日  程 2003年5月3日〜5日
地  域 北アルプス 剣周遊(室堂〜剣沢&真砂沢〜白萩川〜馬場島)山スキー 
メンバー 藤田(誠)・西村・一本松・大西(HMC)・河野(記録) 画像はこちら

3年前のGW、剣御前小屋の前で立ち話をした初老の男性。我々が立山川を滑るというのを聞いて、滑り出しポイントをアドバイスして下さった。今年のGWは、その御仁がその時向かうとおっしゃられていたコースを辿ることになった。室堂から剣沢、二股、池ノ平から小黒部谷を滑り、大窓を経て白萩川を滑って、馬場島へ下るという剣周遊コース。地図で描くと非常に面白いラインで、期待度はぐんぐん高まる。

当初テント泊を考えたが、機動力と我々の体力を考えると小屋泊の方がよいのでは?軟弱プチブルは日本経済のためにも励んで浪費せねば…との提案に異議申し立てもなく、即小屋泊まりに変更。剣沢小屋をベースにすると、最終日の行程が長くなるが、軽量で動けるので不可能ではない。立山川〜馬場島のコースも素晴らしかったので、今回も楽しみである。

心配なのは二股のスノーブリッジ崩壊、大窓雪庇の崩壊、白萩川の徒渉。幸いにもお天気だけは3日間ともいいようだ。意を決してとにかく出発だ。

5月3日。立山駅は登山客よりも観光客でごったがえしており、ケーブルカーは1時間待ち。

観光客でいっぱいの室堂から雷鳥沢を登る人の列がよく見える。GWだけあって、かなりの入山者がいるようだ。雷鳥平でさっそく大休止。天気はこの上ないほど上々で、めちゃめちゃ暑く、半袖姿になる。

剣御前小屋直前で雪が一旦切れ、そこだけ板をぬぐ。小屋につくと「今日は剣沢小屋は満室です。予約の方はOKです」との看板が立っている。あれ?西村さんが事前に電話したところ、空いているからどうぞ行って下さい、との話しだった。念のため小屋の方に確認して頂き、事なきを得る。

小屋からの最初の一本、剣沢小屋までの楽しい滑降。ひゅーひゅーと小屋へ滑り込む。

荷物を置いてもう一本滑りにいく。1時間弱登って、小さいピークから。日陰は少しクラスト気味、剣沢はシュプールだらけだったが、なるべく綺麗なラインを選んで滑る。凛とした剣岳に向かって滑るこのコース、気分爽快である。

5月4日。真砂沢へ。別山沢も面白いよ、という小屋での情報があったが、地図を見ると滑り出しがかなり急で狭く、距離も短い。フジッコは急斜面が嫌い(というよりコワイ)らしく真砂沢を主張、こちらに決定する。剣御前小屋で休憩した後、真砂岳方面へ暫く板を担いで歩く。稜線上には雪はない。途中で嫌なトラバースもあり、ちょっと緊張。真砂岳頂上までは登らず、手前から沢に入る。最初はなかなかの急斜面だ。

我々の後に、日本一のテレマークスクールご一行様10数名がいらっしゃる。皆さんが見守る中、滑降開始。滑り出しがちょっと急だがすぐにいい斜面になる。真砂沢は全体的に斜度もあまりなく、幅もかなり広くて快適だ。剣沢に近くなるにつれ、デブリがちょっと邪魔。最後は沢山の人が滑った跡をそのまま辿り、剣沢に合流。

大休止の後、明日のために二股まで下見に行って来ると、西村&大西ペアが出発。一本さんは体調悪いと珍しくここでお休み。万一スノーブリッジ崩壊で渡れる手段なく、敗退だ、ということになったとしても、自分の目でみておきたいのでフジッコと後でついていく。近藤岩が見える所まで来ると、お二人がOKのサイン。よかった〜。

そこからの登り返しは、真砂沢まで帰るだけでもしんどく、更に剣沢小屋まで登るのは、もうヘロヘロ。何回来てもつらい登りには変わりなし。うー、まだ長次郎、げげ、まだ平蔵かいなーと嘆きつつ、一歩一歩足を前に出す。

今日もありがたいことにいいお天気で、めっちゃくちゃ暑い。おまけに左足のインナー折れ目部分が痛くなってきた。最悪だー。ぼろ雑巾のようになって小屋に到着。お疲れさまでした。

夕刻までにはまだ間があるので、もう1本といきたいところが、明日の長丁場に備え、足が痛いのでやめておく。体調が悪いはずの一本さんがやる気満々で、フジッコの今シーズン初投入ギアK2の板を試したいと早速出発準備を完了していた。

フジッコは少し部屋で休憩したかったようだが、一本さんが外でまだかまだかと待っているので、仕方なく(と見えた)出かけていった。ちょっとそこまで、と言っていたのに、一本さんはがんがん登っており、フジッコは仕方なく(と見えた)ついていき、あれよあれよとまた昨日のピークまで登ったようで、2人の小さい姿は彼方に消えてしまった。

残留組は小屋の屋根の上に座って、コーヒータイム。オヤジどもはぷっしゅ〜。かっちょいい剣岳を目前に、ぼーっとした時間をのんびりと過ごす。
嗚呼何という贅沢。

フジッコに借りたK2の板は超快適だったらしく、一本さんは大興奮して鼻息荒く、フジッコは疲れてヨロヨロと帰ってきた。

この2日間の快晴のおかげで、男性4人衆の顔は焼けているというより焦げていた。ひょひょっとして私も?!

