86回 20103月の『人民日報』(2010418日)

 

35日】

●李肇星全人代スポークスマンの記者会見は、中国の現状をコンパクトにまとめている

全人代開幕前日、恒例の記者会見が行われた。どこかで見た顔、と思ったら前外交部長の李肇星だった。国内外のメディア向けの記者会見で、この記事は質疑応答の中から選んで、回答を載せたものだ。そのため、何を選択したかで、中国が重要と考えているかを知ることができるのではないかと考える。イシューは次の7点。「⇒」は私のコメントである。

1)人代の監督重点は経済建設と民生

⇒どうやって監督するのかが重要だが、予算執行の監督の強化と改善で対応。

2)選挙法改正で都市と農村の同比率(人民代表1人あたりの人口比のことで、14を1:1にする)による人代代表選出―民衆の平等、地域の平等、民族の平等の原則を実現するもので、人民民主の拡大、人民の権利の保障を実現する制度保障。

⇒確かに定数の配分が大きく変わり、農村の人民代表が増えることになる。しかし重要なことは、どのような人物が選ばれ、どれだけ農民のために働くのかということ。制度を変えただけでは、そこまで読めない。

3)国防費の上昇幅は低下―2010年の国防予算は前年決算額比7.8%増と上昇幅が低下。国防費の抑制の結果で、国防建設と経済建設を協調発展させる。

⇒しかし去年に比べ、内訳の項目が変わっていたりすると、単純に前年と比較することに意味がない。やっぱり内訳が不透明と言わざるを得ない。

4)西側の政治家のチベットへの理解の欠如―「ダライ」は宗教家ではなく、政治亡命者である。「チベット独立」に賛成しないのに、なぜ大チベット区を作ろうとするのか。

⇒共産党は20083月のチベット暴動の後の一時期には、チベット亡命政府内のダライ・ラマ14世勢力と武装派勢力とを区別しようとしていたが、やっぱりダライ・ラマ14世批判か。

5)西側の政治家が台湾問題を利用して中国の内政干渉しようとすることを非難

⇒最近オバマ大統領がダライ・ラマ14世と面会したことに対するアメリカ非難か。共産党にとって民族問題は国家統合の観点から一党支配の正当性にかかわるので、ダライ・ラマ14世との面会は許せない。それに比べると、現状を見れば、台湾に武器を売却することは相対的に大した問題ではない。

6)不動産価格高騰―政府は高度に重視しており、さまざまな措置を講じている。土地、金融、税収などの市場調整手段を総合的に運用して不動産価格を安定させる

775ウルムチ事件―昨年200975日のウルムチでの事件は、宗教問題でも民族問題でもない。国内外の「三股勢力」(分離主義者、テロリスト、宗教的過激派)が組織した暴力犯罪事件である。

⇒ウルムチの事件は、漢族とウイグル族の対立という民族間の感情的対立が露呈したことが重要なのに、従来の認識を繰り返して、大丈夫か。

 

36日】

●全人代での温家宝総理の政府活動報告の内容は

全人代の最終日に採択されないと、昨日発表された政府活動報告の全文は公表されない。そのため『人民日報』でも今日の段階では細切れに報じられるのが常。その記事のリードをならべて、報告の内容を大体把握しておきたい。

1)わが国の改革・開放と社会主義現代化建設が新たな大きな成果を獲得した

2)マクロコントロールを強化、改善し、経済の安定した速い発展を促進させよう

3)改革・開放を深化させ、科学的発展に有利な体制メカニズムを絶えず完備しよう

4)昨年は民生を改善し、社会事業の発展を加速させることに力を入れた

5)経済構造の調整に力を入れて、長期的な発展の基礎を実現しよう

6)政府工作の体得

7)経済発展環境と政府工作を立派に行おう

8)今年のGDP伸び率は8%前後

9)マクロコントロールの水準を高め、経済の安定した速い発展を維持しよう

10)経済発展方式の転換を加速し、経済構造の高度化を調整しよう

11)都市と農村の統一的発展の力を強化し、農業農村の発展基礎を強化しよう

12)科教興国戦略と人材強国戦略を全面的に実施しよう

13)都市と農村の住民の社会保障システムのカバーを加速させよう

14)文化建設の強化に力を入れよう

15)あらゆる手段を使って就業を拡大しよう

16)不動産市場の安定的健全な発展を促進しよう

17)人口と計画出産工作を立派に行おう

18)しっかりと改革を促進し、さらに開放を拡大しよう

19)人民が満足するサービス型政府を建設するよう努力しよう

20)平等、団結、互助、和諧の民族関係を強固にし、発展させよう

21)軍隊の全面的建設を強化しよう/両岸関係の平和的発展の新局面を作りだそう

22)香港とマカオの長期的繁栄と安定の維持を全力で支持する

23)持続的平和と共同繁栄の和諧世界の建設を推進しよう

 

