日  程 2002年9月15日
地  域 奈良県・大峰 池郷川本流 中流部ゴルジュ帯遡行
メンバー 梁瀬(記録)・岡村(京都雪稜クラブ)

「関西最強!?のゴルジュに河童舞う!」

***河童同人2002、池郷川本流中流部ゴルジュ帯遡行記***

 昨年、沢泳ぎ用にウェットスーツを買った。2年前、白川又川のあまりの冷たさに体が痺れ、沈むかと思ったからだ。ところが、昨年は全然使う機会なく、今年こそはと思えど、パートナーがいなかったり、天気悪かったりで、早くも9月の中旬。3連休のパートナーも確保できず、もはやこれまでか、と半ば諦めつつ京都雪稜クラブの「ユージ」ことオカムラ(岡村裕司)に連絡とってみたところ、3日間のうち1日は私用にあてたいので、1泊2日ならOKとのこと。やったー!、が、一つ問題が。オカムラってウェットもってないな。あいつタフだし、雨具でも大丈夫かな。まあ、本人の意向を聞いてみて、ダメなら小川山にでも行こう。

 しかしラッキーなことに、知人からウェットを貸して貰えそうとのこと。ヨッシャ、沢に決定だ!。何処にしよう。ちなみにオカムラ所属の京都雪稜クラブはこの連休、柳又に行くとのこと。なに〜、黒部の暴れん坊、天下の柳又か!。思わず、それに便乗させてもらいたくなるが、あんた、そりゃ無茶でんがな、っちゅうわけで、いろいろ考えた末、別に対抗意識を燃やした訳でもなんでもないが、溜まってた鬱憤も手伝って、あっちが天下の柳又ならこっちは関西最強のゴルジュを擁する池郷だ、ってなことになってしまった。最下流部の不動滝を含む全行程を2日でこなすのは難しいだろうが、最も一般的でオイシイ中流部ゴルジュ帯をかっさらうことは可能だろう。ウェット調達に時間がほしいとのことなので、14日はオフとし、15〜16日、池郷川本流中流部ゴルジュ帯に決定した。チーム名、河童同人2002。このネーミング、決して最近哀愁を漂わせ始めた我々の頭のてっぺんに由来するものではなく、二人とも泳ぎ大好きだからである。98年、南紀黒蔵谷以来のゴルジュ突破チーム再結成だ。

 ところが、どうも天気が怪しくなってきた。当初は連休明から天気が崩れるということだったのに、いつの間にか月曜に傘マーク(奈良県南部)がついてんじゃん。計画を見直さにゃならん。しかし、色々調べてみると、お目当の中流部ゴルジュ帯、遅いパーティはえらく時間かかっているが、速いパーティは1日で抜けている。我々はどうだろう。こと岩登りに関しては、分類学上、遅い方に分類されるだろう。しかし、泳ぎならどうか。我輩、泳ぎにはかなり自信あるし(特に根拠はないのであるが)、オカムラに関しては、週二日プールで泳いでいるという5.13スイマーである。ネガティブファクターが見当たらない。登攀に関しても、一応我々、アルパイン派である。そっち方面では大したことないかもしれんが、沢ではそこそこ通用するのでは!?。なにやら訳の分からん屁理屈こねて、日帰りアタックでいこう、そういうことになった。

 ところがところが、天気の崩れはさらに早まり、遂に日曜にも傘マークがついた。どうする?、そんなには降らんとは思うが。中止するか?。いや、我輩にはなんとしてもウェットを使わなければという使命がある。とにかく、現地まで行かにゃ気が済まん。状況に応じ、ルート変更も含め現地で考えよう、ということで、土曜日深夜出発した。が、R169を柏木の辺りにきたところから雨が降り出した、というより、この辺一帯は最初から降っていたのかもしれん。そして池原ダムに着く頃には結構降っていた。恐るべし大峰。我輩、もう、泣きたくなっていた。一体、いつになったらウェット使えるんだ−!。とりあえず、池郷林道に入り、小又谷橋のところで仮眠。この時点で我輩ほとんど、本流は諦めていた。

 早朝、雨は小降りになっていたので、とりあえず、下降点まで行ってみようと林道奥まで車を進める。ガスの中にまるで中国の水墨画のような岩塔群、石ヤ塔が見えてくると、林業用モノレールの設置してある場所に着いた。ここを下ればコンコン滝上の吊り橋に出るはず。ここで朝食を摂りながら、どうするか相談する。が、意外にもオカムラは「行くんですよね?」ときた。今回、計画立案は全て我輩に任せてもらったので、おそらく、オカムラはこれからどんな所に行くのかあまり分かっていなかった節があるが、この言葉で我輩は決心がついた。行こう!。行け!行け!GO!GO!池郷!GO!!。

