第79回 20093月の『人民日報』(201036日)

 

318日】

●財政部が、財政部が代理発行する2000億元の地方債の発行について説明

中国初の全国規模の地方債の発行について、財政部が説明した。

地方債に対する信用度が低いため、財政部が代理発行して、信用度を高める。

発行申請する地方政府は多いが、2000億元という制限があるため、合理的な配分が必要になってくる。配分の基準は、用途が公益性であることや地方政府の返済能力基準になる。

財政部が各地方政府に債券発行の規模(総額のことだろう)を通達するが、それは指標を抑制するためである。最終的にどの用途に、いくらの債券を発行するかは、各地方政府が決める。

 

これまで、県レベルの財政について勉強したことがある。そのとき財政状況を改善する手段の1つとして必ず出てきたのが、地方債の発行であった。

今回地方債が初めて全国的に発行されるのは、全人代で掲げられた内需拡大への対応によるものだろう。しかし、財政部の代理発行というからには、まだ地方債発行の本格実施ではなく、緊急対応という感じだろう。

しかし、この問題は政治的なイシューとなる。なぜならば、全体額が限られているためで、どう配分するか、ぶんどり合戦がこれから中央では繰り広げられるだろう。

 

319日】

●広州市党委員会・広州市政府が「広州市党政領導幹部問責暫行辧法」を公布、41日から施行

「暫行辧法」の内容を見ておく。

1)党政指導幹部が履行すべき7種類の職責

@政策決定行為

A上級機関の政策決定と配置を執行する行為

B紀律を執行し、法律を執行する職責を履行する行為

C社会管理職責を履行する行為

D内部管理職責を履行する行為

E監督を受ける行為

Fその他の職責を履行する行為

2)民生問題に関わる問責を強化

@社会に広く及ぶ、人民大衆の利益と密接に関わる政策決定事項について、規定に応じて、公聴会、論証会などの形式によって意見を徴集しない

A人民大衆の合法的権益に及ぶ重大な問題について、すぐに解決しない、或いは大衆に強く関わる問題に対し解決できるのにすぐに解決しないなどの状況が発生したとき、責任が問われる

3)監督

党政幹部は、党内監督、法律監督、民主監督、世論監督、大衆監督を受けないと責任を問われる。

4)問責の手順

上級機関や市の領導の指示を除くと、指示、批示、成績評定、活動評定の他、新聞メディアで取り上げられた資料、公民、法人代表、その他の組織が提出する関連証拠資料の検挙と異議申し立て

5)その他

問責を受けた党政領導幹部の当該年度の評価が優秀を得なかった場合、1年は抜擢しない

 

320日】

●新たな貧困水準を提示

今年から新たな貧困扶助基準を導入することになった。1人あたり純収入が1196元以下を扶助対象とする。2008年該当者数は4007万人。

これまで2つの基準があった

@1986年に制定された「絶対貧困基準」:1985年の農民1人あたり純収入が206元未満の農村住民が対象。2007年に785元に変更し、対象者数は1479万人。

A2000年に制定された「低収入基準」:農民1人あたり純収入が865元以下が対象。2007年末に1067元に変更し、対象者数は2841万人。

 

2つの基準を1つにまとめ、貧困問題を解決するとのこと。今年の基準が上昇したのは物価上昇分などを考慮したものらしい。2007年に2つの基準の対象者数は単純に足して、4320万人。1年間で300万人近く貧困から脱出したということか。扶助対象者の所得基準を上昇させたものの、対象者が減少していることは、切り捨てた層がかなりありそうな感がある。

 

●「経済は落ち着き回復の予兆が出現している」

予兆とは次のことである。

@投資が大きく伸びている状況が続いている

A自動車の原材料購入が緩やかに回復

B消費の信用貸し付けの伸びが急速に増加

C企業の資金繰りの状況がよくなっている

D4兆元の内需拡大策の関連産業への期待感

E重慶市の主要産業が回復の予兆

F浙江省の企業の運転状況が全体的に良好

G天津市の外資利用の増加傾向を維持

中国経済の回復予兆の報道が最近増えている。この記事では、具体的な予兆が8点挙げられている。社会の不安を払拭するための、宣伝色の強い記事のようだ。

 

