近 著 卒 読 2
(定価は本体価格です)
 

591.鈴木俊幸(すずき・としゆき)『蔦屋重三郎』(平凡社新書1067、平凡社、2024.10.17、1,000円)
 本屋としての蔦屋重三郎を、生育環境や時代を見る目など、その独自性を、当時の江戸の出版事情や文化状況を踏まえつつ述べる。歌麿・写楽はあっさりと、黄表紙・洒落本作者は詳しく描かれる。(2024.11.3)

590.伊藤善隆(いとう・よしたか)竹下義人(たけした・よしと)池澤一郎(いけざわ・いちろう)佐藤勝明(さとう・かつあき)玉城司(たまき・つかさ)『元禄名家句集略注 冨尾似船篇』(新典社、2024.10.6、3,600円)
 寛文から元禄の長きにわたって京都で活躍した俳諧師似船(1629-1705)の全発句の注釈。作品は雲英末雄編『元禄京都諸家句集』に基づくもの。(2024.10.8)

589.後藤昭雄(ごとう・あきお)『平安朝詩文論集』(勉誠社、2024.9.25、12,000円)
 奈良・平安時代における漢籍の受容や、漢文のさまざまな文体における問題、文人の伝記など、表題が示す諸問題を扱う論集。「史料所載平安朝詩詩題索引」を付す。(2024.10.8)

588.松尾葦江(まつお・あしえ)編『長門本平家物語の新研究』(花鳥社、2024.10.7、4,300円)
 読み本系のなかでも、室町時代以降広汎に流布したと思われる系統である長門本について、赤間神宮蔵本をはじめ、現存諸本の本文研究、近世における流布の様相、近代の研究史など、多岐にわたるテーマを論じる。(2024.10.8)

587.前田雅之(まえだ・まさゆき)『戦乱で躍動する日本中世の古典学』(文学通信、2024.7.31、12,500円)
 中世を通じて形成された古典的公共圏と、そこで行われた創作と注釈の営みについて、ジャンルを超えて縦横に論じる。(2024.10.8)

586.阿部泰郎(あべ・やすろう)楠淳證(くすのき・じゅんしょう)編『解脱房貞慶の世界 『観世音菩薩感応抄』を読み解く』(龍谷大学仏教文化研究叢書53、法藏館、2024.9.15、2,500円)
 鎌倉時代の仏教に大きな影響を与えた貞慶の生涯と著作、特に表題の書や春日信仰などについて、多面的に論じる。執筆者(編者以外):牧野淳司・阿部美香・舩田淳一・近本謙介・高橋悠介・松井美樹・瀬谷貴之・後藤康夫・西山良慶・蜷川祥美。(2024.10.8)

585.小川剛生(おがわ・たけお)『「和歌所」の鎌倉時代 勅撰集はいかに編纂され、なぜ続いたか』(NHKブックス1285、NHK出版、2024.6.25、1,800円)
 『新古今和歌集』から『続後拾遺和歌集』まで、鎌倉時代に編纂された勅撰和歌集9作品について、撰者およびその編纂室である和歌所に注目して過程を追う。(2024.10.8)

584.永井荷風(ながい・かふう)著、中島国彦(なかじま・くにひこ)多田蔵人(ただ・くらひと)校注『断腸亭日乗(一)大正六―十四年』(岩波文庫緑42-14、岩波書店、2024.7.12、1,150円)
 世相批判、華やかな交友関係と観劇、フランス文学や江戸の漢学・漢詩文の読書、そして創作活動など、金銭関係や女性関係も含めた文学者の生活を見せてくれる。登場人物を中心とする注釈を施す。(2024.8.9)

583.鄭振鐸(てい・しんたく)著、高津孝(たかつ・たかし)李光貞(り・こうてい)監訳『中国俗文学史』(東方書店、2023.10.1、12,000円)
 戯曲あるいは民間説話等の口承文芸などの俗文学を文学史上に定位した、中国文学研究史上の画期的な著作として知られている書に、現在の研究から注を付して翻訳したもの。(2024.8.4)

582.財団法人正宗文庫(ざいだんほうじんまさむねぶんこ)監修・小川剛生(おがわ・たけお)編注『正宗敦夫文集1 ふぐらにこもりて』(東洋文庫916、2024.7.10、4,000円)
 万葉集その他日本古典文学研究に大きな足跡を残し、また『日本古典全集』の刊行によって資料整備にも尽くした正宗敦夫が、収集資料の保存・利用を目的に設立した正宗文庫のことや、交友関係などについて記したエッセイを集成したもの。解題・注を付して理解を助ける。(2024.8.4)

581.説話文学会(せつわぶんがくかい)編『説話文学研究の海図 説話文学会60周年記念論集』(文学通信、2024.6.29、3,200円)
 記念大会における講演・シンポジウム・ラウンドテーブルの記録、および関連して行われた座談会、会員によるエッセイから成る。説話文学研究の過去と現在をさまざまな観点から照らし出している。(2024.8.4)

580.栗本賀世子(くりもと・かよこ)『源氏物語の舞台装置 平安朝文学と後宮』(歴史文化ライブラリー596、吉川弘文館、2024.6.1、1,700円)
 内裏後宮の殿舎それぞれの歴史・特性を史料を駆使して明らかにした上で、物語のなかでそれがどのように利用されているか、登場人物の個性付けにどのように生かされているかを読み解く。(2024.6.16)

579.揖斐高(いび・たかし)『頼山陽―詩魂と史眼』(岩波新書2016、岩波書店、2024.5.17、1,120円)
 近世後期を代表する詩人・史家の頼山陽について、伝記および著作を関連させつつ読み解く。(2024.6.16)

578.中西健治先生喜寿記念論集編集委員会編『日本古典文学の言葉と思想』(武蔵野書院、2024.5.15、12,000円)
 中古・中世の物語を中心に、中世和歌・漢詩、近世の演劇・伝承文学など幅広い論考を集める。(2024.6.16)

577.木下昌規(きのした・まさき)編『足利義政』(シリーズ室町幕府の研究5、戎光祥出版、2024.5.20、7,000円)
 足利義政の時代における政治経済および文化に関する重要な既発表論考(既に単行本に収録されているのも、リポジトリー等で入手可能なものを除く)11本を収め、冒頭に編者による総説を置く。(2024.5.5)

576.齋藤希史(さいとう・まれし)田口一郎(たぐち・いちろう)『漢文の読法 史記 游侠列伝』(KADOKAWA、2024.3.29、1,620円)
 西田太一郎『漢文の語法』の応用編として、『史記』游侠列伝の全文について、15日にわたって丁寧に講読するという体で執筆されたもの。問題点を対談形式のコラムにして挟み込む、全体を二色刷にするなど、読みやすくするための工夫がある。(2024.5.5)

575.横山太郎(よこやま・たろう)編『わざを伝える 能の技芸伝承の領域横断的研究』(能楽研究叢書9、2024.3.25、非売品)
 能における演技の型の指導・伝承に関する総合的な研究書。資料図録・翻刻・論文・実験観察等から成る。執筆者:中司由起子・林容市・深澤希望・山中玲子・横山太郎(2024.5.5)

574.花園大学歴史博物館編『自性寺』(花園大学歴史博物館、2023.5.15、2,100円)
 大分県中津市にある藩主奥平家菩提寺でもある臨済宗寺院自性寺所蔵書画等の展覧会図録。歴代住持の頂相・墨蹟、藩主の肖像画などさまざまな書画を収める。これとは別に池大雅の書画が描かれた襖絵を所蔵しており、今回の図録には大正期の拝観者名簿が全冊掲載されている。(2024.5.5)

573.鈴木虎雄(すずき・とらお)『豹軒詩遺稿』(一般財団法人橋本循記念會(発売:法藏館)、2024.3.25、5,000円)
 中国文学者鈴木虎雄の漢詩のうち、未刊だった最晩年の1951年から1962年の作を収める。附録として、年譜・著作目録のほか、小川環樹・興膳宏の文章を収める。編校後記:芳村弘道。(2024.4.21)

572.渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)監修『イラストで楽しくわかる ときめく百人一首図鑑』(ナツメ社、2024.4.1、1,700円)
 全編イラスト入り、百人一首の解釈はもちろん、重要な文法・レトリック、人物・風俗・歴史など、周辺の知識を合わせて学べるよう工夫されている。(2024.4.21)

571.河野貴美子(こうの・きみこ)杜暁勤(と・ぎょうきん)編『中日古典学ワークショップ論集―文献・文学・文化―』第一巻(汲古書院、2024.3.25、16,000円)
 早稲田大学・北京大学の共催による表題の催しを論文集にまとめたもの。日本における漢籍の受容、日本に残る漢籍古写本、日本漢文学の展開などについて、両国の研究者がそれぞれの知見を生かして論じている(が、中国側研究者には日本における先行研究への認識不足がある場合がある)。(2024.4.21)

570.盛田帝子(もりた・ていこ)ロバート・ヒューイ編『江戸の王朝文化復興 ホノルル美術館所蔵レイン文庫『十番虫合絵巻』を読む』(文学通信、2024.3.31、2,800円)
 表題の作品のカラー画像、翻刻・注釈・現代語訳(盛田・松本大・飯倉洋一)、論考を収め、全ての英語訳(注釈は抜粋)も収める。(2024.4.21)

569.盛田帝子(もりた・ていこ)編『古典の再生』(文学通信、2024.3.31、2,800円)
 主として近世・近代における平安時代の古典の享受やイメージの変遷などを扱う。(2024.4.21)

568.重田みち(しげた・みち)編『「日本の伝統文化」を問い直す』(臨川書店、2024.3.31、7,000円)
 宗教・美術・書籍などを対象に、中国文化の影響や、近代以降に認識された日本の伝統などを、多様なアプローチから再検討する試み。(2024.4.21)

567.安井重雄(やすい・しげお)編『歌合の本質と展開 中世・近世から近代へ』(龍谷大学仏教文化研究叢書、法藏館、2024.2.28、5,500円)
 龍谷大学世界仏教文化センターの研究プロジェクトの成果として、中世初期の歌合の作品論、近世における歌合の展開、証本の書写などについての論考を収める。(2024.4.21)

566.日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画 国際共同研究「麻布一本松狩野家資料に関する画題の国際化のための基盤研究・編『粉本画像を読み解く―麻布一本松狩野家資料への多角的アプローチ』(国文学研究資料館、2024.3.31、非売品)
 東京芸術大学所蔵の表記の資料について、多分野の研究者による考察および「国書データベース」による画像公開リストを収める。(2024.4.21)

565.齋藤真麻理(さいとう・まおり)編『「戯画図巻」の世界 競う神仏、遊ぶ賢人』(KADOKAWA、2024.3.13、3,000円)
 江戸前期、狩野派の画家によって集中的に作られた和漢・神仏の古典的画題と近世風俗画の融合的図巻の紹介と解読。(2024.4.21)

564.門脇むつみ(かどわき・むつみ)芳澤勝弘(よしざわ・かつひろ)編『若冲画賛 賛を読んで知る若冲画の秘密』(朝日新聞出版、2024.3.30、4,091円)
 現存する若冲作品のうち画賛を持つものの全てについて(一部を除きカラー図版口絵あり)翻刻・注釈・現代語訳を掲げ、それを踏まえて絵画・画賛全体への考察を行う。(2024.3.17)

563.佐藤温(さとう・あつし)『幕末の社会変革と文芸』(文学通信、2024.2.29、6,500円)
 幕末の豪商かつ文筆活動でも知られる大橋淡雅・菊池教中・大橋訥庵、および両家をつなぐ女性たち(菊池民子・大橋巻子)にも注目して、経済活動・文芸活動・政治(思想)活動の三つを関連付けていく、という新たな試み。(2024.3.17)

562.京都大学黄氏口義研究会編『抄物を読む 『黄氏口義』提要と注釈』(臨川書店、2024.2.28、5,200円)
 抄物を読むためには、どのような知識・参考書・手続きが必要かを、黄庭堅の詩の抄物に即して丁寧に述べ、後半でその実例を挙げる。編者名となっている研究会の成果をまとめたもの。(2024.3.17)

561.中本真人(なかもと・まさと)『新潟医科大学の俳人教授たち』(ブックレット新潟大学82、新潟日報メディアネット、2024.3.31、1,000円)
 大正後半から昭和戦前期、新潟医科大学の教員だったホトトギス系俳人中田みづほ、高野素十らの活動を、虚子らの動向も交えて描写、本業を持った俳人の典型的なあり方や、その社会的意義などについても示唆する。(2024.3.17)

560.田渕句美子『百人一首―編纂がひらく小宇宙』(岩波新書2006、岩波書店、2024.1.19、880円)
 百人一首の成り立ちを、最新の研究に基づき推測、定家編纂説を明確に否定した上で、百人秀歌と百人一首の違いを、特に配列を中心に指摘する。また室町以降の受容や展開なども総合的に叙述し、和歌を中心とした日本文学史を通覧できる。(2024.3.2)

559.森正人(もり・まさと)『今昔物語集の怪異を読む 巻第二十七「霊鬼」』(勉誠社、2023.12.20、4,800円)
 表題にある巻の全45話を、著者自身の研究や関心の広がりを踏まえて詳細に読み解いたもの。本文・注・梗概・読解から成り、読解には最新の研究状況が反映されている。(2024.1.6)

558.白山本宮神社史編纂委員会編『白山比盗_社史近世篇』(白山比盗_社、2023.10.15、北國新聞社発売、6,000円)
 古代・中世篇に続いて編纂されたもので、組織、布教活動の実態、加賀前田家・曹洞宗あるいは越前・美濃馬場との関係など、多方面にわたる記述がある。別冊として『白山長吏旧記』(橋本政宣校訂)を付す。(2024.1.6)

557.すみだ北斎美術館編『北斎サムライ画伝』(すみだ北斎美術館、2023.12.14、税込2,600円)
 刊行日より2024年2月25日まで開催する同題の特別展の図録。絵本や読本挿絵なども含めた北斎の画業が楽しめる。執筆:荒川史人、竹村誠、千葉椎奈。(2024.1.6)

556.小川剛生(おがわ・たけお)・浅井美峰(あさい・みほ)校注『菟玖波集』(上)(中世の文学、三弥井書店、2023.10.17、8,500円)
 連歌准勅撰集『菟玖波集』巻一から十一までの注釈。これまであまり注目されていなかった渡辺本を底本とする。語注・付合・典拠等および現代語訳もある詳しい内容。(2024.1,2)

555.佐藤道生(さとう・みちお)『日本人の読書 古代・中世の学問を探る』(勉誠出版、2023.9.20、12,000円)
 博士家の学問の基礎であり成果である漢籍古写本の書写・訓点・伝来、またそれを維持した家や学者について論じる。図版多数。(2024.1.2)

554.佐伯真一(さえき・しんいち)『熊谷直実 浄土にも剛の者とや沙汰すらん』(ミネルヴァ日本評伝選、ミネルヴァ書房、2023.12.10、3,200円)
 『平家物語』で強い印象を残す登場人物熊谷直実について、最新の歴史学研究を踏まえた伝記、『平家』『吾妻鏡』『法然伝』などでの描かれ方、中世における能・御伽草子等での展開、さらに近世における浄瑠璃・歌舞伎・勧化本等に見る変容、近代の武士道概念との関係など、特異なイメージを背負った人物像の歴史的変遷をたどる。(2023.12.9)

553.岸本覚(きしもと・さとる)曽根原理(そねはら・さとし)『書物の時代の宗教 日本近世における神と仏の変遷』(アジア遊学287、勉誠出版、2023.9.1、2,800円)
 出版文化が一般化した近世における宗教のありかたを書物の受容という観点から考える。執筆者;横田冬彦、W.J.ボート、曽根原理、若尾政希、佐藤俊晃、M.M.Eバウンステルス、湯浅佳子、山澤学、福原敏男、佐藤眞人、中川仁喜、朴澤直秀、岸本覚、大川真。(2023.12.9)

552.杉下元明(すぎした・もとあき)『比較文学としての江戸漢詩』(汲古書院、2023.8.28、9,500円)
 著者の第二論文集。いわゆる木門およびその周辺の祇園南海・梁田蛻巌の研究を中心としながら、日本史上の人物に対する江戸の詩人たちの見方、詠じ方、また近現代小説における漢文学の受容などにも話題が広がる。(2023.11.5)

551.田渕句美子(たぶち・くみこ)米田有里(こめだ・ゆり)幾浦裕之(いくうら・ひろゆき)齊藤瑠花(さいとう・るか)『阿仏の文〈乳母の文・庭の訓〉注釈』(青簡舎、2023.9.30、7,600円)
 阿仏尼が娘に対して宮中の女房としての心得を説いた作品の注釈・現代語訳および底本の影印・翻刻・校異、さらに研究篇として女房文学における位置、諸本研究、作者の伝記等、行き届いた内容。(2023.11.5)

550.高木和子(たかぎ・かずこ)『源氏物語入門』(岩波ジュニア新書974、岩波書店、2023.9.20、960円)
 物語成立の背景、筋立て、登場人物の造形、さまざまな視点による読解、研究史など、単なる物語の内容のダイジェストではない内容を盛り込んでいる。(2023.11.5)

549.連歌注釈書刊行会編『百韻連歌撰注釈』第一巻(新典社、2023.7.31、2,700円)
 鎌倉末期から安土桃山期にかけての5種の百韻連歌の注釈。頭注(語注や典拠となる和歌等)、現代語訳、脚注(付合の様子や寄合語)という三段構えで丁寧に行う。(2023.8.15)

548.荒井健(あらい・けん)田口一郎(たぐち・いちろう)訳注『荻生徂徠全詩』2(東洋文庫914、平凡社、2023.6.13、3,800円)
 古文辞派の領袖荻生徂徠の詩を詳細な典拠探索に基づき読解する第2冊。『徂徠集』巻3・4を収める。(2023.8.14)

547.久保田淳(くぼた・じゅん)石澤一志(いしざわ・かずし)小山順子(こやま・じゅんこ)『新後撰和歌集』(和歌文学大系8、明治書院、2023.7.10、15,000円)
 嘉元元年(1303)二条為世によって編まれた第13番目の勅撰和歌集の注釈。(2023.8.14)

546.本間洋一(ほんま・よういち)『詩人たちの運命―漢詩夢想―』(和泉書院、2023.6.25、1,800円)
 平安初期の平城天皇から、大江匡房・藤原忠通ら、五山僧雪村友梅、江戸時代の新井白石と、著者お気に入りの詩人たちについて、エッセイ風にまた小説風に、作品の鑑賞をその人物の生涯とからめて綴る。(2023.8.14)

545.河村瑛子(かわむら・えいこ)『古俳諧研究』(和泉書院研究叢書558、和泉書院、2023.5.30、13,000円)
 近世前期俳諧のことばから、近世人のものの考え方・見方を解き明かし、また逆に俳諧的表現の面白さを発見させる。後半部は元和から天和に至る古俳諧年表。(2023.6.4)

544.鈴木健一(すずき・けんいち)『日本近世文学史』(三弥井書店、2023.5.26、5,800円)
 詩歌・注釈・小説・文章・演劇というジャンルで縦割りにした文学史。注釈と文章をジャンルとして立てたことは、近世文学の特質を踏まえた措置であろう。和歌・漢詩に紙幅を割いているのは著者の専門性・嗜好性をよく表している。(2023.6.4)

543.合山林太郎(ごうやま・りんたろう)編『大沼枕山と永井荷風『下谷叢話』―新視点・新資料から考える幕末明治期の漢詩と近代―』(二松学舎大学東アジア学術総合研究所日本漢学研究センター日本漢学研究叢刊3、汲古書院、2023.3.31、9,000円)
 近年国会図書館および二松学舎大学に寄贈された、大沼家旧蔵の枕山および女婿鶴林等の関係資料の紹介・分析を含め、表題のテーマに関する論文を集める。(2023.6.4)

542.中尾友香梨(なかお・ゆかり)・白石良夫(しらいし・よしお)・中尾健一郎(なかお・けんいちろう)・村上義明(むらかみ・よしあき)編、小城鍋島文庫研究会校注『和学知辺草わがくしるべぐさ【翻刻・注釈・現代語訳】』(文学通信、2023.4.25、6,000円)
 寛政5年(1793)に成立した小城鍋島文庫蔵写本(孤本)である和学入門書の注解書。著者は藩医松隈亨安と推測される。中国あるいは儒学と対比させながら、日本および国学(歴史・宗教・文学など)をわかりやすく説く。注釈典拠一覧・索引を付す。(2023.6.4)

541.中川博夫(なかがわ・ひろお)『柳葉和歌集新注』(新注和歌文学叢書31、青簡舎、2023.4.20、22,000円)
 宗尊親王が鎌倉幕府将軍だった時代の作品を自ら選んだかとされる歌集の注釈。影響を受けた歌のみならず、影響を与えた歌も例示するなど、専門家にとって有益なものとなっている。(2023.6.4)

540.鈴木健一(すずき・けんいち)『近世文学史論―古典知の継承と展開―』(岩波書店、2023.2.9、9,400円)
 後水尾院研究を出発点とした著者が、そこを起点として時代・ジャンル・題材・視点を横断的に論じた近世文学史。数多くの編著などの知見も生かされている。(2023.4.2)

539.西田太一郎(にしだ・たいちろう)著、齋藤希史(さいとう・まれし)田口一郎(たぐち・いちろう)校訂『漢文の語法』(角川ソフィア文庫E202-1、KADOKAWA、2023.1.25、1,620円)
 1980年に角川小辞典の一冊として刊行された同書を、引用文等を再点検し、補注を加えて刊行したもの。春秋戦国から漢にかけての名文(『春秋左氏伝』『戦国策』『史記』などが多い)に触れながら、さまざまな語法を理解できる。解説・索引を付す。(2023.4.2)

538.岡雅彦(おか・まさひこ)編『江戸時代前期出版年表〔万治元年〜貞享五年〕』(上下二巻、勉誠出版、2023.2.25)
 『江戸時代初期出版年表』に続く1658年から1688年の31年間に刊行された書籍の刊記一覧。コロナ禍で図書館が閉鎖された時期で実見できない資料も多かったなか蓄積されたデータを集成したもの。前著同様、所蔵先・請求番号を明記、版元を入木した後印本も網羅している。また、実見できなかった書目を各年末に列挙していて、今後の補遺を読者にも促している。(2023.4.2)

537.岡雅彦(おか・まさひこ)落合博志(おちあい・ひろし)桑名法晃(くわな・ほうこう)長田和也(ながた・かずや)中前正志(なかまえ・まさし)那須陽一郎(なす・よういちろう)原雅子(はら・まさこ)村木敬子(むらき・けいこ)編『深草瑞光寺所蔵元政上人資料集 近世京洛寺院の学問とネットワーク』(勉誠出版、2023.3.31、20,000円)
 元政が開いた瑞光寺に所蔵される自筆本、来簡、元政ゆかりの人物の筆跡などさまざまな資料をすべて翻刻し解題を付したもの。後世の人々が元政を慕って寄せた詩文なども含まれ、今後の元政研究の基礎資料となるものであろう。(2023.4.2)

536,長田和也(ながた・かずや)『江戸中期以降遊里文藝考』(汲古書院、2023.2.20、8,000円)
 書誌学的知見をふまえつつ、洒落本・考証随筆・読本などジャンルをまたいで遊里を舞台とする作品を考察する。一歩離れた立場から冷静に文学作品として分析する姿勢を貫いている。(2023.4.2)

535.楊昆鵬(よう・こんほう)『詩歌交響 和漢聯句のことばと連想』(臨川書店、2023.2.28、4,800円)
 和漢聯句の表現について、題材ごとに考察するという膨大な作業量を必要とする論考を重ねてきた著者の論文集。五山文学における一般的な詩よりも制約の多いなかで、新たな表現や発想が生まれてくる様子を示している。(2023.4.2)

534.山本佐和子(やまもと・さわこ)『抄物の言語と資料 中世室町期の形容詞派生と文法変化』(くろしお出版、2023.2.25、6,800円)
 抄物を材料とした中世後期日本語の語彙・文法に関する論考を中心とするが、抄物資料そのものの成立・内容およびそれに関わった五山僧等についても幅広く考察する。(2023.4.2)

533.神戸説話研究会(こうべせつわけんきゅうかい)編『世継物語注解』(研究叢書554、和泉書院、2023.2.20、13,500円)
 近世版本のみで知られる説話集『世継物語』の詳細な注釈と、成立・享受その他の論考を収める。説話標題・関連文献一覧、人名・地名等の索引を付す。(2023.4.2)

532.鈴木淳(すずき・じゅん)『北斎絵本考』(ぺりかん社、2023.3.15、6,000円)
 江戸の風俗、俗文芸、版画美術、出版などの知見を持ち、在外資料の調査も幅広く行った著者ならではの論考。(2023.4.2)

531.鈴木淳(すずき・じゅん)『エドモン・ゴンクール著『北斎』覚書』(ひつじ書房、2022.8.5、3,800円)
 江戸時代の絵本研究から派生して、19世紀フランスにおける浮世絵特に北斎の受容を考える上で欠かせない表題の書の成立とその背景を論じたもの。(2023.4.2)

530.名古屋市『芸処名古屋』(名古屋市、三省堂書店発売、2022.5.24、1,500円)
 古代以来の伝統や、尾張藩(特に徳川宗春)の文化政策などによって、芸能が隆盛した名古屋のさまざまな文化(演劇・音楽・芸能・食文化など)をわかりやすく解説する。寄稿:安田文吉。(2023.1.29))

529.橋本素子(はしもと・もとこ)三笠景子(みかさ・けいこ)編『茶の湯の歴史を問い直す 創られた伝説(ストーリー)から真実(ヒストリー)へ』(筑摩書房、2022.11.20、3,636円)
 佗茶を頂点とする茶道史を見直して、禅宗との関わり、将軍家・大名家における喫茶儀礼、出土品から見る陶磁器使用の実態、などから考える。(2023.1.29)

528.高梨素子(たかなし・もとこ)『後水尾院御会研究 付『伊勢物語聞書』翻刻』(新典社研究叢書357、2022.11.12、17,800円)
 後水尾院歌壇における御会和歌の実態を伝本・懐紙作法・添削・歌合記録などから探る。付録として後水尾院講釈の伊勢物語聞書の翻刻と分析を載せる。(2022.12.10))

527.平田茂樹(ひらた・しげき)山口智哉(やまぐち・ともや)小林隆道(こばやし・たかみち)梅村尚樹(うめむら・なおき)編『宋代とは何か』(アジア遊学277、勉誠出版、2022.11.25、3,200円)
 宋代史研究の現状を、政治・社会・文化・宗教などの最前線から解説。文学関係では、浅見洋二氏の陸游詩の論、緑川英樹氏の万里集九による黄庭堅注釈の論を含む。(2022.12.10)

526.深沢眞二(ふかさわ・しんじ)『芭蕉のあそび』(岩波新書1949、岩波書店、2022.11.18、900円)
 芭蕉の発句に見られる誹諧性を、しゃれ・パロディ・もじり・なぞといった言葉遊びや古典を一ひねりした遊びの視点から読み解いていく。(2022.12.10)

525.村尾誠一(むらお・せいいち)『教養としての日本古典文学史』(2022.11.5、笠間書院、1,900円)
 世紀で区切って、古代から近代の入り口まで、主要作品・作家を押さえつつ、文化史的なトピックも織り交ぜてわかりやすく叙述する。(2022.11.5)

524.古勝隆一(こがち・りゅういち)『中国注疏講義 経書の巻』(2022.9.30、法藏館、1,800円)
 宋代に『十三経注疏』としてまとめられる経書の注釈について、概要を説明し、具体的にいくつかの経書の注疏を読み解く。形音義と言われる漢字の三要素についての説明やその参考書についても詳しい。(2022.10.29)

523.中川博夫(なかがわ・ひろお)田渕句美子(たぶち・くみこ)渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)『百人一首の現在』(2022.101.15、青簡舎、9,000円)
 近年研究の進展が著しい『百人一首』について、成立・伝本・注釈等の受容などの論文と、『百人秀歌』の注釈等を収める。(2022.10.29)

522.石川透(いしかわ・とおる)『奈良絵本・絵巻 中世末から近世前期の文華』(平凡社選書237、平凡社、2022.7.25、3,600円)
 『日本古書通信』連載の、奈良絵本・絵巻についてのエッセイをまとめたもの。制作について、内容について、またコレクターでもある著者の収集をめぐるエピソードなども知ることが出来る。(2022.8.11)

521.曲亭馬琴(きょくてい・ばきん)著、木越俊介(きごし・しゅんすけ)校註『羈旅漫録 付 蓑笠雨談』(東洋文庫907、平凡社、2022.6.24、3,800円)
 享和2年(1802)馬琴が行った関西旅行の見聞録『羈旅漫録』およびそのダイジェスト版の刊本『蓑笠雨談』の翻刻・解題、および前者の注釈を収める。当時の上方風俗への馬琴の好奇心と観察眼、創作との関連などがわかる。(2022.7.23)

520.斎田作楽(さいたさくら)翻刻訓注『浦上玉堂自筆二種 北遊草*宋詩奇絶〈原寸影印〉』(太平文庫84、太平書屋、2022.5、税込8,000円)
 文人画家浦上玉堂の未紹介資料である漢文の紀行(大坂・奈良・吉野・城崎・久美浜等をめぐる)『北遊草』および柏木如亭『宋詩清絶』正続の自筆稿本を抄写した『宋詩奇絶』の原寸大影印・翻刻および前者の詳細な注釈を収める。高橋博巳の序説を付す。(2022.7.23)

519.岸本恵美(きしもと・えみ)白井純(しらい・じゅん)『キリシタン語学入門』(八木書店、2022.3.25、2,500円)
 キリシタン文献の研究の過去と現在を、語学に限定せず概観、さらに語学書・文学書・宗教書の個別の作品についての詳細な解説を載せる。(2022.5.19)

