業績一覧(「→」として挙げたものは、関連論文・著作あるいは筆者による補足です) :

A.王朝の漢文学(平安後期から鎌倉中期まで)

1 「元久詩歌合」について―「詩」の側から―〔論文〕
 1994年1月 『国語と国文学』第71巻第1号 14〜28頁
 平安時代の詩文作法書『作文大体』には、詩題の表現について律詩各聯の役割を明確に規定しているが、院政期以降の作品を見てみると、ほぼ忠実に守られていることがわかる。ところで新古今歌人として知られる藤原良経は詩人としても優れており、歌1首に詩1聯を番える「詩歌合」という文学形式を完成させたが、そこでは詩は1聯で独立しているので、本来の役割を放棄して1聯のみで題意を表現しなければならず、このことが詩の矮小化を招いたと指摘した。

→海野圭介・滝川幸司「『十七番詩歌合』注釈」「『同』解説」(『詞林』第19号、1996年4月)
→金原理「『元久詩歌合』と「西湖図」」(『詩歌の表現 平安朝韻文攷』九州大学出版会、2000)

2 『本朝無題詩』の諸本の研究〔共著〕
 1994年3月 平成5年度科学研究費補助金総合研究(A)研究成果報告書 A4判383頁
(久保田淳〈代表〉、西澤美仁、石川泰水、佐藤道生、村尾誠一、中川博夫、田仲洋己、加藤睦、渡部泰明、近藤みゆき、鈴木健一、落合博志、堀川貴司、佐々木孝浩)
 平成3年度からの3年間にわたり、平安時代後期の漢詩集『本朝無題詩』の伝本20本を調査し、主要なもの10本を選ん で校合を行った。本書には、それに基づいて定めた校訂本文と、コンピュータを利用して作成した一字索引を収める。

→本間洋一『本朝無題詩全注釈』全三冊(新典社、1992〜1994年)

3 『詩纂』について〔小論文〕
 1994年5月 中世の文学『源平盛衰記(三)』附録(三弥井書店)4〜6頁
 水戸彰考館蔵の表題の書について、その資料的価値を指摘するとともに、『元久詩歌合』について本文を検証した。

4 近世における『本朝無題詩』の研究と享受〔論文〕
 1994年7月 『和漢比較文学』第13号 58〜69頁
 近世初期、学芸復興の風潮の中、林家周辺の人々は王朝漢文学に強い関心を示し、『本朝無題詩』も再発見された。彼らを中心に、近世の学者の著述の中にどのような言及があるかを概観した上で、現在知られている3種類の伝本系統の内、3巻本1類は林家周辺で享受され、同2類 はそれが上方の学者の間で研究され整えられたもの、10巻本は水戸彰考館が『大日本史』編纂のための資料収集の過程で発見したがあまり流布せず、群書類従に入ってから知られるようになったものであることを考証した。

→本間洋一「『本朝無題詩』所収詩の享受―江戸期の諸書の一端から―」(『中央大学国文』第37号、1994年3月)

5 詩のかたち・詩のこころ―『本朝無題詩』の背景―〔論文〕
 1995年5月 『国語と国文学』第72巻第5号 117〜127頁
 平安から鎌倉にかけて作られた『作文大体』『真俗擲金記』『王沢不渇鈔』などの詩文作法書には、句題詩と呼ばれるスタイルの詩の作り方が実に詳細に記されている。この種の詩は詩会のような儀礼的な場で詠むことが多く、マニュアル化が促されたためと見られるが、一方私的な 場や非日常的な題材を詠むには無題詩という別のスタイルの詩があった。『本朝無題詩』という無題詩を中心にした詩集の成立はこのような背景を抜きにして考 えられないということを述べた。

→佐藤道生「詩序と句題詩」(『日本漢学研究』第2号、1998年10月)は、句題詩の確立に菅原文時が大きく関わったことを、彼の詩序の分析を通 して論証しています。
→佐藤道生「江註と私註―『和漢朗詠集』註釈の視点―」(『国語と国文学』第82巻第5号、2005年5月)は、表題の二つの朗詠註が、句題詩の破題の解 説という視点から為されていることを指摘しています。
→王京ト「五山句題詩の特徴」(『日本中国学会報』第57集、2005年10月)は、五山文学における句題詩(先人の詩句を題にした詩)を分析していま す。
→仁木夏実「藤原頼長自邸講書考」(『語文』第84・85輯、2006年2月)は、藤原頼長の自邸で行われた経書講義及びそれに伴う作文会を、孔子の図像 を掲げて行う「影前の文学」として捉えています。

6 『真俗擲金記』小考〔論文〕
 1997年3月 『愛知県立大学説林』第45号 1〜12頁
 王朝漢文学の伝統を引く詩文作法について重要な記述を収める表題の書は、従来平安末に仁和寺門跡守覚法親王のもとで作られたと考えられていたが、引用されている漢籍や、詩懐紙の作法、詩歌合等の記述内容から、早くとも13世紀後半、あるいは14世紀初頭まで下る時期の成立であることを論じた。

→五味文彦『書物の中世史』(みすず書房、2003年)所収「作為の交談 守覚法親王の書物世界」は、『真俗交談記』を含めた類似の奥書を持つ書物群をすべて後世の偽書であるとしています。(2004.5.30記)

7 漢詩文から読む 真名序について〔小論文〕
 1997年11月 『国文学 解釈と教材の研究』第42巻第13号 66〜70頁
 同時代の漢文学の状況を押さえつつ、『新古今和歌集』真名序とは、漢文学が本来担っていた政教性が、まさに和歌に奪われつつあることの象徴である、と論じた。

→仁木夏実「高倉院詩壇とその意義」(『中世文学』第50号、2005.6)

8 新刊紹介 後藤昭雄編『日本詩紀拾遺』市河寛斎編・後藤昭雄解説『日本詩紀』〔書評〕
 2000年8月 『国文学 解釈と鑑賞』第65巻第8号 192頁
 奈良・平安の漢詩を作者別に集成した『日本詩紀』にならって、新資料を駆使して未収録の作品を集大成したもの。『日本詩紀』国書刊行会本の復刊本と合わせてその意義を述べた。

→後藤昭雄「日本古代漢詩集成のこれまでとこれから―付『日本詩紀拾遺』補正―」(伊井春樹先生御退官記念論集刊行会編『日本古典文学史の課題と方 法―漢詩 和歌 物語から説話 唱導へ―』(和泉書院、2004年)

9 詩のかたち・詩のこころ―「叙景」の析出―〔論文〕
 2000年10月 和歌文学会論集編集委 員会編 『歌われた風景』(笠間書院) 243〜265頁
 A―4において論じた句題詩の詠法を「場」「題」二者の往復運動として捉え直し、その観点から無題詩の詠法について具体例を挙げて述べ た上で、自己省察と自然(外部)描写とが一体化したところにその特徴があり、そこから自然描写だけを切り離したものが同時代の叙景歌に影響を及ぼしたのではないかと論じた。

10 詩懐紙について〔論文〕
 2003年2月 『国文学研究資料館紀要』第29号 37〜52頁
 詩懐紙の作法、特に詩本文の字配りについて、鎌倉中期には6行3字に統一されること、南北朝頃から絶句・3行3字に変わっていくことを概観、懐紙の、文書としての機能についても述べる。 A―4の各論。

11田安徳川家蔵『内宴記』(前半)の翻字と訓読〔資料紹介〕
(佐藤道生との共著)
 2004年3月 『日本漢学研究』第4号 13〜19頁
 国文学研究資料館寄託田安徳川家資料の中から近時発見された新出資料である保元三年の内宴の記録および詩序・詩のうち、「記」の部分の翻字と訓読。

12書き入れのある和漢朗詠集断簡〔資料紹介〕
 2011年7月 『和歌文学大系』第47巻(和漢朗詠集 新撰朗詠集)附録・月報36(明治書院) 4〜5頁
 南北朝期書写と見られる和漢朗詠集断簡に別筆で書き入れられた注記を紹介し、それが朗詠集研究に資することを述べた。

13詩合・詩歌合について―平安から室町まで―〔論文〕
 2013年3月 『斯文』第122号 15〜32頁
 平安中期から始まる詩合、後期から始まる詩歌合について、作品の分析を含めて概観し、宮廷文学としての漢詩の盛衰と軌を一にするものとした。(作品分析については『詩のかたち・詩のこころ―中世日本漢文学論考』所収の論文と重なる内容である)

→佐藤道生「漢詩文・漢文学」(小峯和明編著『日本文学史 古代・中世編』ミネルヴァ書房、2013、第六章)は、句題詩の詠法について詳説し、特に菅原文時の破題の方法について分析しています。(2013.4.29)

14兼作の人/詩歌合・聯句・和漢聯句〔概説〕
 2015年9月 河野貴美子他編『日本「文」学史 第一冊 「文」の環境―「文学」以前』(勉誠出版)490〜493頁、498〜501頁
 「文」の概念に基づいて日本文学史を見なおす試み。コラムとして表題のテーマについて概観した。

15古今和歌序 影印と翻刻〔資料紹介〕(山田尚子との共著)
 2022年2月『斯道文庫論集』第56輯 55〜131頁
 斯道文庫蔵の表題の書の解題・影印・翻刻・訓読を収める。『古今和歌集』真名序ほか勅撰和歌集や和歌序等の詳細なヲコト点を付した本文を集めたもので、『本朝文粋』所収ではない作品の中世における訓読が知られる重要な資料である。

16五島美術館蔵 重要文化財『賦譜・文筆要訣』 影印と解題〔資料紹介〕
 2024年3月『かがみ』第54号 1〜20頁
 唐代に成立し日本にしか残っていない所謂佚存書で、賦などの文章作成の解説書である本書は日本漢文学研究上においても重要な資料である。その影印と解題を収める。

17久保田淳(くぼた・じゅん)監修『中世歌合集』(和歌文学大系16、明治書院、2024.5.30、16,000円)
 久保田淳・山田洋嗣・福留温子・加藤睦・谷知子・田中洋己・吉野朋美・五月女肇志との共著。「元久詩歌合」の校注(295〜324頁)・解説(514〜517頁)を担当。

B.五山禅林の文学(鎌倉後期から安土桃山まで)

1 瀟湘八景詩について〔論文〕
 1989年5月 『中世文学』第34号 101〜110頁
 中国、長江流域の洞庭湖付近の8つの風景である瀟湘八景は、北宋に始まり、鎌倉時代後期に来日した禅僧によって伝えられた。以後、水墨画と一体になって、禅宗寺院はもとより足利将軍家、更には公家の間でも享受されるようになる。その過程を辿ることによって、中国文化の移入・消化という中世文化における五山の役割を考察し、中世文学の中で五山文学が決して孤立しているのではなく、相互に影響を与えあっていることを論じた。

→張景翔「瀟湘八景源流初探」(辻惟雄先生還暦記念会編『日本美術史の水脈』ぺりかん社、1993年)

→鈴木廣之「瀟湘八景の受容と再生産―十五世紀を中心とした絵画の場―」(『美術研究』第358号、1993年12月)
→川平ひとし「叡山文庫『瀟湘八景註』をめぐって」(『跡見学園女子大学国文学科報』第56号、1996年3月)
→高橋範子「正木美術館本「瀟湘八景詩軸」について―国立国会図書館本『八景類聚』の記録をめぐって―」(『羽衣国文』第11号、1998年3月)

2 「大慈八景詩歌」について〔論文〕
 1990年6月 『国語と国文学』第67巻第6号 30〜43頁
 日向国志布志にある大慈寺付近の風景を集めた「大慈八景」は、康暦2年(1380)、瀟湘八景に基づいて義堂周信らが 定め、五山僧や歌人達によってそれを題にした「大慈八景詩歌集」が作られた。これまで『雲巣集』所収の漢詩作品は知られていたが、出典未詳であった古筆切 「畠山切」がその一部であるとわかり、和歌作品も加わった。これと成立の経過とをあわせて考え、九州の情勢、五山内部の抗争、足利義満・斯波義将を中心と する新しい政治体制等と密接な関係があることを指摘した。

3 畠山切について―南北朝時代文化史の一断面―〔論文〕
 1992年3月 『水茎』第12号 31〜38頁
 B―2と同じ題材について、図版を交えてわかりやすく論じたものである。成立の背景については最新の歴史学の研究成果を踏まえて書き直した。作品については4首を取り上げて注釈を施した上で、『雲巣集』と畠山切の本文異同を検討し、両者を草稿本と清書本の関係だと推測した。また、その後管見に入った切2葉を図版と翻刻により紹介した。

→別府節子「「畠山切」について―新出断簡の紹介と二条良基との関わり―」(『出光美術館館報』第109号、1999年11月)
→久保木秀夫「散佚歌集切集成 本文篇」(国文学研究資料館文献資料部『調査研究報告』第23号、2002年11月)
→その後知り得た断簡も含めてD―26に収めた後、石澤一志・久保木秀夫・佐々木孝浩・中村健太郎編『日本の書と紙 『かたばみ帖』の世界』(三弥井書 店、2012)に新出断簡一葉が収められています。(2012.6.8)

4 「等持院屏風賛」について〔論文〕
 1992年5月 『国語と国文学』第69巻第5号 136〜146頁
 『相国寺前住籍』付載の画賛資料の1つである本作品は12首からなるが、内8首が瀟湘八景、4首が牛などの動物を中心としたものという、極めて特異な内容である。まず成立年時を作者12人の伝記、特に『虎関紀年録案』の記述から康永3年(1344)と確定させた。そして、絵の題材や詩の内容から、この作品が足利尊氏・直義兄弟を中心とする初期室町幕府の文化状況を象徴するものであることを論じた。B―5の各論にあたる。

→島尾新『如拙筆 瓢鯰図―ひょうたんなまずのイコノロジー』(絵は語る5 平凡社、1995年) 

5 足利直義―政治・信仰・文学―〔論文〕
 1992年11月 和漢比較文学叢書第13巻『新古今集と漢文学』(汲古書院)245〜261頁
 室町幕府初代将軍足利尊氏の弟で、兄とともに幕府の基礎を築いた直義(1306〜1352)は、青少年期を過ごした鎌倉において和歌と禅の教養を身に付け、開幕後は統治権を掌握して政権の安定に努めながら、禅宗の保護に熱心で、為政者としてよりもむしろ個人的な信仰や文 学趣味からしばしば禅僧達と交流している。そこには政治と信仰の乖離に悩む姿が見て取れるが、彼の行動は結果的に、禅宗寺院を文化政策の中心に据える室町 将軍の原型になったといえる、と指摘した。

→羽下徳彦「足利直義の立場―その三 足利直義・私論―」(羽下徳彦編『中世の政治と宗教』吉川弘文館、1994年、後に羽下徳彦『中世日本の政治 と史料』吉川弘文館、1995年にも収める)

→小木曽千代子「玄恵法印の人的環境小考」(長谷川端編『太平記とその周辺』新典社、1994年)

→小秋元段「『太平記』第二部の範囲と構成」(『三田国文』第22号、1995年6月)

→細川武稔「空間から見た室町幕府―足利氏の邸宅と寺社―」(『史学雑誌』第107編第12号、1998年12月)

→小木曽千代子「玄恵法印の住まいと青山―漢文資料より」(長谷川端編『論集 太平記の時代』新典社、2004年)
 『玄恵追善詩歌』序文中の「玉楼」について、死後の世界を意味する「白玉楼」のことであるとし、拙論の誤りを指摘しています。(2004.5.30記) →『玄恵法印研究 事跡と伝承』(新典社、2008年)

→小川剛生「藤原有範伝の考察―武家に仕える儒者―」(長谷川端編『論集 太平記の時代』新典社、2004年)
 足利直義に関わりの深い儒者、藤原南家出身(日野家ではない)の有範についての詳細な伝記考察。

