『その名を……』
居間に3人の少年少女の姿があった。
「ああ、俺も思った」
「わたしもそう思います」
「でしょう?」
士郎と桜の反応に、凛が満足げに頷いた。
「何の話をしているのでしょうか?」
様子を見かけたセイバーが話かける。
「ゲームの話だよ」
士郎がセイバーに答えた。
「ゲーム……ですか?」
「ああ、テレビゲーム。アサシンがゲームのキャラに似ているって話なんだけど」
「……?」
「サムライスピリッツというゲームに、橘右京っていうキャラが出ててさ……」
言いながら、士郎は説明書を見せた。
「む、……確かに」
そのイラストを見て、セイバーが頷いた。
説明書には、その技も掲載されていて、”つばめ返し”まで存在している。
「これには異国の剣士達も混じっているのですね?」
「まあ、それがウリだしな」
「では、誰か私に似た剣士もいるのでしょうか?」
セイバーの問いかけに、3人が異口同音に答える。
「ナコルルかな」
「ナコルルよね」
「ナコルルだと思います」
ナコルル――鷹を連れた小柄な少女剣士というキャラである。
「…………」
説明書を見つめていたセイバーが、改めて口を開いた。
「待ってください。ですが……、ここに、一人の女騎士がいます。青い服と鎧を身に纏い、さらには、金髪の。この毅然とした立ち姿など、私に似ているとは思いませんか? まあ、フランス人というのは気に入りませんが……」
イギリス人とフランス人は仲が悪い。セイバーもその例に漏れないのだろう。
セイバーの言葉を聞いて、彼らは再び説明書を覗き込んだ。
そして、結論づける。
「やっぱり、ナコルルだな」
「やっぱり、ナコルルだわ」
「やっぱり、ナコルルですよ」
その後、彼ら三人は道場に連れ込まれ、過酷な特訓を強いられたらしい。
倒れている衛宮士郎の右手の指先には、血文字が書き残されていた。
おそらく、ダイイング・メッセージ(?)なのだろう。
ナコルル
シャルロット
と――。
改竄の跡があるため、犯人の偽装工作の可能性も捨てきれないのだが……。