518.陣野英則(じんの・ひでのり)『堤中納言物語論 読者・諧謔・模倣』(新典社研究叢書352、新典社、2022.4.27、9,500円)
 個別の作品の仕掛けを読み解いていくとともに、女房への教訓書としての側面、読者を取り込んで作られている側面など、物語が持つ多面性に注目している。(2022.5.19)

517.中尾友香梨(なかお・ゆかり)『小城藩主 鍋島直能―文雅の交流』(佐賀学ブックレット9、佐賀大学地域学歴史文化研究センター発行・海鳥社発売、2022.3.31、1,000円)
 佐賀藩支藩である小城藩二代藩主鍋島直能の、領地小城に造営した桜岡の庭園とそれを描く漢文や和歌、そして江戸藩邸での林家一門との交流、また朱舜水に入門させた家臣を通じた交流などを描く。(2022.4.16)

516.高橋悠介(たかはし・ゆうすけ)編『宗教芸能としての能楽』(アジア遊学265、勉誠出版、2022.1.25、3,000円)
 能楽作品の背後にあり、また詞章や演出にも表れている宗教性について神道・仏教両面から論じる。(2022.4.3)

515.木俣元一(きまた・もとかず)近本謙介(ちかもと・けんすけ)編『宗教遺産テクスト学の創成』(勉誠出版、2022.3.30、15,000円)
 中国・日本を中心に、世界各地に残された宗教に関する文献・文化財をめぐる研究・科学的分析・アーカイヴ化など、諸問題を扱う。(2022.4.3)

514.近本謙介(ちかもと・けんすけ)編『ことば・ほとけ・図像の交響 法会・儀礼とアーカイヴ』(勉誠出版、2022.3.20、12,000円)
 日本仏教関係の文献と図像・儀礼など、美術や芸能とも関わる分野との融合的研究を集める。(2022.4.3)

513.佐久間秀範(さくま・ひでのり)近本謙介(ちかもと・けんすけ)本井末紀子(もとい・まきこ)編『玄奘三蔵 新たなる玄奘像をもとめて』(勉誠出版、2021.12.28、12,000円)
 玄奘三蔵の実像(仏教思想史)と、中国・日本における受容および説話化、特に『玄奘三蔵絵』について、多方面からの論考を集める。(2022.4.3)

512.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝文粋抄』七(勉誠出版、2022.2.25、3,200円)
 全11編を収録、詔・祝文・書・序(書序・詩序)・奏状を収める。作品の生まれる状況や、説話・絵巻など後世への影響など、作品内部に留まらない広がりがある。(2022.4.2)

511.久保田淳(くぼた・じゅん)・高野春代(たかの・はるよ)・鈴木宏子(すずき・ひろこ)・高木和子(たかぎ・かずこ)・高橋由記(たかはし・ゆき)『古今和歌集』(和歌文学大系5、明治書院、2021.12.20、13,500円)
 『古今和歌集』の最新の注釈書。脚注は最低限の注と通釈に抑え、先行注の要点を補注で述べる。出所・人名・地名一覧および初句索引を付す。(2022.1.4)

510.小助川元太(こすけがわ・がんた)・橋本正俊(はしもと・まさとし)編『室町前期の文化・社会・宗教 『三国伝記』を読みとく』(アジア遊学263、勉誠出版、2021.11.30、2,800円)
 15世紀前半に成立した、最後の説話集とも言われる『三国伝記』を読み解くことによって、そこに表れた同時代の政治・宗教・文化、また説話モチーフの受容や変容を論じる。(2022.1.4)

509.中本真人(なかもと・まさと)『なぜ神楽は応仁の乱を乗り越えられたのか』(新典社選書109、新典社、2021.12.22、1,350円)
 応仁の乱を経て復興した内侍所御神楽について、公家日記などを活用して、時代の様相を幅広く描きつつ、それに関わった公家たちの活躍を活写する。(2022.1.4)

508.和歌文学会出版企画委員会編『和歌のタイムライン 年表でよみとく和歌・短歌の歴史』(三弥井書店、2021.11.18、2,000円)
 上代から昭和まで、和歌・短歌に関する事項を年表形式で掲げ、それぞれの時代に関するトピックをコラムにして挿入する。(2022.1.4)

507.山本嘉孝(やまもと・よしたか)『詩文と経世 幕府儒臣の十八世紀』(名古屋大学出版会、2021.10.20、6,300円)
 木下順庵門下の擬古詩を中心に、これまであまり取り上げられてこなかった人物やテーマにも目を配りつつ、近世中期の儒学・漢文学と政治や他の技芸との関わりについて論じる。(2021.12.18)

506.齋藤希史(さいとう・まれし)『漢文ノート 文学のありかを探る』(東京大学出版会、2021.10.29、2,700円)
 『UP』連載のエッセイを加筆再編したもの。何気ない日常の一コマや、大学教員としての仕事などから筆を起こして、中国・日本の漢詩文を中心に、近代小説などにも触れつつ、文学が描いてきた世界を探る。(2021.12.18)

505.木越治(きごし・おさむ)『ひとまずこれにて読み終わり』(文化資源社、2021.10.25、1,200円)
 子息木越俊介氏、教え子丸井貴史氏によって、生前著者が企図していたエッセイ集を、雑誌・新聞・ブログなどから厳選して編集したもの。多彩な趣味や芸術への関心がどこかしら自身の研究とつながっている様子がよくわかる。(2021.10.31)

504.停雲会(小林ふみ子・佐藤温・杉下元明・日原傳・堀口育男)『墨水四時雑詠*注解』(太平文庫83、太平書屋、2021.9、5,000円)
 遠山雲如が詠んだ隅田川の四季折々の風物の詩集の注解。版本の影印、斎田作楽氏による小伝を付す。(2021.10.31)

503.本間洋一(ほんま・よういち)『詩人たちの歳月―漢詩エッセイ―』(和泉書院、2021.10.26、1,500円)
 奈良・平安時代の漢詩人とその作品を、共感をこめて描き出す。すべて現代語訳を付して理解を助ける。(2021.10.31)

502.高梨素子(たかなし・もとこ)『後水尾院時代の和歌』(新典社選書104、新典社、2021.10.20、1,900円)
 後水尾院の歌歴を中心に、この時代の堂上和歌・和学を平易に解説する。短歌雑誌に連載した記事をまとめたもの。(2021.10.31)

501.石田千尋(いしだ・ちひろ)『富士山と文学』(新典社、2021.7.7、2,550円)
 山梨県内の大学教員として、世界文化遺産登録を見据えた富士山の学術調査に長年関わった著者が、その過程で調査分析した古典文学における富士山の描かれ方を、古代から近代にわたって論じたもの。また、県内のケカチ遺跡出土の和歌刻書土器の詳細な検討論文も収める。著者の遺稿集。(2021.9.25)

500.中尾健一郎(なかお・けんいちろう)・中尾友香梨(なかお・ゆかり)編『石井鶴山先生遺稿』(2021.5.20、公益財団法人孔子の里、税込8,500円)
 佐賀藩儒石井鶴山(1744-90)の漢詩文の翻刻。全国各地の詩人・文人との交友を持った足跡を知ることができる重要な資料が初めて紹介された。(2021.8.22)

499.堀口育男(ほりぐち・いくお)註解『『鍼肓?』註解―齋藤竹堂の常陸・房總紀行―』(太平文庫82、太平書屋、2021年7月、税込10,000円)
 仙台藩の陪臣の家に生まれ、昌平黌に学んで俊才を謳われながら若くして亡くなった斎藤竹堂の紀行文の詳細なる注解(校異・訓読・語釈・通釈)。参考図版も充実している。(2021.8.22)

498.塩村耕(しおむら・こう)校注『大田常庵日記』(太平文庫81、太平書屋、2021年3月、税込10,000円)
 幕末を尾張藩医として、明治を市井の医者として生きた大田常庵という人物の日記の翻刻。人名・地名・方言等に加えられた注、大田家およびその周辺に関する解説と明治期の地図が理解を助ける。神仏への信仰、日々の食事、交友や親戚付き合いとそれに伴う金撰の出入りなどが細かく記されている。(2021.8.22)

497.堀誠(ほり・まこと)『日中比較文学の小径―今昔逍遥―』(汲古選書78、汲古書院、2021.5.31、3,800円)
 民俗学的な視点も含めた日中の文化的比較を、小説を主たる対象として論じたものと、そのような学識を生かした西安周辺の名所旧跡探訪記からなる。(2021.7.17)

496.高木和子(たかぎ・かずこ)『源氏物語を読む』(岩波新書1885、岩波書店、2021.6.18、900円)
 『源氏物語』全篇のプロットを追いつつ、さまざまなテーマ、表現技巧、背後にある平安時代の政治や宗教など、多様なアプローチに基づく研究史をも紹介する。参考文献・人物紹介および系図・年立を付す。(2021.7.17)

495.中村健史(なかむら・たけし)『雪を聴く 中世文学とその表現』(和泉書院、2021.3.30、3,500円)
 和歌・連歌・能・紀行文などさまざまなジャンルにおける仏典・漢籍受容の指摘、漢文学作品の読解など、見過ごされてきた作品本来の意味するところを明らかにする。(2021.4.29)

494.劉菲菲(リュウ・フェイフェイ)『都賀庭鐘における漢籍受容の研究 初期読本の成立』(和泉書院、2021.3.30、7,500円)
 初期読本の最も重要な作者である都賀庭鐘の作品について、その読書筆記『過目抄』を一つの手がかりとして、これまで指摘されていなかった明代白話小説等の粉本利用や、作品の表現・構成に与えた影響について論じる。(2021.4.29)

493.宋ヨ(そう・かん、Song Han)『平安朝文人論』(東京大学出版会、2021.3.26、5,400円)
 嵯峨朝に始まり、菅原道真や紀長谷雄、慶滋保胤や大江匡衡を経て匡房に至る、個性的な文人たちの文業を俯瞰する。(2021.4.29)

492.東京大学文学部国文学研究室編『講義 日本文学 〈共同性〉からの視界』(東京大学出版会、2021.3.26、2,700円)
 古代から近代に至る日本文学の作品・作家について、〈共同性〉をキーワードに探る。執筆:安藤宏、高木和子、鉄野昌弘、長島弘明、藤原克己、渡部泰明。全員による座談会を付す。(2021.4.29)

491.揖斐高(いび・たかし)編訳『江戸漢詩選』(下)(岩波文庫黄285-2、岩波書店、2021.3.12、1,200円)
 (上)に引き続き、江戸後期・幕末の多様な詩人の作品を収める。解説・詩人名索引を付す。(2021.3.28)

490.舘野文昭(たての・ふみあき)『中世「歌学知」の史的展開』(花鳥社、2021.2.28、13,000円)
 著者の博士論文をもとにした論文集。定家周辺の歌学、『悦目抄』、『或秘書之抄出』、冷泉流古今注、和歌説話について論じる。(2021.3.28)

489.磯水絵(いそ・みずえ)編『興福寺に鳴り響いた音楽―教訓抄の世界―』(二松学舎大学学術叢書、思文閣出版、2021.3.29、8,000円)
 2019年に行われたシンポジウムをもとにまとめられた論文集。古代から近世にわたる興福寺の仏教儀礼や芸能と関わる音楽について取り上げ、特に『教訓抄』を一つの焦点として論じる。(2021.3.28)

488.山本真由子(やまもと・まゆこ)『平安朝の序と詩歌―宴集文学攷―』(塙書房、2021.2.25、9,000円)
 和歌会の趣旨を述べる漢文体の序「和歌序」を中心に、それに倣って作られた和文の序を含め、その文学史的意義を論じる。(2021.3.28)

487.フェリス女学院大学文学部日本語日本文学科編『フェリス百人一首』(2021.2.25、非売品、市販版『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』花鳥社、1,600円)
 創立150周年記念事業として編集されたもの。公募に基づき、上代から現代までの作品を選び、教員・学生による解説とイラスト、教員による和歌の基礎知識を伝えるコラムを収める。(2021.3.27)

486.土佐朋子(とさ・ともこ)『校本 懐風藻』(新典社研究叢書335、新典社、2021.2.22、14,000円)
 著者が手がけてきた『懐風藻』伝本研究の集大成。榊原忠次旧蔵本を底本にしたもので、伝本のみならず、近世に作られたアンソロジー所収本文や学者による版本書入などにも目配りしている。(2021.3.27)

485.ハルオ・シラネ編『東アジアの自然観 東アジアの環境と風俗』(東アジア文化講座4、文学通信、2021.3.12、2,800円)
 自然とどう向き合ってきたか、文学・美術・宗教・風俗・食・年中行事などさまざまな切り口から考える。(2021.3.27)

484.東洋文庫(とうようぶんこ)編『岩崎文庫の名品 叡智と美の輝き』(山川出版社、2021.2.10、2,200円)
 三菱財閥第三代岩崎久彌によって収集された和漢の古典籍を、わかりやすい解説と的確な図版で紹介する。国宝・重文を含む漢籍・仏書の古写本・古版本、日本文学の古典の写本、古活字版、江戸の絵入版本、浮世絵などバラエティに富む内容。(2021.3.14)

483.鈴木健一(すずき・けんいち)『佐佐木信綱 本文の構築』(近代「国文学」の肖像第3巻、岩波書店、2021.2.17、3,000円)
 『万葉集』研究をはじめとして、和歌文学史、短歌雑誌『心の花』主宰など、近代の学問と創作に大きな足跡を残した佐佐木信綱の生涯と功績をまとめる。(2021.3.14)

482.川本慎自(かわもと・しんじ)『中世禅宗の儒学学習と科学知識』(思文閣出版、2021.1.30、5,600円)
 寺院の経済的側面を担う東班衆の活動、漢籍・禅籍の注釈書である抄物に見える農業・医学・数学の知識、鎌倉五山・足利学校に限定されない関東における禅宗寺院の学問など、これまでまとまって取り上げられてこなかった問題をすくい上げ、禅宗の学問が持つ多様性と同時代社会や近世社会への影響を論じる。(2021.2.7)

481.揖斐高(いび・たかし)編訳『江戸漢詩選』(上)(岩波文庫黄285-1、岩波書店、2021.1.15、1,200円)
 江戸時代の漢詩人たちの作品を通覧できるアンソロジー。上巻は幕初期の藤原惺窩から、前期を経て中期の大田南畝まで。無名詩人も取り上げ、作品の形式のバラエティにも配慮した選択になっている。(2021.2.7)

480.西尾賢驕iにしお・けんりゅう)『中世禅宗史叢説―附 禅籍の口語略解―』(吉川弘文館、2021.1.20、10,000円)
 日中の交流を中心に、中世日本の禅宗史を述べ、さまざまな機会に作られた禅僧の作品、特に疏を丁寧に読み解いていく。最後に小辞典とも言うべき禅籍口語の解説を付す。(2020.12.29)

479.中本真人(なかもと・まさと)『内侍所御神楽と歌謡』(武蔵野書院、2020.12.25、12,000円)
 平安期から南北朝期にかけての内侍所御神楽の変遷を描くことによって、宮廷政治・社会の変化を映し出す。(2020.12.29)

478.高木浩明(たかぎ・ひろあき)『中近世移行期の文化と古活字版』(勉誠出版、2020.12.10、15,000円)
 前半に、下村本平家物語および嵯峨本各種の伝本調査・書誌・本文、後半に、古活字版の出版と享受に関わった近世初期知識人たちとその出版物の考察を収める。(2020.12.29)

477.本間洋一(ほんま・よういち)『日本漢文学文藪 資料と考説』(和泉書院、2020.12.8、7,000円)
 王朝漢文学の未紹介資料『本朝小序集』『童蒙綴詞抄』の翻刻・考証、江戸時代林家による享受資料や彼らの作品についての考察などを収める。(2020.12.29)

476.三木雅博(みき・まさひろ)『和漢朗詠集とその享受 増訂版』(勉誠出版、2020.12.25、15,000円)
 1995年刊行の同名書の増訂版。初版刊行後の論文三本を加え、全体をアップデートしたもので、構成論・本文論・享受論(主として注釈書について)および出典論から成る。(2020.12.29)

475.高田信敬(たかだ・のぶたか)『文献学の栞』(武蔵野書院、2020.12.15、12,000円)
 これまで勤務先の会報等に掲載されて入手困難だった書誌学関係(版本・写本・古筆切)の論説、語義解釈等の考証などが集大成された。(2020.12.29)

474.森川昭(もりかわ・あきら)『千代倉家の四季』(円座俳句会、2020.12.15、非売品)
 俳誌『円座』の連載をまとめたもの。著者が長年調査してきた東海道鳴海宿の豪商下郷(下里)家、屋号千代倉の歴代当主日記の読解に基づいて、四季折々の行事や街道ならではの出来事など、江戸時代の人々の日常を彷彿とさせる話題をわかりやすく提示する。(2020.12.29)

473.金文京(きん・ぶんきょう)『三国志の世界』(中国の歴史4、講談社学術文庫2654、講談社、2020.11.10、1,300円)
 『三国志演義』の虚構性を対置しながら、その後の中国の文化や思想を準備した時代を描く。朝鮮半島・日本列島との関わりにも触れる。(2020.12.12)

472.鈴木健一(すずき・けんいち)編『東海道五十三次をよむ』(三弥井書店、2020.10.29、2,800円)
 江戸時代の文学・地誌・浮世絵などに描かれた東海道の宿場や名所・名物をたどり、中古中世や近代の姿にも触れる。江戸の人と一緒に旅をする気分を味わえる。(2020.12.5)

471.浅田徹(あさだ・とおる)他編『和歌史の中世から近世へ』(花鳥社、2020.11.25、17,000円)
 松野陽一氏を追悼して、早稲田大学・東北大学・国文学研究資料館などでのゆかりがあるか、専門分野を同じくする研究者に呼びかけて作られた論文集。年譜・業績目録および国文学研究資料館に寄贈された蔵書目録を付す。(2020.12.5)

470.中川博夫(なかがわ・ひろお)『中世和歌論 歌学と表現と歌人』(勉誠出版、2020.11.20、12,000円)
 著者長年の論考のなかから、本歌取論、歌論書に関わるもの、鎌倉歌壇・京極派を中心とする表現論、俊成・定家論などを集成する。(2020.12.5)

469.渡部泰明(わたなべ・やすあき)『和歌史 なぜ千年を越えて続いたか』(角川選書641、KADOKAWA、2020.10.30、1,700円)
 万葉から近世和歌まで、20人の歌人(『源氏物語』の和歌を含む)を取り上げ、祈り・境界・演技といったキーワードを使いながらそれぞれの作品を分析していく。(2020.12.5)

468.小川剛生(おがわ・たけお)『徒然草をよみなおす』(ちくまプリマー新書360、筑摩書房、2020.10.10、800円)
 近年の著者による伝記・注釈の成果に基づき、いくつかの章段を取り上げる。金沢北条氏に仕え、京のさまざまな権門に出入りしていたという作者の位置づけから読み解く新たな徒然草・兼好像が示されている。(2020.10.25)

467.久保田淳(くぼた・じゅん)『「うたのことば」に耳をすます』(慶應義塾大学出版会、2020.9.30、4,500円)
 主として短歌同人誌に連載したエッセイを中心に編集したもの。西行・定家・百人一首の歌、さまざまな歌語、さらに子規から塚本邦雄に至る近現代短歌を取り上げる。(2020.10.25)

466.小川隆(おがわ・たかし)『中国禅宗史 「禅の語録」導読』(ちくま学芸文庫オ31-1、筑摩書房、2020.4.10、1,300円)
 唐から宋にかけての禅宗の変遷と、それが伝灯という一つの系譜にまとめられていく課程を丁寧に解き明かす。最終章では、現在の研究水準に至るまでの研究史を20世紀前半からたどる。(2020.10.9)

465.高橋博巳(たかはし・ひろみ)『浦上玉堂 白雲も我が閑適を羨まんか』(ミネルヴァ日本評伝選、ミネルヴァ書房、2020.8.10、4,000円)
 岡山藩の支藩である備中鴨方藩士から、自由な生き方を求めて脱藩、特異な文人画と琴と詩とに生きた浦上玉堂の生涯を、さまざまな文人との交友や折々の詩画作品とともにたどる。(2020.9.13)

464.塩村耕(しおむら・こう)『江戸人の教養 生きた、見た、書いた』(水曜社、2020.7.23、2,000円)
 中日新聞・東京新聞に連載していた江戸時代の書物に関するエッセイを再編集したもの。見聞を記し、後世に伝えようとした江戸の人々の残した書物や書簡を紹介し、江戸時代の多様性を描くとともに、現代人が失ったもの・忘れたものを考えさせる。著者自身が古書店等を通じて入手したものも含まれ、今も貴重な古書籍が流通する国であることを実感させられる。(2020.8.28)

463.伊藤聡(いとう・さとし)吉田一彦(よしだ・かずひこ)編『宗教の融合と分離・衝突』(日本宗教史3、吉川弘文館、2020.8.1、3,800円)
 神道と仏教、仏教宗派同士の確執、排仏・排耶、国家神道など、古代から近代における日本の宗教の諸相を分析する。(2020.8.28)

462.松尾葦江(まつお・あしえ)編『無常の鐘声 平家物語』(軍記物語講座第2巻、花鳥社、2020.7.30、7,000円)
 『平家物語』の研究の現在を、諸本および伝来、作品、他ジャンルにおける享受などの多方面から論じる。(2020.8.28)

461.朝倉尚(あさくら・ひさし)『禅林の文学 戦乱をめぐる禅林の文芸』(清文堂出版、2020.5.12、21,000円)
 応仁・文明の乱で避難生活を余儀なくされた相国寺の横川景三を中心に、その文芸活動と戦乱の関係を、残された資料の読解を通じて探る。あわせて、存在感を増してきた聯句文芸についても総合的な考察を行う。(2020.5.19)

460.二宮俊博(にのみや・としひろ)『二宮俊博遺稿 津阪東陽『杜律集解』全釈』(2020.4.12序、非売品、〔宇和島〕:二宮幸夫)
 2019年に亡くなった中国文学者二宮俊博が出版を計画していた『杜律集解』の詳細な注釈の一部(序・上巻30まで)を収める。(2020.5.19)

459.ディディエ・ダヴァン『『無門関』の出世双六 帰化した禅の聖典』(ブックレット〈書物をひらく〉23、平凡社、2020.3.19、1,000円)
 中国本国では無名の公案集『無門関』が、中世日本に導入され、主に曹洞宗で注釈の対象となり、近世に入って広く普及、近代以降、『臨済録』『碧巌録』と並ぶ地位を得て世界に紹介されるまでを描く。(2020.5.19)

458.荒井健(あらい・けん)田口一郎(たぐち・いちろう)訳注『荻生徂徠全詩』1(東洋文庫900、平凡社、2020.3.13、3,800円)
 古文辞派の領袖荻生徂徠の詩を詳細な典拠探索に基づき読解する。『徂徠集』巻1・2を収める。(2020.3.28)

457.小川剛生(おがわ・たけお)『二条良基』(人物叢書302、吉川弘文館、2020.2.10、2,400円)
 南北朝期の困難な政治状況のなかで朝廷の運営に尽力し、王朝の伝統のなかに、政治的には足利義満を、文化的には連歌師・禅僧などを取り込むことによって、室町時代の政治と文化の基盤を作り出した一生を描く。(2020.3.28)

456.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝文粋抄 六』(勉誠出版、2020.1.30、3,200円)
 『本朝文粋』所収作品の注釈。今回は雑詩・対策・祭文など、これまでほとんど取り上げていなかった文体を含む11作品を収める。(2020.2.25)

455.久保田淳(くぼた・じゅん)『藤原俊成 中世和歌の先導者』(吉川弘文館、2020.1.20、3,800円)
 『千載和歌集』撰者として、また多くの歌合の判者として、王朝和歌から中世和歌への展開を主導した歌人の生涯を、家祖から子の定家までを視野に入れて論じる。(2020.2.25)

454.小島毅(こじま・つよし)『父が子に語る近現代史』(ちくま文庫こ53-2、筑摩書房、2019.11.10、800円)
 松平定信を日本の近代の起点として、明治維新へ、そして近現代史をトピック中心に叙述する。(2019.12.31)

453.小島毅(こじま・つよし)『父が子に語る日本史』(ちくま文庫こ53-1、筑摩書房、2019.10.10、800円)
 思想や歴史観を中心に、東アジアを見渡す視点から、明治維新に至る日本の歴史を縦横に語る。(2019.12.31)

452.松尾葦江編『平和の世は来るか 太平記』(軍記物語講座第3巻、花鳥社、2019.10.30、7,000円)
 最新の研究成果を収めるシリーズの第1回配本。近世への影響、歴史学からの視点も含めた多様な論考が並ぶ。(2019.11.21)

451.山下真史(やました・まさふみ)編『中島敦の絵はがき─南洋から愛息へ』(中味鋺敦の会、2019.10.15、県立神奈川近代文学館販売)
 南洋庁勤務の晩年に息子へ送った絵はがきを中心に息子からの手紙等もあわせ収める。妻への手紙は全集に収められているが、これらは今回初公開となるもの。遺族への取材に基づいた解説を付す。(2019.11.21)

450.藤原克己(ふじわら・かつみ)監修、高木和子(たかぎ・かずこ)編『新たなる平安文学研究』(青簡舎、2019.10.10、2,800円)
 監修者の指導を受けた大学院生による論文集。漢詩文・和歌・源氏物語・記録・日記と多彩な題材の論考が収められる。(2019.11.21)

449.中川博夫(なかがわ・ひろお)『竹風和歌抄新注』(上下)(新注和歌文学叢書25・26、青簡舎、2019.8.31・9.30、各15,000円)
 孤本で伝わる宗尊親王の将軍失脚後の定数歌群である『竹風和歌抄』1020首の全注釈。語釈・補説・解説あいまって和歌史への位置づけを試みる。(2019.10.19)

448.浅見洋二(あさみ・ようじ)『中国宋代文学の圏域 草稿と言論統制』(研文出版、2019.9.10、6,000円)
 宋代に編集出版される文集における真蹟・石刻の活用や本文批判、また言論統制下の文学表現のあり方などを考察、文学研究、特に中国文学研究における重要な課題である「公」と「私」の間で起こるテクストの生成・変容を論じる。(2019.10.19)

447.森正人(もり・まさと)『古代心性表現の研究』(岩波書店、2019.8.28、12,000円)
 もののけ・鬼・龍蛇・翁といった、超自然的な現象や存在に関する表現について、説話・物語・和歌その他の文学作品および仏教文献・歴史史料等を博捜・分析し、それを手がかりに古代日本人の心性を説き明かす。(2019.10.19)

446.田渕句美子(たぶち・くみこ)『女房文学史論』(岩波書店、2019.8.23、13,000円)
 中世歌道家の女房、中世に日記を残した女房についての考察に始まり、女房文学とは何かという問いのもと、語り・教育・説話など多様な視点から、源氏物語・紫式部日記・無名草紙などへと範囲を広げた論考を再構成したもの。(2019.9.23)

445.本間洋一(ほんま・よういち)『王朝漢詩叢攷』(研究叢書514、和泉書院、2019.8.8、8,500円)
 『菅家文草』『屏風土代』の注釈的研究、王朝漢詩と和歌、同時代の中国・朝鮮半島の文学状況との関係など、多方面にわたる長年の論考を集めたもの。詳しい索引を付す。(2019.9.23)

444.盛田帝子(もりた・ていこ)『天皇・親王の歌』(コレクション日本歌人選077、笠間書院、2019.6.25、1,300円)
 これまであまり注釈の対象となってこなかった近世の天皇および親王の歌を中心に取り上げて、その生涯の事蹟等も含め解説する。(2019.8.11)

443.河野貴美子(こうの・きみこ)Wiebke DENECKE(ヴィーブケ・デーネーケ)新川登亀男(しんかわ・ときお)陣野英則(じんの・ひでのり)編『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ―東アジアの文学を見直す』(勉誠出版、2019.5.30、3,800円)
 「近世化」と「近代化」をキーワードに、東アジアにおける「文」の変容を、文体・用語・文学観・メディアなどの視点から描く。(2019.7.13)

442.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(六)(岩波文庫赤45-6、岩波書店、2019.6.13、1,070円)
 最終巻。巻30・31の雑詩、雑擬を収める。古詩など漢魏詩の模擬作が多数を占め、詩の歴史と方法へのの自覚が作品の表現を磨いていく様子がわかる。末尾に編者昭明太子の序文を収める。(2019.7.13)

441.森正人(もり・まさと)『龍蛇と菩薩 伝承文学論』(和泉書院、2019.6.21、2,600円)
 龍蛇、龍宮、観音などを通じて、説話集や物語、能などに描かれる日本人の深層意識を探る試み。応用編として授業の実践報告も収める。(2019.6.30)

440.大木一夫(おおき・かずお)編『ガイドブック 日本語史調査法』(ひつじ書房、2019.5.15、2,600円)
 古典籍を含む文献資料の扱い方に始まり、日本語辞書、コーパス等電子テキストの利用法などまで、日本語史に関する情報の収集と分析の方法を教えてくれる。(2019.6.30)

439.鈴木俊幸(すずき・としゆき)『書籍文化史料論』(勉誠出版、2019.5.30、10,000円)
 書物そのものだけでなく、書物の生成・流通・享受に関わった人々が書き残した断片的記録を含む史料を、それぞれの性格や意義づけを考えつつ紹介する。冒頭に書き下ろしの、『京都書林仲間記録』未収史料の考察・翻刻・影印あり。(2019.6.8)

438.佐賀県立図書館編『佐賀県近世史料』第九編第二巻(佐賀県立図書館、2019.3.20、10,000円)
 佐賀県出身の禅僧、大潮元皓と売茶翁の著作を影印および書き下し文(一部影印のみ)で収める。大潮に関しては初めての著作集成となる。編集・執筆(解説を含む):高橋博巳。(2019.6.8)

