成歩堂がひっくり返った。
疑いの余地なく、熱中症で。
「・・ゴドーさん、すみません・・」
「謝ってほしい訳じゃねぇぜ?」
「はい、す―――お手数をかけました」
普段のゴドーなら『項垂れるコネコ、嫌いじゃないぜ!』などと揶揄する所だが。スラックスに手を突っ込み、上から成歩堂を睥睨するゴドーはニコリともしない。
僅か、口端が持ち上がっているものの笑みとは遠く。それ所か、雰囲気を一層凍り付かせている。
「あれほど、言ったのになぁ」
「はい、聞きました」
「『ゴドーさんったら、僕は子供じゃありませんよ!』」
「アンタは自信満々に、そう宣言してたよな」
「今日も、よく似てますね・・」
瓜二つの声帯模写も、感じ入るだけで止まる。ツッコむ勇気(と気力)など、現状ではない。
「まったく、まるほどうが運ばれてきた時の気持ちが分かるかィ? 俺の繊細な心臓が、また寿命を縮めたぜ」
「す、・・反省してます」
からかいの様相を排し、真顔で告げられると成歩堂はますます意気消沈するしかない。全面的に、非が己にあると痛感しているから。