91回 201012月の『人民日報』(2011412日)

 

20101201

やっぱり実感できない「網路民意」

「ネット民意を冷静に見よう」という特集記事が掲載されている。中国では「網路民意」と呼ばれるように、インターネットや携帯電話のショートメールによる投稿が民意を形成しているとよく言われる。日本もその「被害者」になるケースがこれまで多々見られた。この記事では、ネット民意について、正と負の両側面を紹介し、負の側面への対応が議論されている。

(1)正の側面:民主政治の進歩を推進

(事例1)高校1年生が「毎週土曜日に1日中補講があり、宿題も多く、基本的に終わらない。土曜日の補講が半日ならば」と市政府のサイトに投稿。それを見た市教育局副局長が、土曜日の補講が法規違反であるとして、すぐにやめさせ、今後違反した学校に対し、責任者を厳重に処罰すると通知し、対応した。

(事例2)何年か前の山西省での地下レンガ製造工場で小学生が働かされていた事件の発覚はネットによるものだった。

これら「ネットで発覚する公共事件」のうち、重大事件は2003年までは毎年数件だったが、2007年には毎月1件、2009年には毎月数件に上るようになった。
 「公民の伝統的な政治参加理念を変え、公民の政治参加能力を高めただけでなく、政府公共管理の体制、メカニズム、運用モデルに重大な影響をもたらした」(上海発展戦略研究所謝耘耕工作室)

「現行の体制下では、ネット民意は体制の弱点を補填し、インターネットが人々の監督への参加、立法への参加、政策決定への参加、利益表出のチャネルとなっており、中国の民主政治に対する推進的役割を発揮している」(中央党校高新民教授)

新たな「アジェンダ設定」モデル、すなわち「ネットがアジェンダを提起伝統的メディアが注目社会全体の参加政府行為」というモデルが形成され、中国の公民の秩序ある政治参加の推進が実現している。

(2)負の側面:すべての民意を代表することはできない

「ネットワーク地下勢力」が勢いを拡大しており、民意形成に大きな影響力を有している。しかしその民意は悪質であったり、他方を侵害するものであり、彼らは規模を拡大し、公開で平然と行動し、集団利益化し、「産業チェーン」を形成している(中国ネットワーク伝搬学会会長杜駿飛)

ネット人口4.2億人のうち60%が30歳以下。中学生以下の学歴のネットユーザーが36.7%を占めており「心身と知識の未成熟な青少年が表明する意見は、情緒的で随意的である」(中南財経政法大学喬新生教授)

(3)理性的な思考での取り扱いが必要

「政府がネット民意の存在を軽視すれば現実を知ろうとしないことになる。ネット民意を信じすぎれば、偏った判断をする可能性がある。インターネット上の意見を公衆の普遍的な意見と見なせば、政策決定は科学性に欠ける」(喬新生)

対応策:(1)公民個人と行業協会による監督と自律、(2)法律法規の保障と力の執行の強化。

「問題解決のカギは政府の虚偽情報に対する真偽の判別と証明にある。関係部門が適時介入すれば、公開透明になり、社会は迅速に秩序が回復する」(高新民)

 

どうもこの「ネット民意」を実感して理解することができない。なぜならば、日本にはないからだ。日本でもYouTubeで映像を流し、大きく政治問題化することもある。しかし、それはレアケースで、中国のような恒常的な民意形成とは異なる。そのため、この特集をまじめに読んで、理解を試みた。

アジェンダ設定の重要なチャンネルであるとの分析は、中国の状況をうまく説明している。しかし、土曜日の補講のことは、その学生にとっては重大だとしても、きわめて個別の些細なことで、ここで事例として取り上げていることに正直釈然としないものがある。ネット民意というのはそのレベルの話なのか。他方、ネット民意は二国間関係にまで影響を与えるのだから、良く言えば範囲が広い、悪く言えば幼稚ということではないか。それは、ネット民意しか、利益表出手段がないので、何でもネットということになっている中国におけるきわめてゆがんだ構造だといえるだろう。

それゆえに、「ネットワーク地下(灰黒)組織」なるものが、悪意に民意を発生させ、誘導するという問題が起きており、産業化すらしている。故意に民意を作り出すことは容易だ。民意を管理するのは政府だというが、『人民日報』も「ネットワーク地下組織」とそんなに変わらないような気がするから、今の政府の管理に公正さは期待できるのだろうか。民意表出者自身が自立することが一番いいと思うのだが、これまたなかなか難しい。

 

20101202

社会を管理するのは

貴州省貴陽市小河区の25の居民委員会で主任、委員を住民が直選(直接選挙)したことが掲載された。

直選の意義を区党委員会書記が次のように説明している:民意を直接反映させる。公民の社区事務管理への参加の積極性が基層民主建設推進に有利に働く。

直選の候補者は、10人以上の有権者の推薦で、審査を経て、正式候補者が選ばれる。

この区の直選の特徴は、直選によって居民委員会は過去の居民委員会と異なり、「脱行政化」され、繁雑な行政事務から解放される。区の規定では、今後居民委員会は内勤制を実行せず、主任と委員に固定の給与を支払わない。

