日本海戦隊  >  日誌(今月分)


踊る大捜査線 THE MOVIE 2
レインボーブリッジを封鎖せよ!


ネタバレ注意!
また、ここでは、否定的な感想ばかりなので、好まない人は見ないように。
私のスタンスを説明すると、『踊る大捜査線』初回放送時からのファンで、一作目の映画も好きです。
しかし、映画よりもテレビ版の方が面白いと思っています。
今回も期待して見に行ったため、合格点を高く設定していた可能性があります。
他の方は、割り引いて考えた方がいいかも知れません。


まず前提条件として、次の事を覚えておいてください。
前作で小泉今日子が犯人役として登場しました。
重要な点は、
ネタバレ──
「小泉京子」─×─「副総監誘拐犯人」
「小泉京子」─×─「青島を刺した人間」
この例でわかる通り、『踊る大捜査線』の手法として、
事実を明らかにしていても、その関連性は変えられているということ
普通に連想される事は、わざとはずす展開をしているという点。

これを前提条件として覚えておいてください。

映画は豪華客船のシージャックから始まる。
帽子で顔を隠してはいるものの、どうやら、犯人はすみれや雪乃のようで、
テロリストのリーダーとして、青島が登場する。
大方の予想通り、マスコミを招いての訓練に過ぎなかった。
青島はおとなしくしていたというのに、(年末特別警戒に登場の)SAT隊長が、
「訓練とはいえ、手は抜かんぞ。怪我をしたくなければ、本気でやれ」
と言ってのける。
発憤した青島以下、湾岸署面々のがんばりで、結果はテロリスト側の圧勝に終わる。
──このあたりは、映画『遊びの時間は終わらない』ですね。
青島が軍事マニアならば、もう少し作戦に凝ってほしいと思った。
もしも、宗介がテロリスト役をやったなら、無敵だろうと考えてみたり……。
とはいえ、ここは気に入ったシーンではあります。


いくつかの事件が発生します。
1)家族連れのスリ
2)少女暴行事件(首筋に噛みつくだけ)
3)猟奇殺人?(死体をロープや花で飾るだけ)

──殺人事件捜査本部が湾岸署に設立されるが、このとき、湾岸署側はやたらと手際がいい。
これまでの時間で何度も実施したんだろうなぁと感じる場面。
あと、フジテレビの『めざましテレビ』などで、岡村隆史が犯人役と宣伝してました。
前提条件からすると、岡村は殺人犯にあてはまりません。


今回の殺人事件を指揮する、初の女性管理官・沖田が登場。
室井はその補佐役。
迷ゼリフ「事件は現場で起きているんじゃないわ。事件は会議室で起きているの」(だっけ?)
を発します。
──狙いすぎでは?
「事件は会議室で起きているんじゃない! 現場で起きているんだ!」は、
まあ、名ゼリフでしょう。(いささか、食傷気味で、聞き飽きてはいますが)
しかし、今回は、前のセリフを意識しすぎて空回りしている気がします。
あえて言うなら、「事件を解決するのは会議室なの!」となるのでは?
だって、会議室で「事件の発生を見る」ことはできても、決して「起きて」はいないんだから。


(実は、ここは記憶があいまいで、間違っている可能性あり。)
お台場に設置された監視カメラ網の担当者を所轄から選抜するよう、沖田は室井に指示する。
選ばれたのは、青島とすみれ。
ここで第二の事件が発生。その現場はカメラの撮影範囲だった(らしい)。
「青島達を選別した責任をとれ」と沖田は、室井にモニター係を命じる。
──しかし、何十台とあるカメラを監視し続けるのは、初心者に可能なんでしょうか?
根本的に、なんの訓練もしていない「所轄に任せる」点が問題だと思う。
それとも、モニター係ってのは、閑職に過ぎないんでしょうか?
まあ、上司とは「部下の能力を無視して仕事を任せ、ミスがあったら怒鳴りつける」
役回りだと断言したいなら、まあ、納得もできます。


この事件の目撃者として女性が保護される。
沖田は、目撃者を囮に犯人を誘い出す計画をたて、拳銃の携帯もゆるさずに、
盾替わりに所轄の刑事を起用する。
選ばれたのは、またしても青島とすみれ。
その護衛の最中に、暴行事件の似顔絵に似た人物と、家族連れのスリの犯行を目撃します。
ちょうど、不審人物が出現したため、二件の容疑者を故意に見逃す。
さらに、不審者にも逃げられてしまう。
──他にも犯人がいるかも知れないからと、確保を待つように指示したのは沖田本人でした。


