よくわかる「マップス」

 

 

〜キャスト〜
十鬼島ゲン(衛宮士郎)
リプミラ (セイバー)
リプリム (イリヤ)
リプシアン(アーチャー)
ザザーン (遠坂凛)
エイブ  (間桐慎二)
ガッハ  (ランサー)
ダード  (ギルガメッシュ)
オルシス (キャスター)
ブシード (アサシン)
ギルディオ(間桐臓硯)
リプラドウ(間桐桜)
リングロド(ゼルレッチ)

 

 

「う? 手が……?」

「そうじゃ! おぬしの身体は蟲で自由を奪われておる。もっとも、おぬしの努力次第で、急所ぐらいはよけられるがの」

「やめろお!」

「だが、そうすればするほど、セイバーを苦しめるというわけじゃ」

「やめろ! やめてくれ!」

「10年前と同じじゃよ。セイバーに切嗣を殺させた時と……」

 

 

「あぶなーい! イリヤ!」

「シロウ!? 駄目です! 間に合わない!」

「セイバ……」

 ──っ!

「……シロウっ!? 冗談でしょう? 貴方が……まさか、こんなことで……」

「城が崩れるわ! 逃げるのよ、セイバー!」

 

 

「早くしないと始まっちゃうよー」

「自分のサーヴァントは見つかったか?」

「うん」

「よし! 行くぞ、イリヤ」

 

 

 とーとつですが、クイズです!

 心臓をぶち抜かれて死んだはずの衛宮士郎は、なぜ、生き返れたのでありましょうか?

 1番、英霊になった。

 2番、隠されていた魔術に目覚めた。

 3番、誤診だった。

 さて、正解は──。

 4番、実は死んだのは人形だった。──でした。

 うそでした。

 

 

「俺は協会で嘘をついた……。いや、真実の全てを伝えなかった。聖杯戦争さえもが、アンリ・マユを復活させる計画の一端であることを──俺は隠したんだ」

 

 

「俺の負けだ、バゼット。根性の入ったバカにゃ、勝てねぇやな……。ははははは」

 ──でも……、いい気分だ。

 

 

「シンジ。たった一つだけ……思い当たる相手がいます」

「きっ、危険な相手なのかよ?」

「ええ。命もですが……、もし、そうなら私にとって、て……貞操の危機なのです!」

「へ?」

 

 

「凛。”ばか大将”と接触した。これより共同でセイバーの救出にあたる」

「何だよ! そのコード・ネームは!」

『…………』

「どうした、凛?」

『計画変更よ! 士郎をつれて直ちに脱出して』

「なに!? どういうことだ? セイバーはどうする?」

『セイバーは置いていくわ』

「なにっ!?」

『一分一秒を争うのよ。聖杯戦争が始まろうとしているわ! 士郎は選ばなくてはならない。今すぐに! 世界か、セイバーかを!』

「聞いたな? どんなに辛い選択であっても、貴様は選ばねばならん」

「わかってるさ。……確かに、セイバーよりも、世界を選ぶ事が正しいらしい」

 

 

「どうやら、かたづいたようですね。しかし、もう、動けない。ここで待たせてもらいます、シロウ」

 ――っ!?

「だめだ! だめだ! だめだ! この程度のことで、……我を倒す事などできん!」

「そこまでです」

「どういうつもりだ、キャスター?」

「彼らは聖杯戦争に備えて、ここを去りました。もう、貴方だけなのです、災いをもたらすものは」

「ほう……」

「なぜなのですか? 貴方の力を必要としている者がいるというのに」

「我は誰にも心を許したりせぬ。あらゆるものすべてが我のものなのだからな。……むろん、貴様もだ、セイバー」

 

 

 ――っ!?

「我をはじくとは――何者だ? サーヴァント? いや……ただの人間だと?」

「シロウ? どうして、引き返してきたのですか……?」

「セイバーすらかなわぬ我と、対等に戦えると思うかーっ!?」

「できないから……では、やめられない。正しいというだけでは選べない選択だってある! 衛宮士郎が、貴様の相手だ!」

 

 

「正真正銘、こいつは化け物だ。まいったな……」

「貴様を殺す! 貴様が! 貴様のせいでセイバーはだいなしになったのだ! 貴様がセイバーを弱くした!」

「セイバーが弱くなった?」

「気づかぬか! セイバーは自分の身を案じているのだ!」

「セイバーが弱くなったと思うのは勝手だけど、……あいにく俺にとっちゃ関係ない! 返してもらうぞ」

 

 

「見知らぬ者よ! 武器を取れ!」

「なに? ──アヴァロン? すごい! 魔力が臨界まで充填されている!」

「さらばだ、見知らぬ者よ! ふふふ、不思議だな。お前達とはもう一度会える気がする。その時は聞いてみよう。私が間違ってしまった理由を! お前ならば知っているだろうから……」