また今回の選挙には、弁護士、医者、画家など各界の優秀人士が参加し、居民委員会の工作人員の全体的素質を高めた。

 

都市の末端の組織は、街道委員会だの、社区だの、居民委員会だの、公安系統の「派出所」という組織もあるが、区別がつかない。

居民委員会は自治組織と規定されているが、私は末端を管理する準行政組織だと認識している。この事例では「脱行政化」がポイントである。

「脱行政化」はいいが、そうなると末端の行政を何が担うのだろうか。街道委員会か、それともその上の区政府か。住民サービスを行うのはいったいどこなのだろうか。居民委員会は何をするのだろうか。整理してみる必要がありそうだ。

こう考えるのも、「管理」が日本と中国では異なるからだ。日本でも「行政管理」とか「企業管理」とか、「管理」という言葉を使うけれど、中国の「管理」はきわめて政治的な意味、怖いイメージをもつ言葉だ。素直に「管理」という意味にはとれない。だからこそ、「居民委員会」も末端社会の「管理」組織だと思うのだが、それを「脱行政化」するというのは、どういうことか。もう住民を中国的意味で「管理」しないのか。そしてそれとも普通の「管理」を目指すのか。

 

20101203

どうして日米韓外相会談についての質疑応答を載せていないのか

122日の外交部の記者会見のうち、日米韓外相会談に関する質疑応答が掲載されている。スポークスマンは「この会談がいったい何をするのか非常に注視している。情勢の緊張を緩和し、エスカレートさせるものでなく、対話を促進するものであり、対立の積極的作用でないものであることを希望する」と述べた。

朝鮮半島情勢に関する報道は思ったほどない。やはり途中経過を掲載しない『人民日報』の性格によるものか。むしろ上海の『東方早報』の方が詳細に伝えている。

ここでこの報道を取り上げたのは、外交部のホームページで公表されている記者会見のやりとりの中に、『人民日報』に掲載された上記の質疑応答が掲載されていないからだ。

この質疑応答は、外交部が正式に認める、または公式に残すことに躊躇するような内容なのだろうか。日米韓3カ国に対して、「いったい何をするのか」といい放ったことは、いくらかキツイかもしれない。しかし、当局は、『人民日報』という国内向けのメディアを通じて、日米韓3カ国に強い態度をとっていることを国内にアピールしなければならないのかもしれない。他方、対外的に見られる可能性の高い外交部の公式発表には、海外を刺激するような質疑応答を伏せたかったのかもしれない。

 

20101204

来年のマクロ経済政策は「引き締め」基調

中央政治局会議が開かれ、2011年の経済政策の方針を決定した。ここで決定した方針は、近く開かれる中央経済工作会議で、各地方、各部門などに指示されるのだが、注目は「適度に緩和的」から2年ぶりに「中立的」(穏健)へと表現を変え、引き締め基調の金融政策への転換を決定した点だ。「従緊的」(緊縮)という表現もあるが、今回はその一歩手前の表現にとどまっている。

会議は、2011年の方針を次のように決定した。「経済発展方式の転換を主戦とし、『積極的財政政策』と『穏健的貨幣政策』を実施し、マクロ調整の柔軟性、有効性を強化し、構造調整を加速的に推進し、自主創新を大いに強化し、省エネ排出削減をしっかり掴み、改革・開放を絶えず深化させ、民政の保障と改善に力を入れ、国際金融危機の衝撃への対応成果を強固、拡大させ、安定した速い発展を維持し、社会の調和安定を促進する」。

 

詳しい経済情勢分析や政策分析は専門家に委ねるとして、私の注目はこの会議の報道が、中央政治局の現状認識を伝えていない点だ。中央経済工作会議の報道では、おそらく現状認識も伝えられるだろうから、それを待つことにする。

その点では、中央政治局会議の前に開かれた、党外人士との座談会の報道の方がわかりやすい。この座談会では、現在の経済情勢と来年の経済工作方針について、意見交換が行われたが、胡錦濤が出席し、重要講話を行い、温家宝、習近平、李克強らも出席している。本当に中央政治局での決定に参考にするために意見を聞こうとこれだけのメンツが出席しているのか、それとも重要な政策決定なので、手続きとして党外人士も尊重しているというパフォーマンスなのか、私にはいまだに判断がつかない。なぜならば、党外人士との座談会は、いつも重要な決定がされる会議、今回の場合中央政治局会議の前に開かれているにもかかわらず、その報道は重要会議と同時、あるいはその後だからだ。先に報道すれば、その内容が広く周知され、より深い議論がされ、重要な決定に寄与すると思う。しかし、そうしないは、党外人士の意見は「敏感」なところがあって、それが周知され手しまうと収拾がつかなくなることを警戒しているからだろうかと勘ぐってしまう。