→深津睦夫「勅撰集と権力構造―風雅集・雑歌下・巻頭部の述懐歌群をめぐって―」(『国語国文』第75巻第3号、2006年3月)
 拙稿でも触れている直義の歌について、光厳院が彼を権力者として認定している証拠であると論じる。(2006.4.24記)

→長谷川端「足利直義と高師直」(『国語と国文学』第85巻第4号、2008年4月)

6 『倒痾集』について―英甫永雄の生涯と文学―〔論文〕
 1994年7月 『論集中世の文学 韻文篇』(明治書院) 340〜361頁
 狂歌作者雄長老こと英甫永雄(1547〜1602)の詩集『倒痾集』は、伝本が1本しか知られていないが、本来成立順に配列されていた作品の順序に混乱が見られる。そこで伝記を兼ねて作品の成立年時を考証し、次に、関りの深かった細川幽斎・中院通勝との交流について作品 の分析を交えて考え、最後に、少年僧梅岳元真に贈った艶詩について述べ、五山詩の、和歌や俳諧への接近を指摘した。

→中嶋利雄「田辺一如院と英甫永雄」(『舞鶴地方史研究』27、1994・8)

→吉田幸一編『雄長老集』(近世文芸資料25、古典文庫、1997年)

→石井公成「僧形の者たちの笑いの文芸―合戦の世紀に残されたもの」(『文学 隔月刊』13-5、2012・9)

7 紹介 今泉淑夫著『東語西話 中世禅林史話』〔書評〕
 1996年2月 『国語と国文学』第73巻第2 号68〜70頁
 文学・宗教・歴史にわたる幅広い視野を持つ著者の、禅宗文化に関する論考の紹介。

8 「狂雲集」論―詩に婬す〔小論文〕
 1996年7月 『国文学 解釈と教材の研究』第41巻第8号 109〜113頁
 一休宗純の詩集である表題の書について数首を取り上げて論じ、その詩の本質は「詩に婬す」ることの告白に他ならない、と指摘した。

9 『錦繍段』小考〔論文〕
 1998年3月 『愛知県立大学説林』第46号 21〜44頁
 中世禅林において作詩入門書として編纂され、近世前期まで広く読まれた、中国漢詩の選集である表題の書について、これまで実態が不明であったその原拠本『新選集』『新編集』の伝本を報告し、表題の書との関係を確認するとともに、若干の問題点と展望を示した。

→岩山泰三「五山詩における楊貴妃像―題画詩と『後素集』―」(『国文学研究』第131集、2000年6月)

→朝倉尚「禅林における「詩の総集」について―受容の実態と編纂意図」(『古典学の現在W』文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「古典学の再構築」総括班、2001年11月)
 『中華若木詩抄』編纂を焦点として、禅林における総集編纂を展望する。B―12、14にも関わる。

10 「下心」の説〔小論文〕
 1998年7月 『日本古典文学会々報』第130号 8〜8頁
 『三体詩』注釈書に見える「下心」について、中世の他の文献、特に古今集注釈と比較し、その関連を想定した。B―11 の補足でもある。
→田村航「宗祇の「下心」説―その『伊勢物語』学から―」(学習院大学人文科学論集6、1997.9)を見落としていました。先行論文として掲げます。 (2001.11.27記)
→鈴木元「古今伝授は和歌を進展させたか」(錦仁編『中世詩歌の本質と連関』竹林舎、2012)において、古今注のひとつ『古秘抄別本』に古今集歌の解釈に裏説を当てはめることの当否を述べる部分で『三体詩』の解釈との共通性が述べられていることを指摘しています。(2014.5.12)

11 『三体詩』注釈の世界〔論文〕
 1998年10月  『日本漢学研究』 第2号 1〜14頁
 中世禅林において南北朝以来広く読まれ、注釈が積み重ねられてきた表題の書について、「楓橋夜泊」詩を例に、その変遷 や特徴を探り、禅林における注釈活動が創作と一体のものであったこと、応仁の乱を境により学問的な性格を強めること、などを指摘し、対比的に近世における 注釈をも概観した。

→松本肇「半夜鐘」(『唐宋の文学』中国学芸叢書 創文社 2000、第一章第二節)に、中国における「楓橋夜泊」詩をめぐる論争を取り上げ、陳植 鍔『詩歌意象論』(中国社会科学出版社 1990)を引用して、夜中の鐘を詩に詠んだのは張継が最初で、中唐の詩人がそれを継承したこと、宋代の論議は宋 代合理主義の表れであることなどを述べる。(2002.1記)

→小野泰央「三体詩抄の〈底意〉と〈穿鑿〉」(『和漢比較文学』第33号、2004.8)は、中世の三体詩注釈に特徴的な「底意」「穿鑿」といっ た、表面的な字句の裏側に隠された作者の真意を読み取ろうとする傾向を、宋代の注釈・詩話また三体詩増註本の天隠・季昌両注に見出しています。 (2004.11.4記)

12 『錦繍段』小考(続)〔論文〕
 1999年3月 『愛知県立大学説林』第47号 35〜44頁
 B―9において詳しく調査できなかった、名古屋蓬左文庫本について概 要を報告するとともに、主に『新選集』『新編集』の享受資料を数点紹介し、両書が中世においてある程度普及していたことを指摘した。

13 絶海中津―明で学んだ文雅的詩文〔小論文〕
 1999年10月 『国文学 解釈と鑑賞』第64巻第10号 133〜137頁
 南北朝期の禅僧絶海と明太祖皇帝との唱和詩を中心に、当時の東アジアにおける禅僧の役割を考察した。

→朝倉和「日記類に見る絶海中津―「坦率の性」に注目して―」(『花園大学禅学研究』第79号 2000.12 →『絶海中津研究 人と作品とその周辺』清文堂出版、2019)

→同じ頃、建国間もない李朝(朝鮮)からの使者として太祖のもとに赴いた権近(クォン・クン)(1352〜1409)は、求めに応じて24首の詩を 詠じたのですが、その中の「耽羅(済州島)」「金剛山」の2首は彼の代表作になったそうです。(閔丙秀 Min Pyong-su, KOREAN POETRY IN CLASSICAL CHINESE--Encounters between Man and Nature, Somyong Publishing, Seoul, 1999)絶海と太祖の唱和も、伝説に彩られた自国の土地を詩に詠むという点で共通性があろうと思います。(2001.7記)

14『錦繍段』小考(その三)〔論文〕
 2001年3月 『日本漢学研究』 第3号 19〜24頁
 B―9、12の続編。龍谷大学大宮図書館蔵本『新選集』『新編集』・建仁寺両足院蔵本『新選集』の書誌を報告し、『新選集』についてはほぼ原態を推定するに至った。

15 中世禅林における白居易像〔論文〕
 2001年5月 『国語と国文学』第78巻第5号 127〜136頁
 平安時代の白詩流行にともなって、白居易の様々な人物像が形作られたが、中世禅林ではそれを一部継承しつつも、詩話や宋代詩人とくに蘇東坡によるイメー ジを受け取りながら、前代とは違った白居易像が形成され、同時にその作品も享受され、その蓄積が近世初頭の『白氏文集』刊行に繋がっていったことを論じた。B―16と姉妹編になる。

16 『錦繍段』とその周辺―漢籍受容の一例として―〔論文〕
 2001年9月『奈良・平安期の日中文化交流―ブックロードの視点から―』(王勇・久保木秀夫編 農山漁村文化協会)210〜223頁
 『錦繍段』およびその原拠である『新選集』『新編集』、続編『続錦繍段(抄)』などを概観したうえで、白居易の作品について、所収および引用本文の検証 から、禅林において『白氏文集』は、室町前期には宋刊本系統が、中後期には朝鮮本系統が読まれていた可能性を指摘した。

17 『〔古賛抄〕』翻刻と解題〔資料紹介〕
 2002年12月『禅文化研究所紀要』第26号(永島福太郎先生卒寿記念論集)463〜482頁
 徳田進氏旧蔵(室町後期成立、室町末江戸初写か)の標題の書には、二十四孝詩のほか、室町時代の禅僧の賛や、日本に将来された中国絵画の賛などが集められている。その資料的価値を述べ、全文を翻刻したもの。D―12においても触れている。

18書評と紹介 今泉淑夫著『日本中世禅籍の研究』〔書評〕
 2005年1月『日本歴史』第680号 145〜146頁
 中世五山において作られた雑纂書、五山詩のアンソロジー『花上集』、禅僧の伝記などについての論考を収める表題の書について、内容を紹介し、その意義を示した。

19中世から近世へ―漢詩文、漢籍をめぐって―〔論文〕
 2005年6月『中世文学』第50号 22〜27頁
 シンポジウム「中世文学にみえる近世、近世文学における中世」(2004年5月29日、中世文学会春季大会)において口頭発表したもの。初学書、漢籍、漢詩の3つの視点から、漢文学における中世と近世の境界を論じ、17世紀を変化の過程と位置づけた。B―9、11、16などをふまえた内容。

20こぼれ咲きの花々―禅林ゆかりの小作品群―〔小論文〕
 2005年10月『国文学 解釈と教材の研究』第50巻第10号 108〜113頁
 五山禅林で読まれた漢詩文作品やその周辺に位置する作品のなかで、比較的小規模なものが集成された書物がある。『国花集』・『続錦繍段』寛永14年版・ 『状詩帖』に収められたそれら小作品についての紹介と全体的な考察。C―13と関係する。

→塚越義幸「芭蕉俳諧を取り巻く中国古典―禅林からの流れ―」(『文学・語学』第185号、2006年6月)
→小山順子「室町時代の句題和歌―黄山谷「演雅」と『竹内僧正家句題歌』―」(『国語国文』第76巻第1号、2007年1月)

21中世の漢文〔エッセイ〕
 2006年1月 小島毅編『義経から一豊へ 大河ドラマを海域にひらく』(『アジア遊学』特別企画、勉誠出版)84〜85頁
 中世文化における漢文の果たした役割を簡単に述べたもの。

22森大狂旧蔵 本朝禅林撰述書目 翻刻と解題〔資料紹介〕
 2006年2月 『禅文化研究所紀要』第28号(加藤正俊先生喜寿記念論集)415〜436頁
 すでに大日本仏教全書などの翻刻があるものだが、それと系統を異にする一本で、近代における日本禅宗史研究の先駆者森大狂の書き入れがある架蔵書を翻刻。同系統二本との校異も示す。

23日本中世禅林における三体詩の受容―二つの注をめぐって―〔論文〕
 2006年3月 『駒澤大學禅研究所年報』第17号 19〜29頁
 B―11の補足。三体詩の注(季昌注・天隠注)の性格の違いを示し、禅僧の抄物が主として天隠注に影響を受けて展開していったことを論ずる。

24一休宗純『自戒集』試論―詩と説話のあいだ―〔論文〕
 2006年7月 『説話の界域』(小島孝之編、笠間書院) 69〜82頁
 一休宗純の残した作品のなかでも兄弟子養叟に対する悪口を内容とする狂詩集というユニークな存在である表記の書について、その成立過程と、批判が他者から自己へと方向を転換させていくこととが連関している、と論じる。

25中世日本人禅僧による中国詩のアンソロジーについて〔論文〕
 2007年3月 『境界を越える日本文学研究』(人間文化研究機構国文学研究資料館編・刊)8〜13頁
 同年2月17日にパリ、コレージュ・ド・フランスで行われた研究集会で発表したもの。『新選集』『新編集』『錦繍段』についてこれまで発表した論文の内容をわかりやすくまとめた。

26新選分類集諸家詩(抄出本) 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2007年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第2号 29〜41頁
 いわゆる『新選集』の新出伝本の紹介。わずか78首の抄出本であるが、『錦繍段』とほぼ一致しながらも微妙に出入りがある、興味深い内容。

→朝倉尚「書評 堀川貴司著『詩のかたち・詩のこころ―中世日本漢文学研究―』(『和漢比較文学』第39号  2007年8月)に、出典の見落としが指摘されています。作品番号19〜21がそれぞれ『錦繍段』45〜47に、39が『続錦繍段』47に、58が『新選 集』305にあるのを見落としていました。

27都立中央図書館加賀文庫蔵『瀟湘八景鈔』 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2008年3月 『鶴見大学紀要』第45号第4部人文・社会・自然科学編 113〜126頁
 中世から近世にかけて流布した瀟湘八景詩二種の抄物として最も詳細なものの一つを、返り点等も含めて出来る限り忠実に翻刻したもの。

28唐絶句 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2008年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第3号 163〜216頁
 唐・宋・元・明歴代の七言絶句(一部六言や聯句を含む)837首を集成した写本の翻刻。江戸初期、禅林に流布していた書物と、明末新渡の書物とが交錯す る中で編纂されたと見られ、中国詩受容の歴史を考える上で興味深い一冊。ただし詳しい考証は今後の課題である。

29三条西家旧蔵『経国集』紙背文書について―公条と月舟寿桂―〔論文〕
 2008年8月 『国語と国文学』第85巻第8号 28〜40頁
 学習院大学文学部日本語日本文学科研究室所蔵の三条西家本『経国集』紙背にある三条西公条宛て月舟寿桂書状3通の翻刻と通釈、および若干の考証を加え、両者の学問的交流の一断面を描く。

→末柄豊「畠山義総と三条西実隆・公条父子―紙背文書から探る―」(『加能史料研究』22号、2010年3月)は、三条西家旧蔵書を博捜し、その紙背文書から能登畠山氏と三条西家との関係を論じ、実隆から公条への継承、月舟からその弟子の継天や如月への継承についても触れています。 (2010.6.8)

30中世抄物研究の現在〔小論文〕
 2008年10月 『国文学解釈と鑑賞』第73巻第10号 21〜27頁
 日本漢文学研究の一環として抄物を取り扱う際の注意点や今後の課題について述べる。

→22頁、李白・白居易の別集に明代まで中国人の注釈がないと記しましたが、李白には元代の『分類補註李太白詩』25巻がありますので、これは誤りです。なお杜甫・蘇軾・黄庭堅らの注釈付き別集に比べると、中世の日本ではそれほど流布していないようですが、今後検討が必要です。(2009.3.1)

31瀟湘八景詩の抄物〔小論文〕
 2008年11月 『アジア遊学』第116号 54〜60頁
 玉澗作とされる瀟湘八景詩の抄物の内容を紹介し、抄物の持つ魅力に触れる。あわせて伝玉澗とされる作品の抄物にも言及する。C―12に基づく内容。

32『江湖風月集略註』研究(一)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2008年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第20号 1〜86頁
 室町中期妙心寺の僧侶東陽英朝による、中国宋元代禅僧の偈頌集『江湖風月集』の漢文注釈書を再注釈したもの。冒頭14首を収める。

33臼杵市教育委員会蔵『八景詩』 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2009年3月 『鶴見大学紀要』第46号第4部人文・社会・自然科学編 109〜116頁
 B―27に引き続き、臼杵市教育委員会蔵の伝玉澗作瀟湘八景詩および禅僧の画賛数首を注解した抄物を翻刻。また東山文庫蔵の抄物から、八景詩以外の画賛の注解部分を引用付載した。

34垂示(江隠宗顕) 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2009年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第4号 69〜87頁
 大徳寺系の禅僧による夜話・垂示といった公案に関する解釈の講義、あるいは禅僧のエピソードなどの談話を書き留めた資料の紹介。

→飯塚大展「禅籍抄物研究(六)―駒澤大学図書館蔵『大圓禅師夜話』について」(『駒澤大学禅研究所年報』21、2009年12月)に類似の抄物の翻刻・紹介があり、本稿も引用されています。(2010.4.4)

