ブラック珈琲に合う、という宣伝文句がついていたビターチョコを数枚、お茶請けの中に紛れ込ませて。
それで、成歩堂のバレンタインは終わりだった。
別に気付いて欲しくてやった事ではなく、言わば自己満足に近い。
決して言うつもりのない想いを、ちょっとだけ救済したかったのかもしれない。
甘いものを差程好まないゴドーは、お茶請けも一つ二つ摘めばいい方。
だからその日、ラム酒漬けのドライフルーツと――チョコを口にしたのをゴドーが事務所を去ってから知った成歩堂は、心が仄かに暖かくなるのを感じた。