いずれにしても、党外人士との座談会での胡錦濤の重要講話についての報道は、中央政治局会議の報道よりも整理されている。来年の工作重点は以下の6点。

(1)マクロコントロールの強化・改善:安定した経済成長、経済構造調整、インフレ見通しの管理の3つの関係を処理する

(2)農業・農村工作の強化

(3)経済構造調整の歩調の加速

(4)重点領域とカギとなる関節に見直し改革の推進

(5)国際的な協調を強化し、世界的な経済ガバナンスに積極的に参加する

(6)民生領域の改善と社会管理の強化

ここでの注目は、(1)でインフレを警戒している点と、(5)で国際的な経済運営への関与に積極的であろうという姿勢を示している点だ。

そして、胡錦濤は党外人士に対し、民生の保障や改善などの重点問題を巡って、社会情勢、民衆の情勢を深く理解し、党と国家を助け、民衆との団結、民衆との意思疎通、民衆へのサービスの工作を立派に行うことを希望している。社会との仲介の役割として、民主諸党派や商工聯合会などの党外人士に期待している、期待せざるを得ないことを伺わせる。

 

もう1つ、日米共同軍事演習について、小さく扱われている。朝鮮半島の緊迫した情勢下で、米韓、日米の共同軍事演習が行われたことは、日米韓の協調関係の強化の意ありとの分析を示し、2つの共同軍事演習が朝鮮半島情勢の緊張さらに激化させ、東アジア情勢の緊張緩和に逆行するとのアナリストの見解を紹介している。

 

20101206

薄煕来は共青団に触手を伸ばす

重慶市党委員会と中国共産主義青年団(共青団)中央との間で、全国都市と農村での共青団建設の統一計画試点に関する覚書が調印された。その調印式には薄煕来重慶市党委員会書記と陳昊共青団中央第一書記が出席した。

薄煕来は「共青団は共産党の後備軍であり、共青団員には中国の国情をはっきりと感じ取り、比較的全面的に理解させる必要がある。こうしてはじめて正確な社会判断と政治方向を有することができる」と講話した。

またまた薄煕来ネタ。共青団中央との連携強化を重視して、重慶市トップが調印式に出席したのだろう。そうなると共青団中央のトップも出席せざるをえない。双方にとってそれなりに重要な計画のようだ。

ここまでに至る経緯は分からないが、うがってみれば、薄煕来が中国政界の一大勢力である共青団の支持を拡大するための行動のようにも思える。

 

もう1つの注目は、国家公務員採用試験が全国46都市3.4万会場で行われ、1.6万人の募集に対し90万人が受験した。56倍の難関だ。安定志向から国家公務員志望は高まっている。このうち試験問題がおもしろい。「農民工の子女教育」「わが国のエネルギー条件をどう総括できるか」「『国防動員法』にはどのような規定があるか」など。なかなか難しい問題だ。

 

20101207

前原評価の転換か

朝鮮半島情勢について話し合う日米韓外相会談が6日に行われた。「どのようなことが話し合われるのか」と注視していた中国だが、『人民日報』は3面で比較的大きな枠で、外国メディアの報道を引用する形で伝えた。

しかしその内容は薄い。共同声明については触れず、米国メディアを元に、3カ国が「協調を極めて緊密にする」ことを表明したと報じた。 そして各国の立場を一方的に報じた。

米国:『ワシントンポスト』を引用して、韓国が日本によって占領された歴史を考慮すれば、アメリカが東アジアに新たな同盟関係を構築することには制限がある。なぜならば、日韓両国の間には深刻な不信任が依然存在するからだ。

韓国:省略

日本:日本のメディアを元に、前原外相が「6カ国協議の提案を拒否するものではない。いかに6カ国協議を再開するか謙虚に率直に協議することを希望する。」と述べた。

 

会談の内容は日本の新聞の方が詳しく、中国の役割への期待が表明されたようだが、『人民日報』はその点を報じていない。

興味深いことは、米国の立場を伝えたもので、協議とは直接関係ない日韓の歴史問題を持ち出している点だ。日米韓3カ国が一体ではないということを言いたいのだろう。

また日本の立場の伝え方も興味深い。前原外相の発言は123日のもののようだが、その報道内容は、中国の6カ国協議首席代表緊急協議の提案を支持するものであり、ここでも日米韓3カ国のバラバラ感を示したいのだろう。しかし、中国があれだけ敵視してきた前原外相の発言を引用している点が驚きだ。前原外相さえ、中国を支持していると言いたいのか。それとも対日政策で、対前原対策に変更があったのか。

 

明らかに李源潮主導の人事

党中央は6日、江蘇省党委員会書記に羅志軍を、湖北省党委員会書記に李鴻忠を任命した。

両ポストの前任者が共に年齢が65歳に達したため、定年による交代である。

羅志軍は省長からの昇格。年齢が59歳なので、この先のステップアップがあるのか、これが上がりポストなのか微妙なところだ。かつて共青団中央で要職に就いており、中央組織部長が元江蘇省党委員会書記の李源潮であることから、元上司の李源潮主導の人事といえる。そのため、第18回党大会でステップアップするための先取り人事の可能性はある。