35『九淵詩稿』について―室町時代一禅僧の詩集―〔論文〕
 2009年5月 『文学』隔月刊第10巻第3号 70〜82頁
 室町前期の五山僧九淵龍〓{王+深の旁}(きゅうえん・りゅうちん)の略伝を述べ、ついで詩集から数首取り上げる。詩集には詳しい自注があり、当時の禅僧の詩に対する 考えや詩会の様子を知る手がかりになる。
 →略伝で書き落としていたこととして、応仁の乱を避け越前大野増福寺に滞在したことが『中華若木詩抄』および希世霊彦の詩集『村庵藁』に見られるという点がありました(新日本古典文学大系・中華若木詩抄120頁参照)ので補足します。(2009.5.24)
 →朝倉和「五山文学版『百人一首』と『花上集』の基礎的研究―伝本とその周辺―」(『文学』隔月刊第12巻第5号、2011.9)において、『花上集』に江西龍派作として載る「長楽宮図」は本論文で分析した九淵作同題の詩と酷似していることを、国立公文書館内閣文庫本Iの月舟寿桂注記をもとに指摘しています。(2011.10.4)

36五山における漢籍受容〔論文〕
 2009年7月 『中国―社会と文化』第24号211〜223頁
 表題について概説的に述べたもの。D―25に基づく。

37禅宗と日本文学―一休宗純を中心に〔論文〕
 2009年12月 白百合女子大学言語・文学研究センター編、井上隆史責任編集『宗教と文学――神道・仏教・キリスト教』(アウリオン叢書07、弘学 社)24〜37頁
 2008年度に行われたオムニバス授業のうち一回を担当、その内容を活字化したもの。近年の日本禅宗史研究をふまえて一休の事跡や文学作品を位置付ける。これもD―25収載の論文に一部基づいている。

38『江湖風月集略註』研究(二)〔注釈〕(飯塚大展・海老澤早苗・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2009年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第21号 1〜76頁
 B―32の続編、第15首から第27首までの13首を収める。

39〔三体詩抄〕断簡 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2010年3月 『鶴見大学紀要』第47号第4部人文・社会・自然科学編 126〜132頁
 中世禅林において蓄積されてきた『三体詩』注釈の、古い形を伝えると思われる資料の紹介。紙背文書の差出人乗蓮兼賀についての考察も付す。

40〔東坡詩聞書〕 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2010年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第5号 55〜81頁
 慶長18年(1613)に宮中及び八条殿で行われた、東福寺の僧侶文英清韓による蘇軾の詩の講義をその場で書き留めたノートの紹介。

41『江湖風月集略註』研究(三)〔注釈〕(飯塚大展・海老澤早 苗・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2010年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第22号 1〜81頁
 B―38の続編、第28首から第44首までの17首を収める。

42翻刻 建仁寺両足院蔵『新選分類集諸家詩巻』付・同系統他本による補遺―『新選集』『新編集』研究その一― 〔資料紹介・論文〕
 2011年2月 『斯道文庫論集』第45輯 53〜98頁
 最善本と目される建仁寺両足院蔵本の全文翻刻と主要校異、同本に収められていない作品の補遺を行った。

43『覆簣集』解題と翻刻〔資料紹介〕
 2011年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第6号 37〜62頁
 天文11年(1542)序を持つ、五山詩の略注付きの選集(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵)の紹介。

44中世日本漢籍における本文と注の形態について〔論文〕
 2011年3月 人間文化研究機構・国文学研究資料館編刊『シンポジウム 古典籍の形態・図像と本文 日中書物史の比較研究』77〜84頁
 2010年12月に北京・国家図書館において行われたシンポジウムの発表内容を収めたもので、『三体詩』と『江湖風月集』を例に、中世の五山版や写本と 抄物の関係、またそれらが近世に入って版本になり、形態が整えられていく様相を述べる。(奥付は3月だが実際は10月刊行)

45五山文学研究 資料と論考〔単著〕
 2011年6月 笠間書院 A5判348頁
 五山文学について、資料の紹介を中心に論じる。B―17,18,22,26〜31,33,34,36,37,39,40,42,43を改訂の上収めたもの。目次詳細はこちら

→『国文目白』第51号(2012年2月)134〜136頁に紹介(石井倫子氏)していただきました。
→『和漢比較文学』第49号(2012年8月)132〜140頁に書評(中本大氏)していただきました。
→『国語と国文学』第89巻第9号(2012年9月)67〜72頁に書評(朝倉尚氏)していただきました。

46『覆簣集』について―室町時代後期の注釈付き五山詩総集―〔論文〕
 2011年9月 『文学』隔月刊第12巻第5号 39〜52頁
 B―43で翻刻した資料について、所収作品の出典やその傾向、注釈の内容の分析、ほぼ同時代の『中華若木詩抄』や『花上集鈔』との比較を行った。
→同誌所収、朝倉和「五山文学版『百人一首』と『花上集』の基礎的研究―伝本とその周辺―」において、『花上集』国立公文書館内閣文庫本Iにある月舟寿桂 の注記に「松間桜雪」が」実は南江宗〓{さんずい+元}作だとの指摘があることを紹介しています。『覆簣集』も『花上集』同様太白真玄作としているので、この作品を『花上集』から採用した可能性が高まります。(2011.10.4)

→47頁下段後ろから5行目「試向風前」は「試みに風前に」と訓む(「向」を前置詞と捉え、訓読しない)べきではとの西尾賢隆氏からの御指 摘を受け ました。その通り改めたいと思います。(2011.10.23)

→48頁上段3行目「機(老荘でいう無為自然の境地、禅でいう悟り)」という説明について、芳村弘道氏より、「機」はたくらみの心であり、それがな い(忘機)のがあるべき境地ではないかとの御指摘を受けました。禅でいう「機」(悟りへのきっかけ)とひとまとめにしてしまったため、全く逆の説明になっ てしまいました。御指摘通りここは「機(老荘でいう無為自然の境地に反するたくらみの心)」と改めたいと思います。(2011.10.23)

47《座談会》五山文学研究の新段階〔座談会〕(島尾新・住吉朋彦・中本大との共著)
 2011年9月 『文学』隔月刊第12巻第5号 2〜38頁
 五山文学研究について、これまでの研究史、五山文学史そのものの概観をした上で、各自の研究を披露したもの。

48『江湖風月集』の注釈書〔論文〕
 2011年11月 佐藤道生編『注釈書の古今東西』(平成22年度極東証券寄附口座 文献学の世界、慶應義塾大学文学部)3〜26頁
 注釈書をテーマにしたオムニバス講義の活字化。『江湖風月集略註』ほかの注釈書について、「閑田」という偈頌の注について見たもの。

49『江湖風月集略註』研究(四)〔注釈〕(飯塚大展・海老澤早 苗・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2011年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第23号 1〜70頁
 B―41の続編、第45首から第58首までの14首を収める。

50翻刻 慶應義塾図書館蔵『續新編分類諸家詩集』付・他本による補遺―『新選集』『新編集』研究その二―〔資料 紹介・論文〕
 2012年2月 『斯道文庫論集』第46輯 351〜397頁
 B―42に引き続き、『新編集』最古写本と思われる伝本の全文翻刻(附録部分を除く)、主要校異、補遺を収める。

51資料紹介 伝横川景三筆『〔百人一首〕』断簡〔資料紹介〕
 2012年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第7号 147〜155頁
 表題の作品の断簡6首の紹介と、本文異同等に関する考察を収める。

→6首すべてが『翰林五鳳集』に収録されていることを見落としていました。『百人一首』伝本と本断簡の間で異同の ある部分は、おおよそ本断簡の本文と一致しています。また「乱後村居」は『中華若木詩抄』にも収められ、さらに複雑な異同が存在します。新日本古典文学大 系の脚注をご参照ください。なお、横川自筆の資料としては、論文中に触れたもの以外に『補庵京華集』尊経閣文庫蔵本があります。(2012.5.12)

52村菴稿〔資料紹介〕
 2012年3月(実際の刊行は2013年1月) 研究代表者・大谷俊太『二〇〇九〜二〇一一年度科学研究費補助金 基盤研究(B)研究成果報告書2〔資 料・解題編〕 奈良古梅園所蔵資料の目録化と造墨事業をめぐる東アジア文化交流の研究』資料編2、300〜313頁
 室町前中期の五山僧希世霊彦の詩集の翻刻。内容別に分類されたもので、これまで未紹介の写本である。

→書写者「懶斎」は大和郡山藩(本多氏)藩儒で林羅山の弟子満田古文であることを、榎本渉『南宋・元代日中渡航僧伝記集成 附 江戸時代における僧伝集積過程の研究』(勉誠出版、2013)326頁の記述により知りました。(2013.5.19)

53三条西実隆における漢詩と和歌―瀟湘八景を中心に―〔論文〕
 2012年4月 錦仁編『中世詩歌の本質と連関』(中世文学と隣接諸学6、竹林舎)367〜392頁
 実隆の漢詩学習の履歴を辿り、和と漢を併せ学ぶ公家の伝統的文学観のもと、五山文学の題材や表現を意欲的に取り込んでいく様子を指摘し、そのなかに彼の 瀟湘八景和歌二組を位置付けた。

→384頁後ろから5行目「北方の天津」とあるのは「北方の洛陽」の誤りです。天津橋は洛陽の橋です。(2013.7.3)

54禅林の抄物と説話〔論文〕
 2012年7月 『説話文学研究』第47号 145〜152頁
 中世禅林の文学を対象にした説話文学研究の研究史を概観した後、抄物において本文解釈と関わって説話が利用されている例として『三体詩』と『江湖風月集』の抄物を取り上げて分析した。

55禅僧による禁中漢籍講義―近世初期『東坡詩』の例―〔論文〕
 2012年10月 堀川貴司・浅見洋二編『蒼海に交わされる詩文』(東アジア海域叢書13、汲古書院)147〜169頁
 文禄5年(慶長元年、1596)月渓聖澄、慶長18年(1613)文英清韓による二つの『東坡詩』講義を、残っている聞き書きや記録類から復元して、そ の内容が『四河入海』に基づきながらも公家の興味関心に合わせてアレンジされた物であることを推定した。

56名所としての中国―「西湖」を中心に―〔論文〕
 2012年11月 『文学・語学』第204号 47〜57頁
 平安漢詩における名所の概念や西湖(銭塘湖)の扱い方を導入として、五山文学における西湖のイメージを追い、林和靖と結びつくことによってイメージが確 定したこと、実見・絵画などを利用しながら表現の幅を広げたことなどを述べた。平成24年度全国大学国語国文学会のシンポジウム「モダニズムの中の異国― 古典文学の新研究―」における発表をまとめたもの。

57「詩歌合(文明十五年)」について〔論文〕
 2012年12月 『かがみ』第43号 24〜49頁
 文明15年(1483)正月、将軍足利義尚主催により行われた詩歌合について、現存伝本を調査、主要なものの書誌や本文の特徴を明らかにした上で、成立 の経緯や当日の状況を記録類によって辿り、その主要メンバーが伝本の書写に関わっていることを示した。

58『江湖風月集略註』研究(五)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2012年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第24号 1〜68頁
 B―49の続編。第59首から第72首までを収める。

59増補・改編本による補遺および諸本所収作品対照表―『新選集』『新編集』研究その三―
 2013年2月 『斯道文庫論集』第47輯 111〜147頁
 B―42、50に引き続き、前2本の未収作品を諸本から集成するとともに、所収作品をそれぞれの作品番号によって一覧・対照できるようにした。

60『香積南英禪師語録』について〔資料紹介〕
 2013年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第8号 91〜113頁
 刈谷市中央図書館村上文庫所蔵の表題の五山版について書誌的な概略と、そこに収められる著者南英周宗の行状を紹介した。

61五山文学〔概説〕
 2013年5月 小峯和明編著『日本文学史 古代・中世編』(ミネルヴァ書房)292〜295頁
 コラムとして、五山文学の概略を手短に記した。

62五山僧に見る中世寺院の初期教育〔論文〕
 2013年5月 井原今朝男編『富裕と貧困』(生活と文化の歴史学3、竹林舎)469〜489頁
 禅僧の伝記そのほかの資料により、寺院における初期教育、特に禅宗寺院における成人までの漢学・漢詩文教育について概観した。

63定型としての七言絶句―「詩歌合(文明十五年)」を例に―〔論文〕
 2013年7月 『日本文学』第62巻第7号 47〜55頁
 七言絶句の題詠方法について、公家と五山僧それぞれの作品を分析し、前半二句で題を、後半二句でそこからの展開を行うという定型があると推定、ただしそれを守らない場合もあり、また五山僧はさらにもう一つ、何かの工夫を加えているとの分析を述べた。

64関於《新選集》〔論文〕
 2013年8月 《国際漢学研究通訊》(北京大学国際漢学家研修基地)第7期 199〜204頁(中国語、陳小遠訳)
 B―71の内容を簡略に述べ、冒頭に研究史を付したもの。

65抄物の類型と説話〔論文〕
 2013年8月 『伝承文学研究』第62号 14〜24頁
 抄物についていくつかの特徴をもとに類型を考え、禅林内部に向けてのものと、外部の読者を意識したものとで、そのなかに見える説話の内容が異なることなどを論じた。

66もう一つの『百人一首』―五山文学受容の一様相〔論文〕
 2013年10月 松田隆美編『書物の来歴、読者の役割』(慶應義塾大学出版会)59〜69頁
 オムニバス講義の内容をまとめたもの。中世五山僧の詩のアンソロジー『百人一首』および『中華若木詩抄』に収められている田野夫「乱後村墟」について、本文異同の検討し、『奥の細道』における受容について触れた。

67文学資料としての詩短冊―三条西実隆とその周辺―〔論文〕
 2013年11月 『國學院雑誌』第114巻第11号 525〜539頁
 管見に入った室町中期の公家の詩短冊について、『再昌草』所収詩と同時の詩会の作品があることに気づき、両者を比較検討したもの。

68『江湖風月集略註』研究(六)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2013年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第25号 1〜64頁
 B―58の続編。第73首から第85首までを収める。

69日本中世における『三体詩』の受容―五山を中心として―
 2013年12月 『江湖派研究』第3輯 66〜78頁
 これまでの『三体詩』に関する研究をまとめ、若干の関連資料を追加し、表記の問題について概観したもの。

70五山へのいざない、漢詩文を読むことと書くこと〔概説〕
 2014年1月 島尾新編『東アジアのなかの五山文化』(東アジア海域に漕ぎだす4、東京大学出版会)プロローグ1、第II部2、1〜21・150〜169頁
 五山におけるさまざまな文化的創造を総合的に解説する書のうち、全体の概説と文学活動について担当執筆したもの。

71旅する禅僧 中世日本の禅僧の生涯と活動〔論文〕
 2014年2月 堀池信夫総編集、増尾伸一郎・松ア哲之編『交響する東方の知 漢文文化圏の輪郭』(知のユーラシア5、明治書院)83〜105頁
 絶海中津・南英周宗ほかの禅僧を取り上げ、その修行や文学活動において海外・国内における旅が重要な役割を果たしたことを述べ、禅僧の紀行文学の文学史的価値を訴える。

72伝本一覧および『錦繍段』との関係について―『新選集』『新編集』研究その四―〔論文〕
 2014年2月 『斯道文庫論集』第48輯 119〜143頁
 これまでに管見に入った両書の伝本を挙げ、それぞれの特徴と相互の関係を述べ、『錦繍段』所収詩の収録状況を一覧表にして考察を加えた。

73伝策彦周良撰『詩聯諺解』 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2014年3月 鶴見大学日本文学会編『国文学叢録 論考と資料』(笠間書院)302〜323頁
 室町後期五山の漢詩と聯句についての作法書。唯一の伝本である祐徳稲荷神社中川文庫蔵本を翻刻した。
→跋文の作者河口子深は鹿島鍋島家六代目の直郷と関係が深かった旨、井上敏幸氏より御教示頂きました。(2014.4.20)

