元春のアルバムについての雑感
ただし「NO Damege」までの4作は実は・・あまり聞いていないので
「Visitors」以降のアルバムを

Visitors(85)

これは後追いで聴きました。
「ニューエイジ」や「コンプリケーションシェイクダウン」は「MOTO Singles」で聴いていました
デビュー20周年のときにやっと買ってそれ以外の曲を聴きました。

その時感じたのはサウンドのパワー。そして「日本」的感性の欠如
今でもそうだけど・・元春の作品には「日本」をあまり感じない
桑田さんや山下達郎さん、竹内まりやさんと違ってそのメロディやコトバ遣いに
 「歌謡ポップス」の影響は感じない。落語的感性も「ワビさび」もない。
そんな非日本的な元春の作品の中でも最も洋楽的な作品
アメリカで作られたからーという理由でなくて、この中の幾つかの曲は
80年代半ばにおいて既に「洋楽」と同レベル。共通した感性を手にしている。
90年代に入って小山田君や少年ナイフ、ピチカートファイブが海外のロックと同じ
そんなに差を感じさせないオンガクを展開したけど・・80年代半ばにそんなレベルの
オンガクを産み出したミュージシャンはそうはいないだろう
このアルバムはホール&オーツ、プリンスと並べて聞いても何ら違和感はない。
元春の中でも最も先鋭的かつ過激なアルバム・・

「Cafe Bohemia」(86)

初めて聴いたアルバム。モノクロのジャケットがお洒落
「ヤングブラッズ」「クリスマスタイムインブルー」等ヒットシングルを収録
ジャケットのムード、元春がコートを着ていること、インストが収められた構成は
スタイルカウンシルの「Cafe Bkue」を思わせます。

歌詞はかなり色んなことを考えさせます。「見知らぬ夜明けを抱えている」「コトバに税はかからない」
「悲しいけれど俺にはわからない」・・どこか悲観的な歌詞
ただし、バンドの力強いサウンドにのって元春の声は力強い
「99ブルース」「インディビジュアリスト」での元春のシャウト!
元春のアルバムの中で最もポップな作品だと思います

「Heartland」(88)

「カフェボヘミア」ツアーの模様を収録したライブアルバム
それまで元春のライブの様子は「ミュートマジャパン」で見てましたが・・
佐野元春のライブが如何に凄いものか、このアルバムを通じて初めて知りました
「ニューエイジ」も「君を探している」も「ハートビート」も「ロックンロールナイト」も
「ガラスのジェネレーション」もこのアルバムで初めて聴きました
最も・・この時点ではこれらの曲がライブ上重要なレパートリーであることをまだ知りませんでしたが

「ストレンジデイズ」の大合唱、「99ブルース」の元春のシャウト、そして「サムデイ」での
悲鳴のようなオーディエンスの歌声・・「ガラスのジェネレーション」のせつなさ
ここでボクは「佐野元春というのは特別なアーティストなんだ」と知り・・その後活動をフォロー
するようになります。

「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」(89)

ロンドンにて現地のミュージシャンと製作されたアルバム。その当時ボクは社会人2年目。待望の新作でした。
前作に比べポップス的なチューンは減り「ロック!」ぽい曲が増えたと思います。

正直初めて「ブルーの見解」や「俺は最低」「ふたりの理由」を聴いたとき戸惑いました。
その当時のボクは「ポエトリーリーディング」なんて全く知らなくって・・「何これ?歌ってない!」
「ちゃんとメロディつけて歌えばいいのに・・勿体ない!」って・・今思うと笑い話ですが

今聴くと「ふたりの理由」は元春の書いたラブソングの中でも最も美しいもので大好きなんですが・・
このアルバムで元春はともかく解放されています。「愛のシステム」の音圧はすごい!
「約束の橋」「新しい航海」みたいなポップな曲でも音圧の強さを感じます。
「カフェボヘミア」が丁寧に作りこまれた印象がありますが・・このアルバムはともかく
「叫ぶ!」「鳴らす!」「叩く!」・・そういった原始的な衝動に満ちています。
・・元春の作品の中でも最も攻撃的・・・「パンク」を感じます。
こういう激しい「元春」は大好き。
このアルバムは今でも本当によく聴きます
ライブビデオでも元春がともかく叫びまくりハートランドの演奏もともかくトンガッテル。
このツアー行かなかったこと、本当に残念です。
 

「Time Out!」(90)

デビュー10周年に出されたアルバム。でもジャケットの元春の顔は物憂げです。
ハートランドのみで製作。かなり落ち着いた作風です。決してスローバラードばかりじゃないし
アップテンポなナンバーもあるんですが・・・。リラックスというのでもないし、ヒーリングでもない。
どこか居場所の無さ・・旅してきたけど思いもよらぬ場所に来たみたいな・・頼りない・・だからこそ親しみがもてるムードがあります。
「ジャスミンガール」の歌詞は本当に素晴らしい。まるで短編映画を見てるような気分になります。
今ではそんなにしょっちゅう聴きませんが・・たまに無性に聴きたくなるアルバムです。

「スィート16」(92)

実はこのアルバムがチャンと買った初めてのアルバム・・それまではレンタルでした笑
ともかく全曲エネルギッシュ。オープニングの「Mr.Outside」から最後の「また明日」まで一気に聴かせます。
ロックぽいといってもそれぞれタイプの異なる曲をハートランドは軽々と演奏しています。
「HappyEnd」「ボヘミアングレイブヤード」の演奏の充実ぶり。

この中では「廃墟の街」が異色ですが・・好きです。元春の曲には珍しく「終末」「滅び」を感じさせる
その感触がとても刺激的で・・甘美です。
後「HappyEnd」も好きです。オープニングのビートの応酬。「ハッピーエンド」というタイトルなのに
「新しく始めるんだぜ」という歌詞・・元春の呟く様なコーラスもいいです。

このアルバムは、ボーカリストとバンドの濃密なツナガリが産み出した・・ロックの傑作でしょう。
この時期のライブをハートランド解散後映像で見ました。
ハートランドの音の塊りに後押しされて・・踊るように歌い、跳ぶように叫ぶ元春。
「ここまで素晴らしい演奏をしたら・・もう何もすることはない」・・本当にそう思いました
元春が「このバンドで出来ることは全てやってしまった」と言うのも頷けます。

「No Damage2」(92)

ベストアルバム第2弾。でも新録はある、ブックレットも凝っている。曲順も練られており
1枚のアルバムとして楽しめます。
ボクにはおなじみの曲ばかり。でも新鮮。この中で特筆すべきは「ニューエイジ」と「新しい航海」の
ニューヴァージョンが収録されていること。どちらもこのアルバム発売前のライブアレンジと同じもの。
元春の場合、ライブでオリジナルと異なるアレンジで演奏されるのはしょっちゅうですが、ライブのアレンジ
で再度レコーディングというのは珍しいでしょう。どちらも女性コーラスが加わりソウルフルなナンバーに
生まれ変わっています。
「新しい航海」のエンディングのギターとコーラス、リズム隊の絡みは、最高です。
元春とハートランドが辿り着いた到達点がここにあるような気がします。
もし、元春を知らない人に1曲薦めるとしたら「新しい航海」のハートランドヴァージョンですね。
それ位この演奏は素晴らしい。

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