「崖っぷち弁護士さんよぉ・・」
仕事で壁に行き当たった時や、重要な事を見落としている時や、ケアレスミスをした時。
「アンタ」
「まるほどう」
外や、第三者がいる時。
「コネコちゃん」
二人きりでなくとも、声の届く範囲内にいるのがゴドーや成歩堂の知己ならば、平気でこう呼ぶ。もしかしたら、『まるほどう』よりも回数が多いかもしれない。
「まる」
基本は、二人だけの時。ゴドーか成歩堂の家にいて、心底リラックスしていると自然と出るようだ。
「まーる」
ちょっかいが過ぎて不機嫌になった成歩堂を宥める時に、よく使う。甘えたモードに入った時や、どうしても成歩堂に言う事を聞かせたい時も、また。
ゴドー言う所の、コネコちゃん(猫)撫で声で。
「まるまる」
成歩堂の腹や胸をまさぐりながら、態とらしく。なのに、成歩堂が身体を引き締めようと決意すると、あの手この手で阻止してくる。
「ナルナル」
意味不明。
「成歩堂」
滅多に、口にしない。だからこそ、届く度、鼓動が跳ね上がって抑える事が出来ない。
旋律が内包する想いに。ゴーグルを取り払って直向きに見詰めてくる眼差しに、熱いモノが込み上げる。
「龍一」
身体を繋げている時だけの、睦言。閨でもないのに耳元で囁かれたら、腰が砕けてしまうだろう。 威力は、随一。
ゴドーの言い回し程ではないが、成歩堂の愛称は多種多様で。
けれど、ゴドーが成歩堂を呼ぶ度、奥で鳴り響くもう一つの音はいつだって同じ。
『好きだ』
とろりと耳殻内側へと滑り落ち、脳を灼く。
それは、熱い位に暖められた、琥珀色の蜂蜜。
甘くて、熱くて、深くて。
たった一言で、千の気持ちを溢れさせる。