74『〔日課一百首〕』解題と翻刻〔資料紹介〕
 2014年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第9号 49〜70頁
 妙心寺派の禅僧鉄山宗鈍の詠と推測される漢詩作品に春沢永恩と策彦周良が批点を加えたもの。天理大学附属天理図書館蔵本を翻刻した。

75中世日本禅僧による注釈書について〔論文〕
 2014年4月 『人文科学』(延世大学校人文学部)第100輯 75〜88頁
 古代における漢籍受容から説き起こし、中世の抄物について『三体詩』『江湖風月集』を例に述べる。B―54など、これまでの抄物に関する研究をまとめなおしたもの。

76日本中世禅僧による日本漢詩のアンソロジー〔論文〕
 2014年6月 国文学研究資料館、コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所編『集と断片 類聚と編纂の日本文化』(勉誠出版)139〜154頁
 『花上集』以下『翰林五鳳集』までの五山僧による五山詩総集を概観した。

77『松蔭吟藁』について―室町時代一禅僧の詩集―〔論文〕
 2014年10月 佐藤道生・高田信敬・中川博夫編『これからの国文学研究のために―池田利夫追悼論集』(笠間書院)333〜352頁
 室町時代中期、相国寺において活躍した琴叔景趣の詩集について、その諸本間の異同および全体の構成について述べた。

78『江湖風月集略註』研究(七)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2014年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第26号 35〜98頁
 B―68の続編。第86首から第97首までを収める。

79五山文学における偈頌と詩〔論文〕
 2015年1月 『駒澤大学仏教文学研究』第18号、27〜44頁
 五山僧の語録・詩文集における偈頌と詩の比率や彼等の意識について、鎌倉後期から室町後期に至るまでを概観したもの。

80積翠軒文庫旧蔵『学者旅亭分韻集諸家詩巻』について―『新選集』『新編集』研究その五―〔論文〕
 2015年2月 『斯道文庫論集』第49輯 117〜155頁
 新出伝本である表記写本について、蓬左文庫本の転写本と位置づけ、内容を詳細に検討したもの。この二本と『新選集』『新編集』諸本との作品一覧表を付す。

81詩法から詩格へ―『三体詩』およびその抄物と『聯珠詩格』〔論文〕
 2015年3月 内山精也編『南宋江湖の詩人たち』(アジア遊学180、勉誠出版)234〜243頁
 『三体詩』七言絶句の巻にある小部門の分立について、どのような観点から詩をグルーピングしているかを、抄物と近代の注釈書(野口寧斎)を参考にしつつ分析した。

82続五山文学研究 資料と論考〔単著〕
 2015年5月 笠間書院 A5判348頁
 五山文学について、資料の紹介を中心に論じる。B―46,51,52〜57,60,62,63,65,67,73,74,79,81,D―49を改訂の上収めたもの。目次詳細はこちら

83五山僧と教養、杭州西湖〔項目執筆〕
 2015年10月 村井章介編集代表『日明関係史入門 アジアのなかの遣明船』(勉誠出版)339〜343、365〜370頁
 遣明使節の日記に見る五山僧の教養、彼らが見聞した杭州西湖の文学的表現について述べたもの。

84五山僧侶の教養―古澗慈稽を例に―〔論文〕
 2015年11月 鈴木健一編『形成される教養 十七世紀日本の〈知〉』(勉誠出版)48〜69頁
 中世から近世へと時代が転換する時期の五山僧の教養について、古澗慈稽の作品(入寺疏と漢詩)を例に、注釈的に考察し、それを無意味なものと見る新たな視点が生まれてくることを指摘する。

85『錦嚢風月』解題と翻刻〔資料紹介〕
 2015年12月 『国立歴史民俗博物館研究報告』第198集 高松宮家伝来書籍等を中心とする漢籍読書の歴史とその本文に関する研究(静永健編)111〜204頁
 『新選集』『新編集』にやや遅れて相国寺において成立した類似の詩集である、国立国会図書館蔵の表記の写本について、解題を付して翻刻したもの。

86『江湖風月集略註』研究(八)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2015年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第27号 1〜69頁
 B―78の続編。第98首から第112首までを収める。

87『続錦繍段』所収作品について―『新選集』『新編集』研究 その六―〔論文〕
 2016年2月 『斯道文庫論集』第50輯 145〜159頁
 表題の書の所収作品が、『新選集』『新編集』以外からも採られ、それが改編本『新選集』に逆流していることを指摘した。

88漢詩文に描かれた富士山―五山文学を中心に―〔概説〕
 2016年3月 山梨県富士山総合学術調査研究委員会編『富士山 山梨県富士山総合学術調査研究報告書2』(山梨県富士山世界文化遺産保存活用推進協議会)本文編第7章第2節128〜132頁、資料編IV文学資料・表2 漢詩文に描かれた富士山資料215〜222頁
 鎌倉後期から江戸初期まで、五山文学における富士山の表象を辿ったもの。主要翻刻叢書に収める富士山関連作品の一覧を資料として付す。

89公家の学問と五山〔論文〕
 2016年6月 『中世文学』第61号 27〜35頁
 南北朝時代から室町中期にかけて、公家の学問・文学に五山のそれが浸透していった様子を、書物の受容を通して概観する。2015年春季大会のシンポジウム「室町期の古典学」において話した内容をまとめたもの。

→河野貴美子「『花鳥余情』が説く『源氏物語』のことばと心」(『国文学研究』175、2015年3月)は一条兼良の源氏物語注釈書『花鳥余情』に杜甫や蘇軾その他五山でよく読まれていた漢籍が利用されていることを指摘しています。和歌・物語注釈書における五山経由の漢籍利用についても言及すべきところでした。(2018.2.12)

90五山文学における画賛〔論文〕
 2016年8月 『観世』第83巻第8号 32〜39頁
 賛の定義にはじまり、五山僧による画賛の形式や対象の広がりを述べ、具体例として観世信光と宮増弥左衛門の画賛を読む。

→天野文雄氏は「観世小次郎信光と五世観世大夫之重」(能苑逍遙70)(『おもて 大槻能楽堂会報』132号、2017年4月)において、信光の画賛の一節「鸞膠続絃」を芸の継承を言ったものとする解釈を取り上げて、伝記的事実と符合するとして賛同を示されました。(2017.4.22、なおこの論の存在は高橋悠介氏の御教示によるものです)

91禅籍研究(一)翻刻 駒澤大学図書館藏『禪宗雜毒海』(上)〔資料紹介〕(飯塚大展との共著)
 2016年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第28号 139〜163頁
 卍続蔵に収められている改編本には含まれない作品を多数収録する明初刊本の和刻本を底本に、返り点送り仮名も含め翻刻し、明刊本との校異も掲げる。全10巻のうち前半5巻を収める。

92『江湖風月集略註』研究(九)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2016年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第28号 1〜58頁
 B―86の続編。第113首から第125首までを収める。

93室町後期の五山文学〔論文〕
 2017年7月 『能と狂言』15 93〜101頁
 「室町後期の能を考える」というテーマのシンポジウムにおいて、文化的背景の一つとして、五山僧による中国文化の伝播について概観したもの。

94五山文学における総集と別集─編成を中心に─〔論文〕
 2017年10月 『日本中国学会報』第69集 214〜227頁
 これまで個別の作品について進めてきた総集・別集の編成に関する論を時代の変遷を含め総合的に論じたもの。

95『江湖風月集略註』研究(一〇)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2017年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第29号 1〜37頁
 B―92の続編。第126首から第134首までを収める。

96五山文学における富士山の表象〔論文〕
 2018年5月 中国社会科学院歴史研究所・日本東方学会・黄河文明伝承与現代文明建設河南省協同創新中心編《第九届中日学者中国古代史論壇文集》(河南大学出版社)175〜190頁
 B─88の内容を踏まえて、宋濂詩「日東曲」の受容に重点を置いて書き直したもの。中文要旨を付す。

97五山文学のなかの故事─邵康節を例に〔論文〕
 2018年9月 『日本人と中国故事 変奏する知の世界』(アジア遊学223、勉誠出版、201〜206頁)
 邵雍の「花外小車」と「天津橋上で杜鵑を聴く」という二つの故事が五山においてどのように摂取されたかを見る。
 →花外小車の故事については芳澤勝弘編『欠伸稿訳注 乾』(思文閣出版、2010)373頁以下の「【一七八】同 和春公」詩の注に詳述され、邵雍と司馬光が男色関係にあるような描写も行われていることが指摘されていることを見落としていました。(2018.9.28)

98壬生雅久の文事─「公家の学問と五山」補遺〔論文〕
 2018年10月 前田雅之編『画期としての室町 政事・宗教・古典学』(勉誠出版)360〜378頁
 B−89で取り上げた壬生雅久の作品および五山僧との交流の様子を詳しく述べる。

99『江湖風月集略註』研究(十一)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2018年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第30号 1〜49頁
 B―86の続編。第135首から第147首までを収める。

100禅宗寺院の学問と文化〔講演記録〕
 2019年3月 『ARTEFACT(アルテファクト)』第2号 40〜46頁
 2018年11月18日泉岳寺において行った講演の記録。建仁寺両足院を例に塔頭の果たした文化的役割について述べた。80〜70頁に英訳も載せる。

101「観世小次郎画像(賛)」再考〔論文〕
 2019年4月 『国語と国文学』第96巻第4号 3〜17頁
 B─90で取り上げた表題の作品について、伝本の紹介を含め詳細に論じたもの。
 →尊経閣文庫蔵の行状については、既に表章『昭和の創作「伊賀観世系譜」』(ぺりかん社、2010)で取り上げられています。これは、梅原猛『うつぼ舟II 観阿弥と正成』(角川学芸出版、2009)において平泉澄『楠公 その忠烈と餘香』(鹿島出版会、1973)が初めて紹介した同資料に言及、影印と翻刻を載せたのに対して反論したもので、拙論はそれを知らずに執筆し、結果的には両者の説の折衷的な結論になっています。先行研究に気づかなかったことをお詫びするとともに、ご指摘頂いた天野文雄氏に感謝申し上げます。(2019.8.11)

102日本中世禅林における謝霊運受容〔論文〕
 2019年11月 『アジア遊学』240六朝文化と日本 謝霊運という視座から163〜171頁
 中世禅林で読まれていた詩文集・類書等から人物別の逸話・表現を集成する和製類書を利用して、謝霊運に関する逸話等を集成・分析した。

 →太田亨「日本中世禅林における謝霊運受容─初期の場合」(『中国古典文学研究』4、2006.11)を参照するのを怠っていたことをお詫びします。(2019.12.28)

103〔叔悦禅懌詩巻〕解題と翻刻〔資料紹介〕
 2019年12月『藝文研究』117佐藤道生教授退任記念論文集164〜182頁
 室町中期関東五山で活躍した叔悦禅懌の自筆詩巻について、その成立や性格を論じ、翻刻を行った。

104『〔文選聞書〕』解題と翻刻〔資料紹介〕
 2019年12月『立命館文学』664芳村弘道教授退職記念論集、465〜471頁
 室町中期三条西家に関わる資料かと思われる『文選』講義の聞書(上表・序・巻一冒頭のみ)の翻刻と解題を収める。

105『江湖風月集略註』研究(十二)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2019年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第31号 1〜47頁
 B―99の続編。第148首から第159首までを収める。

106『江湖風月集略註』研究(十三)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2020年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第32号 1〜44頁
 B―105の続編。第160首から第170首までを収める。

107詩歌と絵画・画賛の文化―日本中世禅林を中心に〔小論文〕
 2021年3月 ハルオ・シラネ編『東アジアの自然観 東アジアの環境と風俗』(東アジア文化講座4、文学通信)139〜146頁
 これまで執筆した瀟湘八景および富士山の五山における受容を簡潔にまとめたもの。

108五山版をどう考えるか〔論文〕
 2021年6月 藤本幸夫編『書物・印刷・本屋 日中韓をめぐる本の文化史』(勉誠出版)278〜293頁
 五山版の刊行について、南北朝期・室町前期を中心に、それ以前とそれ以後について、それぞれの時期の刊行者や目的・内容・受容等を概略的に論じる。

109書評 川本慎自著『中世禅宗の儒学学習と科学知識』〔書評〕
 2021年11月 『史学雑誌』第130編第11号 66〜74頁
 足利学校ほか関東における儒学に着目し、抄物に見えるさまざまな科学知識の記述などをも利用して、これまで見過ごされてきた禅宗・禅僧の役割を再評価した著作の書評。抄物の読解についていくつか提案をしている。

110『江湖風月集略註』研究(十四)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2021年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第33号 1〜46頁
 B―105の続編。第171首から第182首までを収める。

111五山文学〔概説〕
 2022年2月 千葉一幹(ちば・かずみき)西川貴子(にしかわ・あつこ)松田浩(まつだ・ひろし)中丸貴史(なかまる・たかふみ)編『日本文学の見取り図 宮崎駿から古事記まで』(シリーズ世界の文学をひらく5、ミネルヴァ書房)198〜199頁
 五山文学についての簡便な概説。

112紅葉山文庫旧蔵『續新編分類諸家詩集』について―『新選集』『新編集』研究その七―〔論文〕
 2022年2月 『斯道文庫論集』第56輯 35〜53頁
 これまで見落としていた国立公文書館所蔵本のもう一本についての紹介で、やや改編が行われている本であることを述べた。

113足利学校と五山〔講演録〕
 2022年3月 『史跡足利学校研究紀要 学校』第20号 19〜39頁
 室町中後期の足利学校と鎌倉・京都五山および清原家との関係、近世に入って徳川家康のもとにその知が集約される様子を述べた。

114一休宗純関連資料紹介―『自戒集』関連資料と『一休老和尚不審物』―〔資料紹介〕
 2022年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第17号 423〜438頁
 落合博志氏所蔵『自戒集』断簡、センチュリー赤尾コレクション所蔵(斯道文庫保管)『狂雲集』附録の『自戒集』関連文、刊本『一休老和尚不審物』の翻刻および解題。

115抄物を読む〔シンポジウム発表資料〕
 2022年5月 2022年度日本語学会春季大会予稿集 267〜272頁
 テーマ「文献資料を読む―中世語研究の継承と展開―」のもと、抄物の研究状況、および講義現場における聞書と思われる資料の特徴について紹介した。

116唐物としての書と書物―無学祖元を例に〔論文〕
 2022年10月 アジア遊学275『「唐物」とは何か 舶載品をめぐる文化形成と交流』(勉誠出版)245〜255頁
 来日中国人僧無学祖元の書跡、および日本で出版された語録という、日本製唐物というべきものを取り上げ、その生成や伝来にその時々の時代の要請が深く絡んでいることを述べた。

117『江湖風月集略註』研究(十五)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2022年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第34号 1〜55頁
 B―110の続編。第183首から第196首までを収める。

118斯道文庫による両足院蔵書調査について―第二十五番函を例に〔論文〕
 2023年2月 『書物学』第22巻 禅寺の学問 相国寺・両足院の知の体系(勉誠出版)54〜61頁
 長年行っている斯道文庫による両足院蔵書調査と目録作成について、第25番函に収められた書物の目録とそこからわかる高峯東ラの学問などについて述べたもの。

119楓橋夜泊の詩・水仙のイメージ〔エッセイ〕
 2023年10月 松谷芙美編『常盤山文庫×慶應義塾 臥遊―時空をかける禅のまなざし』(慶應義塾ミュージアムコモンズ)23頁・36頁
 展覧会出品作に関連する画題・詩題である二つについて、その背景となる中国詩や五山僧の解釈などについて述べる。他に墨蹟・画賛の翻刻・現代語訳も担当。