 ギアを選別し、そそくさと出発する。日帰りとはいえ、関西最強のゴルジュを擁する池郷。ビバーク用具、キャメロット、ストッパー、ボルトキット、各種ピトン、スカイフック付アブミ、9mm50mロープ等、2人で分担しても結構な重量になってしまった。こんなんで泳げんのか?。しかーし、今回オカムラが、ウェットと共にライジャケ(ライフジャケット)も借りてきてくれた。我輩の分まで。これは強力なウェポンになるに違いない。

 林道から20〜30分くらいの下りで吊り橋に到着。ここで遂にウェット装着。我輩のは半袖、短パンの上下セパレート(カヌー用)だが、なんと、オカムラのは上下つなぎのフルスーツだ。しかも、エメラルドグリーン。すげー。カッコいいので写真を撮ってやる。さらにライジャケ、ハーネスを着け完全武装後(ライジャケの上からザック背負うのはフィット感がイマイチだなあ)、遡行開始。

 橋の下からいきなり泳ぎ。もう9月の中旬、素肌にあたる水はやはり冷たいが、ウェットのおかげで全く問題なし。石ヤ塔の岩塔を仰ぎ見ながら、巨岩帯を進む。そして谷が狭まってくるといよいよ中流部ゴルジュ帯の始まりである。のっけから肩車、投げ縄、ピトン打ちを交えた人工登攀。滝はどれもツルツルで大抵アブミのお世話になる。そして泳ぎ。二本足で歩くところなどほとんどなかったような気さえする。泳ぎ、そして攀じる、これの繰り返し。

 それにしても、さすが、5.13スイマーのオカムラ、ストロークが違う。ザックを背負ったままでも水を最後まで掻ききっている。我輩もわかっちゃいるのだが、なんせ、社会人になって以来泳ぐのは沢のみという体たらく、悲しいかな、水を最後まで掻いてると肩がパンプしてしまうので、結果、前の方で掻くのみになってしまうのであった。

 核心部ネジ滝も人工混じりで越え、一泳ぎすると、大又谷出合に着いた。ここからエスケープすることも可能だが、まだ昼過ぎ。当然、遡行続行異存無し。食事休憩の後、再度ゴルジュへ突入する。ここには、50m位も泳ぐところがあったが、途中でオカムラに追い抜かされた。むむ、さすが、5.13スイマー。

 巨大な釜を持つ二条12m滝で登攀ラインを探してウロウロしてたら、後続Pが来た。なんと、金沢から来たという。しかも、前日下流部から遡行してきたそうだ(さすがに不動滝は巻いたそうだが)。かなりの使い手と見た。

 大釜に飛び込み二条12m滝を左壁から越えると、再び釜をたたえる5m滝。最後の核心。だがここではまった。右手前の垂壁を人工で這い上がりバンドを左上するが、このバンド上部がヌメヌメ、ツルツルスラブで最悪。たまらずピトン連打で突破。時間ロスった。金沢Pに挨拶して先を急ごうとしたところ、悪場を越え油断したのかオカムラ、いきなりスリップして水中にドボン。3〜4m程の滑落だったが、頭打ちそうにも見えヒヤリとした。なんせ、2人ともノーヘルだ(ケーサツいなくてよかった)。

 この後、一泳ぎ、一滝越すと、谷は突然開けゴルジュは終わりを告げる。後は時折現れる、赤木沢を思わせる赤い岩盤の美しい流れを眺めつつ、河原を進むと横手小屋沢出合に到着した。ここで遡行を打ち切り、大活躍だったウェットとライジャケを解除する。二人とも借り物のライジャケがボロボロ。中の浮力材が剥き出しになっている。貸しボート乗るときに一緒に貸してくれるようなあまり上等じゃない物みたいだったので(借り物にケチつけてるし)、ハードな遡行に耐えられなかったようだ。
我々の泳力をもってすれば!?、別にライジャケなしでもノープロブレムだったとは思うが、こいつのおかげでかなり体力をセーブできたのではなかろうか。合掌(って、弁償せーよ)。

 あとは、踏跡辿り大又谷を経て林道に戻るのみ。概ね明瞭だが、未知の場所だけに油断ならない。しかも、まだ、3〜4時だってのに森の中は真っ暗だ。また、天気が悪くなってきているのだろう。林道に出る直前、先行P!?に追いつく。なんと先ほどの金沢Pだ。なんで前にいるんだ?。話を聞くと、ゴルジュが終わったところで左のガレルンゼを登ると踏跡に出たとのこと。

 林道に出たところでヒルチェックし(幸い大した被害は無かった)、金沢Pと別れ、“今日の凱歌に足取り軽く♪(谷川小唄)”林道を下る。いつしか雨が本降りになっていたが、ゴルジュ河童達にとっては運動後のシャワーみたいなものである(遡行前なら大騒ぎだが)。

<<Home <<List