5月5日。お世話になった剣沢小屋を6時に出発。小屋のおじさんは、我々に前日同コースを滑ったパーティーの情報を提供して下さった上に、外に出て見送って下さった。剣沢小屋には初めて泊まったが、食事も春の小屋とは思えないほど豪華で美味しく、トイレも屋内で大変快適だった。ありがとうございました。

事前のシュミレーションでは、なんぼかかっても13時間あれば下山できると見ていた。前日のパーティーは地元高岡Pが7時間(は、はやっ)、ガイドPが11時間かかっている。いつも毎回の休憩がめちゃくちゃ長いだらだらPの我々も、今日は休憩をささっと切り上げ、サービス残業のないよう頑張らねば。

朝の6時では、剣沢はまだ完全なアイスバーン。しかも斜面が荒れたまま凍っているので、がががっとおろし金の上の大根状態。斜度があまりないので、転倒したら下までさようなら、ってことはないが凄く痛いので、慎重に滑る。がりがりと下からの振動がひどくて、非常に疲れる。雪の状態がよければ、ひゅーひゅーものの斜面なのだが、がんがん滑るわけにもいかず、二股まで結構時間がかかってしまった。

近藤岩手前で左岸に渡り、雪のない鎖のついた夏道少し辿ると三の窓雪渓に到着。北股に入って池ノ平へ目指す。登るにつれて、裏剣、八峰、チンネが迫ってくる。素晴らしい景色だ。平ノ池辺りでは、一面真っ白い斜面に囲まれる。池ノ平山のスロープは、とても快適そうだ。大荷物の単独行のおじさんに出合う。2日間池ノ平で写真撮影をされていたそうだ。あきちゃったから、移動しようと思ってね、え、そうだね、剣沢の辺りまでいこうかな。気の向くままにに山を満喫されているようで、とても羨ましかった。私もここで1泊したいなあ。

暫し休憩の後、小黒部谷を滑る。雪も緩んで最高のスロープ、ひゅーひゅー、ぎゃーぎゃーもの。最近雄叫びをあげるボルダラーを野獣というそうだけど、小生は野獣スキーヤーか。裸族じゃないと野獣になれないんかな、まあいいや。

滑り降りすぎないよう注意して、大窓雪渓出合でまたシールを付け直す。滑るのってほんま一瞬やなあ。

ここから大窓まで標高差約700m。2時間以上かかるだろう。軟弱隊は、ここで各々アミノバイタルやヴァーム等でドーピング。出合から見る大窓の雪庇はかなり大きく見え、ブロックで崩れてきたらひとたまりもない。用心して行かねば。フジッコと小生はぎりぎりまでシール登行。最後は急峻な雪壁でつぼ足で慎重に突破、と言っても先行パーティーの足跡を辿るだけだが。近くまでくると、雪庇はあまり張り出している訳ではなく、まだ大きくてかなり安定しているように見えた。

大窓で大休止。滑り出しが少し急。オジサン方は一瞬で視界から消えたが、フジッコはちょっと(かなり?)びびっていた。
ここから楽しい滑降はすぐ終わり、右が荒れているので左斜面に途中から入ったところノド部分で雪が切れてしまった。短いがガレた岩場の下りは非常に悪かった。またその下からスキーを装着。が、この辺りから落石とデブリ跡で斜面がどんどん荒れてきた。石に注意しながら滑る。本日も天気は上々、雪が随分ゆるんできているので、横からの雪崩にも注意が必要だ。っと、ぐわっしゃーと左からブロック雪崩。う、フジッコ危機一髪!やばい、早くこの危険地帯をクリアせねば。斜面も土や石で茶色く、滑るというより逃げるというか、とにかく先を急ぐ。途中から白萩川が出てきて、川岸の斜面をびくびくトラバースする場面も。

池ノ谷を少し過ぎた所で、完全に川が出ており、徒渉もできないので赤谷尾根の方へ高巻く。
夏道では可憐なカタクリの花が咲いていた。

途中、ホンマにここかいな、というルンゼを無理矢理降りるが、無事取水口に降り立つ。万歳、無事帰って来れました!

そこから馬場島までは、少しだけ雪が残っていたもののすぐになくなってしまい、暑い暑い中スキーを担いで黙々と歩く。数年前は桜が咲いていたが、今年はもう新緑が眩しい。

馬場島16時到着、10時間行程とは我々にしたら上出来だ。これもいつもはいい加減な(失礼)西村師匠が、珍しくマジになって休憩時間を管理し、コースタイムをきっちりメモるという嵐でも来そうな行為をしたお陰か?!

ともあれ、好天のお陰で、このルートを十分満喫することができた。剣岳の色んな表情を見られるのも素晴らしい。源治郎、八ツ峰、早月、小窓、剣などの尾根を眺めながら、いつかあそこに行ってみたいなあと夢も膨らむ。お天気がよくて本当に本当によかった。

今回の山行で、自分はスキーシーズンを終了する。最後に相応しい山行だった。今シーズンご一緒したくれた仲間に感謝。
来季もまた沢山の感動と出合いたい。

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