李鴻忠も省長からの昇格。54歳と若く、電子工業部弁公庁、広東省副省長、深?市党委員会書記、と多彩な経歴を有しているため、この先のステップアップは確実だ。

上海の『東方早報』は後任の省長候補者を紹介している(実はこのこと自体すごいことで、上海だからこそなせる技)。

江蘇省長の候補者は、李学勇科学技術部党組書記、60歳。

湖北省長の候補者は、王国生江蘇省党委員会副書記、54歳。

李学勇はこれで上がりポストになるだろう。王国生は李鴻忠と同じ54歳で、この先のステップアップは確実。

 

今回の湖北省人事はおもしろい。なぜならば、李源潮派(彼を共青団派と言いきれるか、今となっては微妙なのだが)と江沢民派のそろい踏みの人事だからだ。
 李鴻忠は、1985年から電子工業部弁公庁にいたので、ちょうど江沢民が部長だった時期と重なる。江沢民に近いと言えそうだ。

他方、王国生は、江蘇省党委員会書記の時の李源潮の部下の可能性が高く、それ故の抜擢だろう。それは、よく言えば江沢民派の李鴻忠とのバランス、悪く言えばにらみを効かせる意味があると言えそうだ。

もう1つ興味深いのは、省長候補2人ともが地元たたき上げでないことだ。党委員会書記はまだしも、省長も腰掛け的なポストになりつつあるのだろうか。

 

20101209

習近平も薄煕来を評価

1268日、習近平が重慶市を視察した。習近平は、重慶市の「唱紅歌、読経典、講故事、傳箴言」(革命家を唱い、古典を読み、昔の経験を重視し、教訓を伝える)活動を認めた。そして、「打黒除悪専項」(マフィアを取り締まり、悪人・悪事を排除する特別の)闘争の展開と社会治安方面の強化で得た成果を高く評価した。さらに、ここ数年の改革・発展・安定面で得た成績を十分に認めた。

 

またまた薄煕来ネタ。次期最高指導者と目される習近平が重慶市の取り組みを評価した。つまり、薄煕来を評価したことに等しい。これには薄煕来も大喜びだろう。中国語で「肯定」するというのは、どのくらいの意味があるのだろうか。

 

もう1つ、中央弁公庁と国務院弁公庁が、「党政主要領導幹部と国有企業領導人員の経済責任・会計検査規定」を公布した。これは経済責任・会計検査を、これまでの郷鎮レベルから、地方の省レベル・閣僚級の党と政府の指導幹部にまで拡大するというもので、その結果が人事評価に影響するという規定。各所属単位の財政状況や所管単位の監督管理状況が含まれるということで、投資項目の建設管理などが厳しく会計検査される。省レベル・閣僚級の幹部の汚職が明らかになるのか。誰が最初の適用例になるのか。

 

20101214

2011年に向けて期待の高まり

中央経済工作会議が終わり、2010年の回顧と2011年の展望が紙面を占め始めた。年末である。

23面で民生分野の取り組みについて、2010年の回顧と2011年の展望が特集されている。ここでいう民生分野は、(1)就業、(2)住宅、(3)医療、(4)養老年金のこと。

これに関連し、中国人民大学労働人事学院の鄭功成教授の「民生改善は制約的な指標を確立すべき」と題する講演要点が掲載されている。鄭は社会保障研究などが専門で、全人代の専門委の委員でもあり、有名な学者。

鄭は、現在作成中の第125カ年計画の中で、民生分野の改善では、制約的な指標を設定すべきと主張。具体的には次の通り。

(1)住民収入、労働報酬の上昇率の指標を明確にし、GDP伸び率よりも高くし、労働報酬の伸びと企業収入の伸びを同じにする

(2)ジニ係数の抑制指標を明確にし、貧富の差を一定程度縮小し、2015年のジニ係数を0.45以下、2020年には0.4以下まで下げる

(3)民生福利に対する公共支出の伸びを税制収入の伸びよりも大きくし、社会保障のカバー面と基本的な公共サービスの均等化では、就業率、失業率、就業の質の指標、環境指数などで明確な制約的な指標を確立する

 

5カ年計画では、明確な指標を掲げない傾向にあるが、環境エネルギー方面や民生方面では、排出削減量や社会保障カバー率などの指標が掲げられ、その数は増えている。鄭の提言はその流れにあるが、「制約的な」指標を掲げることを主張しており、党や政府の責任者に圧力をかけて取り組むよう強い要請といえる。そうしないと進まないという専門家としての危機感だろう。

 

その他、国家発展改革委員会が、食用油企業が大幅に生産停止する見込みとの『華夏時報』の報道について、事実ではなく、憶測にすぎないと否定した。実際は、大豆油、大豆粕の輸送が滞り、企業の備蓄が減ったため、一時的に生産停止しただけだと釈明した。

