『夢にまで見た仲間達』 ※ネタバレあり
雛見沢村は寒村のため、子供達が非常に少ない。学年や学級の区別もなく全ての生徒が一つのクラスに在籍している。
その教室で、圭一とレナが以前に見た悪夢をネタに盛り上がっていた。
「……確かに今の話も凄かったが、俺のとっておきにはかなわないぜ」
「えっ? ど、どんな夢なのかな? かな?」
圭一の話に、恐怖もあるが興味もある。レナがおそるおそる先を促した。
「実は俺は……、レナと魅音を殺してしまったことがあるんだっ!」
「レナと魅ぃちゃんを!?」
さすがにレナの声が跳ね上がる。
仲間意識の強い圭一からは想像もできない言葉だったからだ。
「なんの話をしているんですの?」
「……ボクも興味あるです」
年少組の沙都子と梨花までが話に乗ってくる。
「ほら、オヤシロ様の祟りがあるだろ? 俺を怖がらせないために、みんながその話を秘密にしてたんだけど、俺は何かを隠しているからだって疑い始めるんだよ。それで、レナや魅音の気遣いを全部誤解していって、自分が殺されるかもしれないって脅えだすんだ。最後にはお見舞いに来た二人を金属バットで殴り殺しちまった。……アレは怖かったぞ」
「それはあんまりですわ、圭一さん」
話を聞いた沙都子が眉をしかめる。
梨花もまた唖然とした表情だった。
「レナにもあるもん。もっと怖い夢」
「ほー。聞かせてもらおうじゃないか。なまじっかな話じゃ、俺にはかなわないだろ?」
自慢げな圭一に、レナも負けじと話し始める。
「あのね、あのね、レナのお父さんが再婚を考えるんだけど、相手のリナって人が悪い人でね、お父さんからお金を脅し取ろうとしていたの。それで私は家庭を守るためにリナとその愛人を殺しちゃったんだ。……あ、その愛人って沙都子ちゃんの叔父さんだったよ」
「それは微妙に嬉しいような気が……」
沙都子がぶっそうな感想をもらす。
「いや、それなら怖くないぞ。むしろ、レナに同情する」
圭一が頷いてみせるが、レナの話にはまだ続きがあった。
「その後、鷹野さんが殺されるんだけど、私は鷹野さんから預かったオヤシロ様の研究ノートが原因だと思ったの。それによると、宇宙人が地球侵略を企てていて、雛見沢の住民は寄生虫に支配されているって書かれていた。私はそれを阻止するために、クラスメートを人質にして学校を占拠したあと、警察に対応を要求するの」
「……ずいぶんと豪快な話だな。それでどうなるんだ?」
「生徒の全員を拘束してたし、ガソリンを教室中に充満させて爆破までもう少しだったんだけど……、圭一君に説得されちゃった」
「偉いぞ、俺! じゃあ、未遂で終わったってことだよな?」
「でも、魅ぃちゃんにひどいケガまでさせたよ」
「いやぁ、まだまだ甘いぞ。俺は本当に殺しちまったからな。その上、自分が悪いなんて思いもしないで、そのまま自殺しているんだ。ふっふっふ」
「私にも一つありますわ」
沙都子も話に乗ってきた。
「私の場合は、叔父が帰ってまりますの。虐待に苦しんでいた私を見て、圭一さんが綿流しの日に叔父を殺してしまうのですわ。その後、梨花の死体を見た私は、圭一さんが犯人だと思いこんで吊り橋から突き落としてしまったんですの。をーっほっほ」
なぜか自慢げである。
悪夢自慢だから当然だが。
「ボクはいつも殺されてばっかりなのです。叔父を殺そうとしたときも、返り討ちにされたのです」
梨花が悔しそうにつぶやいた。
そこへ、もう一人の仲間が参加する。
※ 魅音の場合。
「……おじさんはそんな夢見たことないなぁ」
話を聞いた魅音が苦笑いを浮かべている。
「魅ぃちゃんも凄いのがあるんじゃないかな。……かな?」
「え……、何言ってんのよ、レナってば……」
「夢の中で、私は魅音さんに地下室に閉じこめられて、拷問されましたわ」
沙都子が頬をふくらませて訴える。
「みー。ボクは拷問がイヤだったので、目の前で自殺したのです」
梨花もまた恨めしそうに魅音を見上げる。
「俺なんか助かったはずなのに、戻ってきたお前にナイフで刺されちまったぜ」
圭一が笑って補足する。
「…………」
あくまで彼らの見た夢にすぎないのだが、全く身に覚えもなく責められた魅音は涙目になるのだった……。
※ 詩音の場合。
「……へー。そうなんですかー」
話を聞いた詩音がニヤリと笑みを浮かべる。
「でも、私の夢はもっと凄いですよー。オヤシロ様の祟りを調べようとしていて、スタンガンを使ったら鬼婆に死なれちゃうし、村長は何も知らなかったから拷問で死なせてしまうんです。そのうえ、梨花ちゃまが襲ってきたから返り討ちにして、悟史くんを追いつめる原因となった沙都子ちゃんを責め殺したんです。お姉は祟りが園崎家の仕業じゃないって言ってたけど殺しちゃったし、最後に圭ちゃんにもナイフを突き刺しちゃいました。それなのに、私はお姉のフリをしてたから、みんなはお姉が犯人だと思っているんです。どうです、酷いでしょう?」
「「「………………」」」
「あ、あれ……、どうしたんですか?」
皆を代表して圭一が答えた。
「…………それは酷すぎるぞ」
『夢にまで見た仲間達』〜END〜