方したら元春とホーボーキングに失礼だけど・・ホーボーキングになってから最高傑作。
元春が惜しみなく「自分」を曝け出したもっともヤバイ作品だと思う。

「The Barn」(97)

このアルバムは難しい・・・実は発売当時聴いてかなり・・ガッカリしました。
当時、ボクはかなりハードな状況にいて・・元春にはハードなロックンロールをガンガンやって欲しかった。
やかましいビートに乗って叫びまくって欲しかった。元春のロックに力をもらいたかった。
でも・・ここで聴けるのは老成・・成熟・・・ウワア・・ずいぶん落ち着いちゃったなあ・・て感じました

歌詞はホントにいい。「誰も気にしちゃいない」「風は手のひらの上」は本当に素晴らしい歌詞です。
ただ・・枯れたサウンド、元春の素朴なボーカルに中々なじめず・・元春から少し離れました。

今、聴くと・・曲はどれも善いと思います。「ロックンロールハート」はホーボーキングになってからの
スタンダードと言うべき曲でしょう。
ただ、あえて苦言を言えば。。最初と最後のインストは不要じゃないかなあ・・「フリーダム」みたいな
ポップなビートナンバーを後2曲ぐらい入れたらアルバムとしてもっと良くなったと思います。

ボクは車乗らないんですが・・ドライブしながら聴いたらまた印象変わるかな。

「Stone & Eggs」(99)


現時点での最新オリジナルアルバム・これ以来ニューアルバムは出ていない(涙)
これも難しい・・。このアルバム出たときはボクは転職して状況はかなり良くて・・ニュートラルなキモチ
で聴けたけど・・何かガンと来ないんだよなあ・・

ボクが元春に求めているもの(ポップ!ロック!)と元春の現在の世界(成熟)がズレテるんでしょうね ボクはバンド形態でなく元春の多重録音でレコーディングというのは元春の私的な部分が強まるので
良いと思うんだけど・・音に温かみがないというか・・

曲もいいし、サウンドもいいけど・・何ていうか「コトバ」に力を感じなかった。
歌詞もスッと入ってこない・・ストレートなわかりやすさがない。
スゴイ難しい。
ただ「Angel Fly」からグッと良くなる。「シーズン」はコトバといいボーカルといい
本当に素晴らしい。
ある意味一番実験的なアルバムかも・・このアルバムの意味は次のアルバムを聴くと理解出来るのかも

「光」(01)

NYテロ事件に触発されて元春が一人で作り・・・ネット配信した曲。
元春のピアノ+プログラミングのみで録音(バンドで録音したヴァージョンもあり)
テーマの重さを考えると・・こう言っていいのかワカンナイけど・・本当に良い曲です

シンプルなサウンド、元春の悲しみに満ちた・・でも祈りに溢れたコトバ
力に溢れている・・最高傑作と言ってもイイ。
大切な人の大切さを改めて考えるような・・そういう「唄」です。

これはホーボーキングに対して失礼だけど・・元春の作曲、レコーディングということを考えると
実はバンドは必要ないんじゃないかと思います。
簡素な演奏、声、コトバ・・もうそれだけで善いんじゃないか。
100%佐野元春だけ・・ってアルバムを是非聴いてみたい。

そしてライブもバンド形式にこだわらず・・元春+KYONさんのピアノだけ・・とか
しーたかのパーカッションだけとか、そういうもっと多様な形でライブをガンガン増やして欲しいな

ともかく・・この人の次・・はいつも注目しています。

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