膝枕論:2
忽ち蒼白になった成歩堂が制止を試みるも。スラックスの上からやんわり、しかし紛れもなく官能を煽る手付きで急所を捕らえられ、反射的に身を縮こまらせる。
ゴドーはその流れを利用して素早くベルトとジッパーを外し、下着ごと一気に膝下まで剥いた。
「ご、ゴドー、さん・・っ・・」
「たっぷり癒してやるから、堪能しろよ」
『堪能できません!』というツッコミは、もう声にならなかった。暖かな手の平がまだ柔らかい分身を包み、先端を嬲り、双球を転がし、熱を宿らせようとしている。ゴドーの愛撫に馴らされた肢体は、多少性急でも強引でも素直に応えてしまうのだ。
芯を持った肉棒へのシュッシュッという摩擦音へ、ヌチ、クチュという水音が混ざり始める。あまりにもお手軽に情欲を引き出される己が恥ずかしくて、成歩堂は首筋まで真っ赤になるけれど、意志の力で収まるものではない。
かえって、意識すれば意識する程に昂揚は加速する。
「ぁっ・・ぁ・・むり、で・・す、っ・・」
膝裏、腿の内側、腿の裏側とマッサージしながら上がってきた手が狭間に差し込まれ、力なく頭を振る。蕾も、蕾に触れた指も、乾いたまま。幾らゴドーとの交接を重ねたとしても、潤いがない状態で繋がるなんて無謀だ。いや、成歩堂は元よりゴドーもキツい思いをする。
「いつでもどこでも、コネコちゃんを愛でる準備に抜かりないぜ!」
身を竦ませた成歩堂の前に差し出された、長方形のパッケージ。その表面には、『Gel』の文字がプリントされていて。
「っっ!」
それが使い切りサイズの携帯用潤滑剤だと分かってしまった己の爛れっぷりも、ショックだったが。そんなものを持ち歩いているゴドーのエロ親父っぷりへ、ツッコミたい気持ちが強かった。
「ちなみに、ゴムはないんだぜ!」
「威張って言う事ですか!?」
どちらかというと、エチケットとしてはゴムを常備するべきだろう。滅多に装着してくれないゴドーへ、ここぞとばかり異議を唱える。
「コネコちゃんと俺の間には、何一つ入らせねぇのさ」
「・・バ、カ・・ぁ、ッ・・」
堂々と、真顔(推測)で宣う事ではない。
ないが。
薄皮1枚だけでなく、恭介の事も含まれていると悟った成歩堂の心臓はおかしな跳ね方をし。その隙にゴドーは片手だけだというのにすんなりパッケージを破り、温めたジェルを秘扉へ塗り付けはじめた。
「ぁ・・ん、む・・ふ、ぅ・・」
縁を2度辿り。指先をほんの少し潜らせ。すぐに引いてジェルを纏わせてから再度侵入する。狭い入り口を解すと共に愉悦の芽を植え付ける動きはいつも通り巧みだったが、今日は口唇にも寸分違わぬ愛撫を展開していく。
「・・は、ぁッ・・んん・・っ」
二倍の速さで拓いていく身体を自覚し、羞恥で眩暈まで起きたものの正気に戻る術はない。
肉壁を刳られながら、足を大きく広げられても。腰を高く持ち上げられ、力の入らない上半身がソファにべたりと伏せても。
「ぁ・・ふ・・ァ、ん・・」
いつしか解放された口から、次々と濡れた喘ぎを零し。まるで誘うように媚肉を蠕動させた。
「コネコちゃんに異議はない、と見なすぜ」
雄臭く唇を歪めたゴドーは、滾った怒張にも残りのジェルを塗し、ゆっくりではあるが着実に身体を繋げ始め。
「ぁ、ぁ、ッ・・!」
圧倒的な質量が。
存在が。
全ての抑制を溶かし、成歩堂の内へ食い込んでくるのを。
拒めた例が一度としてなかったのである。
成歩堂は、思う。
やはり女性の方が膝枕に向いている、と。
「はぁ・・・」
つい嘆息してしまう成歩堂の現状といえば、ゴドーの膝上。つまり、先刻とは逆に膝枕をされていた。
「色っぽい息を吐いて、誘ってるのかィ?」
「いやいや、誘ってませんから! もう無理ですから!!」
腿の上で、ブンブンと頭を振る。
事務所で、2回。口に出せないモロモロをざっと拭っただけでゴドー宅へとお持ち帰りされ、玄関で1回。
『懇切丁寧にケアしちゃうぜ!』と、バスルームに連れ込まれて1回。
正直、首を振るのも億劫だ。
ゴドーはクツクツ喉奥で笑いながら、手ずから洗ってやったトンガリを優しく梳いた。
「アンタは、もうちょい体力を付けないとな・・。ま、追々レベルアップさせてやるよ」
「・・・・・」
『ゴドーさんが体力魔人なんです』
『僕には必要ありません』
『これ以上、ハードにしないで下さい』
幾つものツッコミが浮かんだが。髪を撫でるゴドーの手があまりにも心地良くて、成歩堂はそのまま微睡みの中へ落ちていった。
筋肉質で、全然柔らかくないけれど。
ゴドーの膝枕が一番いい、というのが最後の思考。