322日】

●全国公安機関大走訪愛民実践活動のルポ

全国の人民警察が末端の村に行って、民衆と交流するキャンペーン。20081225日にスタートし、3カ月間に全国190万強の村で実施された。その成果ルポで、主な内容は以下のとおり。

(背景)公安部が今、大走訪愛民実践活動を行うのは、偶然のことではなく、深刻な背景がある。個々の人民警察は、「民衆の門を入っていかない」「民衆の話とつながらない」「大衆のサークルに入っていかない」などの問題を抱えている。人民警察と民衆の関係の新たな変化に直面し、公安機関は何から改善したらいいのか。

(目的)各地の公安機関は、各種の矛盾、紛争が容易に発生し、多発している状況に対し、まずは予防、仲裁を主とし、あらゆる手段を講じて末端で矛盾を取り除き、当該地で問題を解決し、萌芽の段階で隠れた弊害を取り除き、全力で国家の安全と社会の安定を維持する。

(浙江省の事例)「5つの訪問の重点」@矛盾、紛争が発生しやすいところ、A特殊集団、B困難な企業、C治安の隠れた弊害、D人民警察の家族。

 

昨年発生した多くの集団抗議行動の批判の矛先が公安にあったと指摘されている。そうした状況を受け、公安部が信頼回復のために、行ったキャンペーン活動と言える。

公安への批判は、汚職や不公正さにあるだろう。しかし、そうした不信感を払拭する方法として、人民警察が末端に入り込んで、民衆と交流することが得策だろうか。日常的な人民警察の仕事の中で、紀律を持って、仕事をすることが、信頼回復につながるだろう。人民と握手をしても、何の解決にもならないと思う。何かあれば、人民の中に入っていくという手法は意味がないのに、いつも繰り返される。他に手はないのか。

 

323日】

●「1つの病気を2年間ほったらかし 合法的権益保護の困難」

雲南省昭通市水富県向家堰鎮の3つの村で奇病が発生し、200610月から200812月の間に12人の男性が相次いで死亡し、現在も数十名の患者がいる。彼らに共通していることは、安徽省鳳陽県官溝郷の石英加工企業に出稼ぎをしていた点である。

専門医師の診断により、奇病はじん肺症と断定された。患者の証言から、鳳陽県の加工工場では、コスト削減のため、乾燥法により石英粉を生産しており、粉塵予防の措置が不十分で、作業場の粉塵濃度は高かった。鳳陽県の関係部門は、調査グループを設置し、関連手続きに問題があり、安全生産措置が基準に達していない工場の操業停止にし、従業員の健康診断を実施した。

発症から2年以上経っており、病気と作業の因果関係を証明することが難しく、また出稼ぎ農民の流動性が大きく、労働契約を交わす率も極めて低いため、病気に対する保障要求など合法的権益保護を個人で行うことが難しい。法律専門家は、合法的権益保障に関連する法律と関連の政策の執行を強化し、雇用者の違法行為に対し法律的責任を追及しなければならないことと、各地方の労働組合や労働保障部門のサービスを強化し、出稼ぎ農民の合法的権益保護のために必要な援助を提供しなければならないと分析する。

水富県の党委員会と政府が出稼ぎ労働者の合法的権益保護の工作グループを設置し、調査、証拠収集にあたっている。また昭通市人力資源辧公室と水富県労務輸出局が鳳陽県に出稼ぎ労働者の合法的権益保護の工作グループを派遣し、合法的権益保障のための工作を実施している。

 

合法的権益が保護されない出稼ぎ労働者の問題が注目されるようになって久しい。出稼ぎ先での給与未払いや、子供の教育問題、勤務条件が悪いことなどがよく取りざたされる。しかし、出稼ぎから戻った後の病気発症も出稼ぎ労働者にとって深刻な問題であることをこの記事は宣伝している。これに対し、当事者が頼るのはやはり政府。出稼ぎがおそらく地元政府の政策として行われているため、合法的権益を保護するために政府が動かなければならない。第3者機関が存在しないところが中国の地方ということだろう。また訴訟も政府は奨励しないし、当事者自体もそのノウハウを知らない。政府が動いたことによる成果がどれほどのものか。この記事からは分からないが、地方政府の調査能力を考えると、解決は難しいだろう。出稼ぎ労働者の立場は弱いままである。

