98回 20114月の『人民日報』(2011710日)

 

20110402

●温家宝の発言意図が見えない

温家宝主催による「浙江沿海、および海島総合開発戦略研究総合報告」に関する報告を聴取する会が開かれた。温家宝は、「この報告は10年来の中国工程院が院士、専門家を組織して実施した一連の専題研究の重大な成果の1つである」として、報告作成の努力と重要な貢献に深く感謝の意を述べた。

 

報告内容が海洋資源や水資源といったホットイシューであるとはいえ、たかだか浙江沿海のこの程度の計画で、温家宝が丁重に感謝の意を述べたことが大きく報道されたことには違和感がある。何を読み取ったいいのか分からないのだが、温家宝がやることは時々理解に苦しむ。

 

住建部が331日までに657都市中608都市が今年度の新規住宅の価格統制目標を公布したと発表。ということは49都市がまだ発表していないということで、プレッシャーになるだろう。昨日1日付『東方早報』には、主な都市の目標が一覧表で出ており、便利。

 

20110406

●「社会組織」も所詮党の管理下

胡錦濤政権が提唱する社会管理の強化と創新について、地方の経験を宣伝する特集がスタートした。第1回目として広東省の2.8万の社会組織の活躍を宣伝する記事が掲載された。

広東省の社会組織は28509、そのうち社団体が13058、民弁非企業単位が15249、基金会が202。たとえば深セン市零售商業行業協会(小売商業業種協会)、深セン壱基金公益基金会などがある。

社会組織の傾向として、(1)政府の権限を委譲されていること、(2)民間にシフトしていること、(3)質が向上していることを挙げる。

そして、党建設工作の創新が広東の社会組織発展の特徴であると強調し、具体的なデータを挙げている。

広東省は、全国で最初に省社会組織党工作委員会、規律工作委員会、共青団委員会、婦女工作委員会を設置した。

広東省全体の社会組織の末端党組織数は3378で、そのうち新設が1994。党員は4528人で、そのうち新規加入が4128人。

広東省民間組織管理局長によれば、「社会組織は党の重要な政権担当の基礎であり、政府による社会管理の参謀助手であり、社会建設を強化する重要な力である」。

 

「社会管理」が、末端住民に対するさまざまなサービス充実ではなく、混乱する末端住民統制システムの再構築であるととらえる私にとっては、広東省の社会組織が何をやっているかということはあまり重要ではない。それよりも、結局は党による統制を強化している点に注目する。

社会組織が「党の重要な政権担当の基礎」と所轄部門のトップが堂々と言っているのだから、社会組織の活動は極めて限定されたものであると言わざるを得ない。党の統制がなければ、社会組織はもっと社会のために自由に活動ができるはずだ。そのことに、社会組織は自覚的なのか、それとも自覚していないのか。このことにいつも悩まされる。まあ、権限委譲とか、民営化とかという宣伝に変な幻想を抱いてはいけないとは思っている。

 

20110407

●党研修もビジネスチャンス

井崗山幹部学院で初の新社会組織の培訓班が実施された。この学院は全国に3カ所ある党や政府の幹部の研修機関の1つ。そんな共産党にとって「神聖」なところで、436日に金杜弁護士事務所の党性訓練専題培訓班が実施された。

全国政協委員・中国弁護士協会副主席・金杜弁護士事務所管理委員会主席の王俊峰が申請してから1年後に実現したもの。金杜弁護士事務所は、1997年に全国の共同制弁護士事務所に先がけ、末端党組織を設置し、400名以上の党員弁護士を抱える。

 

井崗山幹部学院は、党や政府の関連機関の党員の幹部や職員、大学の党員の教員などの研修が行われることでよく知られているが、弁護士事務所という「新社会組織」が初めて党員の研修を実施したので大きく報道された。とはいえ、この金杜弁護士事務所の王俊峰の経歴などを見ると、御用弁護士事務所なので、ある意味納得してしまう。