437.文草の会(ぶんそうのかい)編『菅家文草注釈』文章編第二冊(勉誠出版、2019.5.30、6,500円)
 第一冊に引き続き巻七の、後半に表題が収められる詩序22篇の注釈。(2019.6.8)

436.水上雅晴(みずかみ・まさはる)編・田宗平(たかだ・そうへい)編集協力『年号と東アジア─改元の思想と文化─』(八木書店、2019.4.30、12,000円)
 国立歴史民俗博物館でのシンポジウムを基盤として、同博物館所蔵史料の紹介を兼ね、改元にまつわる漢籍の利用やその背後にある思想、中国・朝鮮半島・ベトナム等東アジア各国の改元の様相など多方面の論考を集成する。(2019.6.8)

435.村井章介(むらい・しょうすけ)『古琉球 海洋アジアの輝ける王国』(角川選書616、KADOKAWA、2019.3.28、2,200円)
 古代史書に表れるわずかな資料に見える姿に始まり、中世のアジア貿易国家としての発展と世界史のうねりのなかで衰退に向かい、薩摩藩侵攻を許すまでを描ききった大作。多彩な資料を丁寧に紹介し、その裏側を読み解く。(2019.4.23)

434.森正人(もり・まさと)『国文学こぼれ種』(和泉書院、2019.3.31、非売品)
 学生時代から現在に至るまで、エッセイや挨拶文、また一般向けの講演など、さまざまな場面・機会に記した文章を集める。説話・物語研究に対する著者の姿勢や関心を伺うことが出来る内容である。(2019.4.23)

433.朝倉和(あさくら・ひとし)『絶海中津研究 人と作品とその周辺』(清文堂出版、2019.2.27、20,000円)
 五山文学を代表する作家絶海中津の伝記および作品の基礎的研究と作品論、絶海の作品を収めるアンソロジーの伝本研究およびそこから派生する問題など、絶海を中心に五山文学の諸問題に及ぶ。資料翻刻を付す。(2019.3.23)

432.海野圭介(うんの・けいすけ)『和歌を読み解く 和歌を伝える 堂上の古典学と古今伝受』(勉誠出版、2019.2.20、11,000円)
 第一部には、室町から江戸にかけての古典学(古典作品の注釈)の思想的背景など、第二部・第三部には、古今伝受の実態や資料、第四部には注釈の内容に関する分析などに関する論考を収め、伝受関係資料の翻刻を付す。(2019.3.23)

431.松村雄二(まつむら・ゆうじ)『酒の歌』(コレクション日本歌人選080、笠間書院、2019.2.25、1,300円)
 『万葉集』から現代歌人・歌謡曲まで、酒をテーマにした歌のアンソロジー。近現代に厚い。(2019.3.23)

430.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(五)(岩波文庫赤45-5、岩波書店、2019.2.15、1,020円)
 巻28・29の楽府、雑詩等を収める。古詩の代表作「古詩十九首」、李陵・蘇武作とされる詩などが含まれる。(2019.3.23)

429.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(四)(岩波文庫赤45-4、岩波書店、2018.10.16、1,070円)
 巻25の続きから巻27までを収める。謝霊運・謝?の紀行詩、曹植の楽府など、『文選』に収める詩の代表作が並ぶ。(2019.3.23、掲載が遅くなりました)

428.古勝隆一(こがち・りゅういち)『目録学の誕生 劉向が生んだ書物文化』(京大人文研東方学叢書6、臨川書店、2019.2.28、3,000円)
 紀元前後、劉向・劉?父子によって編纂された『別録』『七略』の意義とその背景にある古代中国書物史、そして後世への影響を、研究史を紹介しつつ述べる。(2019.3.23)

427.小林ふみ子(こばやし・ふみこ)『へんちくりん江戸挿絵本』(インターナショナル新書034、集英社インターナショナル、2019.2.12、860円)
 草双紙・滑稽本あるいは見立絵本などの、真面目な本の挿絵や図版をパロディにした書物を紹介、安永・天明から寛政以降の大衆化への流れとともに変質していく様子にも触れつつ江戸文芸の面白さを説く。(2019.2.23)

426.揖斐高(いび・たかし)『蕪村』(コレクション日本歌人選065、笠間書院、2019.1.25、1,300円)
 蕪村の俳詩および発句を故郷・時空・叙景・文人・想像力などのキーワードで分類、その特徴を、子規・朔太郎らから近年の研究までを踏まえつつ分析鑑賞する。(2019.2.23)

425.村尾誠一(むらお・せいいち)『会津八一』(コレクション日本歌人選068、笠間書院、2019.1.25、1,300円)
 美術史学者・書家としても知られる歌人会津八一の歌(俳句一句を含む)を、奈良での詠を中心に選んで、歌人の心性を探っていく。著者の奈良への思いも感じられる。(2019.2.2)

424.二本松康宏(にほんまつ・やすひろ)編『諏訪信仰の歴史と伝承』(三弥井書店、2019.1.17、2,800円)
 歴史・文学・信仰・伝承・民俗など多方面から迫る諏訪信仰の過去と現在。時の権力や仏教信仰との関わりが興味深い。(2019.2.2)

423.三角洋一(みすみ・よういち)高木和子(たかぎ・かずこ)『物語二百番歌合/風葉和歌集』(久保田淳監修『和歌文学大系』50、2019.1.10、13,000円)
 『源氏物語』を左、『狭衣物語』その他を右で番わせた定家編『物語二百番歌合』と、鎌倉後期に勅撰集の体裁を模して物語和歌を集めた『風葉和歌集』を収める。散逸物語中の和歌を多数含む物語文学研究上も重要な資料。(2019.2.2)

422.阿部泰郎(あべ・やすろう)吉原浩人(よしはら・ひろと)編『南岳衡山と聖徳太子信仰』(勉誠出版、2018.6.29、7,000円)
 聖徳太子の転生説話に始まり、古代・中世の太子信仰について、これまであまり取り上げられてこなかった資料や視点による論考を収める。(2019.2.2)

421.橋口侯之介(はしぐち・こうのすけ)『江戸の古本屋 近世書肆のしごと』(平凡社、2018.12.14、3,800円)
 江戸時代の書籍流通について、近代と異なる様々なあり方を史料を駆使して説く。『日本古書通信』連載の原稿を大幅増補したもの。(2018.12.28)

420.水田紀久先生を追悼する会編『水田紀久先生 追悼文集』(中尾松泉堂書店、2018.12.21、非売品)
 三回忌を期に刊行された、木村蒹葭堂顕彰会・混沌会メンバーを中心とする追悼文集。(2018.12.28)

419.鈴木宏子(すずき・ひろこ)『「古今和歌集」の創造力』(NHKブックス1254、NHK出版、2018.12.20、1,500円)
 日本文学史、和歌史の上で、何が『古今和歌集』においてなされたか、歌集としての編纂方法、個別の歌の表現、万葉から古今へという歴史など、あらゆる方面からその魅力と意義を説き明かす。(2018.12.28)

418.渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)『藤原俊成』(コレクション日本歌人選063、笠間書院、2018.12.10、1,300円)
 シリーズ第四期の一冊。研究史をふまえつつ、一首の背景にある表現の蓄積、次世代の歌人たちとの違いなど、丁寧な読解が理解を深める。(2018.12.28)

417.小原仁(おばら・ひとし)編『変革期の社会と九条兼実 『玉葉』をひらく』(勉誠出版、2018.10.19、10,000円)
 編者を中心にした『玉葉』輪読会メンバーによる論文および資料紹介の一冊。(2018.11.24)

416.山下真史(やました・まさふみ)村田秀明(むらた・ひであき)注解『中島敦『李陵・司馬遷』』(中島敦の会発行・県立神奈川近代文学館発売、2018.11.15)
 2012年に校訂刊行した本文に基づき、注解を加え参考資料を付したもの。(2018.11.24)

415.佐伯真一(さえき・しんいち)『「武国」日本』(平凡社新書894、平凡社、2018.10.15、950円)
 古代から昭和まで、日本人が自国をどのように認識していたか、「武」をキーワードに歴史・文学・思想などの多方面にわたる文献から探っていく。(2018.11.11)

414.鈴木俊幸(すずき・としゆき)『信州の本屋と出版』(ふるさとライブラリー4、松本:高美書店、2018.10.30、4,800円)
 江戸から明治にかけて、信州各地で活発化した出版と販売を膨大な資料をもとに綴る。本書出版元の先祖、松本の高美屋当主の日記翻刻および江戸明治の信州出版物一覧を付す。(2018.11.11)

413.鈴木健一(すずき・けんいち)『不忍池ものがたり─江戸から東京へ』(岩波書店、2018.10.24、2,400円)
 寛永寺創建から現代に至るまで、憩いの場として、あるいはエンターテインメントの場として親しまれてきた不忍池を、主として文学作品における表象をたどることで描く。(2018.11.11)

412.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝文粋抄 五』(勉誠出版、2018.8.31、2,800円)
 外交文書、願文、書状、詩序といったさまざまな文体10篇を取り上げ詳しい注解を行う。(2018.9.29)

411.前田雅之(まえだ・まさゆき)『書物と権力 中世文化の政治学』(歴史文化ライブラリー473、吉川弘文館、2018.9.1、1,700円)
 伏見宮家、一条兼良、三条西実隆ら、中世公家を中心とした書物の流通が、政治や経済における公家・武家・僧侶等の交流と密接に結びついている様をいくつかの例を挙げて述べる。(2018.9.2)

410.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(三)(岩波文庫赤45-3、岩波書店、2018.7.18、1,020円)
 巻二三から二五の贈答詩を収める。政治との関わりに、友情・兄弟愛が絡み合う長編詩が多い。(2018.8.5)

409.飯倉洋一(いいくら・よういち)・盛田帝子(もりた・ていこ)編『文化史のなかの光格天皇 朝議復興を支えた文芸ネットワーク』(勉誠出版、2018.6.15、8,000円)
 江戸時代中後期の朝廷文化興隆を牽引した光格天皇をめぐる堂上・地下の学問文芸の動きを多面的に捉える。(2018.6.23)

408.柳川響(やながわ・ひびき)『藤原頼長 「悪左府」の学問と言説』(早稲田大学エウプラクシス叢書012、早稲田大学出版部、2018.5.31、4,000円)
 保元の乱の首謀者として知られる頼長の学問、漢詩文創作といった自身の活動と、説話・物語のなかで語られる人物像とを併せて検討する。(2018.6.17)

407.緑川明憲(みどりかわ・あきのり)『近衞家X公御詠草─翻刻と研究─』(古典ライブラリー、2018.2.28、12,000円)
 江戸中期近衛家当主で、和漢さまざまな文化に精通していた家Xの、陽明文庫に残る詠草類を、添削等も含め翻刻、この時代の堂上和歌の貴重な資料を紹介している。(2018.6.17)

406.内山精也(うちやま・せいや)『宋詩惑問 宋詩は「近世」を表象するか?』(研文出版、2018.5.15、7,000円)
 江湖派を中心とする南宋詩、蘇軾研究とその周辺、書評など、エッセーを含め幅広く収録する。(2018.6.10)

405.本間洋一(ほんま・よういち)『桑華蒙求の基礎的研究』(和泉書院、2018.5.31、12,500円)
 備前足守藩主木下公定編の『蒙求』続編書で、日本と中国の故事を一対にしたもの。翻字に加えて、和漢さまざまな類書や説話集などの出典考証をおこなっている。(2018.6.10)

404.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(二)(岩波文庫赤45-2、岩波書店、2018.4.17、1,020円)
 (一)に続き、巻二一・二二、隠遁や山水を詠じた詩を収める。(2018.5.27)

403.小峯和明(こみね・かずあき)『遣唐使と外交神話 『吉備大臣入唐絵巻』を読む』(シリーズ〈本と日本史〉A、集英社新書、0932D、2018.5.22、740円)
 遣唐使そのものの歴史的意義ではなく、廃止後にそれがどのようにイメージされ、日本人の対外観を形成していったかを、近年の研究成果を踏まえて説話・物語・絵巻などから探る。(2018.5.27)

402.鈴木健一(すずき・けんいち)編『漢文のルール』(笠間書院、2018.5.18、1,200円)
 返り点から始めて、文法・語形、漢詩の決まり、論語、故事成語、地名など基礎的な知識となるものをわかりやすく解説する。(2018.5.27)

401.長谷川強(はせがわ・つよし)岡崎久司(おかざき・ひさじ)責任編集『集古筆翰』(大東急記念文庫善本叢刊中古中世篇別巻4、2018.3.30、38,000円)
 国史学・国文学の幅広い業績で知られる萩野由之(はぎの・よしゆき)収集・編になる、全10帖の中世近世著名人筆跡類貼込帖『集古筆翰』の影印と翻刻・解説。(2018.4.28)

400.廣木一人(ひろき・かずひと)『連歌という文芸とその周辺─連歌・俳諧・和歌論─』(新典社、2018.4.27、13,700円)
 和歌・俳諧との関係を念頭に置きつつ、連歌の場(会席・作法・懐紙・句作りの実際等)、連歌師の行動や生活、表現の諸相など、多方面の問題を論じる。(2018.4.28)

399.東英寿(ひがし・ひでとし)編『宋人文集の編纂と伝承』(中国書店、2018.2.28、8,000円)
 唐宋にかけての詩集の編纂と出版を概観する総説(内山精也)、宋代の別集編纂をめぐる諸問題(浅見洋二・萩原正樹)、日本における宋代文集および作品等の受容(中本大)など、多様な問題を論じる。(2018.4.28)

398.遠藤慶太(えんどう・けいた)河内春人(こうち・はるひと)関根淳(せきね・あつし)細井浩志(ほそい・ひろし)『日本書紀の誕生─編纂と受容の歴史─』(八木書店、2018.4.30、4,800円)
 現在の研究状況を、成立前史、成立、受容と展開に分けて論じる。附録として訓点本一覧・関係史料集・研究文献目録(抄)・写本複製一覧を付す。(2018.4.28)

397.小川剛生(おがわ・たけお)編『百人一首宗祇抄 姉小路基綱筆』(三弥井書店、2018.4.9、1,800円)
 慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵本の影印。諸本解題・参考史料等宗祇抄研究の基本情報も備える。(2018.4.14)

396.阿部泰郎(あべ・やすろう)『中世日本の世界像』(名古屋大学出版会、2018.2.28、6,800円)
 宗教・芸能を含め中世文学・文化研究を先導してきた著者の集大成ともいえる論文集。(2018.3.11)

395.長島弘明(ながしま・ひろあき)校注『雨月物語』(岩波文庫黄220-3、岩波書店、2018.2.16、780円)
 近世小説の代表的作品の丁寧な注釈。作者略伝、作品の素材とテーマ、書誌など現在の研究状況を踏まえた解説を付す。(2018.2.24)

394.土佐朋子(とさ・ともこ)『静嘉堂文庫蔵『懐風藻箋註』本文と研究』(汲古書院、2018.2.7、10,500円)
 幕末明治の国学者鈴木真年による注釈書『懐風藻箋註』の影印・翻刻および撰者・本文・引用漢籍等の研究から成る。(2018.2.24)

393.川合康三(かわい・こうぞう)富永一登(とみなが・かずと)釜谷武志(かまたに・たけし)和田英信(わだ・ひでのぶ)浅見洋二(あさみ・ようじ)緑川秀樹(みどりかわ・ひでき)訳注『文選 詩篇』(一)(岩波文庫赤45-1、岩波書店、2018.1.16、1,020円)
 簡潔的確な『文選』訳注。巻19から21途中までを収める(全六冊)。(2018.2.4)

392.藍弘岳(らん・こうがく)『漢文圏における荻生徂徠 医学・兵学・儒学』(東京大学出版会、2017.12.25、7,500円)
 中国・朝鮮の同時代状況を視野に入れて、徂徠学の形成と日本近世の学問・文学における意義を論じる。(2018.2.4)

391.大島晃(おおしま・あきら)『日本漢学研究試論─林羅山の儒学』(汲古書院、2017.12.9、12,000円)
 林羅山を一つの焦点として、日本における儒学の受容と展開を論じる。著者生前のプランに基づき門下生により編纂されたもの。(2018.2.4)

390.三木雅博(みき・まさひろ)『平安朝漢文学鉤沈』(和泉書院、2017.12.30、11,500円)
 大きな枠組みから個別の作品論や漢籍受容まで、非正統的な漢文作品も含め、平安時代の日本漢文学の多様な問題に取り組んだ論考。(2018.2.4)

389.鈴木俊幸(すずき・としゆき)『近世読者とそのゆくえ 読書と書籍流通の近世・近代』(平凡社、2017.12.15、7,400円)
 近世後期における漢学・漢詩の入門的書物の流行を書誌学的調査によって示し、地方の本屋の営業実態を資料や蔵書に基づいて論じ、明治以降の新潮流(教科書・雑誌・新聞・予約出版など)がそれら江戸的な体制を呑み込んでいく様子を多様な資料に基づいて描く。(2018.1.10)

388.芳澤元(よしざわ・はじめ)『日本中世社会と禅林文芸』(吉川弘文館、2017.12.20、8,500円)
 鎌倉後期から江戸初期にかけて、禅宗寺院で育まれた生活文化や文芸が、武士社会を中心として中世社会に及ぼした影響を考察する。(2018.1.10)

387.ヘラ・S・ハーセ 國森由美子訳『ウールフ、黒い湖』(作品社、2017.11.30、2,000円)
 オランダ領東インドで生まれ育ち、第二次大戦前に本国に移り、終戦後再び東インドに戻って幼なじみと再会するまでを回想する主人公の語りは、300年続いた植民地インドネシアの自然と文化を鮮烈なイメージで伝える。(2018.1.10)

386.谷知子(たに・ともこ)『古典のすすめ』(角川選書594、KADOKAWA、2017.11.25、1,700円)
 生老病死、恋愛結婚、その他人生のさまざまな出来事や社会・自然を日本の古典はどう描いてきたか、テーマ別に多様な作品が引用される。(2017.12.3)

385.田中尚子(たなか・なおこ)『室町の学問と知の継承 移行期における正統への志向』(勉誠出版、2017.11.10、10,000円)
 室町期における正史その他の中国史書の読解・注釈から見える五山僧や清原家の歴史意識や自国意識、また学問的交流を描き、近世初期の林家等にも筆が及ぶ。(2017.12.3)

384.小川剛生(おがわ・たけお)『兼好法師』(中公新書2463、2017.11.25、820円)
 兼好の出自・経歴が後世の捏造であり、実は伊勢の卜部氏出身で金沢流北条氏と関わりが深く、その縁故もあって京都に経済的基盤を持ち、和歌を通じて貴顕とのつながりを深めていったことなどを、最新の歴史研究をふまえ、『徒然草』章段の読解を織り交ぜながら述べる。中世の遁世者のイメージを新たにする一冊。(2017.12.3)

383.高木和子(たかぎ・かずこ)『源氏物語再考 長編化の方法と物語の深化』(岩波書店、2017.7.25、10,000円)
 全体の構造、人物造形や表現(特に和歌)など、あくまで物語内部から物語を読み解いていこうとする試み。(2017.8.20)

382.前田雅之(まえだ・まさゆき)『保田與重郎 近代・古典・日本』(勉誠出版、2017.8.10、3,800円)
 戦前期の評論界の中心人物の一人であった保田與重郎の日本古典論を時代のなかで論じる。(2017.8.20)

381.久保田淳(くぼた・じゅん)校訂・訳『藤原定家全歌集』(上・下)(ちくま学芸文庫コ─10─11・12、筑摩書房、2017.8.10、各1,800円)
 河出書房新社版(1986年刊)の改訂新版。存疑を含め24首増補している。(2017.8.20)

380.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史補巻 禁止表現と係り結び』(武蔵野書院、2017.5.13、2,000円)
 禁止表現「ナ」の歴史的な変化と係り結びとが密接に関係しているという論を、『(同)6』の補論として述べる。(2017.7.2)

379.藤川雅恵(ふじかわ・まさえ)編著『御伽百物語』(三弥井古典文庫、三弥井書店、2017.5.30、2,000円)
 青木鷺水の怪談風浮世草子『御伽百物語』6巻全27話の翻刻・注釈。中国種の話には典拠の漢文読み下しを添える。各話とも元禄時代の風俗や事件との関わりを解説、作家鷺水の方法を説き明かす。(2017.6.25)

378.野口善敬(のぐち・ぜんけい)廣田宗玄(ひろた・そうげん)『石城遺宝 訳注』(汲古書院、2017.5.20、11,000円)
 博多妙楽寺伝来の日中禅僧の偈頌文章等を江戸時代に集成刊行した表題の書、およびそれに漏れた「石城遺宝拾遺」の訳注。解説も詳しい。(2017.6.25)

377.揖斐高(いび・たかし)訳注『柏木如亭詩集1』(東洋文庫882、平凡社、2017.5.10、2,900円)
 江戸後期の詩人柏木如亭の刊行詩集3点および「吉原詞」全366首の訳注。1には『木工集』「吉原詞」『如亭山人藁初集』および全体の解説を収める。(2017.5.20)

376.大本山永平寺史料全書編纂室・永平寺史料全書編纂委員会編『永平寺史料全書 文書編』第2巻(大本山永平寺、2017.2.28、非売品)
 17世紀後半に成立した永平寺所蔵文書の翻刻・解説(一部注釈)を収める。通常の文書類の他に、絵図・器物・切紙資料なども含まれる。(2017.5.20)

375.小川剛生(おがわ・たけお)『中世和歌史の研究─撰歌と歌人社会─』(塙書房、2017.5.10、14,000円)
 勅撰和歌集をはじめとする、中世における撰集の編纂、その資料となる私家集等の蒐集・書写に関する論考、また、公家・武家・僧侶を含めた中世の社会構造を映し出す鏡として勅撰集を見る場合に、最も重要な資料となる『勅撰作者部類』『続作者部類』の翻刻・索引を収める。(2017.5.20)

374.三角洋一(みすみ・よういち)『中世文学の達成─和漢混淆文の成立を中心に─』(若草書房、2017.5.15、9,800円)
 平安から鎌倉にかけて成立したさまざまな文学作品、漢籍・仏書の注釈書などを俎上に乗せ、文体および表記という視点から整理、和漢混淆文の成立と物語文学の展開を考える。著者逝去直前まで取り組んでいた課題に関わる論考を夫人の美冬氏がまとめたもの。(2017.5.20)

373.後藤昭雄(ごとう・あきお)『平安朝漢詩文の文体と語彙』(勉誠出版、2017.5.31、8,000円)
 非文学的なものも含め、平安朝に行われていた漢詩文の各種文体の性格・役割を考え、作品を読み解く。また、漢詩文に用いられる律令語・中国口語についての論考も収める。(2017.5.20)

372.小島毅(こじま・つよし)『儒教の歴史』(宗教の世界史5、山川出版社、2017.5.25、3,500円)
 古代から現代まで、さらに朝鮮半島・日本における展開も含め、儒教の歴史を、学説の展開と、政治・社会との関わりと、両面から描く。用語・年表・索引等の附録も充実している。(2017.5.20)

371.智山勧学会(ちさんかんがくかい)編『葬送儀礼と現代社会』(青史出版、2017.3.30、9,500円)
 現代における仏教の役割を葬送儀礼という観点から見直そうという試み。日本における葬送儀礼の歴史、死生観、各宗派の葬送儀礼など、主催する真言宗智山派にとどまらず、幅広い講師陣による連続講義をまとめたもの。執筆者:松尾剛次、村上興匡、鈴木岩弓、勝野隆広、林田康順、佐藤俊晃、蓮見高純、日野慧運、山川弘巳、布施浄慧、広澤隆之。(2017.5.20)

370.田中菜穂子編『古書の道 沙羅書房 五十年誌』(沙羅書房、2017.4.18、非売品)
 創業五十年を迎えた古書店沙羅書房の歴史を回顧、創業者の生い立ち、一誠堂書店での修業と独立、研究者や作家との交流などを記す。これまで目録に掲載された善本の書影も収める。(2017.4.22)

369.後藤昭雄(ごとう・あきお)監修『天野山金剛寺善本叢刊 第一期』(第一巻 漢学、第二巻 因縁・教化)(勉誠出版、2017.2.25、32,000円)
 長年の共同研究によって調査が進んだ金剛寺の聖教類のなかから、未公開の重要典籍を影印・翻刻・解題によって公開するもの。第一巻(後藤・仁木夏実・中川真弓編)には『全経大意』『文集抄上』『楽府注少々』『本朝文粋』巻8・13『円珍和尚伝』『明句肝要』、第二巻(荒木浩・近本謙介編)には『教児伝』『天台伝南岳心要』『聖徳太子伝記』『佚名孝養説話集』『左近兵衛子女高野往生物語』『無名仏教摘句抄』『花鳥集』を収める。(2017.4.22)

368.渡部泰明(わたなべ・やすあき)『中世和歌史論 様式と方法』(岩波書店、2017.3.15、9,600円)
 副題にあるように、作品の読解において常に様式と方法を意識化する姿勢を取りつつも、それが自然と作者の情念を探り当てる結果となっている。(2017.4.8)

367.松尾葦江(まつお・あしえ)編『ともに読む古典 中世文学編』(笠間書院、2017.3.31、2,300円)
 代表的な中世文学作品をわかりやすく読み解いた研究者の文章と、(研究者でもある)現場の高校教員が綴ったエッセーとを合わせ収録する。(2017.4.8)

366.廣木一人教授退職記念論集刊行委員会編『日本詩歌への新視点 廣木一人教授退職記念論集』(風間書房、2017.3.26、8,000円)
 教え子や研究会・学会での指導を受けた中世・近世・近代の若手の研究者が寄せた論文集。冒頭に廣木一人「和歌・連歌・俳諧(俳諧連歌)という文学─韻文学史観構築のために─」を置く。(2017.4.8)

365.仏教史学会編『仏教史研究ハンドブック』(法蔵館、2017.2.25、2,800円)
 インド・アジア各地域・中国・朝鮮半島・日本における仏教の展開を、最新の研究状況を踏まえて解説する。基礎資料・参考文献・地図・年表・索引などが充実している。(2017.4.8)

364.石原千秋(いしはら・ちあき)監修『新潮ことばの扉 教科書で出会った古文・漢文一〇〇』(新潮文庫し─24─3、新潮社、2017.4.1、670円)
 高校教科書によく採られている古文・漢文の原文・語注・解説を載せる。執筆:有馬義貴、木下優、近藤仁美、佐藤浩一、阿部光麿。(2017.4.8)

363.『京都女子大学図書館蔵 谷山文庫目録』(京都女子大学図書館、〔2017.3〕、京都女子大学図書館編集発行)
 約20年前に作成されたものを全面改訂、書名索引を別冊で付したもの(その後記は2016.11、大谷俊太による)。カラー図版による谷山文庫本印譜を付す。(2017.3.25)

362.鈴木健一(すずき・けんいち)編『浜辺の文学史』(三弥井書店、2017.2.17、2,800円)
 古代から近代まで浜辺を舞台にした文学作品を取り上げて論じる。鳥獣虫魚・天空・海に続く第八番目のもの(完結)。(2017.3.25)

361.『空華日用工夫略集の周辺』(義堂の会編集発行、2017.3.25、非売品)
 表題の書(義堂周信の日記)の講読会参加者による同書に関連する政治史・宗教史関連の論考を集めたもの。執筆者:榎本渉、臼井和樹、呉座勇一、木下聡、小瀬玄士、細川武稔、白川宗源、川本慎自、岡本真。(2017.3.25)

360.『元政聖人三五〇遠忌記念池上本門寺霊宝殿特別展 深草元政聖人と池上』(池上本門寺霊宝殿編集発行、2017.3.3、非売品)
 詩人・歌人元政の生涯および後世からの思慕を、文学・宗教両面から展示したもの。本門寺所蔵品はもちろん、他の日蓮宗寺院(隆盛寺・大林寺など)から多数出品されている。(2017.3.25)

359.高松亮太(たかまつ・りょうた)『秋成論攷 学問・文芸・交流』(笠間書院、2017.2.28、8,500円)
 周辺人物の動向や学問業績を明らかにしつつ、上田秋成の文業を和歌(歌学を含む)と和学(古典注釈)の面から見直す。これまで研究対象にされてこなかった資料の発掘・紹介を多数含む。(2017.3.25)

358.田中康二(たなか・こうじ)『真淵と宣長 「松坂の一夜」の史実と真実』(中公叢書、中央公論新社、2017.2.25、1,800円)
 国定教科書によって広まった、伊勢松坂における賀茂真淵と本居宣長の出会いと学問の継承、という逸話を誰がどのように利用していったかを説き明かす。(2017.3.25)

357.小林敬一(こばやし・けいいち)『都市計画変革論 ポスト都市化時代の始まり』(鹿島出版会、2017.2.10、2,700円)
 戦後都市計画の歴史や、著者が体験した実例などを踏まえ、都市化がこれ以上進まなくなった現代における都市計画のあり方を多面的に提案する。情報や文化を重視することによる価値の創出という点が興味深い。(2017.2.18)

356.飯倉洋一(いいくら・よういち)編『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習支援アプリKuLAの使い方』(笠間書院、2017.2.15、800円)
 大阪大学を中心にして開発されたスマートフォン用のくずし字学習支援アプリの使い方および実践例等について、海外での活用報告を含め紹介されている。(2017.2.18)

355.櫻井陽子(さくらい・ようこ)鈴木裕子(すずき・ひろこ)渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)『平家公達草紙 『平家物語』読者が創った美しき貴公子たちの物語』(笠間書院、2017.2.14、1,900円)
 『平家物語』に登場する清盛の子・孫の世代を主人公にした絵巻物の逸話集を影印・翻刻・注釈および関連コラム・資料によってわかりやすく紹介する。(2017.2.11)

