「何処か希望はあるのかね」
「へ?」
長く細い、けれど脆弱さのない指を組み合わせて発せられた言葉に、成歩堂は間抜けな声と表情を返した。
日頃から注意力散漫だの腑抜けた言動が多すぎるだの厳しい指摘を受ける成歩堂だったが、今回ばかりは非がない。何しろ、質問の前は五分程それぞれが作業をしていて、その際の会話も仕事絡み。成歩堂から要求した事柄も、御剣から打診を受けた覚えもないのだから。
丸っきり現状を把握していない成歩堂の様子に御剣の皺は一層深くなり、剣呑と言ってもよい表情になった。
「夏期休業期間は、またぞろ怠惰に無精に過ごすつもりなのか?」
「いや、残務処理があるからそんなにダラダラしない筈・・だけど・・・」