遅れて暴行犯を追いかけた青島は、暴行事件の新たな被害者を保護するも、
犯人(岡村)の一撃を受けて取り逃がしてしまう。
この後はうろ覚えなんですが、沖田から
「所轄の事件なんてやらなきゃいいのよ」
などと怒鳴られ、二人は憤ることに。
──さて、岡村の見せ場はここだけ。
ほとんど、話には絡みません。


犯人との交渉役として、ネゴシェイターが呼び出される。
彼こそが、ロスでの研修を終えた真下であった。
──犯人との交渉はそれほどとは思いませんが、ウンチクは面白かった。

沖田の命令で所轄の刑事は全ての公衆電話に張り込みをかける。
雨の中、犯人の居場所を特定した室井の報告により、犯人のいた公衆電話に警官が急行する。
最初に到着したのは雪乃だった。
だが、室井は、雪乃に迫る犯人の影に気づく。
携帯は電波が悪くつながらない。
そして、雪乃の悲鳴。
──なぜ、犯人は戻ったのか?
警官を人質にするのが目的だから?
このあたりの説明が劇中では行われてません。
もしかすると、電話中に財布をスラれたので、落としたと思って拾いにきたのかも。


必死の捜索にも、雪乃の行方はわからない。
会議の席上、和久が犯人の意図を読みとる。
ここで、犯人の形態が判明する。
上下関係がまったくなく、独立して行動する集団であることが。
犯人を逃がさないよう、お台場と外部との交通機関を封鎖を狙うが、
レインボーブリッジだけが、管轄の違いで封鎖できない。
──さて、このあたりは、やはり見せ場なので面白いです。
犯人については以降で、述べたいと思います。


雪乃が拉致された公衆電話のそばで、すみれはスリ一家を逮捕していた。
その証拠品の中から、犯人のものと思われる財布と、トンネルの地図を入手。
かけつけた青島は、SATと合流し、トンネルへ突入する。
──青島が、同行するのは、まあいいです。言っても聞きませんから。
しかし、SATの先頭に立って走るのはどうなんでしょう?
SAT側は止めようともせず、従っているようにしか見えません。

さて、唐突ですが、質問します。
Q:ブービートラップ(ワイヤーを張るタイプ)があったとして、その後の展開は?
1)「気付く」 → 「避ける」か「解除する」
2)「気付かない」 → 「作動させてしまう」

A:劇中では、「1.5」です。
なんと、「気づく」→「わざと作動させる」
初めて見た!
陽動などの理由があれば別ですが、「なんじゃこりゃ!?」
爆発物の可能性もあるのに平気で作動させます。
警報装置として設置していたようですが、それでも作動させる必要は皆無では?
宗介なら絶対にしないぞ!


侵入者に気付いた犯人が、確保前に逃亡!(当たり前だ!)
白昼、雪乃を人質に二人の犯人が逃走を図る。
皆が伏せている中で、一人の女の子が立ちつくしている。
犯人を包囲したSATが発砲許可を求めるが、沖田は一般人への被害を恐れて、厳禁する。
遅れて駆けつけたすみれが、女の子を救おうと飛び出した。
そして、銃声。
静まりかえったその場で、青島がすみれにかけよる。
結局、犯人は取り逃がしてしまう。
──名シーンにしたかった場面らしいですが、非常に疑問。
まず、雪乃が襲撃された事実は宣伝されているので、
「血が足りない」のは「襲撃された」雪乃以外のはずです。
答えは、すみれでした。

が、ほとんど感情移入できませんでした。
まず、すみれが女の子に覆い被さって撃たれたのなら、納得できます。
しかし、ここの演出が不可解で、位置関係も不明なので、女の子と無関係にすみれが撃たれます。
犯人が拳銃で狙う絵がないので、事故にしか見えません。
すみれが飛び出して、犯人を刺激したため、犯人はその動きに反応して発砲。
狙ったわけでもなく、たまたま暴発した可能性が高し。
つまり、すみれが飛び出したりしなければ、発砲すらおきなかった気がします。
女の子はほったらかして話は進むし。

このときすみれが、「私の体の中から弾丸を取り出して……」と口にします。
現実的には無理だし、どういう意図で口にしたのか理解できませんでした。
すみれが撃たれた自分に陶酔しているように見えて、非常にヒキました。
『2ちゃんねる』で、「名ゼリフをいれるように、脚本家が指示されていた」との書き込みが
ありましたが、この説には納得してしまいました。
事実かどうか知りませんが、そういう経緯で言わせたのなら、諦めもつきます。