354.鈴木健一(すずき・けんいち)『天皇と和歌 国見と儀礼の一五〇〇年』(講談社選書メチエ641、講談社、2017.1.11、1,400円)
 天皇が和歌を作り、勅撰集や古今伝受といった方法でその世界を通じて文化的な支配を行っていくさまを通時的に描く。参考文献多数。(2017.1.29)

353.小川剛生(おがわ・たけお)校注『迎陽記』第二(史料纂集・古記録編188、八木書店、2016.12.20、14,000円)
 南北朝・室町前期の儒者東坊城秀長の日記のうち、改元等の行事に関わる別記および逸文、日記に準ずる著作として「明徳三年八月相国寺供養記」「応永十四年三月北山院入内記」を収め、詳細な解題・索引を付す。(2016.12.31)

352.三角洋一(みすみ・よういち)訳注『石清水物語』(中世王朝物語全集5、笠間書院、2016.12.25、5,000円)
 平安期の物語にはない独自性を有するとされる表題の作品の訳注。著者の遺著となったもの。(2016.12.31)

351.佐藤道生(さとう・みちお)『句題詩論考 王朝漢詩とは何ぞや』(勉誠出版、2016.11.7、9,500円)
 10世紀なかばに確立されて以来、王朝漢詩の詠法の原則となった句題詩について、その歴史、詠法、変遷、他分野への影響などを論じ、あわせて関連論考を収める。(2016.12.11)

350.錦仁(にしき・ひとし)編『日本人はなぜ、五七五七七の歌を愛してきたのか』(笠間書院、2016.12.1、1,900円)
 和歌と日本文化との深いつながりを、和歌表現の伝統のみならず、文学以外のさまざまな分野への広がりという観点から考察する。現代歌人(松坂弘・田宮朋子・奥村晃作・佐藤通雅)のエッセーも収録。(2016.12.11)

349.塩村耕(しおむら・こう)編『三河に岩瀬文庫あり 図書館の原点を考える』(風媒社、2016.12.8、850円)
 創始者岩瀬弥助がどのような目的で文庫を創設したか、残された数少ない資料から探求するとともに、死後の文庫の歴史、貴重書の紹介、現在の文庫の様子などを紹介、図書館および書物文化の行く末を考える。座談会「岩瀬文庫から図書館を考える」(逸村裕・樽見博・堀川貴司・塩村耕)を収録。(2016.12.11)

348.松原秀一(まつばら・ひでいち)『フランス文化万華鏡』(アートデイズ、2016.11.1、1,800円)
 慶應義塾大学教授として、フランス中世文学研究、フランス文学翻訳、フランス語教育等に携わり、日仏文化交流にも大きな足跡を残した著者のエッセイ・論文・対談等をまとめたもの。対談は、ベルナール・フランク、ジャン=ノエル・ロベール両氏とのもの。(2016.12.11)

347.横田冬彦(よこた・ふゆひこ)編『出版と流通』(本の文化史4、平凡社、2016.10.14、3,200円)
 近世から近代初頭にかけてを対象に、出版業界の変遷や、データの統計学的処理の問題を首尾に配置し、和歌山の地方出版、暦占書・仏書・平田国学関係書・地図・教科書など分野を絞った論、近代貸本屋の様相などを収める。(2016.11.3)

346.大城悦子(おおしろ・えつこ)『芭蕉の俳諧構成意識─其角・蕪村との比較を交えて─』(新典社、2016.10.21、15,100円)
 芭蕉出座の連句における付合語の利用を探る論を中心に、芭蕉・其角・蕪村の作品を読み解く。(2016.11.3)

345.鈴木健一(すずき・けんいち)編『海の文学史』(三弥井書店、2016.7.25、2,800円)
 上代・中古から近世、あるいは幕末明治の海外紀行まで、また、中国・韓国との比較など、海を描いた文学をたどる。(2016.8.13)

344.天野文雄(あまの・ふみお)監修『禅からみた日本中世の社会と文化』(ぺりかん社、2016.7.5、4,800円)
 文学・芸能・造形芸術、思想・社会・政治などなど、多方面から中世における禅の影響を探る。(2016.8.12)

343.下定雅弘(しもさだ・まさひろ)松原朗(まつばら・あきら)編『杜甫全詩訳注(一)』(講談社学術文庫2333、講談社、2016.6.10、2,300円)
 鈴木虎雄、吉川幸次郎・興膳宏に次ぐ、研究者数十名による杜甫の全詩訳注の試み。『杜詩詳注』をテキストにし、その注解に基づいた解釈を行い、他の注釈書や近年の研究による補足を加える。全四巻のうち第一巻は乾元2年(759)秋までの作品を収める。(2016.7.24)

342.久保田淳(くぼた・じゅん)『鏡花水月抄』(翰林書房、016.7.21、3,200円)
 機会あるごとに書きためてきた泉鏡花関連の文章を集めたもの。土地との関わり、近世芸能や古典文学との関わりについて詳しく述べる。(2016.7.24)

341.中本真人(なかもと・まさと)『宮廷の御神楽─王朝びとの芸能─』(新典社新書68、新典社、2016.7.27、1,000円)
 平安時代後期を中心に、宮中行事の一部としての神楽のさまざまと、それに関わった専門楽人や皇族や上流貴族など、王朝文化としての神楽を概観する。(2016.7.24)

340.齋藤希史(さいとう・まれし)『詩のトポス 人と場所をむすぶ漢詩の力』(平凡社、2016.5.20、2,600円)
 洛陽・金陵・長安といった帝都、西湖・廬山といった景勝地、涼州・嶺南といった辺境など、詩が生まれた場所をめぐり、詩が土地にイメージを与え、それが次の詩を生み出していく様子を、六朝から唐の詩を中心に描く。(2016.6.18)

339.高橋智(たかはし・さとし)『海を渡ってきた漢籍 江戸の書誌学入門』(図書館サポートフォーラムシリーズ、日外アソシエーツ、2016.6.25、3,200円)
 四書五経を例に、江戸時代の出版に関わった漢学者、版元や、それを読み、所蔵した藩校など、漢籍をめぐる文化を多数の図版により説き明かす。(2016.6.18)

338.高梨素子(たかなし・もとこ)『古今伝受の周辺』(おうふう、2015.5.24、12,000円)
 後水尾院による二度の古今伝受相伝の関係資料、関係者についての論考を中心に、古今集注釈書に関する論などをまとめたもの。(2016.6.18)

337.久保田淳(くぼた・じゅん)監修、村尾誠一(むらお・せいいち)『竹乃里歌』(和歌文学大系25、明治書院、2016.5.20、13,000円)
 ユーモアとリズム感、独特の力強さを持つ正岡子規の歌集『竹乃里歌』を中世和歌研究者が読み解く。(2016.6.18)

336.中島圭一(なかじま・けいいち)編『十四世紀の歴史学 新たな時代への起点』(高志書院、2016.6.15、8,000円)
 近年、室町後期に比べやや注目度が低かった十四世紀を、中世社会の崩壊の始まりとして捉え、政治社会はもとより、文化・産業など歴史学がカバーするほとんど全範囲にわたって論じる。執筆者:高橋典幸、関周一、川本慎自、湯浅治久、七海雅人、落合義明、坂田聡、五味文彦、苅米一志、呉座勇一、黒田智、大藪海、石原比伊呂、高橋一樹、中島圭一、村木二郎、佐藤亜聖、森島康雄、古田土俊一。(2016.6.18)

335.渡瀬淳子(わたせ・じゅんこ)『室町の知的基盤と言説形成 仮名本『曾我物語』とその周辺』(勉誠出版、2016.6.10、10,000円)
 説話・物語のかたちを取って広がっていく「知」のあり方を、作品論、話型・語誌研究など、多方面からのアプローチで探る。(2016.6.18)

334.前田雅之(まえだ・まさゆき)青山英正(あおやま・ひでまさ)上原麻有子(うえはら・まゆこ)編『幕末明治 移行期の思想と文化』(勉誠出版、2016.5.20、8,000円)
 国家観・歴史観、出版、文学・言語表現・思想など、多方面にわたる幕末明治の諸現象・言説を読み解く。(2016.6.18)

333.山田尚子(やまだ・なおこ)『重層と連関 続中国故事受容論考』(勉誠出版、2016.3.31、6,500円)
 中国故事の受容(変容)を日本文学における重要問題として、純粋な漢文作品である辞表や句題詩から和歌、軍記物語、朗詠注などを幅広く取り上げて論じる。(2016.5.5)

332.浅見雅一(あさみ・まさかず)『概説キリシタン史』(慶應義塾大学出版会、2016.4.30、2,600円)
 ローマにあるイエズス会本部が所蔵する資料を用い、近年進展著しい対外関係史の成果も踏まえた記述で、キリシタン史を通してみた16・17世紀東アジア(のなかの日本)史になっている。通信教育の教材として書かれたもの。(2016.5.5)

331.鈴木健一(すずき・けんいち)『江戸諸國四十七景 名所絵を旅する』(講談社選書メチエ622、講談社、2016.4.10、1,750円)
 蝦夷地松前から琉球まで、日本各国の名所を、絵画資料や文学作品を用いて旅する。古代中世の記憶も呼び戻されるが、中心は近世の旅人が見たであろう風景。絵画や書物の挿絵などの図版多数。(2016.5.5)

330.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史6 主格助詞「ガ」の千年紀』(武蔵野書院、2016.4.15、2,000円)
 日本語の文法史上最も重大な出来事として主格助詞「ガ」の成立を通時的に考察、日本語の歴史を情意的表現から論理的表現への変化と見る。本巻をもってシリーズ完結。(2016.5.5)

329.波戸岡旭(はとおか・あきら)『奈良・平安朝漢詩文と中国文学』(笠間書院、2016.3.31、8,500円)
 『懐風藻』から平安初期の空海・島田忠臣・菅原道真、背景にある白居易、さらに近世俳諧における杜甫の影響など、幅広い論考を集める。(2016.3.27)

328.冷泉家時雨亭文庫編『草根集』下(冷泉家時雨亭叢書94、朝日新聞社、2016.4.1、30,000円)
 江戸時代後期、冷泉為村の門人宮部義正の寄贈にかかる、室町中期写、日次本系統の重要伝本である本の影印。本書には、全10冊のうち第5冊以降を収める。解題では、全体として内閣文庫蔵15冊本との親近性を示すことが述べられる。解題:赤瀬信吾、鈴木元。(2016.3.27)

327.高野奈美(たかの・なみ)『賀茂真淵の研究』(青簡舎、2016.2.29、9,000円)
 歌学、古典注釈をふたつの柱として、真淵の学問を検証する。(2016.3.20)

326.山大毅(たかやま・だいき)『近世日本の「礼楽」と「修辞」 荻生徂徠以後の「接人」の制度構想』(東京大学出版会、2016.2.25、6,400円)
 第一部「礼楽」は、政治制度から社交まで、人間社会の秩序を考察した徂徠およびその後継者たちの言説を、第二部「修辞」は古文辞派における文学論、詩文創作の源泉となる中国作品の注釈などを分析、それらを貫くキーワードとして「接人」を提唱する。(2016.3.20)

325.国立歴史民俗博物館・小倉慈司(おぐら・しげじ)編『古代東アジアと文字文化』(同成社、2016.3.1、2,300円)
 2014年に国立歴史民俗博物館で行われた展示「文字がつなぐ―古代の日本列島と朝鮮半島―」に合わせて行われた歴博フォーラムの内容を再構成したもので、日本・韓国・中国の最新の考古学・歴史学の成果が盛り込まれている。執筆:田中史生、安部聡一郎、李京燮、平川南、三上喜孝、仁藤敦史、橋本繁、小倉慈司。(2016.3.20)

324.近衞典子(このえ・のりこ)『上田秋成新考 くせ者の文学』(ぺりかん社、2016.2.10、6,700円)
 小説のみならず、和文・和歌・随筆などさまざまなジャンルの秋成作品を、古典享受と同時代的環境の両面から読み解く。(2016.3.20)

323.冷泉家時雨亭文庫編『歌林良材集 歌合集 続』(冷泉家時雨亭叢書95、2016.2.1、30,000円)
 編者自筆本『歌林良材集』、院政期および二条良基関係の歌合、足利義教主催の法楽百首歌の写本を収める。解題:鈴木元、安井重雄。(2016.1.31)

322.山藤夏郎(さんとう・なつお)『〈他者〉としての古典 中世禅林詩学論攷』(和泉書院、2015.11.10、18,000円)
 今日的な学問論(特に日本古典文学研究の近代以降の歩みとその現在)や普遍的な文学論と、中世禅林の文学とを相互参照させる試み。後者については、同時代の中国の文学的状況や禅林の実情をも見渡している。(2016.1.10)

321.冷泉家時雨亭文庫編『中世私家集 十二』(冷泉家時雨亭叢書92、2015.12.1、30,000円)
 2冊組で、室町時代の冷泉家当主為之、およびその弟で下冷泉家の祖である持為の自筆詠草を含む鎌倉・室町の私家集を収める。解題:小林一彦、鈴木元。(2016.1.10)

320.吉野朋美(よしの・ともみ)『後鳥羽院とその時代』(笠間書院、2015.12.25、9,000円)
 後鳥羽院の創作および主宰する歌合・歌会その他、和歌に関する活動を政治や信仰との関わりを押さえつつ論じる。(2016.1.10)

319.田中康二(たなか・こうじ)『本居宣長の国文学』(ぺりかん社、2015.12.25、6,800円)
 本居宣長の主要著作『古事記伝』『古今集遠鏡』ほかの受容、それらの著作の中で到達した研究方法(本文批判、俗語訳)や文学史観などの受容・継承を幕末から近代に探る。(2016.1.10)

318.今関天彭(いまぜき・てんぽう)著、揖斐高(いび・たかし)編『江戸詩人評伝集2』(東洋文庫866、平凡社、2015.11.18、3,200円)
 310.に引き続き、梁川星巌・広瀬旭荘・遠山雲如・小野湖山・大沼枕山・森春濤および京都中心の詩壇史、明清の詩風詩論の影響を論じた総論的文章を収める。解説には、著者の経歴や学問的立場を詳しく述べる。『雅友』総目次を付す。(2016.1.10)

317.久保田淳(くぼた・じゅん)松尾葦江(まつお・あしえ)校注『源平盛衰記』(七)(中世の文学、三弥井書店、2015.10.27、6,300円)
 巻37から42まで、一ノ谷から屋島へと敗走を続ける平家と源氏の合戦と、京・鎌倉での政治的な動向とを描く部分の校注を収める。(2015.11.23)

316.小財陽平(こざい・ようへい)『菅茶山とその時代』(新典社、2015.11.11、14,200円)
 第一部は菅茶山の作品について、その政治批判を読み解き、詩集成立過程を頼山陽や北条霞亭による編集作業等も含めて論じる。第二部は俳諧との関係、詩材など、和漢比較的な視点からの作品分析、第三部は文人画・文人趣味論である。(2015.11.23)

315.岩山泰三(いわやま・たいぞう)『一休詩の周辺 漢文世界と中世禅林』(勉誠出版、2015.11.6、12,000円)
 著者長年の研究対象である一休の詩偈について、彼が参照したと思われる中国詩、同時代の五山における詩の両者を参照軸として読解を試みる。一休研究の方法を刷新する成果。
附章として『唐物語』等における漢故事説話、および「少年易老」詩に関する論考を収める。(2015.11.23)

314.鈴木健一(すずき・けんいち)編『形成される教養 十七世紀日本の〈知〉』(勉誠出版、2015.11.20、7,000円)
 『浸透する教養 江戸の出版文化という回路』(近著卒読2、242参照)の前史というべき17世紀を対象として、室町文化の継承と近世の新しい動きを、教養・学問・出版などをキーワードに探る。執筆者:深沢眞二、堀川貴司、山本啓介、宮本圭造、澤井啓一、川平敏文、西田正宏、田中潤、海野圭介、高木浩明、町泉寿郎、松永知海、門脇むつみ、柳沢昌紀、田代一葉、田中仁、阪口弘之、小林千草。(2015.11.23)

313.村井章介(むらい・しょうすけ)編集代表『日明関係史入門 アジアのなかの遣明船』(勉誠出版、2015.10.15、3,800円)
 室町時代の遣明船をめぐる、政治・経済・文化の諸相を、文献史料・発掘史料・現地調査を踏まえて解説、現在の研究の到達点を示す。(2015.10.18)

312.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝文粋抄 四』(勉誠出版、2015.10.15、2,800円)
 仏事および外交をめぐる多様な文体の作品を読み解く、シリーズ第四巻。(2015.10.18)

313.伊藤伸江(いとう・のぶえ)奥田勲(おくだ・いさお)『心敬連歌 訳注と研究』(笠間書院、2015.10.15、13,000円)
 心敬が一座した百韻連歌三巻の詳細な訳注と、それらを中心に心敬の作品や評論を分析した論文7本から成る。事項・人名・語釈索引を付す。(2015.10.18)

310.今関天彭(いまぜき・てんぽう)著、揖斐高(いび・たかし)編『江戸詩人評伝集1』(東洋文庫863、平凡社、2015.9.10、3,200円)
 伝統的な漢学者でありつつも戦前の対中国・朝鮮政策に関与し、戦後は詩人・研究者として主に日本漢詩文の研究を行った著者が主宰雑誌『雅友』に連載した江戸詩人の評伝を時代順に再編成したもの。1には白石・鳩巣・蛻巌・南海・六如・栗山・春水・二洲・茶山・寛斎・精里・杏坪・如亭・詩仏・五山・雲山・淡窓・トウ(人+同)庵を収める。(2015.10.4)

309.河野貴美子(こうの・きみこ)Wiebke DENECKE(ヴィーブケ・デーネーケ)新川登亀男(しんかわ・ときお)陣野英則(じんの・ひでのり)編『日本「文」学史 第一冊 「文」の環境―「文学」以前』(勉誠出版、2015.9.18、3,800円)
 東アジアにおいて伝統的な概念である「文」の視点から日本文学史を再構成する試み。全一二章一五本の論文と一六本のコラムから構成される。(2015.10.4)

308.冷泉家時雨亭文庫編『草根集』上(冷泉家時雨亭叢書93、朝日新聞社、2015.8.1、30,000円)
 江戸時代後期、冷泉為村の門人宮部義正の寄贈にかかる、室町中期写、日次本系統の重要伝本である本の影印。本書には、全10冊のうち第4冊までを収める。解題:赤瀬信吾、鈴木元。(2015.7.25)

307.松尾葦江(まつお・あしえ)編『源平盛衰記年表』(三弥井書店、2015.7.7、7,700円)
 『平家物語』諸本のなかでもっとも記事が豊富な『源平盛衰記』について、記載される歴史上の出来事を洗い出し、年表形式で掲出、関連史料を挙げて比較対照できるようにした「年表」と、巻別に記載順に掲げ、他諸本の掲出場所も備考に記した「記事表」から成る。(2015.7.25)

306.大澤顕浩(おおさわ・あきひろ)陳正宏(ちん・せいこう)編『学習院大学所蔵明刊本図録』(学習院大学、2015.3.31、非売品)
 学習院大学所蔵の明刊本85部のうち48部について図版および解題を、残りの刊本の書誌データを収載する。明初から明末まで、時代を追って典型的な刊本を書影とともに見られるようになっており、その変遷や特徴がよくわかる。(2015.6.15)

305.柳川市史編集委員会編『安東省菴集 書簡編 附朱舜水関係史料』(柳川文化資料集成第二集―五、柳川市、2015.3.31、非売品)
 柳川古文書館保管・寄託資料を中心に、全国各地にある省菴書簡・来簡および筆語などを写真で集成、翻刻・注解を施したものである。特に朱舜水関係の資料が充実している。(2015.6.14)

304.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史5下 音便の千年紀』(武蔵野書院、2015.5.10、2,000円)
 263の続編、各種の音便について、歴史的変化を方言資料なども駆使して説き、音便が日本語にもたらした恩恵を幅広く論じる。(2015.6.14)

303.前田雅之(まえだ・まさゆき)『アイロニカルな共感 近代・古典・ナショナリズム』(ひつじ書房、2015.4.30、4,800円)
 副題にあるテーマに関わるここ10年くらいの論考を集めたもの。現代における古典あるいは古典研究・教育の意義という問題意識に基づく。また、説話・説話集の研究書の書評2本と広く語りと共同体との問題を扱った研究書の書評1本を収める。(2015.6.3)

302.鈴木俊幸(すずき・としゆき)編『書籍の宇宙 広がりと体系』(シリーズ本の文化史2、平凡社、2015.5.25、3,000円)
 漢籍・古活字版・書道手本・辞書・江戸版・藩(および代官所など)の出版物・草双紙・明治期出版物などをテーマに、日本の書物の広がりを論じる。執筆者:鈴木俊幸、堀川貴司、高木浩明、岩坪充雄、佐藤貴裕、柏崎順子、山本英二、高橋明彦、磯部敦(2015.6.3)

301.張淘(ちょう・とう)『江戸後期の職業詩人研究』(早稲田大学モノグラフ118、早稲田大学出版会、2015.3.19、3,400円)
 江湖詩社および大窪詩仏を焦点として、江戸後期に活躍した職業詩人たちの実態を、生活や行動、詩風など多面的に、特に詩社における教育や、出版活動などについて注目して分析する。(2015.5.4)

300.田宗平(たかだ・そうへい)『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(塙書房、2015.5.1、13,500円)
 粱の皇侃による注釈書『論語義疏』は日本にのみ伝存する逸存書である。この書の古代における受容を、これまでの研究史をふまえ、諸文献における引用等を博捜して分析し、現存する伝本との比較を行う。(2015.5.4)

299.愛知県史編さん委員会編『愛知県史 別編 文化財4 典籍』(愛知県、2015.3.31、税込6,500円)
 七寺一切経、真福寺大須文庫、熱田神宮、猿投神社、尾張徳川家、河村・村上・羽田八幡宮文庫、岩瀬文庫などを中心に、公私さまざまな県内各所の典籍コレクションの概要および主要蔵本の解題を収める。図版多数、索引あり。(2015.4.29)

298.丹羽謙治(にわ・けんじ)編『通昭録(三)』(鹿児島県史料集第五十四集、鹿児島県立図書館、2015.3、非売品)
 鹿児島藩士得能通昭が書き残した80巻あまりの膨大な資料から、巻19〜28の「藻彙編」を収める。編者と関わりのある漢学者や地元鹿児島や琉球関係の作品、さらに当時よく知られていた日本・中国の古典的な作品などの漢詩文を集成したもの。鹿児島県立図書館のホームページより、pdf版の閲覧ができる。(2015.4.29)

297.浅見洋二(あさみ・ようじ)高橋文治(たかはし・ぶんじ)谷口高志(たにぐち・たかし)『皇帝のいる文学史 中国文学概説』(大阪大学出版会、2015.4.10、2,500円)
 中国文学の長い歴史を、「国家と個人」「事実と空想」という大きな枠組みのなかで捉え、歴史的変遷を意識しつつも、時代を越えてさまざまな作品を取り上げている。(2015.4.29)

296.木下華子(きのした・はなこ)『鴨長明研究 表現の基層へ』(勉誠出版、2015.3.31、8,750円)
 『無名抄』、和歌、『方丈記』を中心に、分厚い研究史を整理しつつ、伝記的事実も踏まえて分析する表現論。(2015.4.25)

295.田坂憲二(たさか・けんじ)『名書旧蹟』(日本古書通信社、2015.3.31、2,500円)
 書物愛好家の雑誌3誌に掲載したエッセイを集めたもの。少年時代に愛読した文学全集や文庫本、装丁や挿絵に注目した書物論、小津映画をめぐる本など、幅広い話題の中から著者の書物愛が立ち上ってくる。(2015.4.25)

294.内山精也(うちやま・せいや)編『南宋江湖の詩人たち 中国近世文学の夜明け』(アジア遊学180、勉誠出版、2015.3.30、2,800円)
 南宋末に現れた下級士大夫と民間人の詩人群(後に江湖派と呼ばれる)の文学史上の意義付けを行う論集。人物関係、出版、日本への影響など論点は多岐にわたる。(2015.4.12)

293.小川剛生(おがわ・たけお)訳注『新版 徒然草』(角川ソフィア文庫A311-1、KADOKAWA、2015.3.27、1,080円)
 烏丸本を底本にした校注と現代語訳。最新の日本史学・国文学等の成果を補注に示しつつ、登場人物の位置づけを行い、兼好の視点を読み解いている。(2015.4.12)

292.塩村耕(しおむら・こう)編『文学部の逆襲』(風媒社、2015.3.31、800円)
 人文系科学、および大学における文学部の危機に対処すべく、2014年3月に名古屋大学文学部において行われた同タイトルの公開シンポジウムの記録。日本・インド・ヨーロッパそれぞれの歴史や現状を踏まえての提言(多田一臣・和田壽弘・木俣元一)と、参加者の感想、他に編者および山田登世子のコラムを収める。(2015.3.26)

291.大谷俊太(おおたに・しゅんた)編『三室戸寺蔵文学関係資料目録』(和泉書院、2015.3.10、5,500円)
 京都宇治の真言宗寺院三室戸寺所蔵の和歌・連歌・物語・書状・古筆切などの調査報告。書誌解題に図版を付す。『たまきはる』『新三井和歌集』などの稀覯本を含む。(2015.3.21)

290.石澤一志(いしざわ・かずし)『風雅和歌集 校本と研究』(勉誠出版、2015.2.27、12,000円)
 京都女子大学谷山文庫蔵本を底本とする『風雅和歌集』の校本、関連論文、各句索引を収める。(2015.3.14)

289.陳正宏(ちん・せいこう)《東亜漢籍版本学初探》(上海・中西書局、2014.10、128.00元)
 中国・朝鮮・日本・琉球・ヴェトナムにまたがって、前近代の版本を比較検討し、それぞれの地域の特徴を、具体的な資料に基づいて論じたはじめての研究書。序文、金文京。著者は上海の復旦大学古籍整理研究所教授。(2015.2.28)

288.島津忠夫(しまづ・ただお)監修『心敬十体和歌 評釈と研究』(和泉書院、2015.2.25、18,000円)
 第一部は表題の歌集(瀟湘八景歌を含む)の詳細な評釈、第二部は自注のある百首和歌と連歌句集の翻刻、第三部は個別論文から成る。執筆者:島津忠夫、大村敦子、岡本聡、押川かおり、加賀元子、竹島一希、畑中さやか、米田真理子。(2015.2.28)

287.牧藍子(まき・あいこ)『元禄江戸俳壇の研究 蕉風と元禄諸派の俳諧』(ぺりかん社、2015.2.10、6,000円)
 其角を中心に蕉風俳諧を検討した第一章と、より広い視野で貞門・談林から蕉風への連続・非連続を付合を中心に検討した第二章、さらに調和・不角らの前句付興行を多角的に検討した第三章から成る。(2015.2.28)

286.深沢眞二(ふかさわ・しんじ)『旅する俳諧師 芭蕉叢考二』(清文堂出版、2015.1.31、8,500円)
 芭蕉の発句と一座した連句についての、注釈的研究。近代以降の文学観に基づく解釈を排し、芭蕉の時代の文学状況や芭蕉自身の俳諧観に基づいた解釈を施す。(2015.2.7)

285.森川昭(もりかわ・あきら)『下里知足の文事の研究 第二部論文篇 第三部年表篇』(和泉書院、2015.1.31、18,000円)
 第一部日記篇(本欄204)に続き、これまでに著者が発表した関連論文と、知足の生涯をたどる年表を収める。年表には関連する書簡や俳諧作品なども豊富に引用されていて、知足を中心とした江戸前期俳諧思潮史にもなっている。(2015.2.7)

284.東京大学史料編纂所編『描かれた倭寇 「倭寇図巻」と「抗倭図巻」』(吉川弘文館、2014.10.20、2,500円)
 史料編纂所蔵『倭寇図巻』と、類似する内容の中国国家博物館蔵『抗倭図巻』との全画像を載せ、内容や成立の経緯などを、日中両国の歴史・美術また画像処理の専門家の共同によって解き明かす。(2015.1.18)

283.小林敬一『高子二十境を巡る 漢詩と絵から読み解く景観』(大風出版局、2014.9.25、1,800円)
 江戸時代の漢詩人熊阪覇陵・台州・盤谷三代が、地元高子(現在の福島県伊達市内)の風景を詠んだ詩、およびその出版に際して谷文晁が描いた挿絵を、現在の風景に照らしつつ読み解く。230.『詩に詠まれた景観と保全―福島県高子二十境の場合』をもとに「福島民友新聞」に連載したもの。(2014.11.2)

282.鈴木健一(すずき・けんいち)『古典注釈入門』(岩波現代全書046、岩波書店、2014.10.17、2,400円)
 古代から現代に至る、日本古典の注釈の歴史をたどり、現代の研究者にとっての注釈の目的や理想のあり方を考える。(2014.11.2)

281.久保木秀夫(くぼき・ひでお)中川博夫(なかがわ・ひろお)『新古今和歌集の新しい歌が見つかった! 800年以上埋もれていた幻の一首の謎を探る』(笠間書院、2014.10.25、800円)
 鶴見大学図書館蔵古筆手鑑のなかにあった『新古今集』断簡がこれまで知られていなかった一首であったことを発端に、当該資料を古筆研究および和歌研究の両面から考証する。(2014.11.2)

280.斎田作楽(さいた・さくら)『狂講 深井志道軒 トトントン、とんだ江戸の講釈師』(平凡社、2014.10.24、2,800円)
 平賀源内『風流志道軒伝』の主人公としても知られる講釈師を人々がどのように見、論じ、また伝説化していったか、伝記考証を行いつつ江戸人の心性に迫る。(2014.11.2)

