日  程 2002年4月28日〜5月2日
地  域 北アルプス 八ッ峰T峰三稜〜剱岳登攀
メンバー 梁瀬・前川(記録)

4/28(晴れ)立山室堂〜八ッ峰T峰三稜P1
 
 立山室堂から入山する。室堂で警備隊の詰め所に入山の連絡をし出発する。登山計画書は20通ほど富山県警に提出されていた。雷鳥沢を登り、剱沢を下るがスキーヤーとボーダーばかりでクライマーは見あたらなかった。
  
 八ッ峰T峰三稜の取り付きは、剱沢と真砂沢が合流した後に大岩があり、これが目印になるというようなことを出発前に読んだ記録には書いてあったが、大岩が見つからない。見た目ではT峰はわかるのだが、どれが三稜かわからなかった。 
 地図とコンパス、ルート図を総動員し1時間ほどかかってやっと三稜を特定した。大岩は残雪に埋まって、頭がちょこっと出ているだけなのでわからなかったのだ。(岩の上にはブッシュがはえていた。すっきりした大岩とかってに思い込んでいたこともあってすぐに見つけられなかった。 → 皆さん思い込みには注意しましょう!特に我の強い貴方?)
 
 見上げる三稜は雪が少なく、いたるところにクレバスがあり、見た目に悪そうであった。(実際悪かった。これが今回の核心だった)
 三稜と四稜の間の四ノ沢から登り始め、適当なところで三稜に這い上がった。
 
 先行者のトレースはかすかに残っていたが、かなり古くほとんど認識できなかった。ゴールデンウィークのこのルートへの入山は、われわれ(OGK-ACチーム:梁瀬、前川)が一番であった。トレースを期待して1日入山をずらしたのに何故だ!!
 
 クレバスはいたるところにあり、これの乗越に苦労させられた。特に雪が切れているところは猛烈なやぶこぎになった。
 
 いくつかのクレバスを突破し、P1の登りにかかるが、ここのクレバスは悪かった。4mほどであるが垂直に切れている上、雪はぐさぐさでアックスがきかない。又下はすっぱり切れ落ちており滑落すると取り付きまで止まりそうにない。結局ロープを出した。潅木でビレイし、空荷で突破し荷揚げした。この上にも同じようなところがあり、やはり空荷で突破し荷揚げした。(ここが今回の山行の核心であった。)  
 
 めんどうくさいのでロープをつないだままコンテでP1のトラバースに入る。第1の核心スベリ台ルンゼである。トラバースは雪が消えており、やぶこぎをしながら進む。
 
 「今回の山行はクレバスの突破とやぶこぎばかりで既にいやになっており、この時点で帰りたくなっていましたが、いまさら降りるのもしんどいのでしょうがなく前進しました。」(前川談?)
 
 トラバース後やぶと雪のミックスした4mほどの壁を登り下るとスベリ台ルンゼにでた。ルンゼは日があたらないため、わりと雪が締まっており快適に登れた。(本当はばててよれよれであったが)
 
 傾斜しているP1の上で雪を切って整地しテントを張った。(18時頃着)
 
 
4/29(晴れ)八ッ峰T峰三稜P1〜八ッ峰主稜X・Yのコル
 
 6時頃出発する。クレバスが多いので最初からロープをつなぎコンテで出発する。
 相変わらずのクレバスとやぶこぎである。おまけに今日は岩稜付きである。
 「これってアルパインクライミングなのだろうか」と思いながら登る。
 
 P2、P3をすぎ広いP4のプラトーに着く。大休止しこれから登る核心P5の岩稜を観察する。雪がおおければ簡単そうであるが、雪はほとんどついてなく猛烈なやぶこぎになりそうである。ここは確保して登る。
 
 1Pめ(前川リード)
 簡単な雪稜を登り、岩稜の取り付きでビレー。(約40m)
 
 2Pめ(梁瀬リード)
 ホールド、支点の乏しい岩稜を登り後は猛烈なやぶこぎ。(約35m)
 岩稜は右から登りホールドがなくなったところで左に移るが、ホールドが乏しくここが難しかった。尚この上のやぶこぎは、これまでで一番ひどかった。
 
 P5のプラトーも広い。小休止した後P6に登る。相変わらずクレバスはあるが高度が上がってきたこともあり、やぶこぎはましになってきた。ここから先は簡単な雪壁登りなのでロープを片付けT峰の頂上を目指してひたすら登る。雪壁はT峰直下で岩稜に消えている。最後は這松と岩のミックスした岩稜を登るとT峰の頂上に出た。(13時頃)
 
 ここまででも、これまで登った雪稜(鹿島槍ヶ岳の東尾根や天狗尾根など)よりも難しかった。標高差も1000mほどあり1本のルートとして十分である。私は既に満ち足りており、天気が悪くなったらもう帰ってもいいなというような気分になっていた。それに八ッ峰はT峰の登り、八ッ峰下半、八ッ峰上半に分けて登れるので「ここから先は別の機会に登ってもいいや」とこの時点では思っていた。
 
 T峰の下りは岩稜沿いに懸垂下降したが、クライムダウンでも降りれそうであった。
 U峰、V峰、W峰と登り下りを繰り返し、各ピークの下りでは毎回懸垂下降した。
 「全く面倒くさい!」
 八ッ峰の稜線はナイフエッジになっていると聞いていたが思ったほどではなかった。確かに靴の幅くらいしかないところもあったが、3月に行った谷川岳の一・二ノ沢中間稜のナイフエッジの方がすごかった。またU峰から先にはT・U峰間ルンゼから上がってきた先行1パーティのトレースがあった。そのためかあまりびびることもなくロープをいっぱいに延ばしたコンテで登高できた。尚、快晴のため雪の腐りかたがひどく、先行パーティのトレースがあるにもかかわらず、雪にはまりまくった。
 
