「・・・今流行の、友チョコか?」
反射的に受け取ってから、成歩堂はそう尋ねた。瞬間、御剣の柳眉が険しく吊り上がるより早く間抜けな発言を後悔したが、咄嗟に出てきたのはそれ位で。
間抜けで白々しい響きが、中途半端に二人の間で漂う。
言った成歩堂も、言われた御剣も既に『答え』を知っている。今までは知らない振りをして、危うい均衡を保ってきた。
例えるなら、コップに目一杯注がれた水。疾うに縁のラインより上まで注がれ、表面張力で限界まで盛り上がりつつも辛うじて零れなかったのだが。
御剣の行為は、最後の一滴。
決壊して溢れ出した水―――想い―――は、二度と元には戻らない。
何故、と問い詰めたい。
どうして、今のままではいけないのか。