279.鈴木元(すずき・はじめ)『室町連環 中世日本の「知」と空間』(勉誠出版、2014.10.18、9,800円)
 和歌・連歌に軸足を置き、その表現の背後にある中世の学問・宗教を地域性や位相差に目配りしつつ探り出すことで、「知」の広がりを示す。前著『室町の歌学と連歌』以降の論文を集成したもの。(2014.10.13)

278.手島崇裕(てしま・たかひろ)『平安時代の対外関係と仏教』(校倉書房、2014.9.25、10,000円)
 遣唐使途絶以降、特に北宋期に中国に渡った僧侶の果たした役割について、近年の歴史・仏教・文学研究の成果を吸収しつつ、東アジア世界および国内のさまざまな政治的思惑を踏まえて分析する。(2014.10.13)

277.文草の会(ぶんそうのかい)編『菅家文草注釈 文章篇』第一冊(巻七上)(勉誠出版、2014.9.26、5,400円)
 これまでまとまった注釈がなかった『菅家文草』のうち文章部分を注釈するもの。本書には巻七所収作品のうち詩序を除く各文体を収める。執筆:北山円正、後藤昭雄、滝川幸司、本間洋一、三木雅博。(2014.10.13)

276.浦上家史編纂委員会(うらかみかしへんさんいいんかい)『玉堂片影―シンポジウム浦上玉堂二〇一三』(同、2014.6.1、非売品)
 浦上玉堂を中心とする『浦上家史』編纂の中間報告として行われたシンポジウムの記録。執筆者:守安収、大原謙一郎、浦上紀之、松岡正剛、吉増剛造、坂田進一、橋博巳、島谷弘幸、板倉聖哲、高階秀爾、畑和良、尾島治、川延安直。七絃琴演奏および吉増制作映像等を収めたDVDを付す。(2014.10.13)

275.中村春作(なかむら・しゅんさく)編、小島毅(こじま・つよし)監修『訓読から見なおす東アジア』(東アジア海域に漕ぎだす5、東京大学出版会、2014.7.23、3,000円)
 漢文訓読をテーマに、東アジアに広がる漢文の読解と創作、現地語との融合や格闘、口語と文語の相克など、多様な言語文化を概観する。(2014.8.12)

274.田中康二(たなか・こうじ)『本居宣長 文学と思想の巨人』(中公新書2276、中央公論新社、2014.7.25、840円)
 国学の大成者宣長の生涯を、古道学と歌学の二本柱を据えて描く。(2014.8.12)

273.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝文粋抄 三』(勉誠出版、2014.7.30、2,800円)
 『本朝文粋』所収作品の注釈シリーズ第三冊。和歌序5篇および源順の作品7篇など計13篇を取り上げる。(2014.8.4)

272.小島毅(こじま・つよし)『増補 靖国史観 日本思想を読みなおす』(ちくま学芸文庫コ41-2、筑摩書房、2014.7.10、1,000円)
 靖国神社成立の思想的背景を、朱子学の日本的受容形態である後期水戸学の思想に求め、そこにおいて最も高い価値観である大義名分がそもそも明治政府になかったことを論じる。(2014.8.4)

271.大橋直義(おおはし・なおよし)藤巻和宏(ふじまき・かずひろ)橋悠介(たかはし・ゆうすけ)編『中世寺社の空間・テクスト・技芸 「寺社圏」のパースペクティヴ』(アジア遊学174、勉誠出版、2014.7.1、2,800円)
 中世の寺社という場に生起したさまざまなテクストや技芸、寺社や僧侶そのものを対象とするテクストなど、寺社を取り巻く文化を論じる。(2014.8.4)

270.渡部泰明(わたなべ・やすあき)『古典和歌入門』(岩波ジュニア新書775、岩波書店、2014.6.20、840円)
 四季・恋・雑の和歌48首(関連して引用するものが他に35首)を『万葉集』および八代集を中心に選び、わかりやすく、しかも想像力を刺激する解説を加えている。(2014.7.6)

269.揖斐高(いび・たかし)『江戸幕府と儒学者 林羅山・鵞峰・鳳岡三代の闘い』(中公新書2273、中央公論新社、2014.6.25、860円)
 従来否定的評価しか下されていなかった林羅山以下三代の幕府儒官林家草創期を、残された詩文集や日記をもとに再現、朱子学に基づく平和な社会の構築のため、学問・教育に尽力した様子を描く。(2014.7.6)

268.山本啓介(やまもと・けいすけ)佐藤智広(さとう・ともひろ)石澤一志(いしざわ・かずし)『為家卿集 瓊玉和歌集 伏見院御集』(和歌文学大系64、明治書院、2014.5.20、12,500円)
 鎌倉中後期の歌人、藤原為家・宗尊親王・伏見院の家集の注釈。それぞれ厖大に残された作品の一部であるが、これだけまとまった注釈は初めてである。(2014.7.6)

267.加藤昌嘉(かとう・まさよし)『『源氏物語』前後左右』(勉誠出版、2014.6.3、4,800円)
 『源氏物語』を中心的対象にしつつ、物語全般へと、また書物の姿形(特に本文の書記形態)へと、考察を広げていく。『揺れ動く『源氏物語』』の姉妹編。(2014.6.8)

266.別府節子(べっぷ・せつこ)『和歌と仮名のかたち 中世古筆の内容と書様』(笠間書院、2014.5.30、12,000円)
 仮名の書風が大きく変わる平安末から室町初期までを対象に、歌集・古筆切の資料発掘とその文学史・書道史的位置づけを試みる。(2014.6.8)

265.齋藤希史(さいとう・まれし)『漢字世界の地平 私たちにとって文字とは何か』(新潮選書、新潮社、2014.5.25、1,200円)
 中国における文字の発生から説き起こし、それを受容した日本におけることばと文字、あるいは音声と文字との関係を、東アジアの「漢字圏」を視野に収めつつ論じる。金文京『漢文と東アジア 訓読の文化圏』(岩波新書、2010年)を意識しつつ乗り越えようという一書。(2014.6.8)

264.井上泰至(いのうえ・やすし)田中康二(たなか・こうじ)編『江戸文学を選び直す 現代語訳付き名文案内』(笠間書院、2014.6.12、2,000円)
 随筆・漢文・歴史書なども含め、江戸時代の散文作品のうち、現在の文学史では取り上げられないものを中心に新たな読解を試みる。執筆者(編者以外):川平敏文、一戸渉、山大毅、勢田道生、池澤一郎、木越俊介、佐藤至子、日置貴之。(2014.6.8)

263.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史5上 音便の千年紀』(武蔵野書院、2014.5.10、2,000円)
 『万葉集』を主たる対象として、上代特殊仮名遣いや字余りの現象が当時の日本語の変化のなかで音便現象と接続する一連のものであったことを論じる。(2014.6.8)

262.小林ふみ子(こばやし・ふみこ)『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』(岩波書店、2014.4.23、2,100円)
 大田南畝の生涯をたどりながら、狂歌を中心に花咲いた18世紀後半の江戸っ子の文芸を読み解き、狂歌師という「役」(与えられた役割あるいは演じられたキャラクター)に生きた人々を描く。(2014.5.3)

261.兵藤裕己(ひょうどう・ひろみ)校注『太平記』(一)(岩波文庫黄143-1、岩波書店、2014.4.16、1,140円)
 西源院本を底本にした初めての校注書。第八巻までを収める。(2014.4.25)

260.人間文化研究機構国文学研究資料館編『絵が物語る日本 ニューヨークスペンサーコレクションを訪ねて』(三弥井書店、2014.3.20、3,000円)
 奈良絵本・奈良絵巻を中心とする絵入り本の一大コレクションであるニューヨーク孝経図書館スペンサーコレクションの個々の作品についての研究論文集。コレクション全体の目録、アメリカ東海岸の主要美術館の絵入り本コレクションの概要も収める。(2014.4.25)

259.武藤元昭(むとう・もとあき)『人情本の世界 江戸の「あだ」が紡ぐ恋愛物語』(笠間書院、2014.4.30、4,800円)
 著者長年の研究対象である為永春水を中心にした人情本関係の論文をまとめたもの。書誌学的な検討や、他のジャンルとの関係(「つう」に対する「いき」あるいは「あだ」)など、多面的に論じる。(2014.4.20)

258.人間文化研究機構国文学研究資料館編『図説 江戸の「表現」 浮世絵・文学・芸能』(八木書店、2014.3.25、12.000円)
 第一部は浮世絵・絵入本などの作品解説、第二部は芸能・風俗・文学に関わる論考を収める。(2014.4.6)

257.縄手聖子(なわて・せいこ)『今様のなかの〈表象〉』(笠間書院、2014.3.31、5,800円)
 『梁塵秘抄』および中世の物語に見える表象の基底を探り、歌謡の持つ表現の豊かさを照らし出す試み。(2014.4.6)

256.佐藤道生(さとう・みちお)『三河鳳来寺旧蔵暦応二年書写 和漢朗詠集 影印と研究』(影印編・研究編の全二冊)(勉誠出版、2014.2.25、30,000円)
 表題の書のカラー影印と翻刻・解題・関連論文を収める。詳細な訓点と注記(裏書も含む)を持つ本書は、菅原家の儒者が後深草天皇に『和漢朗詠集』を教えたときに用いた本を藤原式家の儒者が書写したもので、伝本や博士家の違いによる本文および訓読の異同注記、大江匡房や藤原孝範ら院政期の学者の注釈を含んでいる貴重な伝本。訓点を含め全てを翻刻している。関連論文は幼学書としての『和漢朗詠集』に焦点を当てつつも、院政期・鎌倉期の貴族の学問を広く見渡したもの。(2014.3.21)

255.合山林太郎(ごうやま・りんたろう)『幕末・明治期における日本漢詩文の研究』(和泉書院、2014.2.28、7,500円)
 社会や文壇の動きを見据えながら、幕末から明治30年代に至る日本漢詩の動向を論じる。特に野口寧斎・森鴎外・森春濤・森槐南らについては、旧蔵書や自筆資料などに基づく論考を多く含む。(2014.3.21)

254.森正人(もり・まさと)『古代説話集の生成』(笠間書院、2014.3.20、10,000円)
 説話と説話集の定義を行った上で、『日本霊異記』『三宝絵』『法華験記』『打聞集』『今昔物語集』および中国仏教説話集の受容について論じ、説話の場、編纂方法など、説話研究にとどまらない問題を提起する。(2014.3.21)

253.浅見雅一(あさみ・まさかず)編『近世印刷史とイエズス会系「絵入り本」』(EIRI報告書、慶應義塾大学文学部、2014.2.24、非売品)
 大航海時代のイエズス会布教活動における印刷出版の役割、具体的な絵入り刊行物に関する各論、関連する論考を収める。執筆者:浅見雅一、ウセレル・アントニ、李元淳、川村信三、ジョゼ・ミゲル・ピント・ドス・サントス、前田伸人、安廷苑、呉小新、上野大輔。(2014.3.21)

252.堀池信夫(ほりいけ・のぶお)総編集、増尾伸一郎(ますお・しんいちろう)松ア哲之(まつざき・てつゆき)編『交響する東方の知 漢文文化圏の輪郭』(知のユーラシア5、明治書院、2014.2.10、2,800円)
 日本文化に流れ込んだ中国・ヨーロッパその他の文化との交流を、漢文文化圏という枠組みの中で捉えようとする試み。執筆者:河野貴美子、石井公成、堀川貴司、神田千里、松ア哲之、木村淳也、田村義也、、増尾伸一郎、三ツ井崇。(2014.3.15)

251.若木太一(わかき・たいいち)編『長崎 東西文化交渉史の舞台(ステージ) 明・清時代の長崎 支配の構図と文化の諸相』(勉誠出版、2013.9.20、6,000円)
 江戸時代の長崎における日中交流や、幕府支配、貿易管理、文化芸術の展開などについて論じる。執筆者:徐興慶、荒木龍太郎、若木太一、劉序楓、原田博二、井上敏幸、錦織亮介、山百合子、中尾友香梨、植松有希、松尾晋一、安高啓明、藪田貫、添田仁、中島貴奈、いしゐのぞむ、川平敏文、橋昌彦、越中哲也、静永健、大庭卓也。(2014.3.15)

250.野口哲哉(のぐち・てつや)『野口哲哉ノ作品集 侍達ノ居ル処。』(青幻舎、2014.2.20、2,500円)
 練馬区立美術館・アサヒビール大山崎山荘美術館で開催される野口哲哉展の解説図録。作品解説は本人による。他に加藤陽介・藤本正行の解説を付す。(2014.3.15)

249.田渕句美子(たぶち・くみこ)『異端の皇女と女房歌人 式子内親王たちの新古今集』(角川選書536、KADOKAWA、2014.2.25、1,800円)
 新古今時代の女性歌人のなかから、式子内親王・俊成卿女・宮内卿に焦点を当て、前後の時代と比較しつつその独自性を浮き彫りにする。(2014.3.15)

248.谷知子(たに・ともこ)平野多恵(ひらの・たえ)『秋篠月清集 明恵上人歌集』(和歌文学大系60、明治書院、2013.12.10、12,000円)
 新古今時代を代表する歌人のひとり、藤原良経の家集はじめての全注と、明恵研究者による明恵の家集の詳細な注釈。(2014.1.19)

247.齋藤希史(さいとう・まれし)『漢詩の扉』(角川選書534、角川学芸出版、2013.12.25、1,600円)
 王昌齢・王維・李白・常建・杜甫・岑参・白居易・杜牧・李商隠の九人の唐代詩人の作品を取り上げ、その生涯や交友関係、あるいは六朝時代の先行作品をふまえて、どのように作品が生まれてきたのか、丁寧に解説する。恋愛・友情・風景・月といったモチーフ、辺塞・江南・寺院といった場など、唐詩あるいは中国詩読解の重要なポイントも学べるよう工夫されている。(2014.1.19)

246.島尾新(しまお・あらた)編、小島毅(こじま・つよし)監修『東アジアのなかの五山文化』(東アジア海域に漕ぎだす4、東京大学出版会、2014.1.9、2,800円)
 日本中世の禅宗寺院のうち幕府の保護を受けて外交・貿易にも関与した五山寺院に花開いた文化の成立と展開を、東アジアの国際ネットワーク、日本国内の中央と地方のネットワークの両面をおさえつつ、出版・文学・美術・建築・茶・思想など多方面から概観する。執筆者:堀川貴司、島尾新、伊藤幸司、原田正俊、斎藤夏来、住吉朋彦、藤井恵介、野村俊一、韓志晩、鈴木智大、橋忠彦、中村春作。(2014.1.5)

245.久保田淳(くぼた・じゅん)吉野朋美(よしの・ともみ)校注『西行全歌集』(岩波文庫黄23-2、岩波書店、2013.12.17、1,260円)
 『山家集』『聞書集』『残集』『御裳濯河歌合』『宮河歌合』およびそれらに収めない歌を網羅し、校注・補注を付したもの。(2014.1.4)

244.東洋文庫日本研究班編『岩崎文庫貴重書書誌解題』VII(財団法人東洋文庫、2013.3.11、非売品)
 東洋文庫所蔵岩崎文庫の貴重書解題シリーズの最新刊で、近世成立の和歌関係書、木村正辞旧蔵書(前輯の補遺)および新収歌書を収める。(2014.1.4)

243.高橋博巳『草場佩川』(佐賀偉人伝11、佐賀県立佐賀城本丸歴史館、2013.12.10、952円)
 佐賀藩多久家家臣の家に生まれ、儒者として佐賀藩に仕え、多くの学者文人と交遊し、また海外の動向にも関心が深かった詩人・画家の草場佩川の生涯をその作品とともに辿る。カラー図版多数。(2013.12.22)

242.鈴木健一(すずき・けんいち)編『浸透する教養 江戸の出版文化という回路』(勉誠出版、2013.11.20、7,000円)
 様々なジャンルの版本の出版によって、古典文学・思想・医学などの教養が各階層に浸透していった様子を探る。執筆:鈴木健一、田代一葉、深沢了子、藤澤茜、木越俊介、勝又基、壬生里巳、宮本圭造、高山大毅、金田房子、吉丸雄哉、湯浅佳子、鈴木俊幸、久岡明穂、西田正宏、田中仁、齋藤文俊、堀口育男、津田真弓。(2013.12.8)

241.磯水絵(いそ・みずえ)編『今日は一日、方丈記』(新典社、2013.10.19、2,000円)
 2012年12月15日に二松学舎大学で行われたシンポジウムおよび雅楽コンサートに基づいたもので、鴨長明および『方丈記』を多面的に論じている。(2013.11.4)

240.中本大(なかもと・だい)編『名庸集 影印と解題』(全3巻)(思文閣出版、2013.10.1、38,000円)
 信多純一氏旧蔵、神戸女子大学古典芸能研究センター所蔵『名庸集』『燈分集』の影印。『名庸集』は中国歴代人物(俗人)の、『燈分集』は三国の祖師・僧侶に関する諸書の記述を抜き書きしたもので、五山僧による類書である。詳細な解題を付す。(2013.10.16)

239.日原傳(ひはら・つたえ)『素十の一句』(365日入門シリーズ7、ふらんす堂、2013.10.15、1,714円)
 写生俳句の高野素十の句を日めくりのように365句選び、簡潔な鑑賞を行ったもの。参考文献、季語索引を付す。(2013.10.16)

238.冲森卓也(おきもり・たくや)編著、齋藤文俊(さいとう・ふみとし)山本真吾(やまもと・しんご)著『日本語ライブラリー 漢文資料を読む』(朝倉書店、2013.10.5、2,700円)
 古代から近代に至る日本語における漢文のさまざまな文体と訓読について、網羅的に学べる一冊。末尾に資料影印、ヲコト点図、仮名字体表などを付す。(2013.10.16)

237.盛田帝子(もりた・ていこ)『近世雅文壇の研究』(汲古書院、2013.10.1、11,000円)
 光格天皇と賀茂季鷹をキーパーソンに、近世後期京都の堂上・地下歌壇それぞれの動きと両者の交渉とを明快に叙述する。(2013.10.16)

236.三木雅博(みき・まさひろ)校注『和漢朗詠集 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫A215-1、角川書店、2013.9.25、1,400円)
 校注者の積年の研究成果を盛り込んだ現代語訳と注。部立てごとにその意義や配列について解説を加え、本書の文学史的位置を明確にする。(2013.10.16)

235.小坂機融(こさか・きゆう)晴山俊英(はれやま・しゅんえい)岩永正晴(いわなが・しょうせい)角田泰隆(つのだ・たいりゅう)伊藤秀憲(いとう・しゅうけん)訳註『清規・戒法・嗣書』(原文対照現代語訳・道元禅師全集第十五巻)(春秋社、2013.7.25、8,000円)
 『典座教訓』『仏祖正伝菩薩戒作法』『嗣書』など、禅院生活の規範となる著作のほか、如浄からの嗣法に関わる資料を収める。全文の読み下し・現代語訳・注を付す。(2013.10.3)

234.島尾新(しまお・あらた)『「和漢のさかいをまぎらかす」 茶の湯の理念と日本文化』(淡交新書、淡交社、2013.9.5、1,300円)
 珠光のことばと伝えられる「和漢のさかいをまぎらかす」を足がかりにして、日本文化の特質を和と漢の関わり合いと見て、平安時代から始まって室町時代の文化全般を論じ、茶の湯の文化にその窮極を見る。(2013.10.3)

233.松田隆美(まつだ・たかみ)編『書物の来歴、読者の役割』(慶應義塾大学出版会、2013.10.15、3,000円)
 書物そのものが、あるいはその書物の持つ意味が、読書行為によっていかに変容していくか、東西の写本・版本、近代作家の原稿と出版、大衆文化における受容など幅広いテーマで探る。オムニバス講義の活字化。執筆者:松田隆美、金沢百枝、原基晶、池田真弓、宮利行、大串尚代、山本昭彦、橋智、小倉孝誠、浅見雅一、堀川貴司。(2013.9.28)

232.久保田淳(くぼた・じゅん)・佐伯真一(さえき・しんいち)・鈴木健一(すずき・けんいち)・高田祐彦(たかだ・ひろひこ)・鉄野昌弘(てつの・まさひろ)・山中玲子(やまなか・れいこ)編著『人生をひもとく日本の古典 第四巻 たたかう』(岩波書店、2013.9.18、1,800円)
 代表的な日本の古典の一節を詳しく読み解き、そこから普遍的な人生の一断面を描き出す。本巻は戦争・喧嘩・いざこざ・論争などを取り上げる。(2013.9.23)

231.小島毅(こじま・つよし)『朱子学と陽明学』(ちくま学芸文庫、コ-41-1、筑摩書房、2013.9.10、1,100円)
 放送大学のテキストとして執筆されたものの文庫版。従来の固定的理解を排除し、成立の歴史的背景、宇宙論・道徳論・政治論など多岐にわたる論点を整理して、むしろその近似性を論じる。また周辺諸国への影響や、印刷文化との関係などにも触れる。(2013.9.23)

230.小林敬一(こばやし・けいいち)『詩に詠まれた景観と保全 福島県高子二十境の場合』(西田書店、2013.8.20、2,300円)
 現在の福島県伊達市高子の豪農だった漢詩人熊阪覇陵が付近の風景を二十選び、中国風に命名して詩に詠み、それを息子台州・孫盤谷も唱和して『永慕編』として出版した。この経緯と作品について、現代の景観保全や地域活性化といった課題を念頭に読み直す試み。(2013.9.7)

229.玉城司(たまき・つかさ)訳注『一茶句集 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫A-336-1、角川学芸出版、2013.8.25、1,238円)
 小林一茶生涯の作品から1,000句を選び、季語別に編集して配列、訳注と行き届いた解説を付したもの。巻末に解説・略年譜・参考文献・全句索引を付す。(2013.9.7)

228.関周一(せき・しゅういち)『朝鮮人のみた中世日本』(歴史文化ライブラリー367、吉川弘文館、2013.9.1、1,700円)
 応永27年(1420)に日本を訪れた朝鮮の使節による『老松堂日本行録』の分析を中心に、1471年に編纂された日本・琉球研究書『海東諸国記』や使節の復命書、漂流民からの聞き書きなど、朝鮮人の日本見聞録の視点から中世日本を見直す。(2013.9.7)

227.深沢眞二(ふかさわ・しんじ)『連句の教室 ことばを付けて遊ぶ』(平凡社新書694、平凡社、2013.8.12、780円)
 著者勤務先の和光大学において授業として行われた連句の教室を紙上に再現、式目の解説を織り交ぜつつ1年で歌仙を巻いていく。句の選定や添削に著者の手さばきが味わえる。巻末に過去の連句作品を収録。解説:田正子。(2013.8.24)

226.福永光司(ふくなが・みつじ)興膳宏(こうぜん・ひろし)訳『荘子 内篇』(ちくま学芸文庫ソ4-1、筑摩書房、2013.7.10、1,300円)
 朝日文庫版福永光司訳注本をもとに、興膳宏によって全面的に書き改められたもの。明快で親しみやすい現代語訳になっている。(2013.8.24)

225.久保田淳(くぼた・じゅん)『富士山の文学』(角川ソフィア文庫C113-1、角川学芸出版、2013.7.25、819円)
 古代から現代まで、富士山を描き、富士山を舞台にした文学作品を辿り、日本人・日本文学と富士山の関わりを論じる。文春新書の同題書(2004年刊)の改訂版。(2013.8.3)

224.堀池信夫(ほりいけ・のぶお)総編集、石川文康(いしかわ・ふみやす)井川義次(いがわ・よしつぐ)編『知は東から 西洋近代哲学とアジア』(知のユーラシア1、明治書院、2013.5.10、2,800円)
 ライプニッツほか西洋哲学に対する儒学の影響、隠れキリシタン、ケンプファー(ケンペル)の見た日本宗教、近代東アジアにおける西洋哲学受容などについて論じる。(2013.6.15)

223.中野三敏(なかの・みつとし)監修、河野実(こうの・みのる)編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』(勉誠出版、2013.5.15、10,000円)
 江戸時代の絵入り版本や一枚摺り、特に漢詩・和歌・狂歌・俳諧などを伴ったものについて、その変遷や特質を探る論考を収める。執筆者:雲英末雄、阿美古理恵、神作研一、佐々木英理子、浅野秀剛、門脇むつみ、池澤一郎、田辺昌子、日野原健司、田邉菜穂子、高杉志緒、小林ふみ子、中野三敏、スコット・ジョンソン、伊藤善隆、加藤定彦、河野実。(2013.6.9)

222.井原今朝男(いはら・けさお)編『富裕と貧困』(生活と文化の歴史学3、竹林舎、2013.5.15、14,800円)
 中世において富がどこから生まれ、どのように交換・流通されていくか、経済のみならず、政治・宗教・文化などの多方面にわたる論考を集める。(2013.5.23)

221.鈴木健一(すずき・けんいち)『日本漢詩への招待』(東京堂出版、2013.5.10、2,800円)
 中国漢詩の概説から始めて、『懐風藻』から夏目漱石まで、日本漢詩の代表的な作者・作品をわかりやすく解説する。(2013.5.11)

220.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史4 抄物、広大な沃野』(武蔵野書院、2013.4.25、2,000円)
 3に引き続き抄物を対象として、その種類や特徴、「抄物文体」と名付けられた口語体をもとにした文体の成立や変遷、資料の発掘の例など、広汎に述べる。 (2013.5.11)

219.人間文化研究機構国文学研究資料館編『アメリカに渡った物語絵 絵巻・屏風・絵 本』(ぺりかん社、2013.3.10、4,500円)
 2011年9月にコロンビア大学において行われたシンポジウムの成果をまとめたもの。ニューヨーク公共図書館スペンサー・コレクションをはじめ、在米の 絵入り本や絵巻物などを題材に日本文学と絵画および芸能の関係について論じる。(2013.5.1)

218.加藤郁乎(かとう・いくや)編『荷風俳句集』(岩波文庫緑42-10、岩波書店、2013.4.16、940円)
 永井荷風生涯の俳句、狂歌、小唄ほかの俗謡、漢詩および詩歌にまつわる随筆、俳句等を画賛のように付した写真を集成する。池澤一郎による詳細な注解・解題を付す。(2013.4.29)

217.小峯和明(こみね・かずあき)『東奔西走―中世文学から世界の回路へ』(笠間書 院、2013.3.30、1,900円)
 世界を股に掛けた蔵書調査・研究交流のおりおりに記されたエッセイや、日本文学研究を広く見渡した講演記録など、これまでの論著に収められなかった文章を集成したもの。巻末に略歴・論文著作目録を付す。(2013.4.29)

216.大本山永平寺史料全書編纂室・永平寺史料全書編纂委員会編『永平寺史料全書 文書編』第1巻(大本山永平寺、2012.10.25、28,000円(吉川弘文館発売))
 文書を中心に、書籍類も含め、成立および加点・施入等の年代がわかる永平寺所蔵史料を編年体で列挙し、図版・翻刻および解説を加えたもの。 (2013.4.29)

215.中島楽章(なかじま・がくしょう)伊藤幸司(いとう・こうじ)編 『寧波と博多』(東アジア海域叢書11、汲古書院、2013.3.27、7,000円)
 寧波と博多を二つの焦点として展開された東アジアのモノ・人の交流を多角的に論じる。貿易・軍事に関わること、外交・文化に関わること、基礎的な史料紹介、の三部から成る。第三部には『初渡集』(策彦入明記)巻中の厳密な翻刻を収める。執筆者(編者以外)、山内晋次、小畑弘己、呂晶E、佐伯弘次、橋本 雄、岡本弘道、米谷均、西尾賢隆、須田牧子、山崎岳。(2013.4.29)

214.森正人(もり・まさと)稲葉継陽(いなば・つぐはる)編『細川家の歴史資料と書 籍』(吉川弘文館、2013.3.25、10,000円)
 熊本大学図書館に寄託されている熊本藩細川家の永青文庫資料について、歴史と文学の研究者がその分析を行ったもの。蔵書に関しては、その形成や構造とい う視点から分析されている。執筆者(編者以外)、山田貴司、松崎範子、徳岡涼、山田尚子。(2013.4.28)

213.小峯和明(こみね・かずあき)編著『日本文学史 古代・中世編』(ミネルヴァ書 房、2013.5.10、3,800円)
 近年の研究をふまえた最新の日本文学史。コラム欄を設け、これまでの文学史であまり取り上げられなかった分野にも目配りしている。執筆者、斎藤英喜、多 田一臣、錦仁、川村裕子、小島菜温子、馬場淳子、佐藤道生、千本英史、渡部泰明、荒木浩、深沢徹、鈴木彰、宮越直人、小野恭靖、小林健二、前田雅之、増尾伸一郎、神田龍身、岡崎真紀子、浅田徹、竹村信治、菊地仁、大橋直義、渡辺麻里子、恋田知子、渡辺匡一、原克明、堀川貴司、島村幸一、長谷川範彰、目黒将 史(2013.4.28)。

212.久保田淳(くぼた・じゅん)訳注『無名抄 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫A260-3、2013.3.25、1,143円)
 鴨長明の説話的歌論書『無名抄』の訳注。詳細な補注により、それぞれの章段の持つ和歌史上の位置付けがわかる。(2013.4.14)

211.橋本雄(はしもと・ゆう)『”日本国王”と勘合貿易』(NHKさかのぼり日本史 外交篇[7]室町、NHK出版、2013.3.30、1,300円)
 NHK教育テレビ「さかのぼり日本史」を書籍化したもので、足利義政の勘合貿易再開(1451年)、義満の明使接見(1402年)、懐良親王への明使の 捕縛(1372年)、天龍寺船の派遣(1341年)を焦点として、室町幕府の外交・貿易の変遷を、東アジア情勢と国内の戦乱や政治をふまえて描く。番組で 使われたCG画面や図表が使われていてわかりやすい。(2013.4.14)