 

 

「たった一つだけ……、一つだけ方法はある! だけど、だけどそれは……」

「一度だけなら……エクスカリバーを使えます」

「それは、だめだ! 今のお前には……負担が大きすぎる」

「私は、弱い私なら貴方といたくありません。わたしは自分の命を惜しいと思う。死ぬのを恐れているのがわかる! だからこそ、その恐怖を乗り越えてみせる! セイバーは無敵になれる!」

「む! 来るか! ならば、見せてもらうぞ! 全てか、無か! 限界の縁にある貴様等の力を──っ!?」

 

 

「約束だ! 我が閉ざしていた道を譲ろう」

「ギルガメッシュ!?」

「セイバー、お前は美しいな。こんなに遠くなってから……気づくなんて。もっと早く……」

 

 

「わしがなぜ衛宮士郎を正義の味方に鍛えなかったか? なぜ正義の味方としての心構えと、起きうる出来事に対する精神力を与えなかったか? その答えを聞きたいのじゃろう、セイバー?」

「わかっているのなら、なぜそうしなかったのです? なぜ、正義の味方として進むべき道を教えてやらなかったのですか?」

「正義の味方には正義の味方の行いしかできんからじゃよ。正しい行動などというものはしょせんそれだけのことに過ぎん。それ以上のことは起きない!」

「でも、それではシロウが……可哀想です。今はいいかも知れない。ですが、こんなことが続いたらいつかシロウがつぶれてしまう! 倒れてしまう!」

「その時は、おまえさんが支えてやればよいではないか。それに足る資格をお前さんはもっているのではないかね?」

 

 

「全く……、私までためそうというのですから。だけど、私は何があろうと、それが何を意味したとしても……、貴方の剣です!」

「一番最初に来てくれるのは、セイバーだと思っていたよ」

 

 

「こ奴……己を拾てた? 私に”空”が斬れるか? ……いや、斬るっ!」

 

 

「先輩は、”最強のサーヴァント”の手によって死ぬんです」

「く、シロウ……」

「この泥が貴女を浸食していきます」

「……シロウ?」

「そう――、最強のサーヴァントとは、そう呼ぶにふさわしい者とは――、すなわち、貴女自身です!」

 

 

「セイバー。俺は切嗣を殺してなんかいない」

「それでは、誰が殺したというのだ!? 言ってみるがいい!」

「……蟲に操られて、セイバーが殺したと聞いてる」

「そんなはずはない! 私はこの目で確かに見た! 貴方が、貴方が切嗣にとどめを刺すところを」

「違う! それは誰かが植え付けた偽の記憶だ! 落ち着いて考えてみろ! どこかつじつまの合わないことが……、合点のいかないところがあるはずだ」

 

 

「破滅が訪れるたびに英霊は召喚され、殺戮にかり出される。……やはり、英霊と人間は交わることなどできないのよ」

「そんなのことはないわ、キャスター。きっと、分かり合える時がくる」

「お嬢ちゃん、ひとつ賭けをしてみない? 貴女は衛宮士郎がセイバーの記憶を取り戻せると信じているのでしょう?」

「もちろんよ!」

「私は……、私は、無理だと思う……。だから賭けだ。もし、衛宮士郎がセイバーの記憶を取り戻せたら──、人間と英霊との間に未来が在ることを示せるのなら、アンリ・マユとの決戦に私も力をかしましょう」

「もしかしてあの予言を?」

「ええ、知っているわ。だからこそ、無数の剣を持つギルガメッシュを勇者だと思ったのだから」

 

 

「私は今……、今までにないほど怒っているのだ! 貴様が私にした仕打ち! 私の記憶を消すだけでなく、心をいじり回しシロウと戦わせた! その罪……、セイバーの怒りを受けろーっ! アンリ・マユ!」

 

 

「ギルガメッシュ。貴様……」

「言峰。貴様自身が言っていたではないか。この我こそが聖杯戦争における最大のイレギュラーだと……。王を御することなど誰にもできはしないのだよ!」

 

 

「まったく……。確かに貴様はたいした馬鹿者だ」

「ギルガメッシュ!?」

「間桐桜の心臓を狙え!」

「なに?」

「心臓だ! 忘れるな!」

 

 

「待て、慎二」

「ん?」

「もしも、みんなに正義の味方の事を聞かれたら、そんなものは始めからいなかった。あれは間違いだったって、答えてくれ」

「はあ?」

「正義の味方がいるから勝ったんじゃない。俺たちが勝ったのはみんながそれを望んだから。力を合わせて努力したからだ」

「衛宮……お前、まさか?」

「正義の味方なんて始めからいなかった。正義の味方のふりをしていた奴がいただけだ。だから、二人で決めていたんだ。戦いが終わったら、もう、正義の味方はいらない」

「私たちは、もともとそうだった”もの”に戻るのです」