食用油は人々の生活に不可欠のもので、旧正月を控え生産停止などの報道が流れると、またまた価格上昇かと人々を不安に陥れるだけ。国家発展改革委員会の価格管理の役割は、社会安定のためにも欠かせないということか。

 

もう1つ、16面でテレビドラマ「毛岸英」の特集が組まれている。毛岸英は毛沢東の息子で、朝鮮戦争に参戦し、米国軍の攻撃を受け戦死した。何を今さら特集か、と思うのだが、最近中央テレビのメイン1チャンネルの午前中でも再放送が始まっている。6カ国協議緊急会議の提案が日米韓に拒否されているが、中国の立場は北朝鮮との歴史的な友好を無視できないということだろう。「毛岸英」はそれを改めて宣伝するための極めて政治的な特集と思うのだが。

 

20101215

会議の季節到来

中央経済工作会議が終了し、各部門、各地方で会議が活発に始まった。来年に向けての会議のシーズンの始まりだ。

国家発展改革委員会主の会議である全国発展改革工作会議も開かれ、張平主任が指示を出している。中央経済工作会議で提起されたマクロ経済方針に沿って、重点は2つ。

(1)安定したかなり速い経済発発展経済発展を牽引するのは内需拡大だとして、次の2点を重視する

@消費能力を高める:企業、機関、事業単位の賃金の正常な増加メカニズムを完備し、最低賃金基準を次第に引き上げる

A構造優化の前提で、合理的な投資規模を維持し、4兆元の投資計画を完成させ、第125カ年計画を秩序もってスタートさせる

(2)価格水準の安定

@生産と流通の連結、備蓄の入出の調整を重視し、市場への供給を確保する

A政府の価格調整、低所得者層への配慮

B世論誘導を強化し、社会見通しを安定させる

 

まだ会議は終わっていないのか、中央政治局委員クラスが出席した気配もなく、報道は10面と地味。いち早い報道は、並行して実施されている省レベルの地方での中央経済工作会議の精神の学習活動を補完するためだろう。

とにかく、インフレは社会安定に大きく関係しているので、神経質になっていることが分かる。テレビなども混乱を招かないように必死に安定を強調している。商務部が36の大中都市の野菜価格が5週連続で下落していると発表したことを、リードを大きくして伝えている。

それにしても国家発展改革委員会の存在感は大きい。

 

20101216

土地の強制収用は、当局にとって頭の痛い問題

国務院法制弁公室が、「国有地の住宅の収用・補償条例」(国有土地上房征収与補償条例)案、いわゆる「立ち退き条例」案について、今年129日に続き、第2度目の公開意見募集を発表した。

弁公室の関係責任者によると、現行の「都市の住宅の立ち退き条例」と、1月の第1草案と今回の第2草案との違いは以下の4点。

(1)「公共の利益」の範疇:立ち退き問題は、病院や学校、水道、電気、下水・ゴミ処理、鉄道、道路などの料金徴収と同じで、「公共の利益」の範疇に属する。

(2)立ち退きの保証価格は類似の不動産市場価格よりも低くしてはならない。

(3)古くて危険な住宅の取り壊しについては、「住民の9割の同意」から「年度発展計画に盛り込み、人民代表大会の審議・採択を必要とする」へ。

(4)立ち退きを行うのは、営利目的を有する建設業者ではなく、政府自身が行う。水道や電気、ガスを止めるなどの嫌がらせや暴力はダメ。

(5)行政手段による強制立ち退きはダメで、強制立ち退きをする場合、行政が裁判所に申請し、認められてから実施する。

 

やっぱり『人民日報』というのは、慎重なのか、情報を出さない。上海の『東方早報』は、1つの法規の制定、改正に際し、2度にわたり公開意見募集をするのは初めてのケースだと伝えている。

土地の収用をめぐっては利害関係が複雑で、また地方政府が収用した土地で大もうけして、土地を収用された人が不利益を被っているので、政府に対するいろいろな不満がある。そのため、行政手段による強制立ち退きは「歴史的なもの」として、強制立ち退きは法的手続きに則って行われるとしている点は注目だろう。この規定が入ると、普通であれば行政もそう簡単には強制立ち退きができなくなるはずである。民衆の権利が保護されるということだ。

国有地に建っている住宅の立ち退き問題なので、政府の介入は分かるが、土地収用が公共サービスの範疇に入るというのは、なかなかおもしろい解釈だ。ちょっと違う気もするが、そういう位置づけにすることで、民衆重視のアピールにもなるが、法的手続きを経ることによる政府の介入の正当化ともとれる。

 

20101217

李源潮主導の人事が続く

湖北省人民代表大会が、代理省長に王国生を任命した。王国生は19567月生まれの54才。山東省貿易庁兼財貿弁公室主任、江蘇省党委副書記、組織部長を経て、来年初めに湖北省長に正式に就任する。前任の李鴻忠は126日に湖北省党委員会書記に就いている。

 