120『江湖風月集略註』研究(十六)〔注釈〕(飯塚大展・佐藤俊晃・比留間健一との共著)
 2023年12月 『駒澤大学禅研究所年報』第35号 1〜74頁
 B―117の続編。第197首から216首までを収める。

121後陽成天皇時代の漢詩文―英甫永雄を例に―〔論文〕
 2024年1月 橋本政宣編『後陽成天皇』(宮帯出版社)376〜396頁
 牧庵という清原家出身の医師・文人の追悼法語等を取り上げ、安土桃山時代の文化のなかでの五山文学の役割を考える。
 →論文中に掲載した図版のキャプションが『倒痾集』となっていますが、『羽弓集』の誤りです。お詫びして訂正します。(2024.2.10)

122五山文学における水仙のイメージ〔論文〕
 2024年3月 『国語と国文学』第101巻第3号 特集「日本漢文」
 黄庭堅の詩など、水仙を題材にした中国詩文の影響下に詠まれた五山の水仙詩をいくつか取り上げて考察するもの。

123五山文学探究 資料と論考〔単著〕
 2024年5月 文学通信 A5判309頁
 収録順に、B−94、89、98、116、108、93、88+96、97、102、90、101、84、121、D−95、B−114、123、104、D−72、D−80、B−109を収める。

C.近世の漢文学(前中期京都詩壇を中心に)

1 太田玩鴎の詠物詩―一八世紀後半京都詩壇一斑―〔論文〕
 1991年7月 『国語と国文学』第68巻第7号 30〜44頁
 C―2において注釈を施した『玩鴎先生詠物百首』の作者太田玩鴎(1745〜1804)の伝記及び作品論である。京都出身の彼は、若くして江戸に下って修学し、帰郷して江村北海に師事、師友との交流を通じて詩人としての地位を固めていき、当時流行の詠物詩の名手として上 記の作品及びその続編を刊行する。新奇な題材を扱っている点がユニークであるが、そこには貧窮の中で詩人として大成しようとする苦悩が読み取れることを論 じた。

2 玩鴎先生詠物百首注解〔共著〕
 1991年10月 太平書屋 B6判344頁
(青木隆、杉下元明、杉田昌彦、鈴木健一、日原傳、堀口育男との共著)
 江戸時代中期京都の詩人太田玩鴎のユニークな詩集を注釈したもの。

3 江戸漢詩選第5巻 僧門〔共著〕
 1996年1月 岩波書店 B6判350頁
(末木文美士との共著)
 江戸時代の僧侶の中から、曹洞宗に属しながら来日した黄檗僧に影響を受けて宗派の改革を目指した独庵玄光、黄檗僧で あったものの自由な生き方を求めて還俗し煎茶道の開祖となった売茶翁、黄檗僧として中国語を学び荻生徂徠一派の学問に影響を与えた大潮元皓、臨済宗の僧で 学問研究にも大きな業績を残した大典顕常の4人の漢詩の注釈。

→中村真一郎『木村蒹葭堂のサロン』(新潮社、2000年)(大典詩の鑑賞を収める)

4 唐金梅所と李東郭〔論文〕
 1996年10月 『季刊日本思想史』第49号 17〜33頁
 近世中期、和泉国佐野の豪商唐金梅所(1675〜1738)は、文人・学者のパトロンとしても知られ、自らも詩作を嗜 んだ。特に正徳・享保の2度の朝鮮通信使の来日に際しては、伊藤仁斎の門人北村篤所や木下順庵の門人雨森芳洲を通じて彼らと詩文の応酬をするなど、国際交 流にも一役買った。そこには様々な思惑を越えて、漢詩文というアジアの共通語が人と人を結びつける有り様が見て取れる ことを論じた。

5 翻刻 唐金梅所『垂裕堂家訓』―付・序三篇―〔資料紹介〕
 1997年3月  『東海近世』 第8号 23〜35頁
 C―4で取り上げた唐金梅所の著作である表題の書を全文翻刻し、併せて三輪執斎・伊藤東涯・北村篤所の序文を紹介し た。また、現存あるいはかつて紹介された梅所宛書簡のリストを作成した。

→岩橋小彌太「新井白石の詩論」(『翰墨史話』1978、木耳社 初出1939)に、白石の詩論を窺わせるものとして、梅所宛白石書簡などが引かれ ていたことを見落としていました。(2001.9記)

6 太田玩鴎伝資料片々〔資料紹介〕
 1997年6月 『太平詩文』 第6号 1〜8頁
 C―1,2の補遺として、その後管見に入った資料を紹介、考察した。

7 近世漢詩への招待―『江戸漢詩選』に寄せて―〔書評・小論文〕
 1997年11月 『和漢比較文学』第19号  43〜50頁
 『江戸漢詩選』全5巻(岩波書店)の紹介をかねて、近世漢詩の注釈にまつわる問題点を指摘した。

→鈴木健一「〈近世〉和歌・漢詩」(全国大学国語国文学会編『日本語日本文学の新たな視座』おうふう、2006) に取り上げられました。

8 『春荘賞韻』解説〔資料紹介〕
 1998年1月 太平詩文 別冊1『春荘賞韻』43〜55頁
 18世紀後半京都で活躍した詩人端春荘(1732〜1790)のために諸家が寄せた詩文を、没後遺子や知友が刊行した もの。その 影印の解説として、春荘の伝記、作品及び底本の解題を執筆した。

9 『三体詩』受容に関するノート〔小論文〕
 1998年4月  『東海近世』 第9号 63〜66頁
 林家に始まる近世前期の『三体詩』受容について、いくつかの例を挙げて述べた。B―11の補足でもある。

10 良寛と漢詩文―詩の歓び〔小論文〕
 1998年6月 『国文学 解釈と教材の研究』第43巻第7号 12〜17頁
 良寛の漢詩について、『草堂詩集』のいくつかの詩を取り上げて、詩というスタイルに自己表現の歓びを見出していたこと を論じた。

11 『春荘賞韻』解説補訂〔資料紹介〕
 1998年7月  『太平詩文』 第10号 15〜17頁
 C―8の補遺と訂正。 

12 六如・竹窓詩箋〔資料紹介〕
 1999年3月  『太平詩文』 第12号 1〜6頁
 出光美術館蔵『如意道人蒐集書画帖』の分かれである江戸時代中後期の詩人六如と篆刻家森川竹窓の詩箋を紹介した。

13 蘇東坡と李節推〔小論文〕
 1999年5月  『東海近世』 第10号 87〜88頁
 近世前期に広まっていた蘇東坡と李節推の男色関係という俗説は、中世末から近世初頭における五山僧による東坡詩講義に 源泉があるのではないかと推定した。

→狩野一渓『後素集』(元和9年自跋)巻3・男色に「風水洞図」「李節推読書図」「節推練詩図」が載っています。蘇東坡との男色関係を前提にした画 題であり、近世初頭には絵画によっても広く知られていたことが分かります。(2001.10.1記)
→『国宝 大徳寺 聚光院の襖絵』(2003.10.31-12.14於東京国立博物館展覧会図録)に、17世紀成立と推定されている襖絵「東坡風水洞図 襖」が掲載されています。解説にはいくつかの作例が紹介されており、近世初期の流布ぶりが窺われます。(2003.12.9 記)

14 『論語参解』をめぐって〔論文〕
 2000年2月 『文莫』第23号 11〜33頁
 江戸後期の名古屋の学者鈴木朖が著した論語注釈書について、注釈という営為が持つ意味を考えた上で、漢学・国学の両者 の学識を融合させた学問性と一般を対象にした啓蒙性とを兼ね備えたものであることを論じた。

15 影印 鈴木朖筆『聖師録』〔資料紹介〕
 2000年2月 『文莫』第23号 35〜74頁
 丹羽嘉言編『福善斎画譜』中の一冊『聖師録』(『虞初新志』所収の同名書の抄出)を鈴木朖が筆写し、訓点・注記を加え たもの。解説を付した。

→中野三敏『書誌学談義 江戸の板本』(岩波書店、1995年)に、刷りの先後判別の例として『福善斎画譜』について記述あり。見落としていまし た。

16 入江若水伝資料一片〔資料紹介〕
 2000年4月  『太平詩文』 第16号 25〜26頁
 国立史料館所蔵の入江若水の詩稿(転写されたもの)を紹介し、京都移 住の時期を確定した。

17 高宮環中―宝暦明和前後における大坂の一文人―〔小論文〕
 2000年5月  『東海近世』 第11号 73〜82頁
 大坂の市井の儒医として活躍した表題の人物について、その著作と生涯を概観し、江村北海自筆識語のある著書『歳律環同韻』を紹介し、また俳業のあること を指摘した。

→俳業については相当の脱漏を白数了子氏に御指摘いただきました。いずれ補足したいと思います。
→『蕪村全集』6(一九九八、講談社)124頁、157「阮杖頭銭図」に七言絶句の賛あり。落款「蘆江一隠高環翁戯題」。
→神谷勝広「秋成『諸道聴耳世間狙』とモデル―南嶺から秋成へ」(飯倉洋一・木越治編『秋成文学の生成』森話社、2008)は、環中が『諸道…』巻5の2 の主人公高村宮内のモデルであることを指摘しています。(2008.3.23記)

18 『南海詩訣』の一異本〔小論文〕
 2001年5月  『東海近世』 第12号 76〜80頁
 祇園南海の著作には没後刊行された初学者向けの作詩作法書があるが、その一つ『南海詩訣』の異本たる写本『題詠捷吟 文場腐譚』を2本(架蔵本、国立国 会図書館本)紹介し、版本との主な異同を示した。

19草堂詩集〔概説〕
 2001年12月 『日本仏教の文献ガイド』(日本の仏教第2期第3巻 日本仏教研究会編 法蔵館)154〜157頁
 良寛の自撰詩集『草堂詩集』についての概略と研究史をまとめたもの。主に下田祐輔氏の研究に負っている。C―10より先に執筆し、その基礎となった。

20太田玩鴎伝資料片々追加〔小論文〕
 2002年1月 『太平詩文』 第23号 31〜32頁
 C―6の追加。国文学研究資料館所蔵(中村真一郎旧蔵)日本漢詩文コレクションを利用して、玩鴎関係の資料を二点紹介した。

21序跋・翻刻と訓読、書誌〔解説〕
 2003年10月 水田紀久解説『松江近体詩』(太平文庫51、太平書屋)259〜280、299〜306頁
 C―6で触れた『松江近体詩』(丹後久美浜の豪商小西松江の詩集。当時の京阪の大家がこぞって序跋や詩文を寄せている)の影印と解説。作者の生涯と作品 については水田紀久氏、久美浜の地誌などについては太平主人斎田作楽氏が筆を揮い、私は序跋の翻刻・訓読と、初版本・再版本(初版の修訂増補本)の書誌と 本文異同について担当した。

22〈蒹葭堂六秩賀〉森川竹窓詩箋〔資料紹介〕
 2004年2月 『蒹葭堂だより』第3号 3頁
 大坂の書家・篆刻家であり蒹葭堂の良き助手でもあった竹窓が、六十の賀に贈った自筆詩箋を紹介した。

→水田紀久「蒹葭堂の六十賀」(『蒹葭堂だより』第4号、2004年11月)「元旦試筆」(『混沌』第28号、2004年11月)は、還暦(61 歳)の誕生日である寛政8年11月28日にお祝いがあったのではないか、と推測する。

23購入古典籍略解題〔資料紹介〕
 2005年2月 『中・近世日本文学の基礎的知識体系に関する研究』(平成15年度〜16年度科学研究費補助金基盤研究(C−2)研究成果報告書、研究 代表者・入口敦志)68〜70頁
 上記科学研究費補助金によって購入、国文学研究資料館所蔵となった江戸前期の版本7点(一帆風、三綱行実、長恨歌抄、大梅夜話、童観抄、巵言抄、儒仙・ 武仙)について書誌を中心に解題を記したもの。

→『一帆風』については、二種の版があり、内容が異なること、宋詩の逸詩資料として貴重であることなどが、陳捷「日本人入宋僧南浦紹明与宋僧詩集 《一帆風》」(《中国典籍与文化論叢》第9輯、2007.4)に指摘されています(全文翻刻あり)。(2008.3.23記)

24『寛政名家手簡』翻刻と解題 第一回〔資料紹介〕
 2006年7月 『太平詩文』第34号 1〜12頁
 丹後久美浜(京都府京丹後市)の回船問屋五軒屋のひとつ木下家の当主子賤(公琴)宛の、六如・大原呑響らの書簡の翻刻。C―21に関して現地調査を行っ た際に地元の所有者に見せて頂いたもの。

25『寛政名家手簡』翻刻と解題 第二回〔資料紹介〕
 2006年12月 『太平詩文』第35号 9〜21頁
 C―24の続編。

26江戸漢詩瞥見/中村真一郎江戸漢詩文コレクション主要書目解説〔概説〕
 2007年1月 『中村真一郎江戸漢詩文コレクション』(人間文化研究機構国文学研究資料館普及・連携活動事業部編、同館刊)9〜24頁/25〜116 頁 (後者は鈴木一正、ロバート キャンベルとの共著)
 2003年5〜6月に同館において行われた特別展示および講演の資料をまとめたもの。

27『寛政名家手簡』翻刻と解題 第三回〔資料紹介〕
 2007年3月 『太平詩文』第36号 12〜25頁
 C―24の続編(最終回)。

28『寛政名家手簡』翻刻と解題 補遺―六如・観鵞のことなど―〔資料紹介〕
 2007年6月 『太平詩文』第37号 36〜40頁
 C―24・25・26の補遺として、六如の筆跡をいくつか集め、永田観鵞代筆のものがあるかどうか検証(明確にはわからない)、また柴野栗山による小西 伯煕関係の詩を紹介した。

29送別柴野栗山詩〔資料紹介〕
 2008年4月 『太平詩文』第40号 1〜2頁
 柴野栗山の江戸下向を送る合作の詩の紹介・解説。

30書評 中野三敏著『江戸狂者伝』〔書評〕
 2008年6月 『国語と国文学』第85巻第6号 78〜83頁
 標題の著作について、著者の意図を汲み取りながら、その文学・思想研究両面にわたる意義を強調し、細かな疑問点若干を述べた。

31評伝という文学 『頼山陽とその時代』〔紹介および評論〕
 2009年4月 『中村真一郎手帖』第4号 6〜13頁
 中村真一郎『頼山陽とその時代』の内容を紹介し、その研究書・評論・文学作品としての多面的な価値について述べた。

32大典と六如―二人の僧侶詩人―〔論文〕
 2009年7月 楠本六男編『江戸文学からの架橋―茶・書・美術・仏教―』429〜460頁
 約30年間にわたる大典と六如の交遊を、二人の詩を通して辿り、大典の豊富な知識を吸収した六如が、その個性に従って新しい詩風を花開かせたことを論じた。
→門脇むつみ「若冲と大典―『素絢石冊』、『玄圃瑤華』の画と詩―」(中野三敏監修・河野実編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』勉誠出版、2013)

33近世日本の漢文―小説・笑話・注釈・散文〔概説〕
 2010年9月 『日本学研究』(北京日本学研究中心)第20輯 221〜230頁
 2009年夏に北京日本学研究センターにおいて行った第4回漢学ワークショップの講義内容をまとめたもの。『剪燈新話』の翻案、『訳準開口新語』、『論 語徴』、大典の散文について紹介した。

34『太平唱和』の稿本『一酔余豪』について―開化風俗漢詩集2発刊に寄せて―〔資料紹介〕
 2011年2月 『太平詩文』第48号 11〜17頁
 架蔵の写本『一酔余豪』の紹介。表題の通り、明治八年刊『太平唱和』の稿本で、収録詩の出入りや、本文異同がある。