●不動産価格は高騰しているはずなのに、「1.5%の伸び」はおかしいのでは

225日に発表された「2009年統計公報」の中の大中70都市の不動産販売価格の上げ幅が「1.5%」であることに対し、社会の各方面から疑念が出ており、国家統計局が説明した。

問題は、不動産販売価格の変動幅を1年間の「平均値」で発表しているため、1年間の実際の市場価格の上下の動きが数字に表れておらず、消費者の実感と大きくかけ離れている点にある。つまり消費者は相当なバブル状況にあるのに低すぎると思っているのだ。

国家統計局もこのことを認めており、工業製品や農産物と異なり、不動産は特殊で、地方差や都市差、(さらに狭い意味での)どの場所か、何階か、部屋の向きなどで価格が大きく変わってくる。しかし、データの取り方の改善の余地はあるとしている。

国家統計局のOBも、14月に不動産価格が下がり、5月以降上がったため、平均値にするとこのような数字になる。上昇率が大きいことを隠ぺいしたり、小さく見積もったものではなく、あくまでも技術的な原因であるとフォローした。

 

1年平均となるとこのような小さな数字になることを「社会の各方面」も理解していないのかなあと思うが、そもそもは国家統計局の説明不足でもある。しかしこの統計では実態を表していないのも確かで、再考の余地があるだろう。また「社会の各方面」がこのような異論を出すということは、不動産価格の高騰について社会の関心が非常に高いことの表れといえる。そのため、国家統計局がきちんと公の場で説明するのは情報公開という点でもいいことだ。社会の混乱を最小限にとどめるためには、中国に限らず、十分な説明責任があるということだろう。

 

39日】

●選挙法改正のポイントは、農村住民と都市住民の人民代表の割当比率を同じにすること

8日の全人代の全体会議で、今回のハイライトである全人代代表と各レベルの地方人代の代表の選挙法の改正について、その内容が説明された。そのため、『人民日報』にそれにちなんだ特集が組まれた。

主な改正点は以下のとおりである。

1)全人代、地方人代共通の改正として、これまで代表1名が代表する都市人口と農村人口の比率は「14」だったが、これを「11」、つまり同じにする。これにより、農民が、選挙だけでなく、国政に対する参政権、発言権、監督権を強めることができる。農民が、選挙と政治的権利の実現において、都市住民との平等の原則にむかう第一歩となる。

2)全人代について、31の省レベルの地方は、人口や面積、経済発展度が異なるが、取り扱い事務に違いはなく、法律的に平等なので、各地方に割り当てられる代表については、「基本定数」を設定し、さらに「人口数に応じた定数」を加え、各地方の定数とする。各レベルの地方人代もこれに準ずる。

3)県・自治県人代代表については、人口の特に少ない、郷、民族郷、鎮にも最低1名の定数を割り当てる。

その他特別定数の設定:末端代表、特に「工人」、農民、知識分子代表には一定の定数を割り当てる

同時に掲載された関連の論評「農民が同比同票になった後、いかにして同権にするか」では、「人代代表が代表する農村人口と都市人口の比率が同じ(同比)になり、1票の価値が同じ(同票)になって、いかにしてその意義実現する、つまりいかにして農民の利益を代表し、農民を代弁する全人代代表を選出し、農民の政治参加を拡大し、(都市住民と)同じ権利(同権)を実現できるのか」と問いかける。

この論評によれば、2007年の地方人代選挙の際、数カ所で実験が行われ、農民代表が増えたことで、多くの成果が出ている。そして「農民が利益表出における不利な立場を改善する根本的な方法は、政治参加を拡大することにあり、選挙制度改革を通じて農民の政治権利を高めることである」として、今回の選挙法の改正を支持している。

 

