ゴドナル

今夜も眠れない




 ゴドーは策士である。


「何が不満なんだィ?」
「不満とかそういう問題ではなくてですね」
「あと週の半分、帰らない日が増えるだけじゃないか」
「いやいや、帰るっていう前提は成り立たなくなりますよね?!」
 ここ最近、ゴドーと成歩堂の話題はとある事柄に集中していた。大抵ゴドーの話術に丸め込まれる成歩堂であったが、今回は結構粘り、持ちこたえている。
「毎日、『お帰り、ダーリンv』ってキスで出迎えてくれ」
「却下ぁっ! っていうか、一緒に帰ってるじゃないですか!」
「クッ・・・鋭いコネコちゃん、嫌いじゃないぜ!」
「ううう・・からかわれてる・・」
 議論の対象は、帰宅時の呼び方&キスハグ―――ではなくて。同居、厳密には同棲への移行についてである。二人の交際もつい先日、めでたく六ヶ月記念日を迎え。波瀾万丈ながら、日に日に互いへの愛情が育っていくのを実感中。
 週の半分は主にゴドー宅へ泊まっており、翌朝ゴドー宅から違う服装で出勤できる位、成歩堂の生活用品は一通り揃っていた。『お客さん』の域を越えてマンションには成歩堂の存在がそこかしこに染み込み、半同棲状態だった。
 しかし、ゴドーは『半』を取って完全なものにしたいとここ数週間、折りに触れ成歩堂を説得している。