日  程 2000年8月27日
地  域 大峰 池郷川 小又谷
メンバー 藤田(由)・高橋・藤田(誠・記録)

明日どうしよかなと、メールをチェックしてみると、高橋から「沢に行きたい」とのメールが来ている。確かに、次の日は、関西すべて晴れマークのいい天気。こういう時は、無理矢理にでも沢に行ったほうが後悔しないだろうと、沢行き決定。場所は、どこも水が少なそうなので、難しめの沢のほうが楽しめるだろうと、池郷川の小又谷にする。池郷川といえば、”ゴルジュの続く関西最強で悪絶の谷”、と紹介されているので、その支流といえども、なかなか手を出す気が起きなかったのだが・・・。

 さて、同行する高橋だが、彼とはよく山行に出かけるのだが、いつまでたっても、知識、技術を身に付けない男である。山の場所も、地図の見方も、安全確保も、その他もろもろの知識は、無いに等しく、変な自己流の解釈で、危険にさらされることがたびたびある。それでも、彼は奇声を発し、はしゃぎまくってくれるので、恐ろしい場所でも、大変にぎやかで楽しい所となる。今回も、谷間に奇声が何度も響き渡たることになる。

 23:30に家を出発し、4:00前に、小又橋に到着する。橋の横にテントを張り、寝る。8時過ぎに、出発する。堰堤を2つ越えた川原で遡行準備をする。遡行を開始後、すぐにサワッチが泳ぎ始める。この谷は、嫌でも、泳がなければならない所が、いくらでも出てくるから、そんなとこで、無駄な体力を使わなくてもいいのに・・・。後で苦労するよ・・・。

 実際、すぐに狭い廊下が出てきて、泳ぎを強いられる。水温は、神崎川よりも、ちと冷たい程度なので何とかなる。私は泳いで取り付き、手掛かりの無い左岸の落ち込みを、抜群のテクニックで越える。その後、泳ぎと、徒渉の連続で、とても楽しい。天気がいいので、狭いゴルジェの中でも気持ちいい。ゴルジェを抜けると、河原となり、堰堤を2つ越す。2つ目の堰堤は、少し巻いて、立木に支点をとり、懸垂で降りる。大釜を伴った、斜滝は左岸を、残置ロープに助けられて登る。

 2段30mの滝の大滝と、洞窟のような場所に落ちる15mの滝は、どちらも、左岸を巻くことになり、取り付きを登るのにロープを必要とするが、小さく簡単に巻く事ができる。問題となるのは、2段40mの滝の巻き。ルートが分かり難く、足場もよくない。ここは大きく高巻かなければならず、苦労する。ここが核心となる。

 さて、1時間近くもかけて、高巻くと時刻は・・・4時前!!たいして苦労なく進んできたが、ちょっと遊び過ぎたみたい。急いで、先に進みたいところだが、サワッチのペースが異様に遅れ始める。膝が痛み、ゆっくりしか歩けないらしい。ん〜、このペースでは、日があるうちに、登山道に出るのは、まず無理である。谷間は既に、薄暗くなり始めている。これって、かなりやばいんじゃないの。

 どう考えても、このまま進んでは時間切れになりそうである。ここは、どこか適当な谷を登り詰め、明るいうちに尾根の登山道に出るしかないと、地図を見ながら検討する。しかし、ガイドに載ってない谷を遡行して、無事に抜けられるのか、少し不安である。どれだけの藪こぎが待っているかも分からない。しかし、迷っている時間もないので、検討をつけて、枝谷に入っていく。ここから、我々の脱出劇が始まる。遡行困難な滝など出てくるなよ、と祈りながら行く。4m程の滝が出てくるが、巻いていける。そのうちに二股に出て、水が枯れた右俣を行く。どんどん高度を稼ぎ、稜線が近づいてくる。いい感じである。「このまま抜けれるンじゃない」とお気楽モードに入りかけるが・・・。谷はガレ場となり、登るのは危険なので、藪に突っ込んで行く。トゲのある木や、山ヒルをかき分け、ひたすら登る。藪こぎ、藪こぎ。いつになったら出るンやと、不安と疲れがピークに達したころ、尾根に飛び出した。

 「やったー」。「ん」。「なんか、あまり道っぽくないよな〜」。「いやいや、そんなはずはない。国土地理院の地図にもちゃんと載っているではないかい。」と、安堵と不安が交差する。取り敢えず道らしき、道をたどって行く。が、次第に、道が不明瞭になり、藪に消えていった。「が〜ん、どないしよう。」。すでに、時刻は6時。尾根に出てきたので、まだ明るいが、あと1時間が限界だろう。暗くなれば、もう道に出くわしても、気づくこともが出来ないだろう。「やばいな〜」。今日中の下山は絶望的になってきた。堀内さんの、遭難騒ぎが頭をよぎる。”行方不明の登山者、自力で下山する”とかよくあるけど、こういう事なのね、と考えてしまう。

 さて、そんな事を考えている時間ももったいないので、一旦、見晴らしのいい場所まで引き返して、もう一度、現在地の確認をする。あの堀内さんに匹敵する、抜群の読図力で、地形を読みとる。そ、そうか、この尾根は、目的の尾根に続く尾根だ。この尾根を登り詰めれば、今度こそ、目的の尾根にでるはずである(尾根、尾根とすいません、この時、尾根だけが頼りだったもので・・・)。地図で、コンパスを目的の方角に設定し、藪の中に突っ込んで行く。コンパスで何度も、方向を確認しながら、藪の薄そうな所を、かき分けていく。藪中は、既に暗く、いよいよ視界が無くなってくる。1m先も見えないので、はぐれない要に声をかけあっていく。もうだめか、と上をみると、すこし明るい空間が見える。「もしかしたら!」と一人で駆け上がると、道にでた〜。「でたー、でたぞーーー。」と叫ぶ。続いて上がってきた二人も、気が狂ったように「出たぁー、出たぁー」と、叫んでいる。本日の山行の、感動のクライマックスである。やっぱり、沢は藪をかき分け、最後まで抜けないとね。充実感が違うよ!

 飛び出した、車道のような、広い尾根道で下山準備をしていると、ものの5分程で真っ暗になってしまった。ほんと、ぎりぎりセーフで抜け出せたことになる。着替えている3人ともヒルが付いていたが、たいして驚かない。「あっ、そっ」、って感じ。抜け出した感動で、みんなおかしくなっていた。

 あとは、延々、ヘッドランで道を下り、3時間で車に到着、22:00。朝の8時から、夜の10時まで、14時間行動していたことになる。遭難騒ぎにならないよう、電話をかけ、家に着いたの、朝の2:30でした。おわり。
 
 小又谷は、ゴルジェ好き、泳ぎ好きには、面白い沢です。水が少なければ問題となる所もないでしょう。次は、いよいよ、よりウエッティな池郷川本流に行きたいですな〜。

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