改正のポイントを表すキーワードは「平等」である。ここで想定されている平等は(1)人の平等、(2)地方の平等、(3)民族の平等である。選挙法の最大のポイントは農民と都市住民の平等を実現することにあることは間違いなさそうだ。でも、農民代表の定数を増やしても、どのような人が代表になるかが重要で、それによって本当に農民の利益を代弁してくれるのかどうかが分かる。しかし代表は、政治エリートと経済エリートが大半で、選出の仕方を変えないと農民の声を反映させる、政治参加のチャネルの拡大にはなりそうもない。

 

312日】

●『人民日報』はなぜ博煕来の記事を載せたのか

「重慶が1年で『(過去)10年分の樹』を植えた」と題する、重慶市が昨年2009年に取り組んだ森林の新規造成プロジェクトに関する文章が掲載された。

重慶市では、2009年に123億元を投入し578ムーの森林を新規に造成した。これは2009年の全国の新規造成分の6%にあたる。2008年までの10年間の森林造成投入総額は60億元だった。また2009年に植えた樹は5億株で、2008年までの10年間の総植樹株数を超えた。

この「森林重慶」プロジェクトを提唱したのが、市書記の博煕来で、「小気候を変え、重慶の荒れた山、禿げた山を豊かな山、宝の山に変えることで、森林プロジェクトが都市に緑を添え、農民の収入を増やし、子孫をしあわせにする」ために、10年間で480億元を投資し、市全体の森林カバー率を33%から45%に高めるということだ。

 

確かに2009年、博煕来が森林プロジェクトにご熱心だという話は聞いていた。しかし、緑がどのくらい増えたかなどプロジェクトの内容はどうでもいい。大事なことは、なぜ今日(312日)付けの『人民日報』がこの話題を取り上げたのか。全人代の真っ最中で、紙面作りも全人代一色なのに。

実は、全人代が始まった35日以降の『人民日報』に、もう1つ違和感のある記事があった。それは、教育部と広東省が広東教育総合計画大計で意見交換を行ったという9日付けの記事だ。この意見交換には教育部長と汪洋広東省書記が出席した。部長と書記が出るほどの大事な意見交換なのかとも思ったが、全人代期間中で汪洋も北京にいて、その機会を見て設定されたのかもしれない。それにしても、なぜこれを『人民日報』が報じたのかということに違和感を持っていた。

ということで、今日12日付けに博煕来を称賛する記事が掲載されたのは、政治的な意味があるのではないかと勘繰っているわけだ。それは、広東の記事はさほど政治的な意味を持って掲載したのではないかもしれない。紙面を「埋めた」だけかもしれない。もちろん政治的な意味があったのかもしれない。どちらしても、それを見た博煕来側、または博煕来を支持する人が、「汪洋だけ載せて」と、博煕来の記事も掲載するよう求めたか、または『人民日報』自身が、「ヤバイ、汪洋だけ載せちゃった」ということで、バランスをとるために、博煕来の記事を載せたか。ちょっと深読みしすぎだろうか。博煕来の記事の内容自体も、過去10年(つまり汪洋の重慶市書記在職期間中が含まれる)と比べているあたり、ちょっと意味深ではないか。

 

315日】

●全人代閉幕、恒例の総理記者会見

全人代が閉幕した。最終日の恒例は総理記者会見である。

今年の記者会見は、時節柄経済問題がほとんどだった。その中で異彩を放ったのは、記者会見の最後質問者となったシンガポールの新聞紙『聯合早報』記者の質問だった。この質問への温家宝総理の回答のうち、注目したものを挙げる。

1)外交姿勢

「近代以降、中国人民は非常につらい苦しみを受けてきた。このため、われわれは国の独立、主権、領土保全に対し強烈な感情を持っている、われわれの外交政策の基本的な出発点は国益の保護で、もっとも重要なのは主権と領土保全だといえる」

 ⇒外交政策で最も重要なのが「主権と領土保全」と言い切った。「甘くないぞ、中国」と日本は再認識すべきだ。

2社会的公平と正義

「中国の発展は経済建設、社会の公平かつ正義、人の全面的かつ自由な発展の3つが欠かせない。・・・社会の公平かつ正義は、社会の安定の基礎になる。公平かつ正義は太陽よりも輝かしいと私は思う。隠すまでもないが、現在、社会には収入分配の不公平、司法の不当など多くの不公平な現象が存在している。これらは全て重視しなければならない問題だ。・・・われわれの経済活動や社会の発展は貧しい人や弱者層により関心を寄せるべきなのだ。彼らは社会の多数を占めるのだから」