210.鈴木健一(すずき・けんいち)編『千年の百冊』(小学館、2013.4.8、2,800円)
 『古事記』から幕末の和歌まで、『新編日本古典文学全集』所収の古典作品から選んだ100点について、内容紹介と現代語訳を載せる。執筆者、中嶋真也、吉田幹生、鈴木宏子、室田知香、吉野瑞恵、君嶋亜紀、鈴木健一、石澤一志、山本啓介、木下華子、菊池庸介、田代一葉、藤澤茜、津田眞弓。 (2013.4.14)

209.田村航『一条兼良の学問と室町文化』(勉誠出版、2013.2.28、9,500円)
 古典注釈、有職故実といった学問に大きな足跡を残した一条兼良を、室町文化という大きな枠組みの中で捉えようとする試み。兼良作であることが確定していない著作の検討、その学問および政治への姿勢などを論じる。(2013.3.31)

208.中川徳之助(なかがわ・とくのすけ)『髑髏の世界―一休宗純の跡をたどる』(水 声社、2013.3.10、5,000円)
 偈頌と年譜を中心に一休の生涯をたどった評伝で、その禅的世界を探求する。全編書き下ろし、10年ほど前に完成していた原稿をこのたび出版したもの。 (2013.3.31)

207.水谷隆之(みずたに・たかゆき)『西鶴と団水の研究』(和泉書院、 2013.2.15、8,000円)
 西鶴の門人で、西鶴とその後の浮世草子隆盛の中継役を果たした北条団水の浮世草子や俳諧作品の分析を中心に、西鶴や出版書肆に関する論をも収める。 (2013.3.2)

206.徳盛誠(とくもり・まこと)『海保青陵 江戸の自由を生きた儒者』(朝日新聞出 版、2013.1.30、1,800円)
 江戸中期、社会や政治を経済(エコノミー)の視点から縦横に論じた異色の儒者海保青陵の評伝。時代相との関係、荻生徂徠との比較、最初の出版書『文法披 雲』の革新性などを論じるほか、18世紀前半のロンドンで活躍した思想家バーナード・マンデヴィルとの比較を試みる。(2013.2.21)

205.神作研一(かんさく・けんいち)『近世和歌史の研究』(角川学芸 出版、2013.1.24、6,000円)
 近世の地下(じげ)歌人について、その伝記や歌集・歌学書、あるいは中央・地方歌壇の様相などを幅広く論じる。附編として歌書の版本についての論2篇を 載せるとともに、詳細な索引を付す。(2013.2.21)

204.森川昭(もりかわ・あきら)『下里知足の文事の研究』第一部日記 篇(全2冊) (和泉書院、2013.1.23、23,000円)
 尾張鳴海村(東海道鳴海宿)の豪商で、芭蕉・西鶴とも交流のあった下里知足の日記(寛文8年〜元禄17年)の全文と紙背文書の一部の翻刻に、関係系図、 地図、登場人物紹介などを付したもの。(2013.2.4)

203.塩村耕(しおむら・こう)岩瀬文庫資料調査会執筆、西尾市岩瀬文庫編『こんな本 があった!―岩瀬文庫平成悉皆調査中間報告展10―』(西尾市岩瀬文庫、2012.1.126、非売品)
 毎年恒例の展示図録。一枚物の珍資料、池辺義象自筆稿本類などを紹介する。(2013.2.4)

202.羽田正(はねだ・まさし)編、小島毅(こじま・つよし)監修『海から見た歴史』 (東アジア海域に漕ぎだす1、東京大学出版会、2013.1.15、2,800円)
 1250年から1350年(モンゴルによる支配、海商の活躍)、1500年から1600年(西洋人を含む貿易の伸展、倭寇)、1700年から1800年 (強力な国家のもとの統制的貿易)という三つの時代を比較する形で東アジア海域の交流の様子を描き出す。(2013.2.4)

201.高宮利行(たかみや・としゆき)『本の世界はへんな世界』(雄松堂書店、 2012.11.27、2,800円)
 西洋書物学およびイギリス文学研究者として著名な著者が、研究と収集の思い出を織り交ぜながら、学問・書物・人物について記したエッセイ集。ヨーロッパ における古写本研究の進展とそれに関わる学者・古書業者をめぐるエピソードが特に興味深い。(2012.12.29)

200.大沼晴暉(おおぬま・はるき)『図書大概』(汲古書院、2012.11.26、 8,000円)
 前半、本文篇では「図書とは何か」「校べ勘える―校勘学と形態書誌学」「図書の形態と機能」「図書の表記」「図書(印刷)の歴史」「図書の調べ方」の六 章に分けて、図書の定義、校勘学・形態書誌学の方法論、判型・装訂・文字表記、書物史、書誌調査の実際について述べる。後半、図版篇では版本のさまざまな 印刷方式や部位、版の弁別などについて、図版を掲げる。著者が慶應義塾大学附属研究所斯道文庫において行ってきた講義内容をまとめたもので、図版は慶應義 塾図書館および斯道文庫蔵書を用いる。(2012.12.24)

199.松永知海(まつなが・ちかい)編『秋期特別展高麗版大蔵経の諸相』(佛教大学宗 教文化ミュージアム、2012.10.28、非売品)
 2012年秋に行われた同題の展覧会の図録。日本国内に蔵される代表的な高麗版大蔵経コレクションから、同一書を集め、その版面の比較を試みたもの。執 筆:梶浦晉、馬場久幸、松永知海。(2012.12.11)

198.堤玄太(つつみ・げんた)『萩原朔太郎「意志」の覚醒』(森話社、 2012.12.2、3,800円)
 萩原朔太郎を中心に、室生犀星・佐藤惣之助・金子光晴、歌謡曲・短歌などを論じる。2010年急逝した著者の遺稿集。(2012.12.9)

197.後藤昭雄(ごとう・あきお)『本朝漢詩文資料論』(勉誠出版、 2012.11.30、9,800円)
 平安時代を中心に、金剛寺蔵本ほか日本漢詩文の未知の資料の発掘とその意義付け、文体論、校訂論など、近年の幅広い研究成果を収める。 (2012.12.8)

196.井口樹生(いぐち・たつお)著、藤原茂樹(ふじわら・しげき)編『新編 池田彌 三郎の学問とその後』(慶應義塾大学国文学研究室(発売・慶應義塾大学出版会)、2012.10.27、2,600円)
 2002年、没後二十年を記念して刊行された同名書の増補復刊。折に触れ記された著者の池田論の集成に、年譜・著作目録を付す。(2012.12.8)

195.山下真史(やました・まさふみ)村田秀明(むらた・ひであき)『中島敦『李陵・ 司馬遷』』(図版篇・定本篇)(中島敦の会、2012.11.15、2,500円、神奈川県立文学館にて発売)
 神奈川県立文学館所蔵の中島敦「李陵・司馬遷」(没後雑誌に掲載された際「李陵」と命名されたが、残されたメモにより著者自身はこのようなタイトルを考 えていたことがわかった)について、図版篇として原稿およびメモの影印とその解題を、定本篇として作品解題および正字正仮名版・現代表記版二種の翻刻(前 者には校訂について、後者には内容についての脚注を付す)を収める。(2012.12.5)

194.廣木一人(ひろき・かずひと)『連歌師という旅人 宗祇越後府中への旅』(シ リーズ日本の旅人、三弥井書店、2012.11.15、2,800円)
 越後上杉氏の本拠地府中(上越市直江津)へ生涯8回旅をした宗祇の足跡を、彼自身の句集や他の人々の紀行文、著者自身の実地踏査を交えて描く。写真・地 図を多数収める。(2012.12.5)

193.岡崎真紀子(おかざき・まきこ)千本英史(ちもと・ひでし)土方 洋一(ひじか た・よういち)前田雅之(まえだ・まさゆき)編『高校生からの古典読本』(平凡社ライブラリー お23-1、2012.11.9、1,400円)
 古事記から近代の文語文まで、恋愛・美意識(センス)・フィクション・実感(リアル)・思考といったテーマにふさわしい古典作品を原文・解説・現代語訳 (一部のみ)によって紹介する。(2012.11.23)

192.今泉淑夫(いまいずみ・よしお)『亀泉集証』(人物叢書、吉川弘文館、 2012.11.10、2,200円)
 将軍の側近として五山全体を統括し、また禅林文化を体現する立場にあった相国寺蔭涼軒主亀泉集証(1424-93)の生涯を、公用日記『蔭涼軒日録』を 中心として、さまざまな資料から読み解く。同時に室町中期禅林の実情を描く内容にもなっている。(2012.11.23)

191.鈴木健一(すずき・けんいち)『林羅山 書を読みて未だ倦まず』(ミネルヴァ日 本評伝選、ミネルヴァ書房、2012.11.10、3,000円)
 近世文学研究の立場から、後続のあらゆるジャンルの文学・学芸に影響を与えた巨人羅山の足跡をたどる。(2012.11.12)

190.曹景恵(そう・けいえい)『日本中世文学における儒釈道典籍の受容―『沙石集』 と『徒然草』―』(日本学研究叢書4、臺大出版中心、2012.2、700台湾元)
 『沙石集』『徒然草』の二書を中心に、中世文学の作品に儒・仏・道の典籍がどのように受容されたかを分析する。『論語』『老子』に関しては、その本文の みならず注釈も影響を与えているとする。(2012.11.5)

189.金文京(きん・ぶんきょう)『李白 漂泊の詩人 その夢と現実』(書物誕生 あ たらしい古典入門、2012.10.24、岩波書店、2,400円)
 「第1部 書物の旅路」では、生前の交遊、いくつかの伝記、随筆・戯曲等に見る伝説などを見渡しつつ、詩文集の編集と注釈を概観する。「第2部 作品世 界を読む」では、これまであまり注目されなかった作品を読み解いて、彼の生涯の実像に迫る。(2012.11.5)

188.鉄心斎文庫短冊研究会編『鉄心斎文庫短冊総覧 むかしをいまに』(上巻図版編、 下巻釈文編)(2012.8.10、鉄心斎文庫伊勢物語文華館発行・八木書店発売、38,000円)
 伊勢物語のコレクションで知られる故芦澤新二氏の鉄心斎文庫に蔵される短冊約4800点について、図版編にはそのうち843点をカラー図版で掲げ、釈文 編には全短冊について作者別に小伝と翻刻を収め、ジャンル別の概説(鈴木淳・金田房子・小林ふみ子)および付録(神作研一・高梨素子・中村健太郎・一戸渉 ほか)を付す。(2012.11.5)

187.堀川貴司(ほりかわ・たかし)浅見洋二(あさみ・ようじ)編『蒼海に交わされる 詩文』(東アジア海域叢書13、汲古書院、2012.10.29、7,000円)
 中世から近代に到る、日本と中国・朝鮮との漢詩文を通じた交流や、その結果もたらされた漢籍が日本においてどのように受容されたか、といった視点から東 アジアのなかの日本を探る。執筆者:堀川貴司、浅見洋二、周裕カイ(金+皆)、査屏球、朱剛、陳捷、張伯偉、高橋博巳、東英寿、合山林太郎。翻訳:浅見洋 二、谷口高志、甲斐雄一、内山精也。(2012.11.4)

186.家永香織(いえなが・かおり)『転換期の和歌表現 院政期和歌文学の研究』(青 簡舎、2012.10.15、13,000円)
 『為忠家両度百首』の総合的分析を起点として、平安後期から鎌倉初期にかけてのさまざまな歌人・歌集における表現の試みについて論じる。人名・書名・和 歌初二句索引を付す。(2012.10.25)

185.松野陽一(まつの・よういち)『東都武家雅文壇考』(臨川書店、 2012.10.30、4,500円)
 江戸の武家を中心に広がった堂上派の、歌人と歌集、あるいは和文や古典注釈など、その活動の全貌を解明すべく、基礎的研究と資料整備をめざしたもの。 (2012.10.25)

184.鈴木宏子(すずき・ひろこ)『王朝和歌の想像力』(笠間書院、 2012.10.20、12,000円)
 古今和歌集および平安歌人の作品を、マクロ(文学史的視野、歌集の編纂)・ミクロ(歌ことばやレトリックなど)両面から捉えて分析する第一部と、源氏物 語の和歌について、人物や巻ごとに細やかに読み解く第二部から成る。和歌索引を付す。(2012.10.25)

183.谷知子(たに・ともこ)田渕句美子(たぶち・くみこ)編『平安文学をいかに読み 直すか』(笠間書院、2012.10.25、2,500円)
 中世文学研究者による、平安時代の主要文学作品の研究状況に対する提言を含む論考を収める。執筆者:久保木秀夫、谷知子、田渕句美子、中川博夫、佐々木 孝浩、渡邉裕美子、渡部泰明、加藤昌嘉、荒木浩。(2012.10.25)

182.静永健(しずなが・たけし)『唐詩推敲 唐詩研究のための四つの視点』(研文出 版、2012.10.1、9,000円)
 音声・典故・校勘・域外の四つの視点から現在の唐詩研究状況をふまえ論じる。付篇として一般向けエッセーも収める。(2012.10.25)

181.岸野俊彦(きしの・としひこ)編『尾張藩社会の総合研究』《第五篇》(清文堂出 版、2012.11.10、9,500円)
 近年編纂刊行が進む『新修名古屋市史』『愛知県史』の成果をふまえて書き下ろされた論文を収める。文化史的視点、江戸や京都との関係、農山村支配など多 様なテーマを取り上げる。執筆者:岸野俊彦、岸雅裕、清水禎子、水野荘平、白根孝胤、後藤真一、鈴木重喜、坪内淳仁、宮川充史、杉本精宏、小川晃太郎、小 川一朗、石田泰弘、林淳一。(2012.10.23)

180.石澤一志(いしざわ・かずし)『京極為兼』(コレクション日本歌 人選053、2012.9.28、1,200円)
 鎌倉時代後期に歌壇に新風を送り、『玉葉集』『風雅集』の二勅撰集を編纂した京極派の指導者為兼の作品50首を取り上げる。(2012.10.19)

179.森正人(もり・まさと)『場の物語論』(中世文学研究叢書13、 若草書房、2012.9.19、12,000円)
 物語の生まれる場、物語する場を作品に描く「場の物語」、この両者についての原理的考察と、『堤中納言物語』『大鏡』『今鏡』『無名草子』『今昔物語 集』『宇治拾遺物語』や絵画を伴う物語など、実際の作品についての分析とを収め、細分化されている物語文学の全体的把握をめざす。 (2012.10.15)

178.伊藤悦子(いとう・えつこ)『木曽義仲に出会う旅』(新典社、 2012.7.27、1,800円)
 関東・中部・関西・中国地方に伝わる義仲伝説の地をめぐり、豊富な写真を添えて、『平家物語』諸本の記述とともに紹介する。末尾に概説・年表・地図・参 考文献を付す。(2012.10.15)

177.関周一(せき・しゅういち)『対馬と倭寇』(高志書院選書8、高 志書院、2012.10.10、2,500円)
 対馬および朝鮮半島南端を根拠地にして、その周辺の海域において活動した「倭寇」あるいは貿易・漁業などを生業とした人々について、さまざまな研究成果 をふまえ、政治・外交・商業活動など多角的に論じる。(2012.10.11)

176.鈴木久(すずき・ひさし)『方丈記と往生要集』(新典社選書 58、新典社、2012.9.25、1,000円)
 今年成立800年を迎えた『方丈記』について、『往生要集』の構成や思想との密接な関連を、構造的分析を通して明らかにする。(2012.10.6)

175.鈴木元(すずき・はじめ)『つける 連歌作法閑談』(新典社新書60、新典社、 2012.9.28、1,000円)
 連歌という文学形式の特徴を「つける」「うつろう」「本歌をとる」「とりなす」「つくる」「つかず」のキーワードで具体例や文学史的視点も交えながらわ かりやすく説く。(2012.10.6)

174.野山嘉正(のやま・かしょう)『日本近代文学の詩と散文 明治の視覚から』(明 治書院、2012.8.10、7,000円)
 日本近代文学史を詩歌(漢詩・新体詩・和歌・俳諧)と散文のせめぎ合いのなかから読み取ろうとする試み。西周・中村敬宇にはじまり、小林秀雄に及ぶ。研 究史への言及も幅広い。(2012.9.14)

173.松田隆美(まつだ・たかみ)編『貴重書の挿絵とパラテクスト』(慶應義塾大学文 学部、2012.9.28、非売品)
 テクストが書物の中でどのような形で配置されているか、またその理解を助けるための挿絵等はどのように作られ、テクストを浸食しているのか、といった観 点から行われた連続講義の文章化。執筆者:関場武・佐々木孝浩・宮内ふじ乃・久木田直江・安形麻理・松田隆美・高橋三和子・明星聖子・井出新・石川透・佐 藤道生。(2012.9.14)

172.金文京(きん・ぶんきょう)『水戸黄門「漫遊」考』(講談社学術文庫2128、 講談社、2012.8.9、1,150円)
 絶大な人気を博した時代劇ドラマ「水戸黄門」のストーリーの背後にある神話的世界(「王」の微行)と東アジアの中央集権国家体制下に行われた巡察制度・ スパイ制度について詳述し、さらには明治以降の本格的流行について、歌舞伎・講談・筆記本・演劇・映画・テレビドラマと調べ上げていく。1999年出版の 訂正再刊本。解説:福田安典。(2012.9.14)

171.東京大学教養学部国文・漢文学部会編『古典日本語の世界[二] 文字とことばの ダイナミクス』(東京大学出版会、2011.5.30、2,400円)
 漢文と和文、漢字とかな、といった表記や文体の問題から、広く思想・表現の問題に至るまで、古典日本語を読み書きする場に起こるさまざまな話題を取り上 げて論じる。執筆者:齋藤希史・神野志隆光・松岡心平・三角洋一・野村剛史・ロバートキャンベル・黒住真・小森陽一・品田悦一・ハルオシラネ。 (2012.9.11)

170.高梨素子(たかなし・もとこ)『松永貞徳と烏丸光広』(コレクション日本歌人選 32、笠間書院、2012.1.20、1,200円)
 江戸時代初期に活躍した歌人・俳諧師・和学者松永貞徳の和歌20首、同じく歌人であり書にも個性的作品を残した烏丸光広の和歌30首を取り上げる。とも に細川幽斎の弟子として中世和歌を近世へと伝え、展開させた歌人であった。(2012.9.10)         

169.橋本雄(はしもと・ゆう)『偽りの外交使節 室町時代の日朝関係』(歴史文化ラ イブラリー351、吉川弘文館、2012.9.1、1,700円)
 室町時代、15世紀なかばに、日本から朝鮮へ、さまざまな外交使節と称する人々が向かった。その多くが全くの偽物であったり、本物の代理人だったりし た。そこから見えてくる日本国内の政治・経済事情や、中国も含めた外交関係や対外観など、さまざまな問題を引き出して論じる。(2012.9.3)

168.小川剛生(おがわ・たけお)『足利義満 公武に君臨した室町将軍』(中公新書 2179、中央公論新社、2012.8.25、900円)
 室町時代の政治・文化の枠組みを形成した将軍足利義満の生涯を、最新の研究成果、著者自身の発見に係る新資料をふまえ、公家・五山僧・顕密僧・大名な ど、義満を取り巻く人々の思惑や行動を絡めながら描いていく。(2012.9.2)

167.斎田作楽(さいた・さくら)編著『久美浜風藻 〈丹後久美浜詩歌 文集〉』(太平文庫72、太平書屋、2012.8.15、7,000円)
 天橋立と城崎温泉という山陰の名勝に挟まれた丹後久美浜(現在の京都府京丹後市)は美しい内海を持つ土地で、江戸時代には大きな回船問屋があって栄えた 港でもあった。ここを訪れた文人たちが残した作品を集成した『漁烟鴎雨集』、江戸時代の様子を回顧した『過渡の久美浜』『随得随記』という、地元の名士稲 葉家の当主とその弟の編著を収録、それに漏れた関連作品も集成し、詩歌等の文学作品には注解を行う。(2012.9.2)

166.鈴木健一(すずき・けんいち)編『鳥獣虫魚の文学史 日本古典の自然観』4魚の 巻(三弥井書店、2012.7.30、2,800円)
 シリーズ最終巻。万葉集の鰻から、蛤・蛸・鯨なども含め、水中の生き物を取り上げる。(2012.8.17)

165.伊藤伸江(いとう・のぶえ)『正徹と心敬』(コレクション日本歌人選54、笠間 書院、2012.7.30、1,200円)
 冷泉家門人として出発しながら、定家に私淑して独自の家風を切り開き、連歌でも活躍した正徹と、その弟子で幽玄世界を追究した心敬の作品を合わせて47 首(連歌の句を含む)収める。(2012.8.14)

164.緑川明憲(みどりかわ・あきのり)『豫楽院鑑 近衞家熈公年譜』 (勉誠出版、 2012.7.25、9,800円)
 摂関家当主であり、詩歌・書・茶の湯・香道など幅広い芸術的才能を発揮した近衞家熈(熈は正しくは第一画が「にすい」になる)の詳細な年譜。江戸前期・ 中期の堂上世界はもちろんのこと、同時代の学問・芸術・宗教社会、幕府・大名家など、さまざまなつながりが見え、利用価値の高いものになっている。 (2012.8.3)

163.浅見雅一(あさみ・まさかず)安廷苑(アン・ジョンウォン)『韓国とキリスト教  いかにして“国家的宗教”になりえたか』(中公新書2173、中央公論新社、2012.7.25、780円)
 現代韓国におけるキリスト教の広がりと、その布教・伝播の歴史を、韓国の近世・近代史とからめて描き、普及の文化的・宗教的背景を分析する。 (2012.8.3)

162.揖斐高(いび・たかし)『頼山陽詩選』(岩波文庫 黄231-5、 2012.6.15、840円)
 江戸時代を代表する詩人・歴史家の頼山陽の詩を120首選び、注釈・鑑賞を行ったもの。生涯にわたり、題材もバランスよく選定され、彼の一生とそれを取 り巻く人々や時代の動きが感じられる。(2012.7.1)

161.久保田淳(くぼた・じゅん)『花のもの言う 四季のうた』(岩波現代文庫 文芸 203、2012.6.13、980円)
 1984年に新潮選書の一冊として刊行された書の増補改訂版。四季おりおりの景物に触れながら、和歌・俳諧・物語その他、日本の古典(ときには近代文 学)の花園を散策する四章と『百人一首』から雪月花ほかの題材を取り上げて論じる一章、計五章から成る。(2012.7.1)

160.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史3 中世口語資料を読む』(武蔵野 書院、20125.15、2,000円)
 惟高妙安の抄物『詩学大成抄』と『玉塵』から、日本人(主に五山僧)の逸話を引く部分を取り上げ、その国語学的分析と内容の検討を行う。背後に膨 大な資料の調査・分析を持つ指摘が各所に見られる。(2012.6.21)

159.ハルオ・シラネ、兼築信行(かねちく・のぶゆき)田渕句美子(たぶち・くみこ) 陣野英則(じんの・ひでのり)編『世界へひらく和歌―言語・共同体・ジェンダー―』(勉誠出版、2012.5.31、3,200円)
 早稲田大学のプロジェクトとして編まれた論集。比較文学、ジェンダー、共同体、レトリック、注釈、メディアなどの観点から論じられる。すべての論文が日 本語・英語両方で収められている。執筆者、ハルオ・シラネ、ヴィーブケ・デーネーケ、王淑英、田渕句美子、近藤みゆき、後藤祥子、谷知子、高松寿夫、陣野 英則、小林一彦、内藤明、渡部泰明、浅田徹、海野圭介、ルイス・クック、佐々木孝浩、兼築信行、鈴木健一。(2012.6.10)

158.石澤一志(いしざわ・かずし)久保木秀夫(くぼき・ひでお)佐々 木孝浩(ささ き・たかひろ)中村健太郎(なかむら・けんたろう)編『日本の書と紙 古筆手鑑『かたばみ帖』の世界』(三弥井書店、2012.6.15、2,800円)
 貴重な古筆切から成る個人蔵古筆手鑑『かたばみ帖』の全断簡の図版・翻刻・解説を収める。冒頭に概説として佐々木孝浩「古筆手鑑の楽しみ」を掲げる。 (2012.6.9)

157.人間文化研究機構国文学研究資料館編『古典籍研究ガイダンス 王朝文学を読むた めに』(笠間書院、2012.6.8、2,800円)
 「Part.1読みが変わる・変える」は平安時代の歌集・物語・日記および能についての本文・伝本研究の紹介、「Part.2本をみる・さがす」は書誌 学の基礎知識や文献資料へのアクセスの方法について述べる。(2012.6.4)

156.松野陽一(まつの・よういち)『千載集前後』(笠間書院、2012.5.31、 2,800円)
 『千載和歌集』およびその前後の歌壇研究書『鳥帚』の続編として、千載集の本文・編成・所収作品や近世版本の書誌的研究を収める「I 風葉抄」と、やはり千載集とその周辺の架蔵写本・古筆切の解題・書影を収める「II 書影覚書」から成る。(2012.6.4)

155.後藤昭雄(ごとう・あきお)『平安朝漢文学史論考』(勉誠出版、 2012.4.16、7,000円)
 平安時代の漢文学について、万葉集や鎌倉時代の作品も視野に収めつつ、詩・文の両者にわたり、資料の発掘・解読を通じた文学史の構築を目指したもの。個 別の作品の読みや文体の分析が、たちまちにして文学史の展望につながるという文学研究の醍醐味を味わえる。(2012.6.4)

154.西尾市岩瀬文庫編、塩村耕・岩瀬文庫資料調査会執筆『こんな本があった! 岩瀬 文庫平成悉皆調査中間報告展9』(西尾市岩瀬文庫、2012.1.21、500円)
 毎年恒例の展示。今回も三河関係の資料、調査会メンバーの選んだ珍資料など32点を掲載する。(2012.5.12)

153.住吉朋彦(すみよし・ともひこ)『中世日本漢学の基礎研究 韻類編』(汲古書 院、2012.2.28、16,000円)
 五山禅僧を中心に宋元文化の影響のもと行われた中世日本漢学において、その勉学の基礎となった類書三種(『古今韻会挙要』『韻府群玉』『氏族大全』)に ついて、これら韻をもとに語彙を分類している書物を「韻類書」と名付け、その詳細な伝本研究と東アジア全域における受容の実態を明らかにする。序説とし て、日本漢学史における五山版および辞書・類書に関する概説を置く。主要伝本書影、人名・書名索引のほか、調査伝本一覧、蔵書印印文索引を付す。 (2012.4.15)

152.中野三敏(なかの・みつとし)楠元六男(くすもと・むつお)編 『江戸の漢文脈文化』(竹林舎、2012.4.16、12,000円)
 江戸時代の文化の背骨には漢文(漢籍)の文化があるという認識のもと、思想・漢学・漢文学・小説・俳諧などを論じる。執筆者、大谷雅夫・長尾直茂・中野 三敏・西村玲・合山林太郎・湯浅邦弘・寺門日出男・杉下元明・池澤一郎・小財陽平・福島理子・深沢眞二・山口恭子・堀川貴司・高橋昌彦・徳田武・西田耕 三・母利司朗・楠元六男・大庭卓也。用語索引を付す。(2012.4.15)

151.錦仁(にしき・ひとし)編『中世詩歌の本質と連関』(中世文学と 隣接諸学6、竹林舎、2012.4.20、14,800円)
 中世和歌という枠組みを問い直すという編者の問題意識のもと、和歌の歴史・技法・本質論、また宗教や他ジャンルの文学との関係、地方文芸における和歌、 など多方面からの論考を収める。執筆者、中村文・寺島恒世・錦仁・吉野朋美・内藤まり子・平田英夫・安井重雄・錺武彦・丸山陽子・松本郁代・中村成里・松 本麻子・植木朝子・久保木秀夫・山田尚子・小山順子・堀川貴司・志立正知・赤木俊介・平林香織・久野俊彦・小林一彦・阿尾あすか・鈴木元・加藤孝男。用語 索引を付す。(2012.4.15)

150.加藤弓枝(かとう・ゆみえ)『細川幽斎』(コレクション日本歌人 選033、笠間書院、2012.3.30、1,200円)
 室町から江戸へ、伝統歌学の橋渡しをしたとされる武家歌人の劇的な生涯を辿りつつ、和歌(狂歌を含む)50首を鑑賞する。付録は松本清張の小説。 (2012.4.15)

149.池澤一郎(いけざわ・いちろう)『雅俗往還 近世文人の詩と絵 画』(若草書房、2012.2.14、14,500円)
 最近の約10年に書かれた論文を集めた、著者の第二論文集。俳諧と漢文学の関わり、絵画と漢詩文との関わり、という二つの柱を中心に、雅俗・画文を往還 しながら近世文人の営みを照らし出す。(2012.3.18)

148.小島孝之(こじま・たかゆき)監修・長母寺開山無住和尚七百年遠 諱記念論集刊行会編『無住 研究と資料』(あるむ、2011.12.1、15,000円)
 『沙石集』その他の著作で知られる無住(1226-1312)の七百回忌を記念して編まれたもので、伝記・思想・著作や晩年を過ごした長母寺のある尾張 との関わりなど、多方面の論考と、『沙石集』新出伝本の紹介、著作伝本一覧、研究文献一覧などの資料を収める。付録CD-ROMには道木本沙石集の全画像 を収める。(2012.3.18)

147.吉野朋美(よしの・ともみ)『後鳥羽院』(コレクション日本歌人 選028、笠間書院、2012.2.29、1,200円)
 後鳥羽院の和歌37首の鑑賞に、略伝・年譜・解説、読書案内を付す。附録は丸谷才一の評論。(2012.3.17)