35第2章第5節 漢学関係書翰/解説〔資料紹介〕
 2012年3月 愛知県史編さん委員会編『愛知県史 資料編20 近世6学芸』(愛知県)535〜595、959〜963頁
 第1章を門人帳、第2章を書翰、第3章を書籍書画の流通という観点から資料を選定、翻刻し、人とモノの交流を浮き上がらせた本書のなかで、第2章第5節 の、一宮鷲津家有隣舎関係、苅安賀服部家所蔵森春濤関係その他漢学関係の書翰の翻刻・解説を担当した。

36〔諸儒要覧〕ほか〔資料紹介〕
 2012年3月(実際の刊行は2013年1月) 研究代表者・大谷俊太『二〇〇九〜二〇一一年度科学研究費補助金 基盤研究(B)研究成果報告書2〔資料・解題編〕 奈良古梅園所蔵資料の目録化と造墨事業をめぐる東アジア文化交流の研究』解題編1、10〜17、 19〜21頁
 江戸初期から中期にかけて、同所に伝来する臨済宗・林家・黄檗宗等の漢詩文関係書の解題。

37『十番詩合』について―狂詩史への定位― 付・本文と校異〔論文〕
 2012年4月 中野三敏・楠元六男編『江戸の漢文脈文化』(竹林舎)311〜333頁
 江戸前期成立と推定される表題の書の伝本(版本を含む)・本文・内容について分析したもの。和漢聯句に興じるような、公家・連歌師らの和・漢・雅・俗が 混淆した文化の中で生まれた作品と推定する。

→福井久蔵『諸大名の学術と文芸の研究』(厚生閣、1937、原書房、1976復刊)「第十一 諸侯と文学」の「漢文学 附狂詩合」(672頁)に、「牘 庫」の蔵書印(内藤風虎)のある家蔵本を用いた本作品についての言及があるのを見落としていました。なお同伝本は存否不明です。このことは竹沢直美「『セ イ(けものへん+禾+斤)犬集』とその周辺」(『愛知大学国文学』39、2000・1)によって知りました。(2012.6.8)
→藤井隆『中世古典の書誌学的研究 御伽草子編』(和泉書院)、1996)に、藤井氏架蔵本『十番狂詩合』の翻刻と解題が収められていることを見落としていました。藤井氏本は承応三年(1654)書写本で、氏は本文の成立を室町末から慶長頃までと推定されています。先行研究を見落としていたことをお詫びします。(2014.6.15)

38官版集部について〔論文〕
 2014年5月 『国語と国文学』第91巻第5号 140〜151頁
 江戸時代後期昌平坂学問所によって刊行された漢籍の和刻本である官版のうち、四部分類でいう集部(漢詩文集等)についてその書目から窺われる刊行の意図を、詩は流行の宋詩以外の唐詩その他幅広く選び、文は唐宋古文復興運動の流れにあるものを重点的に選んでいること、清朝の学芸、特に四庫全書に影響を受けていることなどを指摘した。
→文集については、評点本であることも選定の一理由であるかもしれない、ということを指摘し忘れていました。(2014.4.25)
→富嘉吟「官版『唐人選唐詩』底本考―兼ねて林家??藏の『唐人選唐詩』寫本に及ぶ―」(『學林』68、2019.5)が表題の書に関する拙稿の誤りを正しています。(2024.2.11)

→この時期の唐詩選本出版の概況については、堀川貴司「江戸時代における唐詩選本の出版について―十九世紀を中心として―」(台湾中央研究院歴史語言研究所主催、明清研究國際學術研討會、2023.12.13-15)において口頭発表しました。(2024.2.11)

39翻刻 堺半井家旧蔵資料〔資料紹介〕
 2014年8月 『夷参』第10号 15〜39頁
 江戸初期・前期の禅僧や茶人の書簡その他を張り継いだ個人蔵資料の翻刻と解説。

40慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(一)日吉図書館〔資料紹介〕
 2015年2月 『斯道文庫論集』第49輯 157〜166頁
 日吉図書館所蔵の荻生徂徠関係の書簡・筆跡類の紹介を行ったもの。

41韓国国立中央図書館所蔵の日本古典籍―善本解題 漢文学(日本人漢詩文)〔資料紹介〕
 2015年5月 大高洋司・陳捷編『日韓の書誌学と古典籍』(アジア遊学184、勉誠出版)
 科学研究費補助金を得て行われた韓国国立中央図書館所蔵日本古典籍の調査およびそれらを題材にした日韓共同研究の成果として刊行されたもの。第二部、善本解題33点のうち日本人の編纂著作になる漢詩文集3点を担当した。
 →194ページ上段13行目「共感」は「教官」の変換ミスです。(2015.5.4)

42学海印譜 影印と翻刻〔資料紹介〕
 2016年1月 『夷参』第13号 1〜40頁
 千代倉家所蔵の表題の書に収められた下里学海およびその周辺の所用印の影印と翻刻。ほぼ同内容の岩瀬文庫本も紹介する。

43慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(二)三田メディアセンター貴重書室(その一)〔資料紹介〕
 2016年2月 『斯道文庫論集』第50輯 161〜179頁
 C―40に続き、国分剛二旧蔵の書簡筆跡類を紹介した。

44僧侶詩人としての元政〔小論文〕
 2016年10月 隆盛寺(りゅうじょうじ)編『元政上人と隆盛寺』(『深草元政上人墨蹟』別冊、大神山隆盛寺)55〜57頁
 元政を、文学的には近世初期の典型的な僧侶知識人であったと位置づける。

45慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(三)三田メディアセンター貴重書室(その二)〔資料紹介〕
 2017年2月 『斯道文庫論集』第51輯 63〜105頁
 C―43に続き、古賀家旧蔵の書簡筆跡類を紹介した。

46書評 小財陽平著『菅茶山とその時代』〔書評〕
 2017年3月 『国文学研究』第181集 133〜135頁
 同書が菅茶山の草稿類に基づき、それまで明確に指摘されていなかった茶山詩の政治的性格を掘り起こしたことなど、著書の意義を述べた。

47伴蒿蹊宛六如書簡〔資料紹介〕
 2017年5月 『太平詩文』惜別号 11〜15頁
 内容豊富な六如書簡の翻刻及び略注。口絵に写真を載せる。

48羽倉可亭刻遊印一顆〔資料紹介・随想〕
 2018年11月 『太平余興』第3集59〜63頁
 「追悼 水田紀久先生」の特集に寄せたもの。架蔵印一顆の紹介と、水田氏との思い出を記す。

49林羅山と富士山─中世から近世へ─
 2019年3月 『山梨県立富士山世界遺産センター研究紀要 世界遺産富士山』第3集7〜14頁
 羅山が残した詩文から、羅山と富士山との関わり、特に江戸における富士山の表象の広がりについて述べる。

50文学資料としての書画─慶應義塾所蔵品を中心に─
 2019年8月 『和漢比較文学』第63号20〜27頁
 これまで翻刻を行ってきた慶應義塾所蔵資料を中心にして、書画作品の文学資料(テクスト)としての価値や、引首印・落款印の面白さなどについて述べる。2018年度和漢比較文学会大会公開討論会の内容をまとめたもの。
 →26頁注(3)の引首印「蔵名山/帰造化」について、「帰」はやはり「還」と読むのが正しく、江戸時代の篆刻家池永道雲(栄春)の『聯珠篆文』にそっくりの字形が載っていること、塩村耕氏よりご教示頂きました。(2020.4.12)

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100250413/viewer/65

51文人の書簡─交遊・教育・議論─
 2020年2月 『斯文』第135号 3〜19頁
 江戸時代の文人の書簡が果たした役割に注意しつつ、荻生徂徠ほかの書簡(主に候文のもの)を読み解く。2017年度名古屋大学国語国文学会春季大会シンポジウム「文学としての手紙」の内容を増補してまとめたもの。

52慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(四)三田メディアセンター貴重書室(その三)〔資料紹介〕
 2021年2月 『斯道文庫論集』第55輯 243〜396頁
 C―45に続き、古賀家旧蔵の書簡筆跡類および関連資料を紹介した。

53芳街新詞 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2021年12月 『太平餘興』第9集 27〜41頁
 安井息軒の女婿、小太郎の父である中村貞太郎の作と目される、吉原を詠んだ詩集の解題と翻刻。

54文人の書と書物 第34回慶應義塾図書館貴重書展示会図録〔資料紹介〕
 2022年10月 慶應義塾図書館 B5判120頁
 義塾図書館貴重書室の新井白石・荻生徂徠関係資料をはじめ、斯道文庫・日吉図書館・医学部図書館などからも関係資料を集め、鴎外・荷風の史伝に到る近世文人の作品や研究を通観する展示。高橋智氏のコラムを除き、概説・解説・翻刻等をすべて執筆したもの。

55斯道文庫所在林羅山自筆書簡筆跡類について〔資料紹介〕
 2022年12月 『藝文研究』123号第2分冊 1〜17頁
 斯道文庫所蔵または管理(センチュリー赤尾コレクション)下にある、林羅山の漢詩文筆跡類および書簡について、解説および翻刻を収める。

56慶應義塾所在近世文人書簡筆跡類総覧(五)三田メディアセンター貴重書室(その四)〔資料紹介〕
 2023年2月 『斯道文庫論集』第57輯 501〜520頁
 C―52に続き、C―54に掲載したもの(翻刻をかなり正している)や阿部隆一が『図書館月報』に紹介したものなどを掲載した。

57鎌倉懐古の詩〔小論文〕
 2023年9月『特別展 廃墟とイメージ―憧憬、復興、文化の生成の場としての廃墟―』(神奈川県立金沢文庫)101〜103頁
 服部南郭の鎌倉を詠んだ詩、亀谷省軒の金沢文庫を詠んだ詩を紹介、廃墟や失われたものへの懐古の表現を考察する。

58『与唐金興隆諸家手翰』翻刻と解題(編)〔資料紹介〕
 2023年11月 『近世文藝 研究と評論』第105号 1〜11頁
 唐金梅所宛書簡8通(新井白石・伊藤東涯・壺井義知・知空・佐々木晦山・松軒・貞松・松本重文)を巻子本に仕立てた架蔵資料の翻刻および略注。2023年度早稲田大学大学院の授業で読解したもので、参加者の調査に基づくものも含む。
 →掲載誌合評会において、5頁上段8行目「申候」→「迄」、10行目「節(?)」→「筑」・「申候」→「迄」、9頁下段8行目「いへるを」→「いへる心を」、10頁上段3行目「甲候」→「申候」という誤読訂正の御指摘を受けたことを池澤一郎氏より伝えられました。ありがとうございました。(2024.2.10)
 →この資料の第一通と同様、白石が梅所の詩を論評している書簡を、岩橋小彌太「新井白石の詩論」(『翰墨史話』木耳社、一九七八)が紹介しているのを見落としていました。(2024.4.14)

59唐様前夜 林羅山とそのコミュニティ センチュリー赤尾コレクションより〔図録執筆〕
 2024年1月 KeMCo Brochures 3(慶應義塾ミュージアムコモンズ編刊)
 2024年1月10日より2月9日まで行われた「KeMCo新春展 龍の翔る空き地」の特別企画として併催されたミニ展示の解説パンフレットの企画・執筆。林羅山およびその師藤原惺窩、同門の那波活所ら、子の鵞峰、孫の梅洞・鳳岡、友人の脇坂安元らの筆跡を一同に会したもの。
 →5頁「3林羅山筆元旦試毫」翻刻のうち「夕閏」は「有閏」の、13頁「16脇坂安元書簡」翻刻のうち「十六日」は「十三日」のそれぞれ誤りです。(2024.2.10)

60祇園南海作新井白石六十寿賀詩について〔論文〕
 2024年3月 佐々木孝浩他編『古典文学研究の対象と方法』(花鳥社)665〜682頁
 斯道文庫所蔵今関文庫にある祇園南海自筆詩幅について、詩集その他との本文異同を含めてその内容を考察したもの。

D.概説その他

1 訓読の歴史と漢文教育〔小論文〕
 1991年10月 『国語展望』第89号 36〜39頁
 訓読の歴史を概観し、現在の漢文教育の問題点を指摘した。

2 チェンバレン帝大教師時代の資料〔資料紹介〕
 1992年6月 『汲古』第21号 16〜22頁
 明治20年代に帝国大学和文学科で国語学を教えたB.H.チェンバレン(1850〜1935)に関する資料の紹介・翻刻。

3 中世の日本文学=作家と作品=〔概説〕
 1995年3月  放送大学教育振興会 久保田淳・島内裕子編 A5判196頁
 全15章の内「10五山文学」「11連歌」(105〜124頁)担当。概説と主要作品の鑑賞。同名の放送大学授業番組(ラジオ)のテキスト。

4 禅林の文学とその周辺〔論文・概説〕
 1996年11月 『岩波講座日本文学史第6巻15・16世紀の文学』159〜176頁
 五山文学を中心に、13世紀から16世紀までの日本漢文学を概観し、また特に『三体詩』と一休宗純を取り上げて、中世文学全体の中で漢文学の果たした役割について考察した。

5 影印 近世漢文選〔共編著〕
 1997年4月 和泉書院 A5判146頁
(杉下元明、鈴木健一との共編著)
 近世の漢詩文の中から、代表的な作品、興味深い作品を13選び、 影印により抄録して、大学における漢文学の授業のテキストに供するもの。

6 日本文学史〔概説〕
 1997年5月  おうふう 久保田淳編 A5判423頁
 全30章の内「中古 第2章 漢詩文」(78〜84頁)「中世 第2章 漢詩文」(143〜148頁)担当。大学向けのテキスト。

7 日本古典文学研究史大事典〔項目執筆〕
 1997年11月 勉誠社 西沢正史・徳田武編 A5判1262頁
 「平安の漢文学」「五山文学」など全10項目を担当。(辞典等の項目執筆は原則としてこの一覧に掲げていないが、これは例外)

8 平成九年(自1月〜至12月)国語国文学界の展望(T)〔中世〕仏教文学(漢詩文を含む)〔学界展望〕
 1998年9月 『文学・語学』第160号 84〜85頁

9 漢学・国学・国文学〔概説〕
 1999年7月 『平成10年度愛知県立大学公開講座 日本の文化と生活 実施報告書』
 全6回の公開講座のうち1回を担当し、その内容を活字化したもの。日本における人文系学問の歴史を漢学・国学を中心に 概観し、国文学のあり方を考えた。

10 桃李モノイハザレドモ……〔小論文〕
 2000年2月 『国語通信』 第356号 15〜17頁
 「桃李不言、下自成蹊」という中国の格言について、その訓み方を中心に日本における受容について述べた。

11大陸文化の発信地〔概説〕
 2001年2月 『週刊朝日百科 世界の文学』82 新古今和歌集、新撰菟玖波集ほか 58〜61頁
 中世禅林の文学についての概説。図版多数。

12「かたち」と「こころ」覚書〔小論文〕
 2001年2月 『国語通信』第360号 12〜15頁
 句題詩の詠法は、漢詩文が平安時代の朝廷の儀礼的文化に組み込まれていたことに対応していることを指摘したうえで、『徒然草』48段および『なぐさみ草』のその段についての注釈を引き、句題詩を儀礼における「かたち」と「こころ」の問題一般として論じた。

