「成歩堂、帰ったぞ」
「はいはい、お帰り」
早く来い、と言わんばかりの呼び掛けに。オマエはどこの亭主関白だ、と少々呆れつつ、それでもここで反抗すると拗れる事は分かっていたので―――何せ今日の舞台は御剣のマンションだ―――見ていたTVを消し、玄関へ向かう。
帰宅時に出迎えとキスを要求してきた、意外に夢見る乙女的な御剣に対し。そんな小っ恥ずかしい真似ができるか!と真っ赤になって却下した成歩堂。そして裁判より余程熱い議論を延々交わした結果、成歩堂が出迎える事でお互い妥協した。
「行かないと、梃子でも動かないんだからな・・」
ぶつぶつ呟きつつ律儀に決定事項を守る辺り、照れが先立って素直になれないだけなのが丸分かりである。不器用ながらも着実に想いを深めあっている二人だったが―――関係を壊しかねない、事件が勃発した。
「今日もお疲れさまでし、た――!?」
御剣の顔を見るなり、成歩堂は固まってしまった。黒瞳は大きく開かれ、驚愕と動揺と衝撃を乗せている。