『こんな高い所、覗くと考えただけでも冷や汗が出る』と公言して憚らない高所恐怖症が所以で、ベランダには出ず、カーテンを全部開けた窓越しに。
部屋の照明を消し、冷房を推奨温度より3度も下げて、テーブルへビールと枝豆を並べ。(ビール以外は却下された)
『迫力は劣るけど、人混み嫌いだし』と何とも身勝手な事を宣う成歩堂に、御剣は呆れた視線を投げた。
大体、急に御剣宅での花火鑑賞を提案して乗り込んできたのは、成歩堂の方なのだ。
高層に位置する自宅から規模の大きい花火大会が見えるのは知っていても、貴重な土曜の夜は撮り溜めていたトノサマン鑑賞か、クラシックを流しつつ資料の研究にあてる事の多い御剣は別段興味もなかった。
成歩堂が時折突拍子もない言動をするのには慣れていたが、嫌味の一つも言いたくなる。