日  程 2003年8月13日
地  域 鳥取県 大山 甲川・下ノ廊下遡行
メンバー 一本松・梁瀬・河野(記録)

最初にお断りしておきますが、しょぼい敗退記です。

☆☆☆

プロローグ:ヘルニア狂騒曲

「うん、ヘルニアになってるわ。ここの椎間板、黒く写ってるでしょ、で腰椎から後にはみ出てる。神経に触ってるから坐骨神経痛が出てんでしょう。」
「は?ヘルニアですか?!」
「腰椎4番5番の椎間板ヘルニア、です。軽度だから、手術の必要はないでしょう。どうします?1ヶ月ほど理学療法試しますか?牽引と電療だけど。リハビリ科行って、説明聞いてきてね。」

腰痛になってから、もう1ヶ月以上経っている。最初このA病院で、筋膜炎って言われても治らなかったから、とあるカイロに通っていた。先月の痛みに比べれば随分ましになってきていたので、安心のためにMRIを撮ったが、まさかヘルニアだとは。そんな今更・・・。

明日の晩から、朝日連峰の沢登りへ行く予定だった。慢性腰痛ならば、少々の無理をしても大丈夫だが、ヘルニアの場合、腰にかかる負荷を減らして、これ以上の悪化を防がなければならない。ヘルニアは酷い場合、激痛で歩くどころか、立つこともできなくなり即入院だ。5日間はかかるであろう八久和川遡行は、リスクが高すぎる。

はあ・・・。

メンバーと相談の結果、八久和は諦めることにした。一緒に行く予定だった榎本パーティーには、ドタキャンの可能性を示唆していたので、計画には影響ないとのこと。本当に本当に申し訳ない。

はあ・・・。

落ち込んでいても仕方ない。
代替案を検討。予報がころころ変わるので変更に次ぐ変更で、結局まず日帰りの沢を一本行って具合を見て、調子が良ければ週末泊まりの沢を行くことにした。

御岳王滝川鈴ヶ沢は、疲れたが楽しく遡行できた。腰に細心の注意を払いながらなので、あまり早くは歩けなかったが。恐れていた翌日も痛みが増すことはなかった。良かった…。これくらいの遡行なら大丈夫。

週末はどうするか、これもまた天気予報で晴れそうな地域を狙いつつ計画したが、直前でまた予報が変わり、日曜日がどこも雨になってしまった。仕方ないので、泊まりをやめて1日で軽量アタック、だめなら引き返すことに。16日は日本海側なら晴れそうだし、日本百名谷で、泳ぎ主体・アブミもいるという結構ハードな大山甲川に決定。ホントに大丈夫なんかいな?!

☆☆☆

ウオーターボーイズ in 甲川

8月16日(土)

寒い。上下ともウェットを着込んでいるといっても、寒い。谷の中の気温は17度。昨晩雨が降ったようで、平常水より10〜15pほど増水している。
3人ともライフジャケットも着衣、泳ぎ対策もばっちり。ってか、この寒さで泳ぐのははっきり言って嫌だ。

鶯橋からしばらくはゴーロで、すぐに早速泳ぎが出てきた。悪い所にはハーケンと残置スリングがあったりして、それを利用できる。
暫くして第一の関門、短いが手がかりのないスラブ壁が出てきた。ガイドの写真の通り、トップのヤナッチはショルダーで簡単に突破。上にはリングボルトが2本打ってあった。

そこで確保用にヤナッチがロープを出したところ…。あら、わっかになってる?何で??ひょっとして真っ新で一度もさばいていない?
「ごめーん!忘れてた〜!」…いっぽんさん…。案の定、ロープは知恵の輪のように絡みまくってほどけない。とりあえず端っこだけ使って2人が登り、上で3人がかりでロープを捌く。めっちゃくちゃになってしまっていて、えらく時間が掛かってしまった。

滝を巻いたり泳いだり、へつったり飛び込んだりしながら、下ノ廊下をどんどん進む。結構コケコケしていて、沢全体が緑っぽく、あまり綺麗な沢ではない。更に日が差さないので暗いし、寒くて震えがくる。

そして、下ノ廊下最難箇所がやってきた。ゴルジュを泳いで斜爆横まで行き、残置スリングを頼りに斜爆を越えるところだ。

まずはヤナッチが様子を見に行って、行けそうということなので次に自分が行った。ゴルジュを泳ぎ、取り付きへ。斜爆は4mほどながら、ものすごい勢いだ。上から「水圧きついぞ」と声。斜爆の中に足をおかねばここは突破できない。そこはちょうど足をおく斜めの岩に水流が集まっていて、凄い勢い。右手にスリングを掴んで、せーので左足を滝につっこんだ。

即、足をすくわれ、そのままホワイトウオーターへ流された。すぐに浮かんで、ゴルジュの緩い流れに出た。ひえ〜こわい。ゴルジュ帯は足が着かない。壁にへばりついて息を整え、再度泳いで取り付きへ。

今度はスリングにアブミをつけ、それに乗ろうとしたが、バランス悪く乗り込めない。アブミを握りしめ、上からのお助けスリングをハーネスにつけ、再度足をつっこむ。即、また足をすくわれたが、今度は流されないよう必死でスリングを掴んだ。立とうとするが、水圧がきつくて足がびくともしない。腕力で懸垂であがろうにも、力を振り絞っても体が上にあがらない。ファイト〜いっぱぁぁつ!の沢編だ!でもあれFixロープに繋がってたしな。
「立て〜立て〜!」上から怒鳴られるが、足が全く動かないのだ。ヤナッチが近づこうと動いた所、水流が余計自分の体にもろに当たるようになってしまい、手が手が、、、もうあかん、、、
手を離してすぐ、ハーネスのお助けスリングも水圧には勝てず、またもやホワイトウオーターへ。

水の中で目を開けたら、水泡で真っ白だった。とにかくもがいて上へ。さっきよりも遠いところのゴルジュへ出てきた。
上から見ると、シンクロみたいに足が水面から出ていたそうな。
水との激闘に疲れ、そのまま一本さんのいる岩場まで漂っていった。

沢から上がると、猛烈な震えがとまらず、寒くてたまらない。そこで足踏みするも、今度はくらくらする。やば。低体温症か?ツエルトを被って火をつけ、お湯を作ってもらった。歯の根があわず、コッフェルを持つ手が震えまくり。お湯のなんとありがたいことか。長いこと、休ませてもらった。顔面蒼白だったらしいが、少しずつ落ち着いてきた。

ツエルトの中は別世界のように暖かい。
「帰るか」
…敗退決定。軟弱な自分のために。ごめんなさい。

どうやったら自分はあそこを突破できるのか?
米子でそばを食べながら、あれこれ案を練る。トポでは左岸を巻いているが、私以外は行ける箇所だ。給水車が走る渇水時に行くとか?男性との体重差は約20s、これも大きいかもしれない。じゃあ20s担いでいくとか。いやいや、20s太ろう。瀬田川の蛙岩で毎日練習?あの斜瀑、ロープで確保しても、足すくわれたら終わりやしなあ。でも、落ちても大丈夫って分かったし、何回もやったらいつか突破できるやろ。…何回もシンクロするんかいな。

上ノ廊下も巻かずに遡行するのは結構厳しいようだ。
さて甲川完全遡行はいつ実現するやら?! 

つづく(かなあ?)

<<Home <<List