この間から江蘇省幹部経験者の登用が続いているが、今回も李源潮主導の人事であることは間違いない。人事を握る中央組織部長のやりたい放題のようにも見えなくもない。

以前書いたように、湖北省党委員会書記の李鴻忠は江沢民に近いため、省長で非江沢民派を置くことで、バランスをとっているという見方もできなくもない。明らかに江沢民に近いという人がトップにいるような地方には誰も行きたくないので、李源潮が自分のカードを出しているのかもしれない。そうすると李源潮の立場はかわいそうになる。いずれにしても、李源潮の部下はどんどん出世しているという感じだ。

他方、これで湖北省の党委員会書記と省長は、共に地元たたき上げではない、いわゆる「落下傘人事」だ。地方のトップ2人が、よそ者であるという人事は増えていくのだろうか。これは地元にとって、中央指導者に近いということで得なのか、地元のことをよく分かっていないということで損なのか。

 

20101220

地方のスタートダッシュに事前警告

中央経済工作会議のポイントを宣伝、徹底させるための評論員文章が連載されている。その4回目として「中央の権威を維持し、地方の積極性を発揮しよう」と題する文章が掲載された。その主張は、次の2つ。

(1)発展方式の転換と経済構造の調整を加速させ、民生の保障と改善に力を入れるには、中央の権威を維持し、政策執行力を強化し、政府の命令を滞りなく通じさせ、命令は必ず実行し、禁じられたことは必ずやめる。全局を謀らない者は1つの地域を謀ることもできない。

(2)来年は第125カ年規劃の初年で、スタートが重要である。各地は思想と行動を中央の経済社会発展に対する政策決定の指示に統一させ、発展方式の転換をしっかりと加速させ、第125カ年規劃スタートを口実にさまざまな指標を引き上げたり、速度を盲目的に張り合うことを防ぎ、比較優位を発揮し、創造的な工作で第125カ年規劃のスタートの成功を実現させなければならない。

 

GDP至上主義ではなく、民生や環境への配慮が現政権の掲げている方針。他方、第18回党大会まであと2年となった今、地方幹部にとって昇進が最大の関心事。その昇進のための評価は、依然としてGDP伸び率だ。ましてや、来年が第125カ年計画の初年度とあれば、地方政府は張り切って財政をつぎ込む。来年のGDP伸び率は8%超えることはまず間違いない。しかし、中央経済工作会議は引き締め基調を打ち出した。

この文章はまさにこうした地方の暴走を見越して、地方幹部に警告を発したものだ。「中央の権威」を声高にするときは、だいたい地方の抵抗が強いときで、おそらく今回のマクロ経済政策の転換にあたっても、地方は消極的なのだろう。こうしたマクロ経済政策の決定にあたって、地方の声はどのように反映されるのだろうか。中央指導者の地方視察は、タイミング的に、地方の声の聴取か、それとも中央の政策の指示、徹底か。厳密に検討する余地がある。

地方のGDP至上主義を変えることはなかなか難しい。いっそ、省レベル指導者の昇進基準を本当に非GDP指標に変えて、それによる昇進例を増やしていくと、地方のGDP至上主義は変わるかもしれない。しかし、本当にGDP至上主義が悪だと認識されているのか。今の中国には経済成長は必要だし、上海の人々を見ているとGDP至上主義をむしろ歓迎しているようにすら思われる。そうなると中央の政策は本当に正しいのか。中央と地方の駆け引きは見ていて興味深い。

 

20101221

月探査プロジェクトにちょっと大げさな称賛

党中央・国務院・中央軍事委委員会が、月探査プロジェクト嫦娥2号任務成功祝賀大会を開催。胡錦濤が重要講話。温家宝、習近平、李克強らが出席。3つの単位、1人の個人に対し、栄誉称号を授与した。

胡錦濤は、宇宙技術の発展を称え、最後に次のように述べた。「深宇宙探査技術の発展、宇宙の平和的開発利用は、中国人民が志を変えることなく追求することで、各国人の共同願望である。中国人民は各国人民と共に宇宙を平和的に開発利用することを堅持し、宇宙領域とその他の科学技術領域の国際協力を深め、人類の平和と発展を推進する崇高な事業のために、新たなさらに大きな貢献をする」。

 

『人民日報』の1面のど真ん中に、リードを赤字にして、大きな紙面をとっており、一見何ごとかと思ったら、この話題。2面もほぼ独占。こんなに大げさに報道する話題かと思っているのだが、共産党はそう判断したのだろう。中央政治局常務委員全員が出席するわけだから。

しかし、なぜこんなに大きく扱ったのだろうか。世界に誇る宇宙技術を称えることによる愛国主義の高揚ということだろう。しかし、「中国脅威論」「中国強硬論」が世界的に氾濫する現在、宇宙まで制覇しようとしているという誤解と過激な愛国主義を煽るという点では逆効果のはず。そのため、胡錦濤は最後に宇宙の平和的開発利用を強調する

それでも、中国の強さをアピールするのは、そうした方面に国民の目を向けさせなければならない、そして軍の貢献を称賛しなければならない政治的な理由があるとしか思えない。

