ゴドナル

Specific remedy




 深く吸い込んだら意識がくらりと歪みそうな、麝香。どこか乾いていて、濃密な割に持続性はなくて、少し空気が動くだけでも微かな余韻だけ残して掻き消えてしまう、匂い。
 記憶の琴線が震えるまま、成歩堂はゆっくり瞼を開いた。
 闇に浮かび、揺れる小さな赤い灯。ベッドヘッドのライトではなく、夢から成歩堂を呼んだ刺激臭が鮮明になっていた事から、ぼんやりとした思考でもゴドーが吸っている煙草だと判断できた。