日  程 2002年10月6日
地  域 新潟県 明星山P6南壁 フリースピリッツ登攀
メンバー 西村・河野(記録)

「やる気に水をさすようで申し訳ないですが、黒部峡谷鉄道は現在不通区間があって 折り返し運転になっています。」・・・憧れの奥鐘にとうとう行ける、でもコワイ、とくねくねしておった矢先に、前川さんから貴重な情報を頂いた。今年は全面開通の見込みもないようだ…つまり奥鐘へのアプローチ手段がない。これは私にはまだ早い、今年は行くなという神の思し召しではないか??残念な気持ちと安堵感の入り交じった複雑な気持ちで、代替案を検討。西村さんは奥鐘案が消えた時点で仕事が入ったので、日帰りできる所しかない。ほな明星のフリースピリッツは? 自分は2年前に梁瀬兄弟と登ったが、未熟者ゆえフォローで荷物持ちとカメラマンに徹し、さっさか登る2人に遅れまいとついていくことに精一杯で、当然A0しまくり、ルートのことさえろくに覚えていない。もう一度行きたい、できればオールフリーで、と願っていた。自称「人工壁育ち中」西村師匠も膝ポンで決定。

21時頃大津を出発し、2時頃現地に到着、テントで仮眠する。

5時半起床。やばい、寝坊だ。朝食を詰め込み、荷物は一つのザックにまとめて、小滝川に降り立つ。幸いにも膝下の渡渉ですんだ。

ベストシーズンにも関わらず、拍子抜けするくらいに誰もいない。何で?この時間で先行Pがいなかったら、ルートファイディングで時間ロスし過ぎたら完登は厳しい・・・。
取付に向かうが、早速間違えて別ルートの取付まで登りすぎてしまったようだ。左上バンドはもう少し下に見える。そそくさと下って、準備。ロクスノのトポには取り付きにボルトがあるって書いてあったが、分からなかった。
7時半西村さん先行で登攀開始。

1P(西)
左上するバンドを登る。朝一なのでフォローながら体が慣れずコワイ。

2P(河)
まず上のバンドへ乗っ越す。再び左へバンドトラバース。スタンスは広い。

3P(西)
アンダーをきかせながら登る楽しいピッチ。

4P(河)
左上に梅干岩トラバースの支点が見えるが、ルートは一旦右上する。

5P(西)
ハング下を左へトラバース。

6P(河)
下部核心のピッチ。出だし凹角はかぶり気味でしんどい。気休めのフレンズをかましてトラバースに入る。トポにはチビに不利とあるが、確かに後半下り気味のトラバースに入るところは、スタンスがない。ホールドはしっかりしているので、ぶら下がるようにそっと移動。少しの我慢でスタンスに届いた(ちなみに小生153cm)。背の高い西村さんは難なくクリア。

7P(西)
直上してカンテをのりこえ右へ移る。

8P(河)
傾斜は緩くなり、どこでも登っていけるような所。適当に登るとたまにハーケンを発見。ハング帯の下でビレイ。

9P(西)
ハング帯右のスラブにもぼろスリングがたれており、どこから越えるのか悩む。ハング帯左の切れ目から行けそうなので、そっちへ西村さん突入。クラックに入る前にハーケンを一本打って様子見。どうも悪そうで、ルートではないようだ。ハング帯をよく見ると、正面の凹角にハーケン発見。リングボルトも見えている。あちゃ、こっちだった。ちょっとハング気味だが、結構支点もとれる。ここを抜けると、もろい岩場になり中央バンド手前で区切る。

10P(河)
ガレガレの中央バンドを横切って次のビレイ点へ。スリングのかかったビレイ点が見えていたので次のスタート地点と思い、そこへ行ったが、西村さんはもう一段上からの方がよさそうだと言う。リングボルトも先に見える、ってことだったので結局もう少し左上の支点へ。小さな木にスリングがかかっており、これとボルトでビレイ点が作れる。
しばらく小休止。

11P(西)
広いバンドを右上するが、支点乏しく分かりにくい。西村さんの巧みなルーファイで黒い垂壁へ。

12P(河)
鷹ノ巣ハング下までのピッチ。古いフィックスロープがぶら下がっている。あまりよくないのにランニングがあまりとれない。フィックスロープの支点でビレイするが、その右上にもビレイ点があった。次のピッチを考えるとそちらの方がよいのではと思い、西村さんにはそちらに行ってもらう。

13P(河)
ビレイ点を移動したので、順番が変わってしまった。ここはトラバースルートだが、出だしが非常に悪そう。すぐ左はやばそうだったので一旦直上するが、別ルートのビレイ点とおぼしき所まで上がってしまった。ここから左にトラバースしようとするが、とても4級のムーブではなく、ホールドもスタンスもない。色々なムーブを試すが、どう考えてもおかしい。下から見かねた西村さんが、そこルートちゃうで。しゃーないし振り子で行こいやっと。ここまでフリーで来たので頑固としてA0はしたくなかったのだが、戻るに戻れず間違えたところで拘っても仕方がない。もう1回だけトライさせて下さいとやってみるがやっぱりだめ。泣く泣く振り子にして正規ルートに戻る。
戻ってからは高度感のあるトラバースながら支点もあるので面白かった。ある箇所でコワイからしゃがんで進もうとしゃがんだところにハーケンを発見し、同じことやってるんだな、とにんまり。

14P(西)
ここはトップで行きたかったけど、順狂わせでフォロー。西村さん、フリーで突破。グレード的には一番高いピッチだが、支点も多い。私もフリーで抜ける。このピッチで実質的な登攀は終わり。

残る2ピッチをつるべで登り、大きな木のあるテラスへ出て終了(15:30)。
何とも言えない充実感。固い握手を交わす。

小休止をして下山開始。向こうに見える大木を目ざす。そこからは赤テープに導かれ、楽勝下山・・・のはずが、途中から西村さんはテープを無視して別方向に下ってしまった。「秋は人に踏まれているので歩きやすい」ってガイドに書いていたのに、我々が下っているのはどえらいとこ。かなり下った所で運良く正規ルートに戻れた。西村さんは「読みが正しかったのだ」とのたまったはったが、私はキレる寸前だった。

今回軽量化のため、靴もクライミングシューズのままだったので、下山は結構つらかった。爪がはがれそうに痛い。

最後、水道管の橋を渡り、暗くなる前に駐車場に到着(17:30)。ギアを片づけているうちに日が暮れ、もう一度登った壁をゆっくり見たいという望みは叶えられないまま帰路についた。

☆☆☆

このルートは壁の弱点をついているため、右へ左へとトラバースも多くルート自体はすっきりはしないが、クライミングとルートファインディングの醍醐味を満喫できる素晴らしいルートだと思う。今回、西村さんとはオールフリーで行こう、とは全く話をしていなかった。失礼な話、西村さんは昔ながらの山ヤだと思っていたから。なのにあの西村さんが(ホンマに失礼やな)、ヌンチャクをつかまずボルトを踏まずフリーに拘って登る姿は感動すら覚えてしまった。故に2人ともにフリースピリッツを炸裂できたことは非常に嬉しい。
来シーズンは更に登攀とルーファイの力をつけてマニフェストに挑戦したい。・・・奥鐘は行けるかな?


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