→『徒然草』『なぐさみ草』の記述は「大行は細瑾を顧みず」の例ではないか、との指摘を塩村耕氏にいただきました。なお考えたいと思います。

13瀟湘八景 詩歌と絵画に見る日本化の様相〔著書〕(原典講読セミナー8)
 2002年5月 臨川書店 四六判226頁
 国文学研究資料館において毎年夏に行われるセミナーの講義録(ただし内容は大幅に書き直している)。鎌倉後期から江戸後期まで、詩歌を中心に、日本漢文学研究の立場から瀟湘八景の受容および「○○八景」の生成を考察したもの。

→木村八重子「名数と江戸の文芸」(『金城国文』第78号、2002.3)は、浮世絵や歌舞伎などに見られる「○○八景」を紹介し、青本『初夢福人八景』を翻刻・加注しています。(山下則子氏御教示)(2002.6.11記)

→川平ひとし・大伏春美編『影印本 鴫の羽掻』(2004、新典社)は、近世における名数和歌集成について論じています。(2006.1.7記)

→板倉聖哲「探幽縮図から見た東アジア絵画史―瀟湘八景を例に―」(佐藤康宏編『講座日本美術史3 図像の意味』東京大学出版会、2005年)は、 狩野探幽が中国・朝鮮・日本全体を視野に入れた様々な画風を取捨選択して近世の規範を形成していく様子を瀟湘八景を例に述べています。 (2006.7,26記)

→橋本草子「慶応義塾大学斯道文庫蔵写本「廿四孝詩」について(京都女子大学『人文論叢』第56号、2008.1

→橋本雄「室町日本の対外観―室町殿の「内なるアジア」を考える―」(『歴史評論』第697号、2008.5)において、足利義持時代の文化の「国風化」に関連して本書の記述が取り上げられています。

→鍛冶宏介「近江八景詩歌の誕生」(『国語国文』第81巻第2号、2012.2)は、近江八景歌の近衛信尹説を裏付ける信頼できる資料を提示し、また不明だった近江八景詩の作者を京都円光寺の禅僧、玉質宗樸と特定しています。(2012.4.2記)

14(書評)石川忠久著『日本人の漢詩 風雅の過去へ』〔書評〕
 2003年4月18日 『週刊読書人』第2483号 5頁
 日本漢詩についての平易な入門書であるが、研究と実作両面にかかわる著者の蘊蓄が見られること、中国漢詩にはない題材や感性に著者が日本漢詩の独自性を見ること、などを述べた。

15瀟湘八景―詩歌と絵画の交響―〔小論文〕
 2004年2月 『歌を描く 絵を詠む 和歌と日本美術』(サントリー美術館企画展図録)30〜31頁
 瀟湘八景の受容に関する概観。

16王朝の漢文学、禅林の文学、近世の漢文学〔概説〕
 2004年3月 野山嘉正・林達也編『新訂 国文学入門』(放送大学教育振興会)107〜136頁
 放送大学の番組のための印刷教材。全15章のうち3章を担当。

17ハーヴァード大学の漢詩文ワークショップ〔随想〕
 2004年7月 『鶴見大学報』第309号 20頁
 本年5月に行ったハーヴァード大学における研究発表会 "New Approaches to Early Japanese Textuality: Boundaries, Genres and Contexts of Sino-Japanese Literature [kanshibun]" についての報告。

18二都訪書記〔随想〕
 2004年9月 『鶴見日本文学会報』第55号 1頁
 本年夏に行った建仁寺両足院と北京(中国国家図書館・北京大学図書館)の調査について述べたもの。

19《資料紹介》杵築市立図書館梅園文庫蔵『古今和歌集』他表紙裏資料〔資料紹介〕
 2005年1月 『書籍文化史』第6集 1〜10頁
 表題の書およびそれと一具の勅撰和歌集写本計6点の表紙裏にある、表紙屋の掛取帳の反古を翻刻した。

20翻刻 魚説経・鳥説経〔資料紹介〕
 2005年6月(実際は2006年9月出来) 『古典資料研究』第11号 1〜4頁
架蔵『状詩帖』所収の表記の狂言2曲の翻刻。

21懐古詩歌帖 翻刻と解題〔資料紹介〕
 2005年10月 松尾葦江編『海王宮―壇之浦と平家物語』(三弥井書店)53〜88頁
 赤間神宮旧蔵(戦災で焼失、写しが東京大学史料編纂所にある)の同書の翻刻と解題。室町後期から江戸中期に至る禅僧や文人が残した安徳天皇追悼の詩歌短 冊を集成したもので、資料価値が高い。

22Dictionnaire des Sources du Japon Classique/Dictionary of Sources of Classical Japan, Joan piggot, et al, ed., Collège de France Institut des Hautes Études Japonaises, Paris, 2006.1 576p〔辞典〕(共編)
 欧米の研究者が分担執筆した古代日本文献辞典。東京大学史料編纂所と国文学研究資料館が協力し、すでに史料編纂所ホームページから電子
版が公開されてい るものの活字化である。共編者として項目選定や記述の方法、一部の内容についてアドバイスをした。

23瀟湘八景図と和歌〔論文〕
 2006年2月 浅田徹・勝原晴希・鈴木健一・花部英雄・渡部泰明編『和歌の図像学』(和歌をひらく 第3巻、岩波書店)161〜182頁
 D―12の拙著であまり触れられなかった、中世和歌における瀟湘八景の受容を概観し、近世版本における和歌と挿絵の関係について述べる。

24日本漢文学研究の国際化〔随想〕
 2006年3月 『国際コラボレーションによる日本文学研究資料の組織化と発信』(2001年度〜2005年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究 (S)研究成果報告書 研究代表者・安永尚志)77〜84頁
 海外における日本漢文学研究への関心を示す事象について、自らが関わったプロジェクト等を中心に述べる。

25瀟湘八景 詩歌与絵画中展現的日本化形態〔著書〕
 2006年4月 岳麓書社(中国・湖南省長沙市) 冉毅・訳 239頁
 D―12の中国語訳。訳者は湖南師範大学教授。訳者による訳序(瀟湘という土地とそれを読んだ詩、描いた絵画などの紹介など)を付す。

26中世の漢文学─『和漢朗詠集』と『錦繍段』を手がかりに─〔論文〕
 2006年8月 『東アジア比較文学研究』第5号 43〜55頁
 『平家物語』における『和漢朗詠集』の受容、林羅山における『錦繍段』の受容を取り上げて論じた。(2019.9.23脱落に気づき補入した)

27詩のかたち・詩のこころ―中世日本漢文学研究―〔著書〕
 2006年11月 若草書房 428頁
 A―1・4・6・7・9・10、B―1〜6・8・9・11〜16・19・20・23・24、D―4・13を適宜組み合わせ、修正加筆した上で時代順に配列したもの。
目次詳細はこちら

→書評して頂きました。ありがとうございました。
 中本大氏(『国文学 解釈と教材の研究』第52巻第4号 2007年4月 39頁)
 本間洋一氏(『国語と国文学』第84巻第8号 2007年8月 72〜76頁)
 朝倉尚氏(『和漢比較文学』第39号 2007年8月 53〜63頁)
 黒田彰氏(『日本文学』第56巻第9号 2007年9月 78〜79頁)

28十年一昔〔随想〕
 2006年12月 日本古典文学会々報別冊『日本古典 文学会の歩み』(日本古典文学会)64頁
 日本古典文学会賞受賞の思い出とその後の研究について記す。

29唐名あれこれ〔小論文〕
 2007年1月 『日本歴史』第704号 24〜25頁
 官職その他の中国風呼称である「唐名」について、中古から近世に至る様相を略述する。

30王朝の漢文学、禅林の文学、近世の漢文学〔概説〕
 2008年3月 林達也編『国文学入門―日本文学の流れ―』(放送大学教育振興会)107〜136頁
 放送大学の番組のための印刷教材。全15章のうち3章を担当。D―16の改訂版。

31今古残葉集 第六十冊所収「垂裕堂家訓」〔随想〕
 2008年4月 西尾市岩瀬文庫編・刊『創立一〇〇周年記念特別展 岩瀬文庫の一〇〇点』32頁
 C―5を執筆した頃の回想を含めて、標題の書物について一般向けに解説したもの。

32日本古典籍の書誌学的アプローチ〔概説〕
 2008年11月 『情報知識学会誌』第18巻第4号 344〜351頁
 同学会創立20周年記念 第13回情報知識学フォーラム「情報知識の形式と表現」(2008.11.29 鶴見大学記念館)での発表内容を原稿にしたも の。国文学研究資料館の古典籍調査・収集活動を概観した上で、近年西尾市岩瀬文庫で行われている新しい書誌調査の内容を紹介し、今後の古典籍書誌学のあり 方を考えた。

33日本史研究への期待と要望〔随想〕
 2009年1月 『日本歴史』第728号 75〜77頁
 新年特集「日本史研究に望むこと」への寄稿。啓蒙的著作、構想・史観のある論、文学研究との差異について述べた。

34《座談会》日本漢詩のエートス(後藤昭雄・佐藤道生・池澤一郎・鈴木健一〈司会〉との共著)
 2009年5月 『文学』隔月刊第10巻第3号 2〜40頁
 古代・中世・近世にわたって日本文学史の一角を担ってきた漢詩の歴史を、具体的な作品を読みながら辿っていく。

35『海外見聞集』(新日本古典文学大系 明治編5)
 2009年6月 岩波書店 714頁
 幕末明治に欧米や中国(清国)に出かけた知識人が残した旅行記・滞在記の注釈。全6作品のうち成島柳北「航西日乗」を杉下元明・日原傳・鈴木健一ととも に担当(注釈251-281頁、解説647-8・651-2頁)。

36慶應義塾図書館蔵 日本漢学関係書籍解題(佐藤道生との共著)〔資料紹介〕
 2009年10月 佐藤道生編『慶應義塾図書館の蔵書』(平成20年度極東証券寄附口座 文献学の世界)(慶應義塾大学文学部、非売品)61〜69頁
 オムニバス授業の1回分を担当し、そこで紹介した『〔二十四孝之詩鈔・瀟湘八景詩鈔〕』について解題を行った。D―14にも紹介している。

37書誌学入門 古典籍を見る・知る・読む〔単著〕
 2010年3月 勉誠出版 274頁
 鶴見大学における書誌学・図書館学関係の講義・演習での資料をもとに執筆した、日本古典籍に関する書誌学の入門書。
訂正・注記 コー ナーを設けました。(2010.4.27新ページに移行)
→『日本古書通信』970号(2010年5月)46頁「受贈書目」欄にて紹介して頂きました。
→『国文目白』第50号(2011年2月)102〜103頁にて紹介(曾和由記子氏)して頂きました。

38書誌学用語の難しさ〔随想〕
 2010年5月 『勉誠メールマガジン』 No.21 2〜3頁
 上記『書誌学入門 古典籍を見る・知る・読む』の宣伝を兼ねて、用語を的確に定めることの難しさについて述べた。

39中国で出版された日本の動植物図鑑〔随想〕
 2010年11月 『日本古書通信』976号 13頁
 「斯道文庫開設50年記念書誌学展について」という特集記事で、展示書の紹介をしたもの。『毛詩品物図攷』の中国における翻刻本を取り上げた。

40頼三樹三郎書簡ほか―幕末期書物流通関係資料若干―〔資料紹介〕
 2011年1月 『書籍文化史』12 9〜14頁
 高知県佐川町立青山文庫所蔵の頼三樹三郎書簡、著者架蔵の藤屋禹三郎書簡3通、津金元格書簡2通の翻刻紹介。いずれも書物の出版や流通に関わる内容のも の。

41江戸時代初期出版年表〔天正十九年〜明暦四年〕 〔共編・担当部分抽出不可能〕
 2011年2月 勉誠出版 706頁 岡雅彦・市古夏生・大橋正叔・岡本勝・落合博志・雲英末雄・鈴木俊幸・柳沢昌紀・和田恭幸との共編
 刊記のあるもの、識語その他からこの時期の刊行と知られるものを集成、年代順に刊記(刊語)をすべて翻刻し、所蔵等のデータを付したもの。口絵カラー図 版32頁あり。書名・版元名索引を付す。

42「書誌学展」を終えて―慶応義塾大学附属研究所斯道文庫開設五十年
 2011年4月 『アジア遊学』140 166〜169頁
 2010年11月から12月にかけて行われた表題の展示および講演会について振り返る。

43和漢(第三部 キーワードによる通覧 の第三章)
 2011年8月 鈴木健一(すずき・けんいち)・鈴木宏子(すずき・ひろこ)編『和歌史を学ぶ人のために』世界思想社 272〜289頁
 上代から近代までの和歌史の流れを概観する入門書のなかで、漢詩との関係を辿る章を担当。句題和歌・詩歌合などについて述べた。
→訂正 277頁4行目「高遠」のふりがなが「たかとう」になっているが、正しくは「たかと」。
→訂正 286頁2行目『文明易然集』の説明で「中国故事中の人物名を和歌に」とあるのは、正しくは「中国故事中の人名・地名を和歌に」

44書評 金文京著『漢文と東アジア―訓読の文化圏』〔書評〕
 2011年8月 『和漢比較文学』第47号 86〜93頁
 著書の内容の紹介と、若干の問題点(訓読の変化に思想的背景を見ること、訓読の多様性と文体・享受者の関係など)について、日本漢文学研究の課題として 指摘した。

45書評 齋藤文俊著『漢文訓読と近代日本語の形成』〔書評〕
 2011年11月 『名古屋大学国語国文学』第104号 135〜142頁
 著書の内容を、近世の漢文訓読の変遷と、近代日本語への影響との二つの方面に分けて整理し、今後の課題として、室町時代の漢文訓読の実態、一斎点の成立 過程などの解明を指摘した。

46はじめに/回顧と展望 中世編 (和漢比較文学会第三十回記念大会シンポジウム―回顧と展望―)〔学界展望〕
 2012年2月 『和漢比較文学』第48号 1〜3頁、26〜31頁
 表題のシンポジウムにおいて、司会者および中世部分の報告者として、研究の回顧と展望を行ったもの。

47中国発祥の“元祖八景”から派生した日本の八景〔随想〕
 2012年3月 『ジパング倶楽部』第28巻第4号(2012年4月号) 18〜18頁
 「天晴れ八景!」という特集の巻頭エッセイとして、瀟湘八景とそこから派生した日本の八景について、その歴史や特徴を概観した。

48書評 大澤顕浩編著『東アジア書誌学への招待』第一巻・第二巻〔書評〕
 2012年3月30日 『週刊読書人』第2933号 8〜8頁
 表題の書の多様な内容を紹介し、大学所蔵漢籍の研究・教育への利用のモデルケースとして推奨した。

49張伯偉著『作爲方法的漢文化圏』〔書評〕
 2012年4月(実際の発行は2013年6月) 『中国文学報』第82冊 167〜174頁
 日本や高麗・朝鮮における漢文学を広く見渡して資料の発掘やイメージの異同の考察などを行った著作の内容を紹介し、日本における関連研究を挙げつつその意義を論じた。

50まず日本を知るために〔随想〕
 2012年5月 『アジア遊学』第150号 アジアの〈教養〉を考える 学問のためのブックガイド 152〜156頁
 特集テーマに応じて、宮本常一『忘れられた日本人』、杉本秀太郎『洛中生息』、金文京『漢文と東アジア―訓読の文化圏』を紹介した。

512012年上半期の収穫から〔随想〕
 2012年7月27日 『週刊読書人』第2949号 6〜6頁
 2012年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の145、153、155を取り上げた。

52蒼海に交わされる詩文(東アジア海域叢書第13巻)〔浅見洋二氏と共編〕
 2012年10月 汲古書院 368頁
 「寧波プロジェクト」の成果として、中世から近代にかけて、日本・中国・朝鮮の文人・学者の交流や、それによって日本にもたらされた漢詩文の流布につい てなど、文学を通した文化交流をテーマとする論考10本を収める。編者による序説(プロジェクトの経緯、所収論文の解題など)を冒頭に収める。