 「社会の公平と正義」が重要であることを、温家宝自らが語った。
3)後継者

「私の在任中の最後の数年間はこのことに最大の力を尽くしたい。われわれに続く指導者もこの問題により関心をよせると私は信じている」

⇒次期指導者について言及するのは、非常に珍しい。事実上習近平への権力移譲のプロセスが動き出していることを、温家宝自身が実感しているということか。

 

317日】

●どこよりも先に最低賃金水準を引き上げた広東省

広東省の最低賃金水準の引き上げを発表した。施行は51日。地域を5つに分け、新しい正規従業員の月収と非正規従業員の自給水準が明らかになっている。

1類(広州)

正規―1030元/月(19.8%増) 非正規―9.9元/時間

2類(珠江デルタ地区:珠海、仏山、東莞、中山)

正規―920元/月(19.5%増) 非正規―8.8元/時間

3類(スワトウ、恵州、江門)

正規―810元/月(20.9%増) 非正規―7.9元/時間

4類(発展の後れた地域韶関、河源、梅州など12市)

正規―710元/月(22.4%増) 非正規―6.9元/時間

5類(第4類の市の困難県・県級市)

正規―660元/月(24.5%増) 非正規―6.4元/時間

最低賃金水準を引き上げた目的は以下のとおり。

1)広東省内の求人受け入れ力を高め、出稼ぎ労働者の再雇用を、広東の一部業界の「求人難」問題を緩和するため。この水準は、江蘇省や北京市よりも高いが、上海市や浙江省よりも低い。

2)第4類、第5類、つまり珠海デルタ地区以外の地域(省東部、西部、北部)の引き上げ幅を大きくし、低賃金収入層の収入水準を高めることで、珠海デルタ地域との収入格差を縮小するため。

3)労働集約型産業を珠江デルタ地区から省東部、西部、北部に移転させ、珠江デルタ地区には製造、研究開発、サービスなどの総合基地に転換させるという広東省の「2つの転移」戦略配置の推進に有利。

 

温家宝総理が全人代で、収入格差拡大の流れを食い止めようと訴えたばかりのこの時期に、どこよりも最初に広東省が最低賃金を引き上げたことは、偶然とはいえ、中央の意に沿ったものとなった。広東省に倣って、他の地域が追随する可能性が高い。そうなれば広東省トップの汪洋書記の評価が高まることになるだろう。

 

323日】

●農民工の流れが西部地区に

国家統計局農村司が「2009年農民工監測調査報告」という出稼ぎ農民(農民工)の実態調査報告を発表。その一部が『人民日報』に掲載された。

一応、2009年末現在のデータということでいいのだろう。また「外出農民工」とあるのは、この調査報告が中国を東部、中部、西部の3つの地区に分けてデータが集計されているため、ここでは地区外から流入した農民工という意味だと解釈する。

農民工の総数は22978万人、そのうち東部地区にいる農民工が117万人(対総数比43.6%)、中部地区が7146万人(31.1%)、西部地区が5815万人(25.3%)。

東部地区にいる外出農民工は9076万人(対前年比8.9%減)、中部地区にいる外出農民工が2477万人(33.2%増)、西部地区にいる外出農民工が775万人(同35.8%)。

長江デルタと珠江デルタにいる外出農民工は、それぞれ対前年比で2.4%減、7.6%減であり、2009年下半期から起きている東部沿海地区の出稼ぎ労働者不足を反映していると分析している。

外出農民工の平均月収は1417元(対前年比77元増)

業種別農民工の月収

−高収入:交通運輸業1671元、鉱産物採掘業1640元、建築業1625

−低収入:ホテル飲食業1264元、サービス業1276元、製造業1331

地区別農民工の月収

−東部地区1422元、中部地区1350元、西部地区1378

その他

−農民工の6割が労働契約を締結していない

−外出農民工の社会保険加入率が低い

*中部・西部地区の加入率は東部地区よりも明らかに低い

*業種別では製造業の加入率が比較的よい

−事故リスクの高い建築業の雇用主の傷害保険料納付率が15%と低く、養老保険、医療保険、失業保険の費用納付率も他の業種に比べ低い

 