この記事の石英加工工場の所在地は「安徽省鳳陽県」である。鳳陽県と言えば、農業生産責任制の発祥の地であり、改革・開放の象徴的な地である。そこが舞台となるこの事件を報道したことは、偶然か、それとも政治的な意図があるのか。後者だったとしても、出稼ぎ労働者の合法的権益保護を考えさせるのに、改革・開放の象徴的な地をあえて選んだのか。それとも改革・開放の象徴的な地でこんな事件が起きているという地位失墜を狙ったのか。この記事に政治的な意図を見ようとするのは、ちょっと深読みだろうか。

 

324日】

●外交部が、胡錦濤の出席するG20金融サミットに関する記者会見を開催し、中国が期待する5項目を発表

41日と2日にロンドンで開催される第2G20金融サミットに、胡錦濤が出席する。この会議では、当然世界的な金融危機への対応が話し合われる。外交部はこれに先立ち記者会見を行い、中国が期待する5項目を発表した。

1)各国が前向きの精神で、団結を強化し。共通認識を凝集し、winwinの関係を追求し、市場と民衆の自信を奮い立たせる

2)各国がそれぞれの国情から出発して経済刺激計画を打ち出し、マクロ経済政策の協調を強化する

3)国際金融機構改革では、実施的な進展を勝ち取り、特に新興市場と途上国の代表性と発言権を高め、タイムテーブルとロードマップを制定する

4)貿易保護主義に反対し、WTOドーハ・ラウンド協議を進め、全面的で、バランスのとれた結果を勝ち取り、特に途上国の貿易に対する支持を強化しなければならない

5)発展問題に関心を寄せ、特に金融危機を理由に途上国の援助を削減することを避けなければならない

 

アメリカの地位の低下の隙を突いて、途上国を口実に中国自身の国際社会における発言権を高めようというねらいがある。

 

325日】

●新たな郷鎮機構改革の全面的にスタート

最近、党中央辧公庁と国務院辧公庁が「郷鎮機構改革の深化に関する中央機構編成委員会辧公室の指導意見」を印刷発送し、新たな郷鎮機構改革が全面的にスタートしたことに関連した解説記事が掲載された。

全国に約35000ある郷鎮の機構改革は、20043月にスタートし、これまですでにいくつかの段階を経ている。

(第1段階)20043月から、農村税費改革とセットで、黒龍江省、吉林省、安徽省、湖北省で試点工作がスタート。

(第2段階)20053月から20066月までに、試点を約7000カ所に拡大。この時の目標は、5年内に機構数と人員数を削減し、社会安定を確保すること。

(第3段階)20067月から現在まで、さらに拡大し、「農村総合改革工作を立派に行うことについての関連問題に関する通知」に基づき、農村義務教育改革と県郷財政管理体制改革とのセットで行う。

2008年末までに約半数の1.8万カ所で試点工作を実施済みで、以下のような問題点が明らかになった。

1)郷鎮職能の越権行為、ズレ、欠如が共存

2)制限された権力と無限の責任という混乱

3)縦割りが郷鎮運営に関与し、機構人員定数への圧力が大きい

 これからスタートする新たな改革は以下の通り。

 (1)核心は政府の職能転換

 (2)職責関係の調整

 (3)体制メカニズムの創新

 (4)機構とポジションの設置のグレードアップ

 (5)人員定数の厳格な抑制

 (6)郷鎮の行政管理と末端の民衆自治の有効な結合と良好な相互作用の推進

 (7)有能で効率的な郷鎮の行政管理体制と運営メカニズムの構築

 (8)サービス型政府の構築

 (9)農村税費改革の成果を確固としたものにする

 (10)農民負担の軽減

 (11)農村の経済社会の立派に速い発展の促進

その他、地域に即した改革の重点の設定、職能を履行するために必要な事務権限と財政権限の付与が挙げられる。

特に、サービス強化のために事業站所改革を行うことが新しい改革である。これは農村に対する公共サービスを行うために、郷鎮に設置されている事業「站」(ステーション)や事業「所」の管理体制を刷新することである。そのモデルとして3つ挙げられている。