党や政府の関連機関から本来距離をとって活動すべき社会組織が、こうやって自ら共産党の懐に飛び込むわけだから、共産党の一党支配は揺るぐことはない。

金杜にとって、これを実施することによるメリットは大きいのだろう。たとえば、党や政府の関連機関の仕事が優先的に回ってくるのかもしれない。今の中国ならば官から受注するビジネスの金額が大きいことは明らか。

この宣伝報道により、これからいろんな「新社会組織」が幹部学院で研修を始めるだろう。この行動様式も中国的だ。そして幹部学院もそれで金儲けができる。まさにwin winだ。幹部学院での党員研修とはいえ、立派なビジネスであり、そこには神聖さは見られない。もう1つ、彼らは清明節休暇(435日)中に実施しており、単なる社員旅行だ。

 

20110408

●潘岳は現場でがんばっていた

潘岳環境保護部副部長が2011年全国環境宣伝教育工作会議で、「突発的環境事件はすぐに公表しなければならない」と発言した。そして「まずは、主要メディアを通じて確実に情報を公開し、民衆の関心に応える」と述べた。

 

私は潘岳にかなり前から注目をしてきた。20002003年の国務院経済体制改革弁公室副主任在職時に、体制内の幹部としては珍しく、かなり積極的に、過激に政治体制改革について発言をしていたからだ。20033月に環境部門に移ったことが、左遷か、それとも現場での改革の実践のためなのか分からず、その後政治体制改革という点からの発言は少なくなり、最近はすっかり名前すら見ることがなくなった。

久しぶりに、しかも『人民日報』で潘岳の名前を見ることができ、健在だと確認できた。彼の経歴からすれば、前述の発言は、パフォーマンスではなく、真剣な指示だと思う。彼は、環境保護部という現場で、彼なりの政治体制改革を実践しているのだろう。

 

他方、トップ記事は国有文芸院団体制改革の成果の宣伝。文化体制改革の成果宣伝の一環で、つまりは李長春の成果宣伝。こういうことに一生懸命の指導者もいる。なんと対称的か。

 

20110411

●幸福かどうかを決めるのは「民衆」

朱漢橋湖北省潜江市党委書記の「幸せか幸せでないかを決めるのは民衆だ」と題する文章が掲載された。

「民衆が幸福のビルを建てるのを助けるのが、党委員会、政府の責任である。しかし家を建てる前に、の問題をはっきりさせ、しっかりと地固めしなければならない」。

ここでいうの問題というのは、経済発展をどうとらえるかというそもそも論のことのようだ。そして、経済発展について、3つの問答を展開する。

(1)「経済発展は何のためか?」:民衆に実利を与え、味をしめるようにするためであり、人々を活き活きさせ、お金儲けをさせ、衣食住の心配がない・・・、生活に保障があって、やっと幸福は可能になる

(2)「経済発展が同時になすことは?」:民生の改善

(3)「経済発展のあと、何に関心を払うのか?」:のんびりした生活があって、初めて暇ができ精神的にリラックスしてお茶を飲み、芝居を見ることができる。

最後に経済発展によってもたらされる「幸福」について、次のように述べている。「幸福感は柔らかいもので、心に感じるものである。しかし、民衆が欲すれば、われわれは応える。民衆の「ソフト」な幸福を高めることが、指導幹部を評価する「ハード」な指標であるべきだ」。

 

今年の全人代のキーワードの1つが「幸福感」だということは、以前にこのブログにも書いたし、先日のセミナーでもお話しした。その「幸福」について、一地方の幹部が「幸福か幸福でないかを決めるのは民衆だ」と言ったのがおもしろい。幸福かどうかの基準は、人によって異なる。物質的に満たされれば幸福だと思う人もいれば、精神的に満たされなければ幸福だと思わない人もいる。そうした極めて個別的な要求を満たすことを目標に掲げたことは、胡錦濤政権にとって大きなリスクを抱えたことを意味する。それに胡錦濤政権は気がついているのかどうか。