 

1220日午後から韓国軍の射撃訓練が始まったが、中央テレビのニュースチャンネルは、訓練開始以降、毎正時のニュースでトップから20分近く報道する熱の入れ様。今朝の上海テレビのニュースも地元の話題はなく、この話題をトップニュースで流している。中央テレビの報道は、ソウルや日本の駐在記者のコメントや韓国や北朝鮮のテレビ番組の映像を流している。

 

中国の関心の高さを伺わせるが、なんとなく人ごとで、興味本位で伝えているように感じる。現在の朝鮮半島情勢については、戦争にエスカレートすることはないため、中国に直接的被害が及ぶことはなないという確信からではないか。最近思うのは、中国に実害のない国際的ないざこざに対して、ことさらに映像を流す報道は、上から目線の感がひしひしと伝わってくる。少なくとも、朝鮮半島情勢については、人ごとではなく、中国としてやることがあって、それをやって、それをもっと伝えるべきではないかと思う。

 

20101222

どうして日本の新防衛大綱はダメなのか

1217日に採択された日本の新「防衛計画の大綱」に関し、日本駐在記者の記事が掲載された。リードは「防衛政策の転換で、日本の世論は平和憲法に異変が生じるのではないかと心配している」となっている。

記事は、最初に「国際社会の代表を自任し、中国に対しあれこれあら探しするこの大綱は人々の理解を得られない」とする記者のコメントがあり、その後簡単な大綱の内容の紹介、武器輸出三原則に関する仙石官房長官のコメント、大綱に反対する福島社民党党首、中国寄りの河野洋平前衆議院議長のコメントを紹介している。そして、最後に共同通信の「日本の防衛政策の転換が人々を心配させている」という記事を紹介している。

 

相変わらず都合のいい報道の仕方だ。問題点は、なぜこのような内容の大綱になったのかという背景説明が一切ないところ。新大綱作成の最大の理由は、中国の軍事的台頭への対応があるわけだから、自分たちがどのように認識されているかということを説明し、その認識はどこが間違っているのか、誤解があるのかを示して、批判しないと説得力に欠ける。

劉暁波のノーベル平和賞受賞に関する報道も同じだ。ここで受賞の是非を議論するつもりはないが、この件に関する中国の報道で最も欠けているのは、受賞理由の説明が一切ないところだ。彼が何を訴えてきたことが評価されたのかを説明しないとフェアではないし、劉暁波批判、ノーベル賞批判の説得力がない。でもそれをしないということは、共産党自ら彼の主張を認めているに等しい。だからこそ、論理的な批判が必要なのだが。

中国の報道の自由度は以前よりも高まっている。しかし、ここが肝心というところを、地元紙や新興メディアだけでなく、『人民日報』が報道しないと、やっぱり中国の報道は、ということになる。

 

20101223

「他人を思いやる気持ち」はつまらないか

中央農村工作会議が開かれ、来年の農村政策が決まり、水利改革に力を入れることや、国務院常務会議で基本養老金制度の加入者拡大を進めることや、国家宗教事務局がバチカン非難の談話を出したこと、日本の新防衛計画大綱非難の評論などが報じられた。

日本駐在記者の「東京では電車で通勤する」と題するコラムも掲載された。東京への通勤には、自動車ではなく、電車を利用する人がほとんどで、路線も充実しているし、時間通りに運行されるし、便利だと。他方、車を運転するにもETCVICSなどのシステムが充実しているという。

中国では、通勤に車を使う人が多く、交通渋滞や駐車の問題が深刻で、それに比べて日本は、という話で、中国ではよくあるパターンのコラムといえばそれまでだ。それだけならここで取り上げなかった。コラムの最後の話に目を引かれた。

「日本で車を運転するときは相互に礼儀を尽くして譲り合う(礼譲)気持ちを特に重んじる。記者が日本の自動車学校で運転を習っていたとき、教員が繰り返し強調していたことは、相互の礼譲であり、これは自動車運転の安全を保障するだけでなく、道路運行の効率を高める」

 

脈絡もなく突然出てきた締めの文章だが、記者はこれが言いたかったのだろうか。確かに記者が言うように、上海の自動車、自転車の運転はヒドイ。車だけではない。人々の振る舞いもそうだ。歩行者や他人を思いやる気持ちには全く欠ける。確かに、上海の人々、学生の生活水準はとても高く、その消費行動には圧倒される。しかし、精神的な豊かさはまだまだ備わっていない。

実は記者の文章は「他山の石」という段に掲載されている。「他山の石」の意味をあらためて調べてみると「よその山から出た粗悪な石にも利用できる」の意から、「他人のつまらぬ言行も自分の人格を育てる助けになることのたとえ」という意味だった。記者の最後の一文にある自動車学校の教員の言葉は「つまらぬ言行」なのだろうか。今の中国人には理解できないかもしれない。しかし、それでも、経済的豊かさに裏打ちされた「人格を育てる助け」になるメッセージであればいいと思う。

