御剣、愛を語る2 : 「tea break」番外編
「ヤらせろヤらせろって言うけど・・僕の、か、身体が目当て、なのか?」
言う側から顔が徐々に赤くなり、途中でつっかえ、御剣と目を合わせていられないのか俯いてしまう。久々の『羞じらいモード』に、成歩堂の葛藤と困惑を余所に、御剣のテンションはMAXに跳ね上がった。
「無論、身体目当てだともっ!! ―っ、い、いや、落ち着け、成歩堂! 六法全書はそういう使い方をするものでは、断じてない!」
勢いと性欲と萌えのまま口走り、次の瞬間ぶわっと膨れ上がった殺気と六法全書に気付いて、急転直下青ざめる。
「すまぬ。言い方が悪かった。訂正したいのだが、よいだろうか?」
いつになく殊勝な態度で謝罪すると、とりあえず六法全書はテーブルへ戻された。
「私は、成歩堂の身体だけでなく、心を含めた両方が欲しい。この二つが兼ね備わってこそ、真の愛情が―――」
「うっわ!サムい台詞は、そこまででいい! 簡潔に、要点のみで」
成歩堂は再度、御剣の口を塞いだ。夜のオカズから『愛情論』への揺れ幅に、こちらも再度、目眩を感じながら。
だが、御剣は愛情論の展開を止めようとはしなかった。
「成歩堂も、心と身体が伴うタイプではないか? いくら欲望が先行したとしても、相手への愛情に自覚がなければ肉体関係を持たない筈だ」
法廷同様、白くて長い指を得意げに振ってみせる。
「ならば、貴様に中出し――いや、成歩堂と性交渉が持てたのなら、それは私の心をも受け入れた事に他ならない。成歩堂は、心と身体が同時進行なのだ。違うか?」
変形三段論法を成歩堂に突き付け、ぶ厚い胸を自信満々に張り、成歩堂へ是非を問う。御剣は大概思い込みの激しい男だが、今回はただの思い込みとは違っていた。
突っ込めるものなら突っ込みたまえ、とデカデカと顔に貼り付けている御剣を成歩堂は矯めつ眇めつした後、毒気が抜けた表情でポリ、とトンガリを掻いた。
「オマエ・・・変態で気持ち悪くてストーカーだけど、バカじゃないよなぁ・・」
言葉面はケチョンケチョンだが、ツンツンな成歩堂の賛辞である事は明白だった。
しかし、ツンツンでこれだけ御剣の血液を一箇所に集中させるのだから、もし成歩堂がツンデレになったとしたら、御剣はさぞかし捩れて四六時中スタンバイOKになってしまうに違いない。
「だけど、その論理でいくなら、やっぱりオマエをそういう目で見られないって事だよな?」
御剣の推論を否定したりはしないけれど、牙城を明け渡す気はさらさらない成歩堂は、ニヤリと黒く笑う。お預けイコール、求愛拒絶だから。
「甘いな、弁護人」
御剣は、ここぞとばかりに強調した。
「貴様と私は、既にディープキスを1回。唇以外へのキスを3回。素肌に触れる事、1回。弾力があって触り心地の良い臀部を揉む事2回。抱擁は、既に2桁を越えているのだぞ。性的接触は十二分であろう?」
「どれも、許可してないだろ!?」
事細かにカウントし記憶している御剣がやっぱり気持ち悪い、ちょっと見直しかけたのが台無しだ、と顔を引き攣らせながら成歩堂が突っ込めば。鬱陶しい長さの前髪を払い、御剣がフッと笑った。
「事前の許可はないが、結局貴様は私の振る舞いを許している。事後承諾というヤツだな。だからこそ、既成事実が重要になるのだ! さぁ、成歩堂!挿れさせたまえ!」
「ふざけんなっ!この、自己チュウ変態検事め!」
羞恥というより怒りで顔を真っ赤にした成歩堂の、素晴らしく捻りの効いたパンチが今度は避けられずに腹に食い込んだが。
その後1週間は会いに行く度、問答無用で蹴り出されたが。
やはり。
未だに。
成歩堂は『オマエなんか、絶交だ!』という決定的な一言を、告げてはいない。
だから、御剣は今日も今日とて、ウザイくらいに愛を叫ぶ。
二人きりであれば、TPOなど一切お構いなしに。
るいさまのご希望に叶う、ヘタレミツでしたでしょうか? ヘタレっぷりが足りないようでしたら、本編でリベンジを(笑)
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