農民工についてのまとまったデータ。毎年出ているのだろうか。2009年の農民工の流れは、「東部地区へ」ではなく、「西部地区へ」だったようだ。4兆元の景気刺激策の恩恵は内陸だったようなので、西部地区での雇用が増えたということだ。逆に輸出低迷で輸出依存の企業が多い東部地区の景気がふるわなかったことが東部地区への農民工の流れを抑制したということがデータをもって証明されている。月収の伸びも東部地区よりも西部地区が上回ったということだ。農民工の基礎データとしては、このくらいを知っておけばいいかなあ。

 

●四川省で、紛争仲裁活動が活発

四川省で「大調解」工作が展開され、効果が出ているらしい。

「調解」という中国語は、「仲裁」という意味で、大きく@「人民調解」(末端の仲裁組織による人民どうしによる仲裁)、A「司法調解」(司法による仲裁)、B「行政調解」(行政に設置される仲裁組織による仲裁)の3つがある。それらを党と政府の統一的指導の下で協調させ、連携させたのが、四川省での「大調解」工作だ。

「大調解」工作は、省級、地級市、県級、郷級の各党委員会と政府の主要指導者がサインした「社会安定維持・社会治安総合管理目標責任書」の重要な達成項目の一部であり、責任書の達成具合は人事評価の項目になる。

「大調解」工作での組織の設置、事務施設、人員配置、専用経費などは党委員会と政府が準備する。具体的には、「大調解協調中心」が設立され、事務施設が準備され、専任副主任3590人、人員計35640人が配備され、費用は計1億元以上が各級に財政補てんされた。

この「大調解」工作の結果、2009年の紛争仲裁は52.7万件に上った。そして「群体性事件」(集団抗議行動)件数は23.5%減少、「信訪」(陳情)件数も47.3%減少し、大きな成果を挙げている。

 

党や政府主導で紛争の仲裁活動を活発化させたことで、「群体性事件」や「信訪」の件数が削減したという記事なのだが、これを読むと逆に一般市民は不利益を被ったとき、これまでは「調解」は役に立たず、いつ解決してもらえるか分からないけどとりあえず「信訪」や実力行使の「群体性事件」しか解決の方法がないことを浮き彫りにしていること、そして党や政府の指導者が「群体性事件」や「信訪」の件数が多いことを大変気にしていることがこの記事から分かる。どこの地域の党や政府も、一般市民の紛争を減らすこと、というよりも「群体性事件」「信訪」を減らすことが喫緊の課題なので、四川省での成功例が紹介されて、各地で真似っこが進むのだろう。それにしても「調解」っていうのも、もう1つイメージがわかない。どの程度の紛争まで対応できるものなのか。

 

330日】

●中国人民銀行金融(貨幣)政策委員会委員の人事

中国人民銀行(人行)金融政策委員会は、人行の金融政策策定への諮問議事機構であり、マクロ経済政策、金融政策を討論し、建議を提出することを任務とする。委員には、人行の行長と副行長、国家発展改革委員会副主任、財政部副主任など政府の関連部門幹部以外に、数名の外部専門家がいる。これまで、黄達(1925年生、中国金融学会名誉会長)、余永定(1948年生、中国社会科学院世界経済与政治研究所所長)、李揚(1951年生、中国社会科学院財貿研究所所長)、樊鋼(1953年生、中国改革基金会国民経済研究所所長)の4名であった。今回の人事は外部専門家枠が対象である。報道によれば、樊鋼が辞任し、後任に周其仁(1950年生、北京大学国家発展研究院院長)が就任する。さらに夏斌(1951年生、国務院発展研究中心金融研究所所長)と李稲葵(1965年生、清華大学中国与世界経済研究中心主任)の2名が追加(増補)される。この報道だけでは、樊鋼以外の3名は留任で、さらに2人追加されると解釈できた。しかし、人行のサイトを見ると,専門家委員は、樊鋼ら新規の3名だけになっている。ということは前期の4人はみな委員でなくなったということだ。

新規3名の委員の専門は、周が新制度経済学、夏がマクロ経済や金融政策、李が国際経済学である。

 

人行金融政策委員会には設立当初からマクロ経済政策、金融政策などの重要な経済政策の決定過程では重要な役割を果たしているのではないかと思い、興味があった。今回の人事は、報道文によれば、交代と増補を分けているので、樊鋼以外は留任だと思うのだが・・・。

人行金融政策委員会がどのくらい重要な役割を果たしているかは、具体的な検証が必要で、近いうちに調べてみたいと思っている。金融政策の重要性が増している今、新規3名の専門家の発言、論文に注目しなければならない。