146.紫陽会編『新井白石『陶情詩集』の研究』(汲古書院、 2012.2.29、20,000円)
 新井白石26歳までの詩を収めた『陶情詩集』の詳細な注解と、同書ならびに白石に関する論考、同書影印・年譜等を収める。附録CD-ROMには、同書お よび近世漢詩の基礎となった『古文真宝前集』『唐詩選』『連珠詩格』のテキストデータ、『円機活法』詩学部の画像データを収める。執筆者、石川忠久(紫陽 会会長)・市川桃子・・満江・三上英司・森岡ゆかり・高芝麻子・遠藤星希・大戸温子(2012.3.10)

145.矢田勉(やだ・つとむ)『国語文字・表記史の研究』(汲古書院、 2012.2.16、19,000円)
 多種多様な日本語の文字・表記を、研究の目的と方法(何をどのように分析検討するか)という原理的な問題と、個別具体的な資料の分析とを並行して行った もの。平仮名文、漢文(変体漢文・候文)、近世の版本、また主として近世国学者による文字・表記研究そのものを対象としている。(2012.3.10)

144.一戸渉(いちのへ・わたる)『上田秋成の時代 上方和学研究』 (ぺりかん社、2012.1.31、8,600円)
 江戸時代中期、京都・大坂において活躍した和学者たち―橋本経亮、荷田信郷、礪波今道ら―の活動を掘り起こし、その基盤に立って上田秋成の学芸を分析す る。(2012.3.3)

143.井上進(いのうえ・すすむ)『明清学術変遷史 出版と伝統学術の 臨界点』(平凡社、2011.12.16、6,500円)
 明代前半から清代初期にかけての出版史の変遷を追いながら、そこに学術の変遷の反映を見る第一部、明代の朱子学・陽明学から清代の漢学(考証学)への連 続性を実に多くの著述を引用しながら論証していく第二部から成る。日本の儒学史・思想史を考える上でも直接間接に参考すべきところが多い。 (2012.2.12)

142.田中康二(たなか・こうじ)『国学史再考―のぞきからくり本居宣 長―』(新典社選書47、2012.1.30、1,800円)
 国学の歴史を再構築するため、本居宣長を中心に据えて、中世から現代まで文学史と思想史の両面を描く。(2012.2.12)

141.鈴木健一(すずき・けんいち)編『鳥獣虫魚の文学史 日本古典の 自然観』3虫の巻(三弥井書店、2012.1.5、2,800円)
 獣・鳥に続く三冊目、上代から近世まで、さまざまな文学作品に描かれた虫を取り上げる。(2012.1.17)

140.井上泰至(いのうえ・やすし)田中康二(たなか・こうじ)編『江 戸の文学史と思想史』(ぺりかん社、2011.12.30、2,800円)
 文学研究の側から、江戸時代の思想史研究に一石を投じる書。執筆者は、池澤一郎・小財陽平(儒学)、田中・天野聡一(国学)、川平敏文・菱岡憲司(老荘 思想)、井上・金時徳(史学・軍学)。(2011.12.23)

139.鈴木健一(すずき・けんいち)『江戸古典学の論』(汲古書院、 2011.11.20、12,000円)
 漢詩・和歌・俳諧を中心に、中世までの古典作品をどのように利用して創作を行っているか、様々な例を挙げて論じ、またその基盤となる伊勢・源氏・古今な どの注釈についても幅広く見渡す。(2011.12.23)

138.小野泰央(おの・やすお)『中世漢文学の形象』(勉誠出版、 2011.11.25、13,000円)
 平安・鎌倉時代の貴族の漢文日記における漢籍典拠の使用、『江談抄』の分析、五山文学における詩論や表現、抄物の注釈方法など、中世漢文学の多岐に渡る 題材を扱う論考を集める。(2011.12.23)

137.渡部泰明(わたなべ・やすあき)阿部泰郎(あべ・やすろう)鈴木 健一(すずき・けんいち)松澤克行(まつざわ・よしゆき)『天皇と芸能』(天皇の歴史10、講談社、2011.11.28、2,600円)
 和歌、音楽、茶の湯など、学問・芸能に関わる事柄と天皇との深い結びつき、それが時の政治や社会でどのような機能を果たしていたかということを平安から 江戸までを対象に論じる。(2011.12.10)

136.小林忠(こばやし・ただし)監修『池大雅 中国へのあこがれ』 (求龍堂、2011.10.18、2,800円)
 10月18日から11月20日までニューオータニ美術館で開催された同題の展覧会の図録を兼ねるもの。中国の風景を画題とする屏風・画巻等を中心に、選 りすぐりの作品を集め、画賛や序跋等を含めて詳細な解説を付す。執筆、小林忠・高橋博巳・吉田恵理・家田奈穂。(2011.11.22)

135.杉田昌彦(すぎた・まさひこ)『宣長の源氏学』(新典社、 2011.11.25、11,000円)
 著者が長年取り組んできた、本居宣長における『源氏物語』の意味とその本文研究・注釈・評論等を、残された資料を縦横に用いて総合的に論じる。 (2011.11.19)

134.浅見和彦(あさみ・かずひこ)伊東玉美(いとう・たまみ)責任編 集『新注古事談』(笠間書院、2010.10.30、1,800円)
 適度な頭注に、主要参考文献・類話一覧・人名索引を備えたテキスト。(2011.11.19)

133.渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)『新古今時代の表現方法』(笠間 書院、2010.10.30、14,000円)
 俊成卿女・宮内卿・越前など女性歌人の作品分析を通してさぐる本歌取の実態、『最勝四天王障子和歌』『内裏名所百首』における名所和歌のあり方、『光明 峯寺摂政家百首』『隆房の恋づくし』の諸本研究など、基礎的研究と微細な表現の読解とによって表題になっているテーマを浮かび上がらせる。 (2011.10.26)

132.高木和子(たかぎ・かずこ)『平安文学でわかる恋の法則』(ちく まプリマー新書168、筑摩書房、2011.10.10、820円)
 恋と結婚、仕事、親子の確執など、現代にも通じる人生のさまざまな局面を、平安文学(主として物語・日記)から取り上げて、当時の社会や風俗をふまえて 読み解いていく。物語の型、贈答歌の方法など、平安文学の読み方を教えてくれる一冊。(2011.10.14)

131.加藤昌嘉(かとう・まさよし)『揺れ動く『源氏物語』』(勉誠出 版、2011.10.1、4,800円)
 現存諸本における本文異同の振幅を見定める第1部、校訂・句読点などによって原文の持つ意味内容をいかに蘇らせるかを論じる第2部、54帖以外の散逸巻 や続編・外伝から物語の生成流動を測定する第3部から成る。(2011.10.5)

130.創立100周年記念事業部編『東京古典会 創立100周年記念 誌』(東京古典会、2011.10.1、2,000円)
 巻頭インタビュー「古典籍を継承するために」(国文学研究資料館長・今西祐一郎)、最近二十年大市出品版本百選、文化財の保存・修理(東京国立博物 館)、東京古典会会員紹介、東京古典会年表から成る。(2011.10.5)

129.福長進(ふくなが・すすむ)『歴史物語の創造』(笠間書院、 2011.2.28、11,000円)
 『栄花物語』『大鏡』という平安時代を代表する歴史物語の叙述方法について、歴史資料・仮名日記・作り物語などの同時代のテクストを視野に入れながら分 析する。詳細な索引を付す。(2011.10.2)

128.鈴木健一(すずき・けんいち)編『鳥獣虫魚の文学史 日本古典の 自然観』2鳥の巻(三弥井書店、2011.8.10、2,800円)
 1獣の巻(このページの114)に続くもので、『風土記』『万葉集』から物語・軍記・和歌・能などを経て、江戸時代の読本に至るまで、さまざまな文学作 品に描かれた鳥が登場する。 (2011.10.2)

127.柳澤良一(やなぎさわ・りょういち)『新撰朗詠集全注釈』(全四 巻、新典社注釈叢書16・17・19・20、新典社、2011.2.25、4.5、5.31、7.20、18,000円、19,400円、19,400 円、18,500円)
 成立等について記す解説および注釈・校異(諸本解説を含む)・出典から成る。第一巻に春部、第二巻に夏・秋・冬部、第三・四巻に雑部を収め、第四巻末に 詳細な伝記を伴う作者索引を付す。著者長年の研究成果をまとめたもので、豊富な用例を伴う注が特徴となっている。(2011.8.14)

126.高野晴代(たかの・はるよ)『源氏物語の和歌』(コレクション日 本歌人選008、笠間書院、2011.7.25、1,200円)
 『源氏物語』の作中人物の和歌約800首のなかから、物語の流れに沿って54首を選び解説する。(2011.8.14)

125.高木和子(たかぎ・かずこ)『和泉式部』(コレクション日本歌人 選006、笠間書院、2011.7.25、1,200円)
 平安中期の歌人和泉式部の代表歌50首を取り上げ、その技巧的な側面に注目しつつ読み解く。(2011.8.14)

124.鈴木健一(すずき・けんいち)鈴木宏子(すずき・ひろこ)編『和 歌史を学ぶ人のために』(世界思想社、2011.8.20、2,300円)
 大学のテキスト用に編まれた、上代から明治初期短歌までをカバーする和歌史概説。大浦誠士・鉄野昌弘・鈴木宏子・松本真奈美・吉野朋美・渡邉裕美子・平 野多恵・山本啓介・西田正宏・田中康二・田代一葉・下田祐介・鈴木健一・久富木原玲・堀川貴司。(2011.8.14)

123.久保田淳(くぼた・じゅん)監修、佐藤道生(さとう・みちお)柳 澤良一(やなぎさわ・りょういち)『和漢朗詠集 新撰朗詠集』(和歌文学大系47、明治書院、2011.7.20、14,500円)
 柿村重松以来久々の本格的な『新撰朗詠集』注釈と、院政期・鎌倉期の博士家による朗詠集研究の成果を反映した写本を底本とする『和漢朗詠集』注釈とい う、ともに研究史上画期的な内容をもつ一冊。(2011.7.28)

122.橋口侯之介(はしぐち・こうのすけ)『和本への招待 日本人と書 物の歴史』(角川選書492、角川学芸出版、2011.6.25、1,600円)
 全体を五章に分け、『源氏物語』に代表される平安時代の貴族の書物、中世寺院における出版や書写、江戸時代の本屋の成立や出版のプロセス、草子(草紙) の持つ文化、などを論じる。(2011.6.25)

121.松本麻子(まつもと・あさこ)『連歌文芸の展開』(風間書房、 2011.6.15、14,000円)
 連歌史上の重要な問題、特に和歌の表現や和歌研究と連歌創作との関連について論ずる。内閣文庫本『勅撰名所和歌抄出』の翻刻と索引を付す。 (2011.6.25)

120.『町奉行与力の風流な生活―橘千蔭の場合―』(昭和女子大学光葉 博物館、2011.5、非売品)
 2011年5月16日から6月18日を会期とする同タイトルの特別展の図録。和歌・書画・古典注釈など多方面で活躍した橘千蔭の全貌を示す展示。 (2011.6.2)

119.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史2 意志・無意志』 (武蔵野書院、2011.5.15、2,000円)
 動詞における意志(意識的に行う動作)と無意志(自然に起きた動作)の区別が、古代から中世の日本語には広汎に存在することを、さまざまな例を挙げて立 証、受身・使役の助動詞の成立や、一見不自然に見える目的語を持たない他動詞などをこの観点から説明する。(2011.6.2)

118.延広真治(のぶひろ・しんじ)『江戸落語 誕生と発展』(講談社 学術文庫2044、2011.4.11、1,000円)
 『落語はいかにして形成されたか』(平凡社、1986)の増補改訂版。天明年間、烏亭焉馬によって始められ、その後の江戸落語発展の基礎となった「咄の 会」の実態を始めて明らかにした論文を中心に、鹿野武左衛門・烏亭焉馬・三笑亭可楽・林屋正蔵を追いながら江戸落語の生成発展を叙述する。芸能や民俗と深 く関わりながらも、同時代の戯作文学や俳諧・狂歌などとの交流によって文学としても自立していく様相を微細に描く。(2011.4.27)

117.小井土守敏(こいど・もりとし)平藤幸(ひらふじ・さち)岩城賢 太郎(いわき・けんたろう)『中世文学十五講』(翰林書房、2011.4.14、980円)
 大学講義用のテキストとして編集されたもの。和歌・連歌・物語・日記・紀行・随筆・説話・軍記・芸能等中世文学のさまざまなジャンルの作品本文を頭注を 付して収める。(2011.4.27)

116.伊井春樹(いい・はるき)編『日本古典文学研究の新展開』(笠間 書院、2011.3.25、12,000円)
 編者古稀記念の論文集。古代・中世の漢詩・和歌、古代・中世の日記・物語、中世以降の諸文献、の三部計21本、滝川幸司「応制詩の述懐―勅撰三集から菅 原道真へ―」、加藤昌嘉「和歌の書記法」、中本大「寛文年間の五山の文事―後水尾院の「西湖詩」をめぐって―」等々を収める。(2011.4.27)

115.橋本雄(はしもと・ゆう)『中華幻想 唐物と外交の室町時代史』 (勉誠出版、2011.3.31、2,800円)
 近年の外交史・考古学・美術史等の研究成果をふまえ、中国文明およびそこからもたらされる文物「唐物」をめぐる言説の検討を通じて室町時代の日本の対外 観あるいは自己認識を明らかにする。また、その形成に深く関わった禅僧たちの作り出すフィクションを読み解く。(2011.4.17)

114.鈴木健一(すずき・けんいち)編『鳥獣虫魚の文学史 日本古典の 自然観』1獣の巻(三弥井書店、2011.3.8、2,800円)
 上代から幕末まで、日本文学は動物をどのように描き、また擬人化してきたか、神話・和歌・物語・演劇・読本・俳諧などさまざまなジャンルにわたって、そ れぞれの専門家が論じる。図版多数。(2011.4.2)

113.小川剛生(おがわ・たけお)校訂『迎陽記』第一(史料纂集第 160回配本、八木書店、2011.3.25、13,000円)
 南北朝・室町前期の漢学者で二条良基に仕えた東坊城秀長の日記。これまで翻刻は『大日本史料』に引用されている断片的なものだけであったが、これにより この時期の政治文化を知るための重要史料が、行き届いた校訂本文で通覧できることになった。全二巻。(2011.3.31)

112.後藤昭雄(ごとう・あきお)『NHKカルチャーラジオ 漢詩を読 む 日本の漢詩(飛鳥〜平安)』(NHK出版、2011.4.1、800円)
 2011年4月から9月まで、NHKラジオ第2放送の番組テキストとして作られたもの。『懐風藻』から『法性寺関白御集』まで、時代の変遷と詩人の個性 を引き出したわかりやすい解説で日本の漢詩を読んでいく。(2011.3.30)

111.京都大学国文学研究室・中国文学研究室編『看聞日記紙背 和漢聯 句訳注』(臨川書店、2011.2.28、3,200円)
 伏見宮貞成の日記『看聞日記』の紙背に残された応永25年11月25日に行われた和漢聯句百韻の訳注。解説として「伏見宮と和漢聯句」(中村健史)を付 す。(2011.3.30)

110.村尾誠一(むらお・せいいち)『藤原定家』(コレクション日本歌 人選011、笠間書院、2011.2.28、1、200円)
 一般向けに書かれた和歌アンソロジー評釈の一冊。秀歌はもちろん、歌人としての節目となる歌を50首選んで鑑賞する。唐木順三『中世の文学』から定家に 関する一節を「付録エッセイ」として収録。(2011.3.16)

109.三角洋一(みすみ・よういち)『宇治十帖と仏教』(若草書房、 2011.2.7、8,800円)
 天台・浄土をはじめ、『維摩経』『過去現在因果経』あるいは『遊仙窟』などをふまえつつ、宇治十帖における人物造型や物語の型を読み解いていく。仏教語 索引を付す。(2011.3.16)

108.柳澤良一(やなぎさわ・りょういち)『新撰朗詠集全注釈』一(新 典社、2011.2.25、18,000円)
 梅沢本を底本にした詳細な注釈。第一巻として、作品の概説、上巻春部の注釈、同校異、同文献(出典や他出文献)を収める。注釈中の漢文の引用はすべてル ビ付きの読み下し文と原文を併せて挙げ、余説として享受資料や先行研究等にも広く言及するなど、幅広い読者を想定した配慮がある。(2011.2.26)

107.齋藤文俊(さいとう・ふみとし)『漢文訓読と近代日本語の形成』 (勉誠出版、2011.2.25、7,500円)
 近世における漢文訓読の変遷や訓読法を廻る議論について、近代日本語への接続を視野に入れて、国語学の観点から総合的に考察したもの。事項・人名・書 名・語句索引を付す。(2011.2.26)

106.五月女肇志(そうとめ・ただし)『藤原定家論』(笠間書院、 2011.2.10、8,000円)
 藤原定家の和歌表現について、万葉集の摂取、物語の摂取、自詠改作の3つの視点から論じる。他に定家作品の享受、『明月記』伝本の書誌などについての論 を収める。(2011.2.26)

105.太平書屋編『花咲一男翁しのぶ艸』(太平書屋、2011.2、 2,000円)
 近世風俗研究会を主宰し、研究者・同好者を育てるとともに、数々の資料集や研究書を世に送り出し、2010年7月、93歳で逝去した花咲一男翁への諸家 追悼文28篇、遺稿2篇および太平書屋(斎田作楽)編による略年譜・著作目録・近世風俗研究会刊行書目(未定稿)から成る。(2011.2.20)

104.小川剛生(おがわ・たけお)訳注『正徹物語 現代語訳付き』(角 川ソフィア文庫A-317-1、2011.2.25、1,143円)
 室町時代を代表する歌人正徹が著した歌論で、理論的な内容とともに、歌人たちの逸話に富む。脚注、補注、現代語訳によって、一般読者にも研究者にも配慮 した注釈になっている。主要歌書解説・索引を付す。(2011.2.20)

103.学習院大学東洋文化研究所 編『知識は東アジアの海を渡った―学習 院大学コレクションの世界』(丸善プラネット、2010.1.25、2,000円)
 開学60周年を記念して行われた特別展覧会の展示図録を兼ねた、学習院大学の古典籍を中心としたコレクションおよびその所蔵機関の紹介。幕末の京都学習 院以来の、公家や学者による寄贈図書、明治に始まった東洋学に関わる収集品などが、近代の東洋史学の歴史とともに紹介される。(2011.2.11)な お、『書誌学入門』訂正・注記コー ナー参照。

102.西尾賢隆(にしお・けんりゅう)『中世禅僧の墨蹟と日中交流』 (吉川弘文館、2011.2.10、11,000円)
 豊富に残されていながらなかなか詳細な読解がなされてこなかった、中世禅僧の墨蹟文書(書状・法語・公文書の類)を一点ずつ注釈的に読み解き、それぞれ の歴史的意義を明らかにする。(2011.1.30)

101.渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)『歌が権力の象徴になるとき 屏 風歌・障子歌の世界』(角川叢書50、2011.1.25、2,900円)
 平安時代の貴族の邸宅を飾る屏風や障子(襖)には、風景画などの絵画に区画(色紙形)を作って、和歌が添えられることがあった。古今集前後、紀貫之に始 ま るその歴史を、新古今時代まで辿る。日本史・美術史研究の成果をふまえつつ、和歌が作り出す世界を読み解いていく。(2011.1.30)

100.野間秀樹(のま・ひでき)『ハングルの誕生 音から文字を創る』 (平凡社新書523、2010.5.14、980円)
 ハングルの構造を現代の言語学の視点からわかりやすく解き明かすとともに、それを生み出した朝鮮の思想文化、漢文との葛藤などにも触れる。 (2011.1.26)

99.田渕句美子(たぶち・くみこ)『新古今集 後鳥羽院と定家の時代』 (角川選書481、2010.12.25、1,800円)
 後鳥羽院と藤原定家の生涯を二本の軸として、『新古今集』へと向かっていく後鳥羽院歌壇とその後の二人の軌跡を描く。『明月記』その他の歴史資料も駆使 して、歌壇から疎外されながら別の形での文学的成果を挙げた人々(鴨長明・源顕兼・藤原信実・建礼門院右京大夫ら)、個性的な女性歌人たちなどにも紙幅を 割き、要所要所に自らの研究成果を織り込みながら、ライブ感あふれる叙述によってこの時代を描き出す。(2011.1.9)

98.磯水絵(いそ・みずえ)『大江匡房 碩学の文人官僚』(勉誠出版、 2010.12.9、3,400円)
 平安後期の学者大江匡房の伝記。和歌・漢詩文・有職故実・音楽・説話など多方面から描く。(2011.1.9)

97.井上隆史(いのうえ・たかし)『三島由紀夫 幻の遺作を読む もう 一つの『豊饒の海』』(光文社新書491、2010.11.20、820円)
 三島由紀夫の遺作『豊饒の海』の創作ノートをもとに、第四部『天人五衰』の、書かれなかった別のプロットを推測する。その前提として、四部作全体を貫く 唯識説・輪廻・虚無など、洋の東西にまたがる思想を三島がいかに取り込んでいったか、また自決に到るまでの社会と三島自身の状況を合わせて読み解いてい く。(2010.12.12)

96.宮下規久朗(みやした・きくろう)井上隆史(いのうえ・たかし) 『三島由紀夫の愛した美術』(とんぼの本、新潮社、2010.10.25、1,500円)
 三島由紀夫が創作においてインスピレーションを受けたり、評論で取り上げたりした、主として西洋美術について、三島の文章と作品の画像、そして著者二人 のコメントや対談で構成した一冊。(2010.12.12)

95.下垣内文庫研究会(しもごうちぶんこけんきゅうかい)編『尾道大学 附属図書館 下垣内文庫目録』(尾道大学、2010.3.31、非売品)
 地元の俳諧について長年研究してきた下垣内正弘氏が寄贈したコレクションの目録。全体の解題と、目録本体とから成る。コレクションの特徴に合わせ、書冊 以外に、俳諧一枚摺・書状・一枚物・扇面・軸物・短冊・その他の項目を設け、一部翻刻も行っている。執筆:伊藤善隆・金子俊之・神作研一・佐藤勝明・藤沢 毅、協力:畑中さやか。(2010.12.8)

94.廣木一人(ひろき・かずひと)『連歌入門 ことばと心をつむぐ文 芸』(三弥井書店、2010.11.25、1,980円)
 問答形式により、連歌の歴史、百韻の形式とルール、連歌会での実際の運営、文学史的知識などを網羅的に知ることが出来る。「愛宕百韻」の表八句と挙句の 注釈も収める。(2010.12.8)

93.北村昌幸(きたむら・まさゆき)『太平記世界の形象』(塙書房、 2010.11.15、8,500円)
 『太平記』を、『平家物語』『梅松論』など先行・並行する作品を補助線にし、また収められている説話や人物像を単位として読み解くことによって、『太平 記』作者の複眼的あるいは総体的な視点を捉える。著者のこれまでの論文を集大成したもの。(2010.11.30)

92.谷知子(たに・ともこ)編『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラ シック日本の古典、角川ソフィア文庫A-4-1、2010.11.25、667円)
 『百人一首』の現代語訳とわかりやすい解説を収めたもの。和歌の技法や作られる場に関するコラムを挿み、理解を助ける。(2010.11.30)

91.平野宗浄(ひらの・そうじょう)監修、飯塚大展(いいづか・ひろの ぶ)訳注『一休ばなし』(一休和尚全集第5巻、2010.10.30、9,000円)
  一休宗純の名を冠した噺本4点、『一休咄』『一休諸国物語』『一休関東咄』『続一休咄』の本文と現代語訳・注を収める。『一休和尚全集』最終回配本。 (2010.11.15)

90.榎本渉(えのもと・わたる)『僧侶と海商たちの東シナ海』(講談社 選書メチエ469、選書日本中世史4、2010.10.10、1,600円)
 9世紀から15世紀にかけて、東シナ海をはさんだ日本(平安から室町)と中国(唐から明)の交流を、往来した僧侶と、それを支え、また自らの利益を求め て動いた商人たちの軌跡を中心に描く。自他の最新の研究成果をふまえた内容。(2010.11.15)

89.村井章介(むらい・しょうすけ)・須田牧子(すだ・まきこ)編『笑 雲入明記 日本僧の見た明代中国』(東洋文庫798、2010.10.18、3,000円)
 室町時代の禅僧笑雲瑞訢(しょううん・ずいきん)が、宝徳3年(1451)遣明船によって中国に渡り、寧波・北京間を往復し、3年後帰国するまでの記 録。近年急速に進んだ中世対外交渉史研究や現地調査の成果を盛り込んだ注釈を付す。関連史料も豊富に収める。(2010.11.14)

88.柳澤良一(やなぎさわ・りょういち)編『江吏部集・無題詩』(石川 県立図書館蔵川口文庫善本影印叢書3、勉誠出版、2010.11.1、12,000円)
 平安時代の漢文学を中心に幅広い日本文学研究を行った川口久雄の旧蔵書である川口文庫から善本を選んで影印するシリーズの最終巻。大江匡衡の詩集『江吏 部集』と平安後期の詩集『本朝無題詩』の抄出本を収める。(2010.11.14)

87.磯田道史(いそだ・みちふみ)『龍馬史』(文藝春秋、 2010.9.30、1,333円)
 幕末史の流れを辿りながら、坂本龍馬の果たした役割を的確に指摘する。暗殺の真犯人とその命令者について、また龍馬の手紙に見る彼の性格についても詳し く 述べる。一般向けながら学問的な視点を保った記述。(2010.11.7)

86.森正人(もり・まさと)・鈴木元(すずき・はじめ)編『細川幽斎  戦塵の中の学芸』(笠間書院、2010.10.30、4,800円)
 没後400年を記念した論集。歴史的背景、和歌・歌論、連歌・能・有職故実、古典注釈、その他の創作(狂歌・紀行)、門流の形成などについて論じる。年 譜を付す。執筆者:小川剛生、山田康弘、浅田徹、大谷俊太、鈴木元、海野圭介、長谷川千尋、大谷節子、末柄豊、青木賜鶴子、徳岡涼、森正人、高橋喜一、鶴 崎裕雄、川平敏文、西田正宏、稲葉継陽。(2010.11.7)

85.鈴木健一(すずき・けんいち)編『江戸の「知」 近世注釈の世界』 (森話社、2010.10.25、6,600円)
 近世における古典作品(古事記から徒然草まで)の注釈に見る江戸の文学観や思想、そしてそこから生み出される創作について、多面的に論じる。作品別・江 戸時代主要注釈書一覧を付す。執筆者:山下久文、金沢英之、兼岡理恵、城崎陽子、西田正宏、海野圭介、田中康二、鈴木健一、瀬尾博之、天野聡一、杉田昌 彦、寺島恒世、田代一葉、中島正二、川平敏文、堤邦彦。(2010.11.7)

84.内山精也(うちやま・せいや)『蘇軾詩研究 宋代士大夫詩人の構 造』(研文出版、2010.10.10、12,000円)
 著者の蘇軾詩およびその周辺に関する研究の集大成。北宋の社会・政治・印刷メディアなどとの関連を押さえつつ、詩の技巧や内容を綿密に読み解く。 (2010.10.21)

83.斎田作楽(さいた・さくら)編『東京写真鏡 他全七種』(開化風俗 漢詩集2)(太平文庫65、太平書屋、2010.8、15,000円)
 『大阪雑詞/川口竹枝』(明治3年刊)『画本大阪新繁昌詩初編』(明治8年刊)『東京開化繁昌詩選』(明治7年序刊)『東京写真鏡』(明治7年刊)『東 京繁昌新詩初編』(明治8年刊)『太平唱和』(明治8年刊)『日本開化詩』(明治9年刊)の影印、9種の漢詩集その他からの抜粋「開化風俗詩鈔」、『東京 写真鏡』訓読、解題、索引から成る。(2010.10.5)

82.高橋智(たかはし・さとし)『書誌学のすすめ 中国の愛書文化に学 ぶ』(東方選書40、東方書店、2010.9.30、2,000円)
 中国における文献学・書誌学の歴史と現在、書物の誕生・出版・集散、日本との関係など、著者自身の体験や研究をふまえて縦横に語る。雑誌『東方』の連載 を中心にまとめたもの。(2010.10.5)

81.高梨素子(たかなし・もとこ)『後水尾院初期歌壇の歌人の研究』 (おうふう、2010.9.10、13,000円)
 著者長年の研究成果をまとめた一冊。後水尾天皇時代の堂上歌壇の概観と、烏丸光広・三条西実条・中院通村という重要な歌人についての伝記・和歌研究、他 に関連資料翻刻を付す。(2010.9.29)

80.鈴木健一(すずき・けんいち)『風流 江戸の蕎麦』(中公新書 2074、中央公論新社、2010.9.25、760円)
 江戸時代の文学や絵画に描かれた蕎麦、そこから読みとれる江戸っ子の蕎麦への愛情を描く。歌舞伎、落語、草双紙、漢詩など豊富な題材を駆使している。 (2010.9.29)

79.金文京(きん・ぶんきょう)『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書 1262、岩波書店、2010.8.20、800円)
 第一章 漢文を読む―日本の訓読、第二章 東アジアの訓読―その歴史と方法、第三章 漢文を書く―東アジアの多様な漢文世界、から成る。第一章は日本に 於ける漢文訓読の歴史を辿り、仏教経典の翻訳や注釈、新羅の仏教文化が大きな影響を与えていること、訓読の背景に本地垂迹説・梵和同一説、あるいは朱子学 の中華思想などがあること、などを述べる。第二章は朝鮮半島・契丹・ウイグル・ヴェトナムなど、中国語とは異なる文法体系を持つ周辺地域の文化圏における 訓読現象(特に朝鮮は詳しい)を紹介し、中国語においても、その口語は北方異民族の言語に影響を受けて変化したため、古代中国語である漢文から口語への翻 訳には一種の訓読が行われていることを述べる。第三章は、朝鮮・日本・モンゴル等におけるいわゆる変体漢文(母語と漢文との混淆現象)を取り上げる。 (2010.9.5)

