〜『Fate』の短編 裏事情〜


長くなりそうな後書きはこちらに記載します。

巻き込まれてしまった少年の話


巻き込まれてしまった少年の話

●着想の元は掲示板への書き込みから。
この話を思いついたきっかけは、掲示板で「シロネギ」内の「士郎が唯一の生き残り」という記述の間違いを指摘された事。
士郎が他の生存者について知ったのはセイバールートだと私は思い込んでいました。しかし、仲間(?)達が孤児院へ行った事そのものは士郎も記憶にあったようです。
切嗣が士郎に救われたのも、士郎があれだけ壊れてしまったのも、生存者が一名(だと当人が考えていた)なのが原因だと思っていたんですけどね。

他の生存者について連想したのが、下記のようなシーン。
・士郎を見つけて安堵する切嗣の回りで、九人の子供が倒れているというシュールなシーン。
・切嗣を含めた十人が、士郎を含めた十人を助ける、運命の出会い×10。
・誰も見つけらなかった切嗣が、十人救助されたニュースを聞いて、テレビの前であの笑顔を浮かべるシーン。
(生存者が合計で十人というのは収まりがいい数字にしただけで根拠はありません)

そこで、士郎と同じ過去を持ちながら、士郎になれなかった子供について考えてみました。
当初は退院で話を完結するつもりでしたが、セイバールートで終わらせようと思いつき、主人公と士郎の乖離にまで興味が向きました。

●主人公と士郎について。
士郎が自分の痛みや苦しみを振り返らずに、言峰の申し出を突っぱねたのは名シーンだと思っています。
その一方で、切り捨てられてしまった「彼等」としてはたまったもんじゃないでしょう。
プレイヤーならば裏面の事情もわかっているので、現状の聖杯で願いをかなえたところで、大火災がより大きな不幸で塗り替えられるだけだと知っています。
結果論で言えば士郎は正しかったのですが、この主役はそれを知りません。
まあ、この時点での士郎は聖杯が汚染されている事も知らずに決断しているので、聖杯が本物であっても同じ選択をしていたでしょう。
まったく関係のない第三者や、多くの情報を得ているプレイヤーならば、士郎の選択を受け入れられるかもしれません。ですが、家族を失った人間や、地下室で苦しみ続けた子供達が、その答えを認める事はないと思います。(士郎の決断を受け入れて成仏した方が、原作的には綺麗な展開となりますが)

●切嗣が他の子を避けるのは自責の念から。
大火災によって子供達を巻き込み、助ける事もできなかった事を引きずっているという設定です。
原作ではまったくといっていいほど触れられていないため、切嗣以外の誰かに助けられたのでしょう。