日  程 2000年8月11日〜12日
地  域 南アルプス 北岳バットレス第四尾根下部フランケ〜Dガリー奥壁
メンバー 河野・梁瀬(記録)

屏風岩東壁ルンゼ、奥又白、黒伏山南壁など、梁瀬二等兵の案はことごとく河野隊長に却下され、結局、盆の本チャンは北岳バットレスという隊長案が採択されることとなった。ルートは、第四尾根下部フランケ〜Dガリー奥壁への継続。山渓クラシックルート集をみると、15ピッチにもおよぶフリーのロングルート、とある。果たして登攀スピードののろい我々に一日で登れるだろうか。おまけに、夏のバットレスといえば、大渋滞も予想される。と言う訳で、我々は以下2通りの作戦をたて、どちらの作戦を採用するかは、現地で他クライマーの数を見て決定することとし、8月10日深夜出撃した。

A案:ポールポジション大作戦
アタック日、可能な限り早発ちしてトップでルートに取付き、後続パーティにどんなにあおられようとも、頑としてブロックし続けるという、いわば正攻法。

B案:トラ・トラ・トラ大作戦
入山日にいきなりルートに取付き、途中でビバークして翌日完登するという、真珠湾もビックリの奇襲作戦。

8月11日
 早朝に広河原に到着するも、眠くてとてもすぐ出発することかなわず、いきなり沈没。選択の余地なく、早々とトラ・トラ・トラ大作戦のB案は消滅した。9時半頃、のろのろ起き出し、食事、パッキングを終え10時半頃出発する。思いっきりダラダラ登り、14時くらいに白根御池BCに到着。翌日の早発ちに備え、19時には食事を終えて就寝体制に入るが、ラジオの天気予報が、台風の接近に伴い、翌日夜から雨が降ることを伝えており、愕然とする。夜とはいえ、山ではもっと早く降る可能性があるし、そもそも、我々の登攀スピードからしてビバークもありえるではないか!。
やはり、河野あるところ嵐あり、なのか。B案を放棄したことが悔やまれるが、もう遅い。天候に注意しながら、猛スピードで登るしかない。

8月12日
 2時起床、3時半頃出発する。6時前、下部岩壁Dガリー大滝下に到着し、予定通りポールポジションをゲット、ていうか他にクライマーいないし。一応晴天だが、東側の鳳凰には既に怪しげな雲がかかり、悪天の兆しが見られる。そそくさと準備を終
え、6時半頃、第5尾根支稜の登攀を開始した。

 3Pのクライミング(実質1P)で第5尾根支稜を抜け、下部フランケに突入。核心の3P目(IV+、A1)は、隊長が奮闘的クライミングで突破した。リード野郎の二等兵、おいしいところを持っていかれた腹いせに、4P目、5P目を一気に稼ぐが、最後ロープがいっぱいになり、少々焦った。

 下部フランケの登攀を終え、Dガリーにトラバース。Dガリーを2P登って奥壁取付きに10時半ころ到着した。隊長が、ザックのストラップに付けていた腕時計がなくなった、と泣きべそをかいていたが、単に位置がずれて見えなくなっていただけで、ちゃんと付いていることがわかり、機嫌を直す。

 Dガリー奥壁は、二等兵からリード開始。一個目のハングを越えて一息付き、ふと下を見ると、なっなっ何と隊長、こちらには目もくれず、なんかムシャムシャ食べているではないか!。隊長曰く、「なんか、ぐずぐずしてるから」だと。アホかー、それがピンチの証拠だっつーの。2P目のクラックは、まさにクラッカーの二等兵のためにあるようなピッチだったが、「ここは、わらわの番じゃ」とキャメロットを奪い取って隊長が行ってしまった。そのくせ、4P目のピンなしチムニーは、「ここは、二等兵に譲ってやろう」と勝手に譲られてしまった。最後の城塞は、右のチムニー(III)を登った。当初二等兵は、左のチムニー(III、A1)を予定していたが、右のチムニーがあまりにも面白い形状だったため、勝手にこっちにビレイ点を設置した。チムニーというよりも、バックリ二つに割れた岩の間を行くもので、幅70cm位のゴルジュって感じ。この手の登攀に不慣れな隊長、悪戦苦闘しながらリードして行った。くっくっく、イレブン登る隊長が、III級にてこずるのを見て、二等兵すこぶる上機嫌であった。

 登攀終了点に着いて時計を見ると、13時半。登攀開始から7時間が経過していたが、このルートの所要時間が5〜7時間。なあんと、すれすれだが、所要時間内で登ってしまっているではないか!。今まで、結構本チャン登ってきたが、所要時間内で登ったのは、初めてではないだろうか。ヤリー。

 あとは、北岳山頂を経て登山道をBCに下降。これまた、ダラダラ下降したため、BC着が16時過ぎになってしまった。二等兵としては、もう一泊して翌日ゆっくり下山といきたいところだったが、「天気が悪くなる前に、下山するのだ」という至極もっともな隊長の主張に反論理由も見つからず、しぶしぶ下山することとする。途中、ヘッドランプの電球が切れたとかで暗闇の中で立往生していた老夫婦を伴い、20時半頃、無事広河原に下山した。

感想
 非常に多くのクライマーを迎えている北岳バットレスだけに、非常に安定していた。今回のルートは、そこそこ難しいピッチが続くものの、日本の本チャン特有の悪さは全く感じられず、草付きなんかもよく踏まれて完璧なスタンスが出来ていた。残置は少な目、と紹介されているが、キャメロットを1セット(#0.3〜#3)持参したので、問題なし。普通よりも、1日早い入山だったためか、懸念された渋滞も全くなく、四尾根主稜に数パーティ認めた程度であった。天候も、途中からガスった程度で雨には降られず、ヨカッタ、ヨカッタ。でも、翌日小川山に移動したら、降っていた。やはり、河野あるところ嵐あり、ナノダ。


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