『罪深き世界に祝福を』裏事情

 
 この作品の面白さは、ルパンの標的がデスノートだという点に、どの時点で気づくかだと思っています。
 後になればなるだけ、驚きが大きくなったのではないでしょうか。
 シーン2でテイラーの名前を提示してしまったのは、ヒントの出し過ぎかなぁとも思いましたが。

 
「デスノート」側の夜神月はいいとこなしです。Lは出番が消されて、その活躍は全てルパンに奪われました。
 作品の構成上、このような展開となりましたが、私はLや月を嫌っているわけではありません。特にLは凄く好きです。

 
 ルパンはちょっと冷酷だったでしょうか。
 相手が若くても、敵である以上は容赦しない設定としました。
 どちらかと言えば、原作マンガに近いかも。
 原作のルパンでは性別すら不明という設定があるので、素顔も明らかにされていないとしています。
 一方で、次元と五ェ門は本名としました。

 
 思いついたきっかけは、ニコニコ動画でデスノートのOP曲とルパン三世の映像を見たことです。
 デスノートを巡ってルパンが乱入するというのは、ネタとして凄く魅力的に感じたのですが、長編とするには非常に難しいと思えます。
 月 vs L vs ルパン。読者としてなら読みたいですが、作者となるのはゴメンです。(少なくとも私には無理)
 ルパンに対して、防御し続けるというのは非常に困難です。権力や財力を持つLならまだしも、月にできることは限られますから。

 
 ルパンがLに変装するという展開も考えましたが、Lを出し抜くというのは一筋縄じゃいかないでしょう。“L”をルパンの表の顔の一つにしようとも思ったのですが、それだとオリジナル要素が強すぎます。
 結局、Lは存在せず、ルパンの個人的な犯行として落ち着きました。
 ルパンの推理や作戦はLのパクリですが、テレビ中継のトリックもルパンならやりそうに思えます。

 
 標的がデスノートと判明した以上、時系列や関連性はすでにわかっていると思いますが、蛇足ながら説明しておきます。

1)ICPO会議へ潜入して情報を入手。

2)テレビ中継するための準備。リンド・L・テイラーは、ルパン達と敵対した相手とした。警察はこの電波ジャックによりキラの存在を明確に把握する。

3)ルパンは外部から日本警察のホストコンピューターにハッキング。日本警察の内部情報が漏れている事実を、ルパンがFBIへタレ込む。

4)レイの捜査対象だった夜神家への侵入。月の警報装置はルパンに気づかれてしまい、月はカメラの前で殺しの実演をしてしまう。完全な不意打ちなので、月はまったく対処できず。

5)月はすでにデスノートで操られた状態なので、ノートがすり替わっていることを認識できない。リュークがそのことを指摘したものの、月はその言葉を信じなかった。

 
 ちなみに、没案ではこういう展開もありました。

 隠し場所から出てきたのは、場違いにもジャポニカ学習帳だ。
 慌ててノートを開くが、ページをめくってもめくってもめくっても、出てくるのは白いページばかり。
 記されていた名前はただ一つ。
 それは最後のページに残された、犯人のサインだった。
 ――お宝はいただいた。 Lupin the 3rd
「くそっ! やられた!」

 盗み出した事を宣言するほうがルパンらしいと思ったのですが、その場合は月をどうするかが問題となりました。
「ノートを盗まれたことで自分も殺される恐怖に怯える」という方向も考えたのですが、今ひとつ弱いように思います。
 見逃すというのもあえりないため、やはり、ノートに書くというのが自然な流れでしょう。
 デスノートに名前を書くという展開を考えた時に、それならばと、原作をすべてを夢オチ扱いにしました。