この一地方の幹部も、結局は経済発展と民生分野の充実のバランスを主張している点では中央の考えと合致している。他方、民衆が幸福かどうかを決める、幸福はソフトなものと言いつつも、そのことが指導幹部の評価の絶対的な基準であると言っているあたり、幸福のもつ個別的な価値観をよく分かっていないようだ。それでも、「民衆が決めること」というあたりは、この言葉の持つ重みを多少なりとも分かっているのかもしれない。個別的価値を満たすことぐらい、難しいことはない。胡錦濤政権は最後のカードを切った。

幸いなのは、全人代などで上がるキーワードは、一過性のもので、今年の全人代で「幸福感」が注目されたこともきっとすぐに忘れ去られてしまうだろう。そのことは胡錦濤政権にとって救いかもしれない。

 

さて呉邦国があの重慶を視察した。最近、各中央政治局常務委員が地方の物価や住宅供給に関する政策の実施状況を視察しているようだ。重慶に来たら、みんなお約束のように黒社会打倒や革命回帰の活動に対し称賛のコメントを出す。しかし、今回の呉邦国は2行程度であっさりと「見た」程度の報道にとどまった。

 

20110412

●福建省長人事

福建省の代理省長に蘇樹林が任命された。蘇は19623月生まれで、20076月から中国石油化工集団公司総経理を歴任していた

 

先頃、石油関連の国有大型企業のトップ人事があったばかり。一貫して石油畑を歩んできた(一時遼寧省党委に1年間在籍)蘇が、福建省に来た理由はよく分からない。前任者の定年退職でポストが空いたので、埋めたという感じだ。曾慶紅や周永康ら「石油派」が動いた可能性、また福建省なので習近平が動いた可能性など、根拠はないがそれらしい推測は可能だ。まだ49才の若さなので、福建省長をステップに、2017年の第19回党大会に向けて、今後ステップアップしていく注目すべき人材と言える。

 

広東省恵東県で17人の社会各界代表が、県委常務委(拡大)会議に列席し、傍聴した。県レベルの指導者の権力をあからさまにするという改革の宣伝記事。これだけ見ると、党の会議を社会に公開しているなあ、改革が進んでいるなあというように勘違いしてしまう。しかし、拡大会議なので、通常の党委員会の会議ではない。傍聴させるためにセッティングされた会議のようで、差し障りのない会議を傍聴させられたという感じ。

 

20110413

●盲目的に「一票否決」を導入したツケ

蒋正偉の「一票否決がおかしくなっていることに警戒しよう」という文章が掲載されている。

「一票否決」は、政府部門の幹部の評価で、規定されているいくつかの評価項目のうち、1つでも完成しなければ、全体として不合格になるという厳しい制度。今この制度が「否決」される事態が、江西省や広東省、新疆ウイグル自治区など各地で起きている。

過ぎたるは及ばざるがごとし、十把一絡げで、トイレの修理やペット飼育に対応できていないことぐらいで、「一票否決」されてしまう。だから正義性、合理性、合法性を考慮しなければならない。その方策として、

(1)権利と責任を明確にした問責措置とする=上級機関の恣意的運用が見られるから

(2)政治運用においてバランスのとれた資源配分を行う=能力、資源は限られているのに、「一票否決」されないために、幹部がコストを考えない、短期的な行動に走っているから

(3)法に基づく制度を整備する=「一票否決」が法的手続きを経ず、政府の会議や指導者の要求で導入されているから

 

下級レベルの政府が、他のところがうまくいっているという宣伝に踊らされ、我も我もと盲目的に制度を導入した結果。中国ではよく見られることで、なるべくしてなったという感じ。下級レベルの党や政府の幹部のレベルの低さと、中央の無作為。これに尽きる。

 