(モデル1)多数ある事業站所を3-5のサービス中心に整理

(モデル2)湖北省などで施行している事業站所を企業化、あるいは仲介組織に転換し、契約、入札でサービスを提供する

(モデル3)事業站所を県の派出所にし、県の主管部門による管理にするか、或いは行政区域を跨いだ設置にする。

事業站所改革を行う上での原則は以下の通り

1)郷鎮事業站所は原則的に郷鎮管理を主とし、上級業務部門が業務指導を行う管理体制

2)事業站所を公益性と経営性に分類し、前者にのみ財政保障を強化する

 (3)農村の公益サービスの提供方法を検討し、サービス組織と農業専業合作社を奨励する

 

特に、郷鎮の事業単位である事業站所改革が興味深い。しかし、原則を見ると、一貫性がない。(1)は事業站所の管理を行政が行うが、郷鎮から県に移すといいもの、(2)事業站所を非行政化するというもの。行政の関与を強化するのか、弱めるのか分からない。

管理を郷鎮から県に移すというのも実は奥が深い。それは、郷鎮という行政レベルの存在意義が問われていることと無縁ではないからだ。末端の公共サービスの担い手は誰か。郷鎮は、県から下りてきた事務をやるだけで、単に県の派出機構に過ぎない。実際の末端の公共サービスの担い手は県であって、郷鎮は将来的には撤廃してもいいのではないかという見解がある。そのため、事務権限と財政権限を郷鎮に付与するということが実行されるかどうかは郷鎮の存亡に関わることといってもいい。事業站所とはいえ、これが上級の権威管理権限が移るのならば、郷鎮撤廃論に拍車をかけることになる。郷鎮の機構改革は単なる数あわせの問題ではないことに留意しておく必要がある。

 

327日】

●趙洪祝浙江省党委員会書記「経済成長維持は資源環境を踏まえなければならない」

内需拡大による経済成長8%の達成が今年に中国の最大の目標である。これに対し、趙洪祝浙江省党委書記が、懸念を表明した発言が掲載された。

経済成長維持を実現するために、生態環境保護、耕地保護、資源エネルギー節約などを犠牲にして、環境保護という「硬い枠」を広げて、省エネ排出削減という「厳しい呪いのようなタガ」を緩める。このことをわれわれは警戒しなければならない。一部の同志には経済成長を追求するために、資源環境の犠牲を代償として生産高の追求を惜しまない、将来の利益の犠牲を代償にして現在の経済成長の追求を惜しまないと考えている。その結果、生態を破壊し、民生に影響を与えている。

 

国際的な金融危機の影響に対し、経済成長8%を掲げ、財政投入によって経済成長を維持しようという現在の方針だが、持続可能な経済発展を掲げていることとの整合性をどうとるか、実は現政権はジレンマにあるように思われる。現在政治学習キャンペーンの科学的発展観学習実践活動が全国で展開されているが、学習会ではその辺りをどう説明しているのだろうか。この問題提起を、中国の経済発展をけん引する浙江省のトップが行ったこともおもしろい。未曾有の危機ということで、整合性は無視か。

 

今日の『人民日報』は、この他にも興味深い論評が掲載されている。

昨年628日に貴州省黔南布依族苗族自治州甕安県で発生した1万人規模の抗議行動の引責で処分され解任された県党委員会書記が、数日前に同州財政局副局長に任命された。

「行政機関公務員処分条例」によれば、処分後2年間は要職に就けないのだが、1年足らずで復帰したことになる。さらに2年前の山西省洪洞県の不法レンガ工場事件で処分された副県長や、昨年不正を隠ぺいするために取材中の新聞記者を拘束し処分された遼寧省西豊県党委書記はすでに要職に復帰している。

論評は、彼らを処分するときは「問責」ということで大きく注目されたが、彼らが復帰することは注目されていないのは問題と指摘する。復職について、公開しない、透明性がない、知る権利がないなど疑問が多い。問責制度を構築する上で、処分を受けた人の復職についても制度を整備する必要がある。

 