53書誌学入門―形態から見た書物の歴史―〔講演記録〕
 2012年11月 『新しい漢字漢文教育』第55号 9〜23頁
 日本の古典籍について、判型と装訂から見た書物の歴史やその特徴について、実物を用いて説明する。2012年7月14日に湯島聖堂において行った全国漢 文教育学会講演会の内容をまとめたもの。

54為長ほか〔項目執筆〕
 2013年4月 『和歌文学大辞典』(オンライン版、株式会社古典ライブラリー「日本文学Web図書館」内http://kjsystems.sakura.ne.jp/kotenlibrary/
 為長、教家、元久詩歌合、玄恵、道嗣、直義、玄恵法印追善詩歌、雄長老、武田氏、等持院殿御集、畠山匠作亭詩歌、文明易然集、詩歌合(文明十四年)、詩歌合(文明十五年)、八景類聚、二十四孝詩歌、沢庵、沢庵和尚歌集、東海和歌集、羅山、本朝各国名所詩歌集、秀賢、拙斎、元淡、東洞翁遺草、草廬和歌集、 公美、東洞、瀟湘八景歌、十五番詩歌合、畠山切の各項目を執筆した。

55古い読書ノートから〔エッセイ〕
 2013年6月 『リポート笠間』第54号 5〜7頁
 中学から大学院にかけて着けていた読書ノートを用いて、これまでの読書体験を振り返る。

562013年上半期の収穫から〔随想〕
 2013年7月26日 『週刊読書人』第2999号 6〜6頁
 2013年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の202、205、218を取り上げた。

57宋代文学研究への水先案内人〔書評〕
 2013年8月 『東方』390号 25〜27頁
 筧文生・野村鮎子『四庫提要宋代総集研究』(汲古書院、2013)の内容を紹介し、日本漢文学研究との関わりをいくつか指摘したもの。

58漢籍から見る日本の古典籍―版本を中心に―〔講演録〕
 2014年3月 『調査研究報告』第34号 13〜23頁
 国文学研究資料館調査員会議において講演した内容を活字化したもの。日本の古典籍を漢籍との比較において見るとどうなのか、分類・構成・文字などいくつかの点について述べた。

592014年上半期の収穫から〔随想〕
 2014年7月25日 『週刊読書人』第3049号 6〜6頁
 2014年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の255、256、265を取り上げた。

60〔学界時評〕日本漢文学2011-2014.7〔学界時評〕
 2014年11月 『リポート笠間』第57号 87〜94頁
 約三年半のあいだに発表された日本漢文学関係の書籍・論文について概観したもの。漢籍受容および漢文学作品を主たる対象とした研究について取り上げた。笠間書院のホームページでも閲覧できる。→http://kasamashoin.jp/2014/10/201120147.html

61元久詩歌合、沢庵ほか〔項目執筆〕
 2014年12月 和歌文学大辞典編集委員会編『和歌文学大辞典』(古典ライブラリー)
 元久詩歌合、沢庵、武田氏、直義、公美、玄恵追善詩歌、詩歌合(文明十四年)、詩歌合(文明十五年)、瀟湘八景歌、等持院殿御集、教家、畠山匠作亭詩歌、文明易然集、道嗣、雄長老、羅山、元淡、拙斎、草廬和歌集、沢庵和尚歌集、為長、東海和歌集、東洞、東洞翁遺草、二十四孝詩歌、畠山切、八景類聚、秀賢、本朝各国名所詩歌集の31項目。

62歴史と漢籍―輸入、書写、和刻〔概説〕
 2015年5月 鈴木俊幸編『書籍の宇宙 広がりと体系』(シリーズ本の文化史2、平凡社)
 古代から現代に至る、日本における漢籍の輸入、書写、出版について概観したもの。

63讀張伯偉《作爲方法的漢文化圏》〔書評〕
 2015年5月 《域外漢籍研究集刊》第11輯 421〜427頁(中国語、曹逸梅訳)
 48の中国語訳。

642015年上半期の収穫から〔随想〕
 2015年7月24日 『週刊読書人』第3099号 5〜5頁
 2015年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の299、305、306を取り上げた。

65清原家の官・学・遊〔座談会〕(佐藤道生、佐々木孝浩と)
 2015年11月 『書物学』第6号 書が語る日本文化(勉誠出版)42〜58頁
 2015年6月に行われた同名の展覧会の意図と内容についての座談会の前半に、当日配布した図録の文章も併載する。

66清原家の官・学・遊(続)〔座談会〕(佐藤道生、佐々木孝浩と)
 2016年3月 『書物学』第7号 医書の世界(勉誠出版)24〜33頁
 2015年6月に行われた同名の展覧会の意図と内容についての座談会の後半に、当日配布した図録の文章も併載する。

672016年上半期の収穫から〔随想〕
 2016年7月22日 『週刊読書人』第3149号 4〜4頁
 2016年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の325、326、340を取り上げた。

68岩瀬文庫から図書館を考える〔座談会〕(逸村裕、樽見博、塩村耕と)
 2016年12月 塩村耕編『三河に岩瀬文庫あり 図書館の原点を考える』(風媒社)45〜56頁
 岩瀬文庫を手がかりに、近代図書館の歴史と現状、書店・古書店、学問のあり方など、多方面にわたる問題点の指摘を行った。

69富樫広蔭・広厚書簡について〔資料紹介〕
 2017年3月 『愛知県立大学文字文化財研究所紀要』第3号 3〜24頁
 愛知県立大学長久手キャンパス図書館所蔵の富樫広蔭・広厚父子の書簡集『師老翁書翰』『広厚大人書翰』を翻刻、簡単な解題を付した。

70瀟湘八景の受容と変容〔概説〕
 2017年3月 『第38回特別展 土浦八景─よみがえる情景へのまなざし』(土浦市立博物館)106〜111頁
 江戸時代に制定された土浦周辺の八景を紹介する展覧会の図録のために、瀟湘八景の日本における受容、特に江戸時代における多様なあり方をこれまでの著書論文および近年の研究をふまえて概説した。

71瀟湘八景在日本的受容与流変〔概説〕
 2017年3月 《湖南科技学院学報》第38巻第3期 16〜19頁
 図版を交え、瀟湘八景を日本の土地に当てはめた中世・近世の八景を紹介した。

72上村観光来簡集『交遊帖』解題と翻刻〔資料紹介〕
 2017年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第12号 161〜181頁(インターネットでのPDF公開のみ)
 『五山文学全集』編者として知られる、近代における五山文学研究の開拓者、上村観光に寄せられた書簡をおそらく観光自身が巻子本に仕立てたと思われる表記の資料の翻刻。差出人は、近重真澄、松本文三郎、荻野仲三郎、林泰輔、瀧精一、鳥居素川、結城素明、藤井乙男、和田万吉、幸田成友、辻善之助、黒板勝美、島文次郎(他不明一名)。
 →このうち、近重・松本・荻野・藤井・和田・黒板は、観光著『五山詩僧伝』(大正元年刊)に序跋を寄せている。(2018.9.29)

73五山詩僧、大燈国師〔項目執筆〕
 2017年5月 小森陽一他編『漱石辞典』(翰林書房)677頁、682頁
 漱石との関わりについて、作品・書簡・蔵書から略説したもの。

74渡来文人〔概説〕
 2017年6月 河野貴美子他編『日本「文」学史 第二冊 「文」と人びと─継承と断絶』(勉誠出版)第一部第一章 75〜86頁
 古代から近代(明治)に至る、日本に渡りさまざまな文化をもたらし記録した人びとの活動を概観する。

75蔵書印について〔講演〕
 2017年6月 『杏雨』第20号 63〜87頁
 蔵書印を調査することで伝本研究、蔵書史など、書物をめぐるさまざまな文化事象の研究に役立つことを述べ、さまざまな蔵書印を紹介する。

762017年上半期の収穫から〔随想〕
 2017年7月21日 『週刊読書人』第3199号 1〜1頁
 2017年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の365、368、378を取り上げた。

77斯道文庫のこれまでとこれから〔随想〕
 2017年10月 『三田評論』平成29年10月号(通巻1215号)
 特集「日本学のグローバル展開」に関連して、斯道文庫のこれまでの活動および国際化に関わる現在および将来の活動について述べたもの。

78新収資料一覧(編)〔目録〕
 2018年2月 『斯道文庫論集』第52輯 115〜198頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2017年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。

79集古筆翰(編集協力および約60項目執筆)
 2018年3月 長谷川強・岡崎久司責任編集『集古筆翰』(大東急記念文庫善本叢刊中古中世篇別巻4)
 中世近世の公家・武家・詩人・歌人・俳諧師・僧侶等の筆跡を集成したもの。影印と翻字・解説の二分冊。

80森大狂来簡集『列岳名匠尺牘』 解題と翻刻〔資料紹介〕
 2018年3月 『花園大学国際禅学研究所論叢』第13号 143〜156頁
 大正2年成簣堂叢書の一冊として刊行された『白隠和尚垂示』寄贈礼状を巻子本に仕立てたもので、当時の臨済宗の中心人物11人からの書簡・葉書を収める。

81疑問形と反語形はどう区別するか?〔項目執筆〕
 2018年5月 鈴木健一編『漢文のルール』(笠間書院)97〜109頁
 漢文の読解の初歩を教える本のなかで、疑問と反語の部分を担当した。

822018年上半期の収穫から〔随想〕
 2018年7月27日 『週刊読書人』第3249号 4〜4頁
 2018年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の388、393、および斎藤夏来『五山僧がつなぐ列島史』を取り上げた。

83解説〔解説〕
 2018年8月 前野直彬『精講 漢文』(ちくま学芸文庫マ39-2、筑摩書房)645〜653頁
 高校生向け受験参考書として執筆された同書の内容と工夫について述べたもの。

84新収資料一覧(その二)(編)〔目録〕
 2019年2月 『斯道文庫論集』第53輯 297〜369頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2018年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。

85斯道文庫 研究所と文庫の両立をめざして〔随想〕
 2019年7月 『書物学』第16巻 34〜38頁
 「特殊文庫をひらく 古典籍がつなぐ過去と未来」という特集号において、五文庫(大東急記念文庫・東洋文庫・金沢文庫・静嘉堂文庫と)連携展示の紹介を兼ねて、文庫の歴史と現状を記した。

862019年上半期の収穫から〔随想〕
 2019年7月26日 『週刊読書人』第3299号 1〜1頁
 2019年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の419、435、および池田寿『日本の文化財 守り、伝えていくための理論と実践』を取り上げた。

87和漢混淆文をどう見るか〔随想〕
 2020年1月 『武者の世が始まる 軍記物語講座第一巻』しおり10〜12頁
 最近発表された山本真吾氏の論文に基づき、和漢混淆文の形成における俗語が果たした役割について考えたもの。

88新収資料一覧(その三)(編)〔目録〕
 2020年2月 『斯道文庫論集』第54輯 121〜176頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2019年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。

89モノと知識の集散─十六世紀から十七世紀へ〔小論文〕
 2020年3月 『アジア遊学』246和漢のコードと自然表象 十六、十七世紀の日本を中心に96〜100頁
 室町将軍家および五山において培われてきた文化が、モノと知識の分散と再集合、新たな明代文化の流入や出版活動の普及などを通じて近世文化を用意したさまを略述する。

90両足院の蔵書について〔随想〕
 2020年4月 『禅文化』第256号(特集 建仁寺両足院とその文物) 23〜30頁
 これまでの調査を踏まえて、蔵書全体の構成と貴重書を中心とするその特徴を概観した。

912020年上半期の収穫から〔随想〕
 2020年7月24日 『週刊読書人』第3349号 6〜6頁
 2020年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読2の457・458、および多田蔵人編『荷風追想』(岩波文庫)を取り上げた。

92【貴重書紹介】駿河版『大蔵一覧集』―日本初の金属活字出版物―〔資料紹介〕
 2020年10月 『MediaNet』第27号 62〜63頁
 図書館で購入した紀州徳川家旧蔵の表記の書について、その概要を報告したもの。

93脇坂安元旧蔵書について―『〔公任家集〕』を例に―〔論文〕
 2020年11月 浅田徹他編『和歌史の中世から近世へ』(花鳥社)329〜344頁
 斯道文庫蔵脇坂安元旧蔵『〔公任家集〕』の本文を、先行研究を踏まえて考察、現存伝本の始発に位置する可能性があると分析、近世初頭における書物(写本)の発掘と流通を考える上で脇坂本が重要であることを指摘した。

94新収資料一覧(その四)(編)〔目録〕
 2021年2月 『斯道文庫論集』第55輯 397〜413頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2020年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。

95A Japanese Commentary History of Jianghu fengyue ji: From Medieval to Early-Modern〔論文〕(Translated by Jeffrey KNOTT)DOI : 10.7221/sjlc04.079.0
 2021年3月Studies in Japanese Literature and Culture Volume 4: INTERACTION OF KNOWLEDGE 2021 79-93頁(国文学研究資料館刊行オンラインジャーナル)
 『江湖風月集略註』の近世版本およびその後続作等を概観し、『江湖風月集略註鈔』には中世の他の抄物の引用が含まれていることにより、『略註』以外の中世の知を近世に伝える役割を果たしたことを述べる。

96 2021年上半期の収穫から〔随想〕
 2021年7月23日 『週刊読書人』第3399号 1〜1頁
 2021年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読の481・491、487、および『観世文庫所蔵能楽資料解題目録』を取り上げた。

97新収資料一覧(その五)(編)〔目録〕
 2022年2月 『斯道文庫論集』第56輯 531〜559頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2021年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。安井小太郎旧蔵資料を多く含む。

98 2022年上半期の収穫から〔随想〕
 2022年7月22日 『週刊読書人』第3449号 6〜6頁
 2022年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読の512・519・520を取り上げた。

99新収資料一覧(その六)(編)〔目録〕
 2023年2月 『斯道文庫論集』第57輯 521〜543頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2022年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。安井小太郎旧蔵資料の残りなど。

100詩のかたち・詩のこころ―中世日本漢文学研究―【補訂版】〔著書〕
 2023年5月 若草書房 448頁
 27の補訂版。目次はこちら

101 2023年上半期の収穫から〔随想〕
 2023年7月28日 『週刊読書人』第3499号 1〜1頁
 2023年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読の538・545および原田正俊氏著を取り上げた。

102新収資料一覧(その七)(編)〔目録〕
 2024年2月 『斯道文庫論集』第58輯 271〜293頁
 購入・寄贈・寄託によって斯道文庫が所管する、2023年に整理を終えた古典籍およびその関連資料の一覧。塾員の安井昭夫氏からの寄贈本など。

103斯道文庫受贈佐藤一郎旧蔵書目録〔目録〕
 2024年2月 『慶應義塾中国文学会報』」第8号 107〜130頁
 慶應義塾大学文学部中国文学専攻の教員で、近年逝去された佐藤一郎氏旧蔵書のうち、斯道文庫にご遺族から寄贈された唐本・和本の目録。清刊本の詩文集中心。

104漢籍の出版〔近世〕、鎌倉・室町時代の漢学・漢文学、五山文学、夢窓疎石、詩歌合、三体詩、聯珠詩格〔項目執筆〕
 2024年6月 川合康三(かわい・こうぞう)他編『中国日本〈漢〉文化大事典』(明治書院)
 各項目について、たっぷりとした分量で執筆したもの。

105 2024年上半期の収穫から〔随想〕
 2024年7月26日 『週刊読書人』第3549号 6〜6頁
 2024年上半期に出版された書籍から印象に残った三冊を紹介するアンケートへの回答。近著卒読の562・564・563を取り上げた。

2000.5.18初版  堀川トップページへ