「ぁ、ぁ・・ん・・ぅ・・」
耳を塞ぎたくなるような、乱れた嬌声。
粘着質で濡れた、淫らな音。
布擦れと、微かなベッドの軋み。
冗談ではなく魂の抜けかかった仕事納めの後。予告通りゴドーに拉致られてから、淫靡な情事に耽っている割合は非常に高かった。
色事に慣れきっていない成歩堂は、抵抗を思い付く前に流され。余韻が燻っている所を狙い澄ましてちょっかいを出されれば。
「・・ゃ・・っん・・ぁ・・」
今この時と同じく、ゴドーが欲しいだけ喘ぐ。
もう時間の感覚は既になく。その代わり五感が怖い位鋭敏になって、どこに触られても何をされても悦楽へ直結してしまう。
「・・ふ、ぁ・・っ・・!」
イジられ過ぎて真っ赤に熟れた胸の果実にべちゃりと濡れた肉片が纏わりつき、痛みと法悦の狭間で成歩堂はまたしても達した。
最早蜜口から零れるのは、半透明な液体。量もかなり少なくなってきている。全身の気怠さは一分も目を閉じていたら深い眠りへ落ちるに違いない。
「・・ゃ・・ゴ、ド・・さ・・」
けれど、身体の『内側』で知覚している脈動の力強さは、易々と成歩堂を解放してくれるつもりはなさそうだった。
断続的な痙攣の続く肉筒が、硬い肉棒でスローペースながら容赦なく抉られる。鋭い電流が神経を駆け巡り、成歩堂は何から逃れたいのか判然としないまま大きく仰け反った。
「ぁ、く・・ひぁ・・っっ・・」
基礎体力の違いか。日頃の鍛錬か。成歩堂と同等以上に消耗している筈のゴドーは、ガッシリとした手で成歩堂の腰を掴むと、先端が姿を見せる程のスラストを腰が壊れてしまいそうな勢いとスピードで繰り出した。
猛った楔は媚肉を往復する都度、傘の広がった部分で痼りを的確に捉え。
「・・はぁ・・ん・・ぁ、ぁ・・」
つい先刻絶頂を極めたばかりなのに、下腹部から次々と沸き上がる熱は。脳内がぎゅっと引き絞られるような緊張は。
ゴドーによって誘われる、高みへの前兆。
汗で湿った髪を弱々しく振るが、そんな事で悦楽が散る訳もない。
「クッ・・そろそろカウントダウンだな」
情欲はたっぷりと籠もっているものの、大して荒くなっていない声がポツリと落ちてきた。まともな思考が残っていなくても、ゴドーの低音は成歩堂に届く。
きつく瞑っていた目を開けようとしたが―――。
「・・な、に・・・ぁぁっっ!!」
鈴口に爪を立てられ。一際強く弱みを抉られ。
全てを弾き飛ばす explosion が、成歩堂を飲み込んだ。
額、頬、唇と触れるだけのキスが優しくても。刹那の融合と独特な空白が、二人でしか作り出せないものだとしても。
ゴドーには、一言もの申さずにはいられない気分だ。過呼吸紛いの息がようやく静まり、成歩堂は瞼を持ち上げた。
が、またしてもゴドーが先手を打つ。
「年を跨いでイった気分はどうだィ?」
「・・は・・ぇ・・?」
滲む視界に差し出された、ゴドーの電波時計。日付は確かに一月一日と表示されている。
朦朧とはしていたものの、さっき聞いた『カウントダウン』と今の台詞が一つの仮説を生み出し。ゴドーの質のよろしくない悪戯に、カッと頬が火照る。
二年越しで、姫始めで・・いや、もう考えない方が良さそうだ。
ガクリ、とシーツへ顔をつけた成歩堂にクツクツと忍び笑い、ゴドーは汗で光る上半身を倒した。
「今年もよろしくな、龍一」
「!?」
耳元で渦巻いたバリトンとその旋律が。
二つとも、成歩堂を深く甘く捕らえる。ぐずぐずに蕩けさせる。
「・・・明けましておめでとうございます・・」
すっかり気が抜け、小声で言祝ぐ。
よろしく、とこの状況で言うと更なる惨劇に巻き込まれそうで避けたのだが。
「一年の計は元旦にあるからなぁ・・」
「え? いやいや、待った!」
「却下」
今年初の『待った』も、今年初の却下を喰らい。
新年早々、ハードな時を過ごしたのであった。