「昨日と何も変わってない・・」
「ム?」
眉間の皺を深くさせる、『ノックとほぼ同時に入室』をやってのけた成歩堂は、御剣の姿を見るなりガックリした。御剣が皺だけに止まらず、ピクリと蟀谷を引き攣らせる。人の顔を見るなり悄然とするなんて、失礼極まりない。
まぁいつものごとく、成歩堂に深い思惑があった訳ではなく、ついツッコんでしまったのだ。
―――事は、一時間半前の検事局ラウンジから始まった。
御剣との約束の前に打ち合わせが一件あった成歩堂は、ラウンジで相手を待っていた。珍しく(ここも正直に話したので、すかさず御剣の叱責を受けた)事前準備が済んでいた為、ぼんやりコーヒーを飲んでいたら隣の席に座っていた女性達の声が聞くともなく聞こえてきたのである。