20110414

●温家宝が今後の経済工作を指示

1四半期の経済情勢分析と今後の経済工作の重点7項目を指示した国務院常務会議が開かれた。とりわけ注目は、この会議で温家宝が行った講話のダイジェストが「当面の経済工作のいくつかの問題について」と題するまとまった文章で別途掲載されたことだ。これまで会議の翌日に別途温家宝の講話が掲載されたケースを思い出すことはできない。今後の経済工作の重要性を強調したということだろう。

 

20110415

BRICSでお祭り騒ぎ

BRICS3回首脳会議が開かれた。南アフリカを新メンバーに迎え、海南省三亜市で開かれたということで、大きく扱われている。胡錦濤が重要講話を行ったので、それに注目した。

胡錦濤は平和安寧、共同繁栄のために4つの見解を示した。

(1)世界の平和安定の維持に大いに力を入れる。自国の国情に基づき、平和、安定、繁栄を実現する国際環境を構築する。共通点を見いだし異なる点は残すという原則に基づき、各国の主権と発展の道と発展モデルを選択する権利を尊重し、文明の多様性を尊重し、交流して互いに手本とし、長所をもって短所を補う中で、両々相まってますますよい効果を収め、共同で進歩する。

(2)各国の共同発展の推進に大いに力を入れる。公平で公正で寛容で秩序のある国際通貨金融システムを構築し、新興市場国家や発展途上国の国際通貨金融システムにおける発言権や代表性を高める。

(3)国際交流協力の促進に大いに力を入れる。BRICSを代表とする新興市場国家の協力メカニズムの絶え間ない発展はグローバルな経済協力の新しいモデルであり、多辺主義の重要な実践であり、引き続き新興市場国家の協力を促進する積極的な作用を発揮させることができる。

(4)BRICSの共同発展のパートナーシップの強化に大いに力を入れる。

中国は引き続き平和、発展、協力の旗印を高く掲げ、終始変わることなく平和発展の道を歩み、終始変わることなく相互利益、win winの開放戦略を遂行する。

 

中国がBRICSをこれほどまでに重視するのはなぜか。いつもより丁寧に胡錦濤の発言を見た。

1つは、BRICS各国の独自性を尊重することで、中国の政治制度を正当化しようという意図。確かにBRICS各国はどこも個性的な政治制度をもった国だが、制度的に民主的でない国は中国だけではないか。

もう1つは、成長著しい新興国家がいっしょになって、米国をはじめ既存の先進国を中心として国際経済のメカニズムに圧力をかけ、中国の発言力を高めようという意図。

ただし、中国脅威論を払拭しようというメッセージも出している。

中国としては、国際社会における影響力を高めるために、上海協力機構にせよ、このBRICSにせよ、国際社会の表舞台にまだ出ていない国々をまとめている。国際社会における数の論理、米国の「冷戦思考」を批判する割には、自分がそういうことやっているに過ぎない。経済大国になってようやく国際社会で認められるようになって、やることは周回遅れの戦略なのだから、やっかいな存在である。私たちはそういう国を相手に外交を展開しなければならないのだから、中国に対しきれい事ではない、冷静な厳しい分析をして、対中外交政策を構築しなければならない。しかし、今の政権では全く期待できない。国益を損なうばかりだ。

BRICS自体への『東方早報』の評価は手厳しい。簡単に言えば、参加国の間にいろんな対立点が存在しているため、それぞれがバラバラで、一体感がないため、この会議がそれらを解決する場にはなっていない。ただ集まっているだけという。

なんとなく、中国だけが、舞い上がっているという風にも見える。

 

20110418-1

●李源潮の重慶調研報道をめぐるスタンスの違い

李源潮が創先争優活動という政治キャンペーンの視察のため、重慶市を調研した。李源潮は、「胡錦濤総書記の要求に沿って、科学的発展を推進し、社会調和を促進し、人民大衆に奉仕することを主題とすることを堅持し、創先争優を深く展開し、西部地区の科学的発展と飛躍的発展のために、動力と保障を提供しなければならない」と述べた。

 