まあ、こんなものですよ。辞めさせるときは大騒ぎして、知らず知らずに復帰している。中国だけではないですが。

 

この他、謝国務院研究室主任が「経済の安定した速い発展を努力して維持する」として、経済政策を説明する論文が掲載されている。

 

330日】

●理論面で「6つのなぜ」連載開始 第1回「改革・開放の中でマルクス主義を堅持し、発展させる」

王鋭生(首都師範大学政法学院教授)、張雷声(中国人民大学マルクス主義学院教授)、■志民(北京大学マルクス主義学院教授)の3人が、次のような問いかけに答えている。

1「マルクス主義の指導的地位を堅持することと改革・開放を堅持することにはどんな関係があるか」

2「マルクス主義を堅持することのイデオロギー領域の指導的地位の具体的な内包は何か」

3「わが党が、マルクス主義の指導的地位の堅持が揺るがないことを提起することと、改革・開放の歴史的新時期にたえず思想を解放しなければならないことを提起すること、この2つは矛盾するか」

4「わが党が、マルクス主義のイデオロギー領域の指導的地位を堅持しなければならないことを強調することと、中国の特色ある社会主義理論体系を堅持しなければならないと提起すること、これをどう理解すべきか」

5「改革・開放以来、中国に社会意識の多様化という新たな状況が出現した。マルクス主義のイデオロギー領域の指導的地位を堅持することは社会思想文化の多様化発展の阻害となるか」

6「マルクス主義の指導的地位を堅持することは社会意識の多様化の排斥を意味するか」

7「指導思想の一元化と社会意識の多様化の関係の問題で、どのような誤った思想認識に防止、反対しなければならないか」

 

マルクス主義と改革・開放、社会の多様化との関係を論じようという特集である。党内に政治改革をめぐる論争、対立があることが指摘されている。この特集は、それと無縁ではないと考える。

この特集には布石がある。15日付『人民日報』の理論面で「マルクス主義の指導的地位を堅持し、指導思想の多元化をしない」と題する特集があり、次の3本の文章が掲載された。

候恵勤(社科院マルクス主義研究院党委書記・教授)「党と国家の事業発展の貴重な経験」

■志民(北京大学マルクス主義学院教授)「指導思想の一元化は客観的規律である」

田心銘(教育部小平理論的三個代表重要思想研究中心副主任)「理性的認識、歴史的結論」

また216日付『人民日報』の理論面でも「なぜ改革・開放の堅持を動揺することなく、逆戻りできないのか」と題する特集があり、次の3本の論文が掲載された。

李忠傑(中央党校党史研究室副主任)「歴史の選択 必ず通らなければならない道」

王浩雷(北京大学党委宣伝部副部長)「決して逆戻りできない」

季明(国防大学マルクス主義研究所副所長)「改革・開放の堅持は動揺しない」

 

331日】

●中国チベット学研究センターが「チベット経済社会発展」と題する報告を発表

報告の構成は以下の通り

1.成長と変化:発展の基礎

1)総量の成長と投資誘導

2)産業発展と構造変化

2.人類の発展:経済発展の目標

1)人口総数と質

2)教育と人材資源

3)公共サービスと民生工程

4)農牧民の収入水準と貧困削減・貧困扶助

3.持続可能な発展:環境保護とグリーン産業の発展の構築

1)環境状況と環境保護

2)経済成長と持続可能な発展

4.政府と市場:発展の提唱と促進

1)市場と資源配置

2)政府と発展、

5.困難と挑戦

1)発展のコスト障害が克服を必要としている

2)発展の不均衡問題は解決を必要としている

3)発展が必要としている人材資本は向上を必要としている

6.結び:成長と発展の展望

 

全体的にチベットの経済発展が強調されているが、それは中央の政策のおかげであるということを宣伝している。また、中央がチベット文化の保護をしてきたことを強調している。これもまたこれまでの中央のチベット政策を肯定する内容といえる。

しかし、この報告にはやはり違和感がある。つまり、チベット人は金や数字では計れない価値、すなわちアイデンティティーを大切だと思い、その保護を中央に求めている。これに対し、中央は数字でこれまでの政策を肯定しようとしている。これでは、かみ合わない。