 X峰からは25mと45mの懸垂下降でX・Yのコルに降りた。(18時頃)この時点で悪天の兆し(レンズ雲が出ていた)があり、明日の悪天が予想されたのでテントをしっかり張った。
 
 21時頃から激しく雪が降り始め、下山時の雪崩れのことが気にかかるが、3時頃から土砂降りの雨となった。
  
  
4/30(雨)八ッ峰主稜X・Yのコル(停滞)
 
 1日中激しい雨が降る。小康状態にならないのでトイレにも行けない。手違いでラジオを持ってきていないので、今後の天気の状態がわからず困った。(梁瀬さんの携帯のiモードで天気予報が確認できると思い前川はラジオを持ってこなかった。しかしiモードでこの山行中、天気予報は確認できなかった。→ずっと圏外であった。又梁瀬さんは私がいつもラジオを持ってきているので今回も持ってきていなかったのであった。皆さん謙虚な譲りあいに注意しましょう。)
 この日はびしょ濡れを覚悟し2回トイレのためにテントの外に出たのみ。後は1日中寝て過ごす。
 
 
5/1(雨のち晴れ)八ッ峰主稜X・Yのコル〜八ッ峰の頭〜長次郎のコル 
 
 目を覚ますと相変わらずの土砂降りである。とりあえず雨がやむまで寝ることにする。
 8時頃やっと雨がやんだ。なんと35時間も雪や雨が降った。「げっそり!!」
  
 ガスの中、出発準備をし、10時頃八ッ峰Y峰の登攀開始。雨の後であり雪はぐさぐさに腐っている。又思ったよりも傾斜がきついため1ピッチめはビレイして登った。後はコンテと懸垂下降で進む。特に難しいところはなくZ峰に着く。この頃にはガスも取れ快晴となった。
 Z峰の下りは支点がなく竹ぺグの懸垂下降になると聞いていたが、クライムダウンでなんとかなった。
  
 [峰の登りは急な雪壁でクレバスもあるため、確保して登った。特に難しくはないが雪が腐っているため、アックスがきかずしんどかった。
 核心はこれで終わりで、後はてくてく歩いて八ッ峰の頭に登れるはずであったが、[峰と八ッ峰の頭の間のコルが5mほどの四角のブロックになって横倒しになっていた。先行者のトレースはその上にかすかに残っており、4/30の雨で崩壊したようであった。ブロックの前には見た目には降りられそうにないため、[峰のピークから懸垂下降で三ノ窓側に降りた。斜面はクレバスでずたずたになっているため、確保した。
 三ノ窓側の斜面を慎重にトラバースし、八ッ峰の頭の取り付き付近まで登り返した。ブロックは三ノ窓側に傾いていたので気持ち悪かった。ただ日が当たっていなかったのと水が流れていなかったので崩壊しないと判断しブロックの下を通過した。
 
 ところがである。登り返したあと崩壊したコルを見ると降りれそうであった。もっとよくみるべきであった。(降り口だけが急でそこを越えると後は緩かった)我々はここで1時間も余計にかかってしまったのであった。まあ済んだことはしょうがない。次のパーティがどうやってここを突破するか楽しみである。 → 「負け惜しみではないのだ!!」
  
 簡単な雪壁、岩稜登りで八ッ峰の頭に到着。ここから20mの懸垂下降2回とほんのわずかな登り返しで池ノ谷乗越についた。(15時頃)ここには他パーティが作った雪洞があり整地されていた。まだ時間があるのと明日の天気がどうなるのかわからないので先に進む。
 池ノ谷乗越から登り返したところで梁瀬さんが携帯で西村さんに連絡を取り、予備日を使用するということと、天気予報を聞いた。結局稜線に出てもiモードは使用できなかった。甲斐駒ケ岳の時は使用できたのに何故だ!!
  
 明日以降も天気がいいという情報を得たため、長次郎のコルまでで行動を打ち切りテントを張る。長次郎のコルは広く快適だった。
  
 
5/2(晴れ)長次郎のコル〜剱岳〜室堂
  
 7時頃出発する。30分ほどで剱の頂上に着く。頂上から見ると山は雪が少ない。今年は残雪が少なめだったが4/30の雨で更に減ってしまった。
 別山尾根から下山する。適当に降りていたらカニのタテバイに出てしまった。(普通はヨコバイを下る)面倒くさいのでそのまま下る。(カニのタテバイを降りた人はそういないのではないか。別に価値的なものは何もないけど?)
 前剱の下りは傾斜がきついうえ、雪が腐っているので後ろ向きに降りる。一服剱を登り返して更に降り剱山荘に到着。ここで登攀装備を全て片付ける。荷物が重くなる。(室堂で図ると20kg弱であった)
 剱御前へあえぎながら登り、いっきに雷鳥沢を降りる。更に室堂へあえぎながら登る。
 12時頃室堂到着。警備隊の詰め所に下山の連絡をし終了。久しぶりに充実した山行でした。
 
 ※ いっきに八ッ峰主稜をトレースできてよかったです。ばらばらにつないで登るとここまでの充実感はなかったかもしれません。みなさんたまには長い山行をしましょう。充実します。後ラジオは忘れずに!!
 
以 上

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