中央政治局常務委員が重慶市を視察したときの記事には、薄煕来が進めている黒社会打倒、革命称賛活動への大なり小なりの評価の発言が掲載されることが多い。自らが所管する政治キャンペーンの視察であるという李源潮の視察の性格も考慮しなければならないが、薄煕来の功績への李源潮の発言が掲載されていない。李源潮が触れないから記者が気を遣って、革命称賛活動と創先争優活動が関連しているとわざわざ指摘しているのが笑える。反面、李源潮は「胡錦濤の要求」とか「科学的発展」、「社会調和」といった胡錦濤について発言しているのは、興味深い。李源潮は革命称賛活動に意味がないことを理解しているのか、ライバルとしての薄煕来を嫌いなのか。いずれにせよ、わかりやすい李源潮の薄煕来評である。

他方20日付『重慶日報』は、李源潮の重慶訪問を「重慶改革は中国が直面する難題を解決するための新たな考え方提供した」というリードで大きく報道した。そこでは李源潮が黒社会撲滅や革命回帰などの薄煕来のやっていることについても発言したことが紹介されている。でも李源潮は称賛などしていない。

『重慶日報』のトーンと『人民日報』のトーンの違いは明らかだ。前者は李源潮の訪問そのものを伝える記事なので長大で、しかも薄煕来称賛に利用したい。他方後者はあくまでも「創先争優」政治キャンペーンの視察を強調するため、「贅肉」をそぎ落とした報道になっている。

 

20110418-2

●「党務」とは

済南市が「市全体の党務公開実行に関する実施意見」を公布し、党務40項目を公開した。党務は大きく3つに分かれている。

(1)社会に公開する党務18項目:@中央の方針政策、上級の党組織の決議決定と工作指示の執行状況、A当該党組織の重要な決定と執行状況、B当該党組織の任期内の工作目標と段階的な工作指示、工作任務、実現状況、C各種精神文明創建活動の展開状況、D党組織の設置、主要職責、機構調整、指導部の選挙の状況、E指導グループメンバーの党建設工作の連携点建設の状況、F党組織の指導グループメンバーの職務と工作分担状況、G党員拡大状況、H党員指導幹部と党員の創先争優状況/幹部選抜の任用状況、I党員、民衆の意見や建議の表出チャネルの建設、フィードバック状況など

(2)党内で公開する党務19項目

(3)対象を設定して公開する党務3項目:@規定に沿って、党員、民衆の意見や建議の聴取、採用状況、A手紙や訪問への対応、矛盾排除の一斉捜査の状況、B党員や民衆の切実な利益に及ぶ、民衆の強烈な反応の突出した問題への対応状況

 

党務というのは、「党規約」で決まっていて、全国統一かと思っていたが、地域によって異なるのだろうか。そう思って、確認してみた。(2)はおもしろくないので省略。

「意見」の内容自体は取り立てるほどのものではない。こんな文書はそもそも出す必要はないものだ。だから「意見」なのだろう。済南市のスタンドプレイ。しかし、済南市の例がこうやって宣伝されたので、またまた各地方が同じように党務を規定する文書を出すのだろうなあ。ムダな作業の繰り返し。ご苦労様というほかない。

20110419

●土地の違法利用は続く

国土資源部が第1四半期の法規違反の土地利用状況を発表した。

違反件数は9832件で、対前年同期比3.7%増。

違反面積は7.3万ムーで、同1.6%減。このうち耕地は2.6ムーで、同2.5%増。

 

土地の違法利用が、件数からも、耕地面積も増えていることが数字で分かる。ということは、おそらくその前提となる地元政府による強制的な土地収用も減っていないだろうから、それに伴う地元政府と土地提供者の間のいざこざも減っていないだろうし、「土地財政」に頼った地方政府の負債問題もヤバイことが推測される。

 

人力資源与社会保障部が3年内に農民工の給与未払い問題を基本的に解決するとの見通しを明らかにした。ガンバッテほしい。

 

