日  程 2005年3月19日〜21 
地  域 富士山 氷雪技術講習会
メンバー 一本松(記録)

平成17年3月19日〜21日、富士山5合目附近で行なわれた日山協主催の氷雪技術講習会に参加してきました。
講習の主な内容は、隔時登攀での確保技術、及びアンカー構築法、同時登攀の確保技術として大阪方式、タイトロープ方式、セルフレス
キュー技術として自己脱出、1対1、3分の1引き上げ法、ロープ担架やツエルト、ザックによる搬送法。
以下講習内容の一部を報告します。

アンカー構築法としては、スノーバー、デッドマン等のアンカーがあるが、それらを携帯していない場合の方法として、小物袋や土嚢袋(それもない場合はコンビニでもらうビニール袋)を使う方法がある。

まず雪を袋の三分の一程度入れ、口を重ねる。重ねた所をロープスリングでもってクローブヒッチし、重ねた口の間に通したうえ(割を入れる)、最後に重ねた所にできる輪の中に通して出来上がり。

袋を雪の中に埋めロープスリングがまっすぐに出るように雪に道を着ける。埋めた雪面を十分に固める必要があるが、一生懸命踏みつけてもせいぜい40cmぐらいまで固まるだけでその下まで固まらない。
その下にアンカーを入れても雪面が固まってないので、アンカーとしては用をなさなくなる点を留意すべきである。また細いブッシュや笹をまとめることで支点とすることも可能である。ロープスリングで笹またはブッシュを束ねて巻いたのち、束ねた半分のところにスリングを通し(割を入れる)、そこからクローブヒッチでできる2つのワッカを離した結びをいくつか作る。同じものを横に作り、作った何本かのスリングを流動分散する。また束ねた枝やスノーバーを埋めて支点とする場合はスリングでもってクローブヒッチを三箇所間隔をあけて作ると強い強度が得られる。

隔時登攀においての確保技術のうち、今回はスタンディングアックスビレーを練習した。ビレイヤーは確保すべきパートナーが滑落した場合の方向をよく見定めたうえ、スタンディングアックスビレーの体勢をとる。ピッケルを雪面に刺しシャフトにスリングを巻き、谷足でスリングを踏みつける。スリングにカラビナをかけ、そこに相手方に行くロープをセットし、脇を通ったロープを肩がらみする。

パートナーが滑落した時、まずロープをできるだけ手繰り、姿勢はピッケルに対して直立姿勢を保つ。過重がかかってきたとき、慌てて止めようとせず、ロープを流しながら制動をかけることが重要である。ロープを流す事が肝要なので登攀距離はロープの長さの半分までに止めるべきである。もしスノーバー等のランニングビレー支点が取れるなら、2箇所すなわちビレイヤ-より下部に一本、そして上部に一本とり、スタンディングアックスビレーで確保を行なった場合、ビレイヤ-は、止める動作より流す動作に努めるぐらい制動がかかり楽に止めることができた。

またスタンディングアックスビレーを肩がらみでなくATCで行なったが、ATCの場合、ハーネスの位置にセットする関係上、ロープを手繰る作業が難しい。チェストハーネスの位置だと作業が楽であるのでビレイ支点を工夫すれば有効であると思われる。特に止めてから自己脱出を行なう場合は肩がらみでの作業に比べて各段に作業が楽である。

セルフレスキュー技術としては登攀中にパートナーが滑落、止めたあと滑落者が自力で上がって来れない場合の対処法の一部を練習した。
まず止めた後、片手でロープにオートブロックをとる。それを支点に連結。確保している過重を支点に移しかえ、確保者は自己脱出。自由になった確保者は滑落者を引き上げる作業に入る。まず支点(しっかりとした支点をとれる事が前提にある)にセットしたカラビナに過重のかかっていないロープをかける。オートブロックを作り確保者のハーネスにセットする。確保者は滑落者がぶら下がっているロープを引き上げながら自らは滑落者の方に向って全身で過重をかける。雪の斜面ではこのような1対1の方法が有効な場合が多い。その際オートブロックの代りにタイブロック、カラビナにプーリーをセットすればかなりの効果がある。それでも引き上げる事ができない場合は3分の1システムの引き上げ法に切り替える。
それでまだ引き上げられない場合は5分の1システムを行なう。

同時登攀での確保技術として、大阪方式、タイトロープ方式、2つの確保技術を練習した。
大阪方式はお互いが手に持っているロープの長さ分の制動を利用して止める技術ゆえ、咄嗟の滑落時にロープがもつれないでうまく流れてくれれば有効な停止術だと思うが、何回か実践的に練習した際、ロープがキンクして十分な制動が得られず止めることができない場面があった。
その点、タイトロープ方式はロープの遊びを作らない。つまり制動確保しないで直接止める方法ゆえセットがシンプル。止め方もシンプル。習熟すれば実際の場面でかなり有効だと感じた。

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