 

20101224

●全人代常務委員会「聯組会議」も生中継

1224日午前9時から、中国の中央テレビのニュースチャンネルで全国人民代表大会常務委員会第18回会議の「聯組会議」が生中継されている。テーマは「新医療保障制度改革」。通常、「分組」と呼ばれるグループごとの討論を経て、集約されるのだが、テーマによってはグループが一堂に集まる「聯組会議」が開かれるようだ。そのため、かなりの数の人が集まっている。おそらく全人代常務委委員、関連省庁と省レベルの地方政府の幹部だろう。

アナウンサーの紹介では、「聯組会議」は利害関係が複雑なテーマの場合に開かれ、2009年夏の「食糧安全」について開いて以来ということだ。「医療保障制度改革」はまさに「聯組会議」開催に該当する重要なテーマということだ。

人力資源・社会保障部副部長が提案説明をした。その後、全人代常務委員会委員が提案について、賛成を表明した後、関連予算について質問をした。これに対し、財政部長が回答している。

 

全人代がこのようにテーマによっていろんな形式の会議の場を有していること、また国民の関心が高いテーマであるため、テレビで生中継していること、これはとてもおもしろい ポイントは、シナリオのある質疑応答なのか、ガチンコの質疑応答なんか。多くを期待するつもりはないが、少なくとも反対意見を述べる人がいるのかどうか、今しばらく中継を見ることにする。

 

ちょっと偏っていませんか

李源潮中央政治局委員が、林芳正前防衛相を団長とする日中友好議員連盟青年議員代表団と会見した。李源潮は「日中両国がアジア、世界に重要な影響を与える国家である。平和、友好、協力が終始両国関係の基調でなければならない」と述べた。

 

日中間の政治家のパイプが乏しいことが日中間で問題が発生したときの解決が容易でないことの原因の1つだ、との指摘がされて久しい。それは私も同意する。その観点から、若手議員が中国を訪問し、政治家とのパイプを構築することは、日中関係にとって大変いいことだ。しかも、次期党大会で中央政治局常務委員入りが確実な李源潮と会見したことは長期的な視点からも意義は大きい。

しかし、今回の訪問、ちょっと気になったことがある。それは、李源潮の前に、代表団は湖南省と内モンゴル自治区を訪問し、両地のトップである周強と胡春華と会見していることだ。周強、胡春華は将来のトップリーダー候補であるから、彼らと会見した意義は大きいし、先見の明がある。戦略的には悪くない。しかし、ちょっと偏りすぎとの印象を持つ。次のトップリーダーは非共青団の習近平だ。彼らはどう思うだろうか。

この代表団の受け入れが共青団系統の全国組織だったので、この人選はやむを得ない。日本側に役割分担があって、自覚的な共青団への接近ならばいい。他に非共青団の政治家とのパイプを作るグループがあれば、それでバランスをとることができる。しかし、「共青団が重要」という周回遅れの認識から共青団一辺倒の人脈形成を想定しているのならば問題だ。戦略的な人脈作りが望まれる。

 

20101226

都市部での少数民族管理が急務

全国都市民族工作会議が開かれた。少数民族に関するこのような会議があったのか、今まで気がつかなかった。賈慶林が重要コメントを出し、回良玉が出席するというそれなりに重い会議のようだ。

賈慶林の重要コメントは、(1)法に基づく管理強化、(2)少数民族のために奉仕する工作を立派に行う、(3)民族団結の宣伝教育を強化し、各民族の共同団結奮闘、共同繁栄発展を実現する、というもの。

回良玉の指示は次の5点。(1)重要原則=合法的権益の保障、(2)重要任務=流動人口のサービス管理、(3)重要基礎=社区民族工作の強化、(4)重要内容=民族要因の矛盾もめごとの一斉捜査メカニズムの構築と除去工作水準の引き上げ、(5)重要手段=民族団結教育と民族団結進歩の構築活動の展開。

 

昨年7月のウルムチの暴動も広東省での出稼ぎウイグル人と漢族の騒動がきっかけになるなど、沿海地域の都市部に出稼ぎに行っている少数民族と漢族の対立が深刻で、殺人事件が起きたりしている。最近も殺人事件があった。この会議もこうした情勢と関連しているのだろう。賈慶林の重要コメントも回良玉の指示も、こうした情況を意識したものだ。

 

20101228

上海も大喜び

上海世界博覧会総括表彰大会が開かれた。中央政治局常務委員全員が出席し、胡錦濤が重要講話を行った。紙面では1面中央にリードを赤字にして大きく取り上げられており、2面、5面も関連記事、あげく67面は表彰された団体、個人の名簿で独占された。

 

今朝の上海テレビのニュースも冒頭からこの大会を伝える昨夜の『新聞聯播』の報道を長々と流している。上海も大喜び、上海市トップの兪正声も大喜びといったところだろう。上海世界博覧会が中国の今年の一大国家行事だったのだと再確認させられた。