江蘇省で初の公推票決による3名の市党委書記が誕生した。この国の体制下で、市党委書記を選ぶのに本当に選挙が必要なのか。いつもながら選挙民主に対する誤解を感じる。同じ江蘇省のある市で実施されている「網路門政」というネットを利用した行政の特集をしているが、これもネット信仰の過剰反応。「選挙」と「ネット」が免罪符になっている様な感じで、やれやれ。

 

20110420-1

●第125カ年計画期の政治改革

「政治文明建設の主旋律を奏でよう」と題する比較的大きな記事が掲載されている。これは、第125カ年計画で、政治文明建設をどうするかということを改めて個別に取り出して説明したもの。ちょっとまとまった政治改革ネタなので注目した。

 

125カ年計画での社会主義政治文明建設のポイントは、「民主」と「法治」

(1)社会主義民主政治という生命力の強化

@これまでの具体的成果−村民委員会の直接選挙、民意の公共政策決定と公共管理への作用、人民代表大会と政治協商会議委員の職責履行水準の向上、人民代表大会の監督、政府情報公開

A人民代表大会制度が根本の政治制度

B何をやるか−人民代表大会制度、中国共産党による多党合作と政治協商制度、民族区域自治制度、末端民衆自治制度の堅持と完備、民主制度の健全化、民主形式の増大、民主チャネルの拡張、法に基づく民主選挙、民主的政策決定、民主管理、民主監督の実施、人民の知る権利、参加券、表出権、監督権の保障

(2)社会主義法治国家への青写真

@重点−経済発展方式の加速的転換、民生の改善と社会事業、政治自身の建設の発展の方面での立法

A行政執法と刑事司法の連結メカニズムの完備、公正で効率の高い権威を持った社会主義司法制度の構築

 

おもしろいかなあと思ってじっくり読んだが、期待はずれの内容だった。(1)のBは大きく2つに分かれていて、最初に挙げた4つの制度の完備は、第17回党大会の政治報告に盛り込まれた中国の基本的な政治制度の繰り返し。もう1つは「民主」を連呼しているだけ。新鮮味はない。(2)については、@が第125カ年計画の全体方針である経済発展の方式の転換と民生重視に貢献する法整備が目的だとしている点は現実的な対応を示している。Aは腐敗防止も法治の重要な目的の1つであることを示している。

まあ、どう取り組むのか、期待せずに見ておこう。

 

20110420-2

●発改委が行政介入の否定に躍起

国家発展改革委員会(発改委)価格司のインタビューが掲載されている。昨今の世界的な原材料価格の値上がりを受け、食用油、インスタントラーメン、洗剤などの日常生活品のメーカーが値上げを表明していたが、業界団体と発改委との「約談」(時間を約束して会談すること)のあと、値上げを中止するということが相次いでいる。これについて、行政介入という批判が最近出ているので、メーカーの自主的中止判断だと弁明しているのがこのインタビューだ。

 

この一連の発改委の行動は興味深い。どう見ても行政介入でしょう。

 

20110421

●胡錦濤は母校訪問で大喜び

胡錦濤が母校清華大学を視察した。創立100周年を迎えたためで、記事も大きく扱った。視察の映像を見たが、なんだかいつもと比べ、穏やかな顔つきで、楽しんでいた模様。母校訪問で、うれしかったのだろう。

 

国務院常務会議が、中央財政の追加支出を決定した。公共賃貸住宅建設などに180億元、新農業社会保障試点補助、養老保険試点に123億元ということで、住宅建設と社会保障制度整備に力を入れることを示した形だ。

全人代常務委員会では、個人所得税修正案の初審議が始まった。中低所得者層の税負担を軽減するのが目的で、給与所得者の控除額の引き上げなどが盛り込まれている。個人所得税というのは、民衆の最も直接的な利益に関わるものなので、紆余曲折が予想される。

 

