日  程 2003年10月19日
地  域 奈良県 大台ヶ原 千石グラ サンダーボルト登攀
メンバー 梁瀬・河野(記録)

大台ヶ原・千石グラの素晴らしいマルチピッチルート「サマーコレクション」に続き新しいマルチのルートが開拓されたらしい。サマコレより少し難しいようだが、こちらも是非とも登りたい。ロクスノ(21号)にも紹介され、しかも紅葉の時期がよいと書いているので、渋滞覚悟で出発した。

夜中に大台ヶ原の駐車場に着いたが、ガスが出ており、時折ジェットストリームのような突風が吹き荒れる。この嵐を呼ぶ女に相応しい出迎えじゃないか。

5時に目覚ましが鳴ったが、まだ辺りは真っ暗、しかも寒いし突風が吹いてるし、何たって眠いし、もう一度5時半に目覚ましをかけ直して二度寝。5時半に同じ事を繰り返し、6時にようやく起きる一大決心をする。

明るくはなったけど、ちょーちょー、何でこんなガスってんねん?めっちゃ寒いやん、こんな中でクライミングなんかできるん??

駐車場は、秋のハイキングを楽しもうという登山客でいっぱい。みんな上下防寒着を着込んでいる。以前来た時と違い、クライマーらしき人は皆無。うーん。大丈夫かなあ。さっそく柏木フリー転進案も出たが、ま、取付の確認がてらとりあえず行こうや、ってことで準備をした。

サマコレでは荷揚げをしたが、こちらのルートはどうも草付が多いようなので、フォローが荷物をもつことにする。

アプローチはロクスノの紹介による千石尾根からではなく、サマコレと同様、石畳の階段を下りきった所にある木の衝立から右への水平道から行った。千石尾根は特に遊歩道近くは広い丘上になっているので、初めての人には分かりにくい。水平道経由ならしっかりした踏み後がついており間違うことはまずないだろう。シオカラ谷へ下るルンゼは、左右の木々に赤テープがついている。ここで千石尾根からのアプローチと合流することになる。

シオカラ谷の水流が見えてくると、コケの生えた大きな岩の上に立つので、そこから右の草藪に入る。下り気味にトラバースしていくと、取り付きに続く踏み後に合流する。

ちょうど先行パーティーが1P目をフォローしているところ。取り付きは、ルート上に新しいボルトがピカピカ光って見えるのでわかりやすい。ふと下を見ると、スタート地点に紅い稲妻の書いた石のプレートが置いてあった。

1P 40m 5.10-(グレードと★はロクスノより)
ヤナッチ先攻でスタート。フォローといえども最初のピッチ、ザックを背負っているものあって、遅々としか登れない。

2P 45m 5.10-
出だしでちと迷う。カチをひろっていくフェイス。ボルト間隔が遠いとトポには書いているが、落ち着いて登れば気にならない。支点があまり見慣れないボルトで、小さなリングへのクリップがちょっとしづらい。途中草付の間を通るので、木にもランニングをとった。ビレイ点近くに、赤ペンキ←印があり、次がトラバースであることが一目瞭然。

3P 35m 5.9 ★
ヤナッチは「ミニジェットストリームだ」と言いながら、トラバースして消えていった。出だしが下り気味なので、フォローも緊張する。かなり草付多し。足下がよく見えないので、草木をむんずむんずと掴んで進んでいく感じ。

4P 15m 5.10 ★★
え、レイバックでスタート?そんな体勢になれるかな、と小ハングをよいしょと越える。上部の切り株の下のところでどういくかかなり悩む。スタンスがうまく拾えなくて、次の一手が出ない。いきつもどりつ、左のラインから登る。切り株を回り込んでしまったので、ロープを戻すのに一苦労…。

5P 15m 5.10+ ★★
ハング越えが核心らしいが、その手前のハングへ向かうトラバースがいやらしい。ヤナッチがルート定めをしている最中、「ぎゃああ」と叫ぶので何事かと驚いたが、ホールドにしいていたクラックの中に、何かいるので息をふきかけたら「シャーッ!」とコウモリが牙をむいたらしい。フォローの時に覗いてみたら、黒いふさふさした物体が挟まっていた。で、ここからの数手が確かにいやな感じ。フリクションを信じてそっと進む。ハングはボルダーちっく。

6P 25m 5.9
登った後ビレイしながら振り返ると、高度感あって紅葉も混じり素晴らしい眺望。この高度感、マルチならではの醍醐味だ。

7P 25m 5.10- ★★
クラッカーヤナッチはコーナークラックを堪能したようだが、クラックに慣れていない自分は主に壁のホールドとステミングで登る。それでも楽しいピッチだった。

8P 35m 5.10 ★
トポの通り、まさに全身を使った奮闘的本チャンクライミング。掴んでつっぱってはい上がって、砂まみれ。もしもあの草木が全てなくなってしまったら、このピッチは果たして登ることができるのか?!奮闘的コーナーが終わるところで、赤ペンキで直上××印が。この上は危険地帯らしい。ビレイ点まで右上していくことになるが、自分では全ルート中でここが一番の核心だった。下に「たのむで〜!」と声をかけ、なるいスタンスで右手でアンダーをとり滑りませんように…と祈りながら足をふみかえ、左手をクロスさせる。…お、届いた!よかった!あとは慎重にビレイ点まで。ふううう。緊張した〜!!

9P 25m 5.9 
ちょーちょーっ!誰のせいだかしらんけど、空模様がかなり怪しくなってきた。やばいやばい、急げ急げ、あと2ピッチだ!フォローでも、右のフェイスに移る数手は緊張した。シートベルトみたいなスリングのかかった立ち木では区切らず、左上にあがりこんでからピッチを切った。

10P 35m B8 5.10- ★★
とうとう最終ピッチ。安全のためプリクリが賢明らしいので、ヤナッチの肩をかりてクリップ。一旦下りて、再スタート。チビには厳しいハングなので、木から股割きムーブで岩に乗り移る。左に回り込んでスラブをちょっと登ったら、ひょいと岩場がなくなった。え?!もう終わり?!とちょっと拍子抜けだが、千石尾根が間近にあるので、間違いない。

安全圏までロープをつけて移動し、終了!!昨年のサマコレに続き、2人ともノーフォール・オールフリーで完登。全力投球できた。
時間は結構かかってしまった(6:45)が、慎重に登ったし、仕方ないかな。

ギアを片づけ、秋の深まる千石尾根をさくさく落ち葉を踏みしめて帰った。
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サマコレと比べると、全体的に難しく感じました。草付きも結構多く、より本チャンちっくなマルチを楽しめます。本チャンといっても支点は全てしっかりしているし、純粋に「フォールするまでフリーで挑戦しよう」という気持ちになれます。頑丈なビレイポイント、どこからでも撤退できる懸垂用支点、赤ペンキのガイドなど、開拓者の方が沢山の人に、安全に楽しんでほしいと思っていらっしゃる気持ちが登っていてひしひしと伝わってきました。
サマコレ同様、フリーでマルチピッチを楽しめるルートとして定着していくでしょう。ルートのスッキリ感では、サマコレの方が今のところ軍配があがるかな。

久々のマルチでしたが、ゲレンデのフリーと違って、パートナーと一緒に同じルートを「頑張って登った」という想いを共有できるのは、いいもんですね。これはクライミングに限らず、歩きでも何でもそうなんですけどね。
ということで、皆さん、また一緒に山行きましょう!!

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