沖田に動くなと命じられ、SATはその場で待機しています。
変わりに誰かが動いた場面がないので、ノータッチで犯人を逃がした模様。
追跡したかどうかも全く不明。


思うように展開しない現場にヒスを起こす沖田。
新庄が受けた電話の指示により、沖田は解任され、変わりに室井が復帰する。
犯人の潜伏先を突き止めるため、階級や所属に関係なく、所轄から意見を求める。
ここで、署長の不倫相手が発覚。(私が一番笑った場面)
沖田が退場しました。
ただ、嫌われ役のために登場した人物でした。
実績を欲して名乗りをあげて、捜査本部では部下達の邪魔をしまくり、
面倒を押しつけて、一人暴れて、帰っていきました。
──キャラとして問題ありすぎ。
新庄の場合は、嫌われ役とはいえ、『THE MOVIE 1』では、室井にコートを渡したり、
ラストで、青島の負傷を気にもかけない上層部に憤るなど、見せ場がそれなりにありました。
ところが、沖田自身の見せ場は皆無。

疑問なんですが、女性の目から見て、問題はないんでしょうか?
私は、「これだから女性は仕事(?)に向かない」という印象を受けました。
別に男尊女卑のつもりはありませんが、こういう汚れ役(?)なら男でいいと思います。
話題性で女性管理官としたのでしょうが、私はイヤな印象しか残りませんでした。
私が気にしすぎなのかもしれませんが……。
(どこかのサイトの『ウォーターボーイズ』感想を読みましたが、
ニューハーフの扱いに不満をぶつけていて、私はまったく共感できなかったことがあります。
今の私が、その立場なのかも……)


皆の情報を元に、捜査員がしらみつぶしにあたっていく。
雪乃の救出に成功し、犯人を二人逮捕。 。
──またまた、ブービートラップが登場。
今度は反応させずに、青島が犯人に迫ります。
そのための伏線としても、一度目の行動は不可解です。


そして、レインボーブリッジの封鎖に手間取っていると、
その傍らをトラックが走り抜ける。
不審に思った青島が、トラックを走って追いかける。
犯人が、トラックから降り、距離をとったまま青島と組織について言い合う。
青島を残して走り去ったトラックだったが、突如、閃光弾が炸裂する。
室井の「各自の判断で犯人を確保しろ」との命令で、SATもまた独自で動いていたのだ
──なんでそんな目立つ場所で、のんびり立ち話をるんですか?
犯人は、わざわざ車を止めて話す必要は皆無のはずです。
逃げ切れると判断して、一刑事をやりこめたかっただけなんでしょうか?
いっちゃ悪いが、現状判断は甘いし、個人の欲望を我慢できないし、
それじゃあ、「リストラされて当然だよ」


集まった取材陣に青島が「血が足りない」と献血を呼びかけた。
そして、青島に勇気づけられ、すみれの手術が始まる。
湾岸署の前には、献血のための長蛇の列がならび、そこに不審な影が現れる。
少女に噛みつこうとした暴行犯がここで逮捕。
その後、いつもの日常にもどり、その中にはすみれの姿もあった――。
そして、エンディング。
──青島が呼びかけるシーンは「いかにも名場面」
しかし、青島が口にするまで、血が足りない事実は一度も出ていません。
アドリブで暴走しているようで、私は呆気にとられました。
ちなみに、すみれの手術が夜まで行われなかったのは、血が足りないから?
説明不足が多すぎる。
岡村のオチもあまり面白い物じゃなかったし。


エンディングでは、その後の一場面が表示されていきます。
──青島が室井と再会したとき、「潜水艦の事件以来ですね」と口にします。
エンディングの最後に表示される写真が
「青島と室井のバックに、浮上している潜水艦が煙を噴いている」場面です。
こっちの話の方が、よっぽど興味あります。


──さて、なによりも気にいらないのが犯人です。
前作での、「無節操で、無自覚な、未成年の愉快犯」という設定は、面白いし、
その後の展開にも驚きました。
それにくらべて、今回はダメダメでした。
わずか五名の犯人で、リーダーがいないとかいわれても、あまりに敵として物足りない。

映画『マーシャル・ロー』も似たコンセプトでした。
続発するテロ。しかし、それは組織による犯行ではなかった。
その都度犯人は逮捕されるが、あらたな犯人が、あらたな犯行を起こす。
アラブ系の人間が、次々にアメリカへ牙をむく。
どこまで事件が続くか、無限の恐怖がつきまといます。

しかし、この映画では、リストラされた2千名ものサラリーマンが容疑者にあがるものの、
実際に徒党を組んでいたのはわずか5名。ヘタレばかりで、まったく印象に残りませんでした。
やはり、「悪役は重要だ」と痛感しました。