20110422-1

●習近平が対米国観を披露

習近平が米国の議会関係者と会見した。習近平が米国の客人と会見するのは珍しい気がしたので、注目した。その中で、次のような発言があった。

「双方はチャンスをしっかりつかみ、双方向の投資を積極的に拡大し、クリーンエネルギー、インフラ建設などの領域での協力を開拓展開し、両国の地方間の経済貿易協力を絶えず深化させ、同時に保護主義の障害を排除し、平等な話し合いを通じて経済貿易協力の中で現れる問題をうまく処理し、両国の経済貿易関係の健全で安定した発展を維持し、それぞれの経済発展と世界経済の再生のために貢献しなければならない」

 

中国の次期トップが米国相手に何を言うかなあと思って読んだ。何でもないような発言だが、協力と「保護主義」にキチンと釘を刺すあたりは、さすがバランスのとれた発言だ。呉邦国もこの米国の議会関係者と会見したが、語ったのは協力だけ。

 

上海の「問題饅頭(蒸しパン)」など、最近違法に食品添加物を使用して食の安全を脅かす問題が立て続けに発生していている。たぶんこれに慌てたのだろう。国務院弁公室が「食品違法添加行為を厳しく取り締まり、食品添加剤の監督管理をしっかり強化することに関する通知」を発した。この通知を徹底するための全国テレビ電話会議が開かれ、責任者の李克強が指示をしている。

 

20110422-2

●共青団中央も革命歌を歌う

復旦大学の先生と重慶市の薄煕来書記が進める革命歌を歌って歴史を学習する活動について議論した。彼が言うには、共産党の歴史を学習することは現在の体制の下では当然の行為である。ただし、そのやり方は、各地方の実情に合わせて、行われるものである。薄煕来は革命歌を歌うことで、党史を学習するという方法をとっているだけ。それは黒社会を取り締まることも同じで、黒社会は各地にあるものだが、地方によって政治、経済、社会への影響力の程度は異なっているのだから、取り締まりの方法、程度も地方の実情によって異なり、重慶市は深刻だということ。ただし、問題は革命歌を歌うことではなく、それをメディアが過剰に取り上げること。メディアの狙いが分からない。

確かにこの先生の指摘は、納得できる点がある。共産党の歴史を学習することは、共産党の一党支配下にある現在の中国にとっては当然のことだろう。一党支配の正統性の1つは歴史にあるからだ。

そして、今日の『人民日報』に1つの記事が小さく掲載された。「全国青少年永遠に党と共に歩む青春歌会」のスタート式典と最初の青春歌会が上海で開催された。この歌会活動は、共青団中央による党創立90周年記念企画の「党史を学び、党の状況を知り、党と共に歩む」主題教育活動の重要な構成の一部で、全国各地で若者が社会主義に関連する歌を歌っていくのだという。これのどこが薄煕来のやっていることと違うのだろうか。

党史学習は当然で、その方法はそれぞれ。しかし、薄煕来の対極に位置すると見られる共青団中央ですら、歌を歌うという方法をとっている。共青団中央に考える頭がないのか、それともこのご時世、党史学習の限界なのか。それとも党史学習など意味がないからとりあえず歌でも歌っておくかということか。いずれにせよ、薄煕来のやり方は成功している。

 

20110430

●中央指導者の司法介入

最近、中央指導者が、食品安全犯罪で、法に基づき厳しく罰し、公開で審査判決し、危害を加える食品安全犯罪行為をしっかり取り締まる社会的雰囲気を作り出すよう要請した。そして、429日に全国4カ所の裁判所で、「問題ある粉ミルク」事件の生産、販売事件の容疑者厳しい判決が下された。

 

上海でも「問題ある蒸しパン」事件が発生し、国務院も通達を出すなど大きな問題となっている。これに対し、関係者が厳しく処罰されるのはいい。しかし、記事にある中央指導者の要請は、誰に要請したのかを明らかにしていないが、29日に判決が出たわけだから、司法への圧力であることは間違いない。国民の食品安全という案件なので、厳しく判断せよという要請に国民は文句を言わないだろうが、司法の独立はないなあということ。