日  程 2003年12月30日〜2004年1月1日
地  域 南アルプス 戸台川藪沢双児沢 アイスクライミング
メンバー 梁瀬・一本松(記録)

 12月30日朝、戸台の駐車場を出発。河原からは白く輝く戸台川本谷源頭に聳える甲斐駒、そこから南西にのびる稜線に駒津峰、双児山を見渡すことができる。その名のとおり二つの峰を並べた鞍部から白竜のごとく筋を落としている沢が今回登ろうとしている双児沢である。
昨年行ったカミニゴリ沢出合を過ぎ、そろそろ1本立てたいなと思う頃、丹渓山荘に着いた。嘗てスーパー林道がない頃、仙丈、甲斐駒の登山基地として栄えた山小屋は廃墟と化していた。移ろいゆく時代の流れに抗することのできない姿を前にしばらく佇んでいた。ヤナッチが口ずさむ「荒城の月」が胸に響いた。
 
 小休止ののち、八丁坂の急登を登りきった標高1700m付近から登山道をはなれ樹林帯を左にトラバースすると双児沢にでる。F1行者の滝は右から巻き、落ち口に降立つ。ここから沢はルンゼ状となり、そこで登攀装備を整え出発。雪が少なくガラ場にアイゼンが軋み、歩き辛い。F2は見た目は簡単そうな2段になった10m程の滝だが、一年ぶりのアイスクライミングの登りはじめなので慎重にスタカットで登る。
暖かく明るい日差しをもたらしていた太陽が対岸の尾根に沈むと、まもなく天候がくずれ、雪が舞うようになった。今日はここまでとしてツエルトを張る。

 12月31日(雪)食事をすませ出発準備を整えていたが、あたりはまだ暗く、雪は昨日より激しさを増していたので少しばかり躊躇したが、きのう聞いた天気予報によると大きく崩れることはないようだし、出発することにする。
F6ねじれの滝の直下、雪も氷も付いていないクーロワールは空荷になりチムニー登りで通過。ねじれの滝(70m)は下部から40m完全に凍っておりその上は氷と雪の緩い斜面が30m続く。そこから上は二俣となり右に進むと、鉛色の空と降り続く雪の中に大滝(60m)が威圧的な姿で現れた。それまで気の乗らない顔をしていたヤナッチの表情の中に、岩魚を狙うときに見せる眼差しが光った。
1ピッチ目、右側の露岩まで20m登り、氷に支点を構築。2ピッチ目もヤナッチ、降り注ぐスノーシャワーをものともせず快調にロープを伸ばし40mで大滝を登りきる。核心を過ぎた後も相変らず降り続く雪とスノーシャワーに、またヤナッチ、さえない表情に戻る。
彼曰く「僕は鉛色の空が嫌いなのだ」・・・・
天候が回復しないので、途中から沢を離れ右側の尾根状をラッセルすることにする。途中から斜面は石楠花の密林地帯と化し、思うように登れない。結局時間切れ。何とか寝れる場所を作り大晦日の夜を過ごす。

 1月1日(晴)天候は回復したが、朝から石楠花の薮漕ぎラッセルでなかなか主稜線にでない。昼前やっと主稜線にでる。夏道はトレースこそないものの、積雪が少ないのとペナントで道を見失うことがなかった。北沢峠をへて戸台の駐車場に着いたときは真っ暗になっていた。

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