78.東洋文庫日本研究班編『岩崎文庫貴重書解題VI』(財団法人東洋文 庫、2010.3.15、非売品)
 所蔵書のうち、万葉集関連書69点(ほとんどが木村正辞旧蔵書)の解題、大沼宜規「木村正と旧蔵本の特徴―岩崎文庫所蔵資料を中心として―」を収める。 図版多数。国文学研究資料館にマイクロフィルムのあるものは、その請求番号を付す。(2010.9.5)

77.興膳宏(こうぜん・ひろし)『漢語日暦』(かんごひごよみ)(岩波新書1260、 岩波書店、2010.7.21、760円)
 1年366日それぞれにゆかりの漢語をテーマにした小文を集めたもの。文中、その語にまつわる中国や日本の漢詩文その他の文学作品を引用・注解する。排 列にも趣向がある。(2010.8.9)

76.中川博夫(なかがわ・ひろお)『大弐高遠集注釈』(私家集注釈叢刊17、貴重本刊 行会、2010.5.25、18,000円)
 平安中期の歌人、藤原高遠の家集に収める全403首の詳細な注釈。(2010.6.27)

75.金文京(きん・ぶんきょう)『三国志演義の世界[増補版]』(東方選書39、東方 書店、2010.5.25、1,800円)
 歴史としての三国志から、物語の生成、『三国志演義』の成立と展開、そこに見られる中国人の世界観、朝鮮半島や日本における受容に至るまで、中国学のさ まざまな方法と知見を駆使した論述。1993年刊行の同名書の増補版として、その後の研究の進展をふまえている。(2010.6.21)

74.高田信敬(たかだ・のぶたか)『源氏物語考証稿』(武蔵野書院、 2010.5,22、12,000円)
 『源氏物語』の歴史的背景(物語で描かれる宮中の儀礼や皇族・貴族の身分制度など)に関する考証を第一部、源氏物語の古筆切をはじめとして、系図や古注 釈の伝本を手がかりにそれぞれの時代の学問や書物のあり方を論じる第二部から成る。『源氏歌詞少々』の翻字、『弘安源氏論議』の校本を資料として付す。 (2010.6.21)

73.柳田征司(やなぎだ・せいじ)『日本語の歴史1 方言の東西対立』(武蔵野書院、2010.4.15、2,000円)
 方言のなかでも、東と西の対立としてよく知られる、音便・促音・母音連続などの音韻面の違いと、助動詞や動詞命令形の違いといった、言語生活の根幹に関 わる部分を取り上げ、それぞれについて東西対立の起きた時期とその原因を探り、すべて同一言語から奈良時代以降に分化したものと結論づける。幅広い文献の 渉猟と現地調査に基づいた立論。(2010.6.21) 

72.鈴木淳(すずき・じゅん)『江戸のみやび 当世謳歌と古代憧憬』 (岩波書店、2010.3.25、4,000円)
 江戸上層階級の生活と文化、浮世絵・絵本などの商業出版物に見る、「みやび」を当世風にアレンジした享楽的志向について、海外所蔵のものを含めた古典籍 の調査をふまえて描き出す。(2010.5.23)

71.京都大学国文学研究室・中国文学研究室編『室町後期 和漢聯句作品 集成』(臨川書店、2010.3.30、4,000円)
 『室町前期 和漢聯句作品集成』(臨川書店、2008)に続くもの。天文から永禄にかけての作品と前著の補遺(新出資料を含む)を収める。 (2010.4.29)

70.佐伯真一(さえき・しんいち)『建礼門院という悲劇』(角川選書 445、角川書店、2009.6.10、1,500円)
 『平家物語』に描かれる建礼門院像を、小野小町・和泉式部・光明皇后などの中世説話における形象とつながるものとして捉えつつ、複雑な『平家物語』諸本 の関係や特徴も合わせて考える。平易な文章であるが、論拠を注によって示すなど、これから『平家』あるいは中世説話を研究しようとする人にも参考になる内 容。(2010.4.29)

69.佐藤かつら(さとう・かつら)『歌舞伎の幕末・明治 小 芝居の時代』(ぺりかん社、2010.4.20、7.500円)
 表題通り、幕末明治期に江戸(東京)の盛り場や寺社境内で行われた歌舞伎である小芝居を取り上げ、その歴史と性格を丹念に追跡したもの。時代の変動にい ち早く対応して人気を博したその実態を、資料的制約を乗り越えて明らかにしている。(2010.4.13)

68.齋藤希史(さいとう・まれし)『漢文スタイル』(羽鳥書店、 2010.4.7、2,600円)
 中国の文学、風土、歴史、江戸・明治の日本人の文学作品などなど、漢文をキーワードにして自由自在に書かれた文章を集めたもの。一般向けの達意の文章で あるが、内容はしっかりと学問的。フランス装のような洒落た装丁とカバー写真が著者のスタイルを見事に表現している。(2010.4.13)

67.廣木一人(ひろき・かずひと)編『連歌辞典』(東京堂出版、 2010.3.10、3,200円)
 連歌の専門用語、連歌に関わる人物・書物について項目を立てて説明を施す。冒頭に「連歌概説」、末尾に「参考書」を付す。執筆は廣木・松本麻子・山本啓 介・永田英理。(2010.4.7)

66.山崎誠(やまざき・まこと)『江都督納言願文集注解』(塙書房、 2010.2.28、24,000円)
 院政期の漢学者大江匡房が残した願文集の全注解。当時の貴族社会のさまざまな人間関係や政治状況をふまえつつ、漢学・仏学両面から読み解いていく。ま た、当時の訓読の再現にも意を用いている。語彙索引を付す。(2010.4.7)

65.田中康二(たなか・こうじ)『江戸派の研究』(汲古書院、 2010.2.13、13,000円)
 村田春海を中心とした江戸派の学問と文芸について、表現・出版・古典受容・人脈などを切り口に分析する。(2010.2.6)

64.『国文学研究資料館特別展示 江戸の歌仙絵 絵本にみる王朝美の変 容と創造』(国文学研究資料館、2009.12.28、2,000円)
 2010年1・2月に行われている国文学研究資料館の特別展示の解説図録。論文として鈴木淳「光悦三十六歌仙考」伊藤善隆「俳人肖像画集の展開―歌仙絵 の変奏」神作研一「江戸の王朝美―歌仙絵入刊本の展開」を収める。(2010.2.6)

63.深沢眞二(ふかさわ・しんじ)『「和漢」の世界 和漢聯句の基礎的 研究』(清文堂出版、2010.1.12、9,000円)
 中世・近世の和と漢の世界の接近・融合を象徴する文学形式である和漢聯句について、長年の研究成果をまとめたもの。歴史・参考書(韻書)についての考 察、作品注釈、作法書翻刻紹介から成る。(2010.1.23)

62.斎田作楽(さいた・さくら)編『東山全図―京都東山名勝鳥瞰図―』 (太平文庫63、太平書屋、2010.1、2,000円)
 元治元年(1864)刊『花洛名勝図会 東山之部』巻頭の「東山全図」を抽印、頼山陽の「鴨河図巻の記」訓読・注を付す。(2010.1.3)

61.小川剛生(おがわ・たけお)『中世の書物と学問』(日本史リブレッ ト78、山川出版社、2009.12.21、800円)
 中国の儒学の歴史や、日本にもたらされた漢籍の受容をふまえて、中世において和歌や物語が古典となり、学問の対象となっていく道筋を、書物の作成・収 集・利用などの観点から概観する。(2009.12.22)

60.佐藤道生(さとう・みちお)編『慶應義塾図書館の蔵書』(慶應義塾 大学出版会、2009.12.25、3,000円)
 2008年度オムニバス講義の活字化。洋書・古文書・和書・漢籍・安南本(ベトナムの版本)・写真など多岐に渡る図書館のコレクションを紹介する。執筆 者:和泉雅人、鷲見洋一、吉田恭子、陳正宏、徳永聡子、松田隆美、桃崎有一郎、落合博志、佐藤道生、堀川貴司、吉永壮介。(2009.12.12)

59.池田利夫(いけだ・としお)『源氏物語回廊』(笠間書院、 2009.12.15、19,000円)
 これまでの論文集に未収録だった論文・典籍解題等を集大成したもの。特に鶴見大学図書館所蔵の典籍・古筆切に関する書誌解題・書影を多く収める。巻末に 著述目録を付す。(2009.12.12)

58.久保木秀夫(くぼき・ひでお)『中古中世散佚歌集研究』(青簡舎、 2009.11.30、14,000円)
 古筆切を中心的な資料として、それまで見逃されていた既存資料(歌書・目録など)を丹念に拾って、現在失われてしまった私家集・私撰集・歌合を発掘・復 元する。(2009.12.12)

57.山下真史(やました・まさふみ)『中島敦とその時代』(双文社出 版、2009.12.4、3,200円)
 著者長年の中島敦論の集大成。昭和戦前の時代思潮・文学思潮のなかでその作品を捉え直し、自己と現実に対峙しつづけた作家像を提示する。 (2009.12.12)

56.白百合女子大学言語・文学研究センター編、井上隆史(いのうえ・た かし)責任編集『宗教と文学――神道・仏教・キリスト教』(アウリオン叢書07、弘学社、2009.12.1、1,000円)
 白百合女子大学大学院で2008年度に行われた同題のオムニバス授業の活字化。執筆者:久保田淳、堀川貴司、岩佐美代子、古屋安雄、竹村牧男、竹内信 夫、鎌田東二、菅野昭正、加藤宗哉、田村一男、宮下規久朗、杉田良恵。(2009.12.5)

55.山田尚子(やまだ・なおこ)『中国故事受容論考―古代中世日本にお ける継承と展開―』(勉誠出版、2009.10.25、11,000円)
 中国の故事が日本において受容される過程で、その内容や意義が変容していく様相を分析する前半と、平安時代の漢詩文の文体・詩体分析を通じて、そこに中 国故事が果たした役割を考察する後半とから成る。(2009.12.3)

54.池田利夫(いけだ・としお)『藤原定家筆蹟模本 伊勢物語の研究』 (汲古書院、2009.11.30、15,000円)
 鶴見大学図書館蔵、伝小堀遠州筆『伊勢物語』を題材に、定家の書写態度、仮名遣いや撥音表記、また伊勢物語の本文を論じる。影印・翻印・略校本を付す。 (2009.12.3)

53.田渕句美子(たぶち・くみこ)『阿仏尼』(人物叢書261、吉川弘 文館、2009.12.10、2,100円)
 近年大きく進展した鎌倉時代の文学研究と歴史研究の成果をふまえつつ、独自の作品解釈を盛り込んで、歌の家冷泉家を守り育てた女性の一生を描く。死後の 冷泉家や阿仏尼像の変遷についても、様々な資料を用いて述べる。(2009.12.3)

52.世田谷区立郷土資料館編『荻泉翁コレクション―藝に游ぶ―』(世田 谷区立郷土資料館、2009.10.31、非売品)
 小林克弘氏旧蔵の近世文人画を中心とするコレクションの展覧会図録。漢詩その他の画賛について詳細な解説があり、また展示品のいくつかに関する専門的な 論文も収める。(執筆者、武田庸二郎、池澤一郎、江口恒明、木下はるか、重野宏一)(2009.11.6)

51.村尾誠一(むらお・せいいち)『中世和歌史論 新古今和歌集以後』 (青簡舎、2009.11.1、12,000円)
 中世全体を見渡す視点から、後鳥羽院歌壇にはじまり、建保期、二条為世、新続古今和歌集と正徹、といくつかの山を作りながら終焉へと筆を進める。 (2009.11.5)

50.井田進也(いだ・しんや)校注『幕末維新パリ見聞記』(岩波文庫・ 緑117-2、岩波書店、2009.10.16、660円)
 幕末にパリに行った幕臣栗本鋤雲、明治維新後フランス・イタリアなどを見聞した旧幕臣成島柳北の紀行を、詳しい注を付して収める。出来る限り現地踏査を 行った成果が注に反映されている。(2009.10.22)

49.佐野市立吉澤記念美術館(さのしりつよしざわきねんびじゅつかん) 編『伊藤若冲《菜蟲譜》と江戸絵画の魅力』(同館刊、2009.9.19、非売品
 2009.9.19〜10.25開催の展覧会図録。本年七月に重要文化財に指定されたのを記念して開かれたもの。(2009.9.24)

48.出光美術館(いでみつびじゅつかん)編『芭蕉 〈奥の細道〉からの 贈りもの』(同館刊、2009.9.19、非売品)
 2009.9.19〜10.18開催の展覧会図録。館蔵品を中心に、奥の細道関連の筆跡を集める。別府節子氏は解説で、古筆学の立場から芭蕉の書風につ いての分析を行って、大師流の書家として位置付けている。(2009.9.24)

47.岸野俊彦(きしの・としひこ)編『尾張藩社会の総合研究 四』(清 文堂出版、2009.9.20、9,200円)
 将軍家との関係や所領運営などの政治的側面、書物からみた文化的交流や寺社との関係など文化的側面、都市や農山村の産業と藩との関係などの経済的側面に ついて、近世史研究者による多面的な尾張藩社会研究が収められている。現在進行中の『愛知県史』編纂とも関わる。(2009.9.24)

46.揖斐高(いび・たかし)『江戸の文人サロン 知識人と芸術家たち』 (歴史文化ライブラリー278、吉川弘文館、2009.9.1、1,700円)
 大坂で花開いた漢詩人サロン、江戸の狂歌師サロン、蘭学者サロン、戯作者や学者の考証サロン、江湖詩社を中心とするジャーナリズム的な漢詩人サロンなど を取り上げて、その実態やそこから生まれた作品について生き生きと描く。身分社会の中で横の関係を持てる場として機能した「サロン」を俯瞰したもの。 (2009.9.9)

45.大谷篤蔵(おおたに・とくぞう)『芭蕉 晩年の孤愁』(角川学芸出 版、2009.8.20、2,800円)
 生前に発表された文章のなかから、単行本未収録のものを集める。芭蕉を中心とした俳諧研究、文人等の伝記的研究、資料紹介・注釈、エッセイ、芭蕉に関す る講演記録、の五部構成。(2009.8.13)

44.田中康二(たなか・こうじ)『本居宣長の大東亜戦争』(ぺりかん 社、2009.8.15、4,800円)
 1931年から敗戦までを中心に、国学研究および本居宣長研究と、それを取り巻く思想・言論・教育界の宣長に関する言説を分析する。 (2009.8.13)

43.小野正弘(おの・まさひろ)『オノマトペがあるから日本語は楽しい  擬音語・擬態語の豊かな世界』(平凡社新書474、平凡社、2009.7.15、720円)
 新作のオノマトペの話題に始まり、漫画や小説での効果的な利用、日常会話での役割、古事記・万葉集に始まる歴史など、日本語を豊かにしてきたオノマトペ について縦横に語る。(2009.8.13)

42.渡部泰明(わたなべ・やすあき)『和歌とは何か』(岩波新書新赤版 1198、岩波書店、2009.7.22、780円)
 「演技」をキーワードに、和歌のレトリックと詠まれる場を分析、そこから浮かび上がる、時代を超えた心情に迫る。(2009.8.2)

41.小島毅(こじま・つよし)『織田信長 最後の茶会 「本能寺の変」 前日に何が起きたか』(光文社新書412、光文社、2009.7.20、780円)
 織田信長の暗殺を巡るこれまでの陰謀説を検証しつつ、東アジアの政治状況や文化交流の中で捉え直そうとする。(2009.8.2)

40.楠元六男(くすもと・むつお)編『江戸文学からの架橋―茶・書・美 術・仏教―』(竹林舎、2009.7.1、12,000円)
 表題の通り、茶の湯・書道・美術(主として絵画)・仏教との関わりの中から、江戸文学を見直そうという試み。論文19本を収める。 (2009.6.29)

39.ハルオ・シラネ編『越境する日本文学研究 カノン形成・ジェン ダー・メディア』(勉誠出版、2009.5.15、2,800円)
 2007年に明治学院大学で行われたシンポジウムに基づいた、主としてアメリカの日本文学研究者による論文(各編は短く、梗概に近い)集。すべての文章 が日から英または英から日へ翻訳され、それらを一冊に収めている。(2009.6.29)

38.東アジア地域間交流研究会編『から船往来―日本を育てた ひと・ふね・まち・こころ』(中国書店、2009.6.2、2,800円)
 中国・朝鮮から人と物を運んできた「から船」を視座として、歴史・考古・美術・思想・仏教・音楽その他さまざまな交流を描く。(2009.6.28)

37.栃木孝惟(とちぎ・よしただ)松尾葦江(まつお・あしえ)『延慶本 平家物語の世界』(校訂延慶本平家物語別巻、汲古書院、2009.5.30、3,500円)
 延慶本平家物語を読むための手引きとして、各巻の梗概と研究史(成立論・古態論・諸本論や仏教との関係、史料としての価値、国語学的考察)、用字一覧、 詳細な年表などを収める。(2009.6.2)

36.杉下元明(すぎした・もとあき)『男はつらいよ 推敲の謎』(新典 社新書36、2009.5.20、1,000円)
 山田洋次の「男はつらいよ」シリーズ全48作について、松竹大谷図書館に所蔵される原案・梗概・第一稿・準備稿・決定稿など、映画製作に至るまでに練り 上げられた過程を検討する。映画は脚本が命だというが、年2本のペースでこれを仕上げていった集中力に脱帽する。(2009.6.2)

35.岡本勝(おかもと・まさる)『俳文学こぼれ話』 (2008.3.11、非売品)
 著者の一周忌を記念して上梓された遺稿集。俳句雑誌の連載が中心であるが、貴重な資料紹介などを含む。雲英末雄「岡本勝さんのこと―逝去前後―」を付 す。(2009.4.29)

34.飯倉洋一(いいくら・よういち)木越治(きごし・おさむ)編『秋成 文学の生成』(森話社、2008.2.20、6,500円)
 冒頭に編者対談を置き、以下伝記・浮世草子・『雨月』・和学・和文・『春雨』と全方面にわたる論文を収める。(2009.4.29)

33.『高松宮家伝来禁裏本目録』(国立歴史民俗博物館資料目録8- 1,2、国立歴史民俗博物館、2009.3.25、4,000円、国立歴史民俗博物館振興会にて購入可能)
 歴史学・古典文学の研究上重要資料を多数含む蔵書の目録。分類目録編、奥書刊記集成・解説編の2分冊からなる。主冊の目録は書誌情報を含み、一部内容に ついても触れる。口絵として主要な典籍と蔵書印・落款印のカラー写真を収める。もう1冊に奥書刊記集成(編年一覧を付す)・解説・資料番号順一覧を収め る。(2009.4.27、4.29補足)→30.

32.青山学院大学文学部日本文学科編『文学という毒 【諷刺・パラドッ クス・反権力】』(笠間書院、2009.4.15、1,500円)
 2007年9月に青山学院大学で行われたシンポジウムの記録。第一部は対談「歌舞伎の毒と悪をめぐって」(武藤元昭・市川團十郎)、第二部は富山太佳 夫、マイケル・ガーディナー、高山宏、長島弘明、大上正美、篠原進による報告と討論。(2009.4.26)

31.丸山陽子(まるやま・ようこ)『歌人兼好とその周辺』(笠間書院、 2009.3.31、5,400円)
 兼好の家集や和歌作品の分析、交流のあった伊勢神官周辺で成立した『伊勢新名所絵歌合』についての考証などを収める。(2009.2.14)

30.吉岡眞之(よしおか・まさゆき)小川剛生(おがわ・たけお)編『禁裏本と古典学』(塙書房、2009.3.31、18,000円)
 人間文化研究機構に属する国立歴史民族博物館と国文学研究資料館の連携研究として行われた高松宮家伝来禁裏本(現在歴博蔵)についての研究成果をまとめ たもの。宮家や公家に伝来した書物との関係も視野に入れ、文庫の形成、記録・文書類の伝来、歌書を中心とする文学関係書の作成などについて論じる。資料と して蔵書目録3点の翻刻を付す。(2009.4.11)→33.

29.京都大学国文学研究室・中国文学研究室編『良基・絶海・義満等一座  和漢聯句訳注』(臨川書店、2009.3.30、3,200円)
 南北朝時代成立、五山僧と公家が一座した最も早い時期の和漢聯句の訳注。式目表・解説(竹島一希)を付す。(2009.3.30)

28.西鶴研究会(さいかくけんきゅうかい)編『西鶴諸国ばなし』(三弥 井書店、2009.3.21、1,800円)
 標題の書に収める全35話を研究会メンバーが分担し、頭注と鑑賞の手引きを付したもの。(2009.3.28)

27.長谷川強(はせがわ・つよし)江本 裕(えもと・ひろし)渡辺守邦(わたなべ・もりくに)岡雅彦(おか・まさひ こ)花田富二夫(はなだ・ふじお)石川了(いしかわ・りょう)校訂『嬉遊 笑覧』(五)(岩波文庫黄275-5、岩波書店、2009.3.17、900円)
 近世後期の社会風俗の基本資料である標題の書の翻刻(全五冊完結)。主要語句の総索引を付す。(2009.3.21)

26.武井和人(たけい・かずと)編『中世後期禁裏本の復元的研究』(科 学研究費補助金による研究成果報告書、非売品、2009.3)
 近年研究が盛んになっている近世初期・前期禁裏本の研究に接続すべく、応仁の乱以降の禁裏本とその周辺について、主として文学・芸能ジャンルをそれぞれ の専門家が扱った論集。(2009.3.21)

25.鈴木彰(すずき・あきら)樋口州男(ひぐち・くにお)編『後鳥羽院 のすべて』(新人物往来社、2009.3.20、3,000円)
 歴史学と文学の両面から後鳥羽院像を描く。関係史蹟事典、関係人物事典、年譜、参考文献目録を付す。執筆・櫻井彦、野口実、錦昭江、平田英夫、長村祥 知、野口華世、松井吉昭、石澤一志、清水眞澄、今野慶信、野口孝子、石附敏幸、川鶴進一、堀内寛康、平藤幸。(2009.3.21)

24.慶應義塾図書館編・発行『慶應義塾図書館和漢貴重書目録』(発売・ 慶應義塾大学出版会、2009.3.1、5,700円)
 図書館所蔵の貴重書(国書773点・漢籍437点)の目録。冒頭に主要資料40点の図版解説(うち11点は口絵カラー写真もあり)、末尾に書名・著者名 索引、歌舞伎番付・狂言絵尽内容細目リストを載せる。(2009.3.19)

23.永福会(会長・喜美候部宗一)『永福面山禅師宝物集』(永福会、 2008.9.17、非売品)
 近世における曹洞宗の代表的な学僧、面山の真蹟を集成、図版および解題を収めたもの。(2009.3.13)

22.深津睦夫(ふかつ・むつお)『全国神社奉納和歌のデータベース化と 研究のための予備的研究』(2009.3.6、非売品)
 平成19・20年度篠田学術基金研究成果報告書として刊行されたもので、全国の神社へのアンケートに基づいた奉納和歌資料一覧と、研究文献目録から成 る。(2009.3.8)

21.西尾市岩瀬文庫・岩瀬文庫資料調査会編・発行『こんな本があった! 〜岩瀬文庫平成悉皆調査中間報告展VI』(2009.1.24、500円)
 6回目となった悉皆調査中間報告展の図録。木村蒹葭堂旧蔵書ほか、希少な版本、面白い内容の写本など29点の紹介。(2009.2.28)

20.田渕句美子(たぶち・くみこ)編『十六夜日記〈白描淡彩絵入写本〉  阿仏の文』(勉誠出版、2009.3.15、4,800円)
 国文学研究資料館蔵『十六夜日記』『阿仏の文』の全ページカラー図版、翻刻、注から成る。詳しい解説を付す。(2009.2.28)

19.小林ふみ子(こばやし・ふみこ)『天明狂歌研究』(汲古書院、 2009.2.25、10,000円)
 大田南畝を中心に、天明狂歌の歴史と作品、狂歌師の伝記や連(グループ)の動向などを、新資料を駆使して論じる。詳細な年表を付す。 (2009.2.27)

18.島内裕子(しまうち・ゆうこ)『徒然草文化圏の生成と展開』(笠間 書院、2009.2.15、13,000円)
 『徒然草』の受容(注釈・創作)の広がりを「文化圏」として捉え、中世から近代まで、さらに海外における翻訳をも扱う。(2009.2.27)

17.揖斐高(いび・たかし)『近世文学の境界 個我と表現の変容』(岩波書店、2009.2.24、10,000円)
 これまで文学史上にあまり取り上げられてこなかった漢文・漢詩作品や随筆を扱って、近世における「私」「自我」の表現を探る。また、幕末明治の漢詩・和歌、近代作家における江戸、などについても論じる。(2009.2.27)

16.浅見洋二(あさみ・ようじ)『中国の詩学認識―中世から近世への転換―』(創文社、2008.2.28、14,000円)
 風景・絵画・題・詩集編纂、あるいは詩人内部における詩の生成など、様々な視点から、詩(あるいは詩学)における唐宋変革を論じる。 (2009.2.26)

15.山本啓介(やまもと・けいすけ)『詠歌としての和歌 和歌会作法・字余り歌―付〈翻刻〉和歌会作法書―』(新典社、2009.1.13、15,000円)
 和歌会における作法と字余り歌の考察を通して中世和歌を考える。後半は作法書9点の翻刻。(2009.2.26)

14.田中洋己(たなか・ひろき)『中世前期の歌書と歌人』(和泉書院、2008.12.15、22,000円)
 院政期、藤原俊成、藤原定家を三本柱として、和歌作品・伝記・歌論などの個別の論を通して和歌史を考える。(2009.2.26)

13.梅原章太郎(うめはら・しょうたろう)『蕉風付合論』(青簡舎、2007.1012、12,000円)
 芭蕉の一座した連句を「俤付(おもかげづけ)」(古典に描かれた人物・場面等を暗示する付合)によって読み解く試み。(2009.2.26)

12.磯水絵(いそ・みずえ)『『源氏物語』時代の音楽研究―中世の楽書 から―』(笠間書院、2008.12.9、12,500円)
 『源氏物語』とその周辺の音楽を、楽書・『古事談』などの記述から考察していく。(2009.2.26)

11.松尾葦江(まつお・あしえ)『軍記物語原論』(笠間書院、2008.8.22、8,500円)
 『平家物語』を中心に、「原態」から諸本の成立・混淆などの本文流動、その中で形成される場面・人物像など、軍記物語を文学として読み解いていこうとする論。(2009.2.26)

10.小野泰央(おの・やすお)『平安朝天暦期の文壇』(風間書房、2008.10.15、12,000円)
 村上天皇のもと活況を呈した天暦期文壇の漢詩文および和歌における漢詩文受容について、人物論・作品論(形式と表現)・受容論(主に白居易作品)などの観点から論じる。(2009.2.26)

9.兼岡理恵(かねおか・りえ)『風土記受容史研究』(笠間書院、2008.2.29、9,800円)
 『風土記』編纂資料にはじまり、古代・中世・近世における受容(資料の発掘・研究や創作への利用)について論じる。年表を付す。(2009.2.26)

8.大谷俊太(おおたに・しゅんた)『和歌史の「近世」 道理と余情』 (ぺりかん社、2007.10.15、4,000円)
 室町後期以降の堂上和歌において、道理(倫理をも含む合理性)と余情の両立を追求した様子を様々な視点から論じる。(2009.2.26)

7.服部幸造(はっとり・こうぞう)美濃 部重克(みのべ・しげかつ)弓削繁(ゆげ・しげる)『月庵酔醒記』(上)(中世の文学、三 弥井書店、2007.4.3、6,500円)
 戦国大名一色直朝の雑録の注釈。中世末期の雑多な知識の集積が見られ、興味深い資料。(2009.2.25)

6.石井倫子(いしい・ともこ)『能・狂言の基礎知識』(角川選書 440、角川学芸出版、2009.2.10、1,600円)
 能・狂言の歴史、現行曲の解説、舞台・出演者・面・装束・作り物・音楽・演技、など鑑賞に必要な基礎知識を網羅した一冊。(2009.2.25)

5.高木和子(たかぎ・かずこ)『女から詠む歌 源氏物語の贈答歌』(青 簡舎、2008.5.10、1,800円)
 代作歌・贈答歌・手紙という切り口から探る源氏物語の創作方法論探求。(2009.2.25)

4.高木和子(たかぎ・かずこ)『男読み 源氏物語』(朝日新書123、 朝日新聞出版、2008.7.30、740円)
 「できる男」光源氏とそれに対抗する紫の上をはじめとする女たちの駆け引きを通して見えてくるさまざまな人生模様。(2009.2.25)

3.揖斐高(いび・たかし)校注『訳注聯珠詩格』(岩波文庫・黄280- 2、岩波書店、2008.7.16、760円)
 江戸後期の詩人柏木如亭が門人たちのために唐宋の七言絶句を集めた詩集『聯珠詩格』の講義を行い、その記録をもとに刊行されたもの。当時の江戸言葉による現代語訳が見事である。(2009.2.25)

2.高橋博巳(たかはし・ひろみ)『東アジアの文芸共和国―通信使・北学 派・蒹葭堂―』(新典社新書26、新典社、2009.1.13、800円)
 宝暦13年(1763)に来日した朝鮮通信使と上方の文人、特に大典顕常・木村蒹葭堂らとの交流を描き、漢詩文文芸を共通項にした「文芸共和国」の可能性を探る。(2009.2.25)

1.大鳥居武司『天野信景の研究』(私家版、2008.2.25)
 随筆『塩尻』の著者として知られる天野信景の伝記と著作について調査した基礎的研究。著者は亀戸天満宮宮司。(2009.2.25)

堀川トップページへ